第二十話 喪失
『領地開拓への参加を希望される方は、必要事項を確認の上、翌週の指定日時に王城までお越しください。』
──1週間後
領地開拓への参加を希望した三人が、王城へとやって来た。
王城の裏にある第三王子別棟では、広間の窓を全て開け放ち、庭には僕の作った魔導人形が5体並んでいる。
うむ。自分で言うのもなんだけど、結構良く出来ている。パッと見じゃ人形だとは気付かれないだろう。
魔導人形には、メイド服と燕尾服を着せた。
この人形は、戦闘訓練にも使える。
レオとの訓練にも耐えるほどの性能だ。
意思は持っていないはずだけど、頼めば掃除や料理などもしてくれる。
領地へ行く際、別棟が無人になってしまうから、警備と管理の為にルミナスとグレティスに手伝って貰いながら作ったけど、性能が良過ぎて手放したくない!
『追加で作れば良いじゃない、アルフィ』
「そうだけどぉ、材料もう無いよ〜」
『そうだな、ダンジョンにでも潜らなければ素材は手に入らないだろう』
そう、建国祭で出現したダンジョンでレオとユリウスの新しい剣の訓練に付き合い、何度も踏破してやっと6個しか手に入らなかった素材で作ったのだ。
凄くレアなのだよ!
一つは失敗して溶かしちゃったし……
「はぁ、取りに行くかぁ……」
「アルフィ様ー!皆さんのお着替え終わりましたよ」
リアが三人の志願者を連れて戻って来た。
リアの後ろには、青年が三人。
「あら?アルフィ様、初めに来てくれた男の子が居ませんね?」
「いや、居るよ」
リアの後ろから僕を舐めまわすように見ている、長髪の青年。この人が少年の本当の姿かな。
「今から君達には、僕と面談した後、後ろに並んでいる魔導人形と戦ってもらう。人形に攻撃が掠りさえすれば合格だよ」
「そんな簡単な事でいいのぉ?アルフィ様ぁ」
ニヤニヤと笑う青年の両隣で、冷や汗をかいて目を逸らす2人の青年。
「君、不合格になりたいのですか。アルフィ様にそのような口の利き方は許されません」
「良いよ、リア。君は相当自信があるみたいだね。そんなに自信があるなら、僕の後ろにいるレオと戦ってみる?」
僕の後ろに控えていた、レオが一歩前へ出る。
「あはは〜!嫌だなぁ、名誉騎士に攻撃入れれるわけないじゃないですか〜!」
僕は紅茶を飲みながら青年を見た。
その陽気な青年だけが異様に落ち着いていて、他の二人は少しバツが悪そうにしている。
面談で三人と話して分かった事は、みんな何かしらの問題を抱えているということだけ。
三人とも家族は居らず、たった一人でドゥウムへ来ていた。
魔導人形との訓練では、三人とも人形の服に攻撃を掠めた。
一人だけ、人形の腕をへし折った者がいた。
「エリオス……」
初めは少年の姿をしていた陽気な青年はエリオス。
ガタイが良く、明るい青年はカイン。
少し大人しめで一番身長の低い青年はオルフェン。
三人とも兄様達の所でも重宝されそうな実力者だ。
「三人共良かったらここで暮らして構わないけど、どうする?」
「よ、良いのですか?」
「もちろん、君達には一緒に来て欲しい。開拓地はお祖父様の騎士達が下調べをして、予め野営出来る場所は作ってくれているけれど、危険が多い。君達の力を貸してほしいんだ。
あの魔導人形に傷を付けられたのは、君達と此処に居るレオ、シオン、リアだけだ」
「ありがとうございます!!」
カインとオルフェンは顔を見合わせて喜んだ。
その後はダインの料理でパーティをした。
三人はダインの料理を凄く気に入ったらしい。
ご機嫌でオムライスを頬張る僕に、エリオスが近付いて来た。
「どうしたのー、エリオス」
「アルフィ様」
エリオスが僕の手を取って、にぎにぎと気味悪い触り方をする。
手のひらをエリオスの指がなぞるように触れて、僕が手を離そうとした時、エリオスは僕の手の甲にキスをした。
キスしたどさくさに、僕の手の甲を舌で舐める。
流石に僕は顔を引き攣らせて笑った。
それを見たリアは、料理をよそった皿を置き、僕の元へ戻って来ると、エリオスを引き離した。
「エリオス、貴方はアルフィ様に近付かないで下さい」
「えぇ、なんでぇ〜」
「次、アルフィ様に触れたら追い出しますよ」
「そんなぁ〜、酷いなぁリアン君はぁ」
「お褒めにあずかり光栄です。行きましょう、アルフィ様」
リアンに連れられ、僕は王城にある自室へ戻った。
「アルフィ様、本当にあの不審者を連れて行くのですか?」
「うんー、そうだねぇ。強いしー」
「強いから、厄介なのではありませんか」
「ま、エリオスにはレオとシオンを付けるよ」
「そ、それは心強いですが……」
「リアは心配しすぎ。僕は大丈夫だよ、いつも最後まで生きてるんだから」
リアは不服な顔をしながら部屋を出て行った。
「本当、心配しすぎ。今回は何だか、大丈夫そうなんだ」
僕はゆっくり瞼を閉じて、眠りについた。
──深夜 王城、第三王子自室へ不審者が侵入。
アルフィ・ドゥウム 行方不明。
「来月には、開拓地へ向かう予定であったのに!何処へ行かれたんだ!」
「アルフィ様は、誰かに連れ去られたのですよ。その様な言い方はおやめなさい」
「只今、第三王子アルフィ殿下の捜索が続けられていますが、痕跡すら見つかっておりません」
「魔導師団の奴らは何しているんだ」
「団長をはじめ、み〜んな頑張ってるよぉ〜。だから団長の代わりに、アタシが来たぁ」
「チッ、ミレニア……」
王城の評議室には、国王をはじめとする重臣達が集まっていた。
ドゥウム王国の者達が皆、アルフィの無事を願った。
フロレア王国からの助力もあり、ドゥウム王国全土を調査し尽くした。
アルフィ・ドゥウム 失踪後7日。
ドゥウム王国とグランベルグ帝国の国境付近にある小屋にて、アルフィ・ドゥウムの遺体が発見された。
その古い小屋の存在は、ドゥウム王国の民誰一人として知らなかった。
アルフィ・ドゥウムの遺体には、複数の刺し傷や打撲痕が認められた。
アルフィ・ドゥウムの側近達は、落ち着くまで第三王子別棟にて暇を貰う事となった。
「リアンさん……」
「ニア、エリオスは何処へ行った」
「エリオスさんは、まだアルフィ様を探して居られます……」
──ドゥウム王国 森
「クソッ、あれは俺の獲物だぞ!」
エリオスは10日間、捜索を続けていた。
「あの遺体は味がしなかった。本物じゃ無いんだろ!なぁ……アルフィ!ハハッ、楽しませてくれよ!」




