第十一話 建国祭Ⅳ
僕達は屋台でたらふくご飯を食べて、闘技場へ戻るとちょうどルイス兄様の紹介が終わったところだった。
「遅かったね、アル」
「ルーカス兄様、ミレニアが屋台から離れたがらなくて……」
「うん……見ればわかるかな」
僕の後ろでは、屋台の食べ物を両手いっぱいに持ったミレニアが、レオに呆れた目を向けられていた。
『続いて西門、白銀の貴公子!!ユリウス・フォンティス!!コイツの出場試合は女性陣の歓声がやまないぞー!!ツラの良い男は羨ましいぃー!!戦場で返り血を一滴も浴びないことから、白銀の貴公子と呼ばれるようになったユリウス!!その戦闘スタイルは、男の私でも惚れ惚れするほど美しい!!今、最も名誉騎士に近いと言われる男!!若く才能ある王子に勝ち優勝を掴めるのかーーー!?』
開始の合図が鳴り、女性陣の歓声がユリウスに注がれる。
ルイス兄様だってかっこいいやい!!
「ユリウスは強いですよ」
「レオ知り合い?」
「はい、勿論です。俺も騎士団ですし、帝国学院での先輩です」
「へー、歳近いんだ」
「はい、一つ上なのでユリウスは今年が卒業の年ですね」
「レオとユリウス、どっちが強い?」
「ユリウスには負けませんよ」
「レオつよ〜い!」
「俺凄いんです!!アルフィ様!!」
「う、うん」
レオはすごく誇らしそうに腕を組む。
「アル、ユリウスも凄いんだよ。レオが入学する前年には、学院の剣術大会で優勝して、その後はレオに次いで、5年連続で準優勝しているんだよ」
「へぇ、レオ優勝?」
「はい!もちろんです!!」
試合に目を戻すと、まだそんなに時間も経っていないのに、ルイス兄様は息を切らして疲弊しているようだ。
ユリウスは……なんかすっごい輝いてる。
ふふふっ、皆が私を見ている!!ミレニア、君も見ているだろう!!この私の輝かしい活躍を!!
ユリウスは、王族専用の観客席を見る。
なんだか、ユリウスと目があった気がする。
それに、眩しいっ!!ほんと、なにあの人!!すごく輝いてる!!
ユリウスはマントを揺らしながら、華麗にルイス兄様の剣を受け流している。
ルイス兄様もなんだか楽しそうに笑っている。
「ルイス兄様って……」
「戦闘狂だね、ルイスは。騎士団の人達の中でも上位の実力者しか、ルイスの相手になる人は居ないからね。自分より強い相手と戦うのが楽しいんだろうね」
「ふぅ〜ん」
ルイス兄様とユリウスの試合は、時間いっぱい続いた。
「ユリウスの奴、遊んでいますね」
「レオ〜、そんなキメ顔してないでミレニアどうにかしてよぉ」
「無理です!ミレニア寝起き悪いので、すごく嫌です!!」
ミレニアは床に座って、僕の膝を枕に気持ちよさそうに眠っている。
決勝戦残り1分。
延長に入れば、ルイス兄様に勝ち目はない。
だって!!ユリウスあんなに余力残して、余裕そうな表情してるもん!!
ルイス兄様は、準決勝戦で見せた火炎魔法を使った。
間合いに入った瞬間、ユリウスはルイス兄様の炎を断ち切った。
炎が消えると、そこには倒れたルイス兄様と、涼しい顔をしたユリウスが立っていた。
「ルイス兄様……」
「魔力切れですね、体力も尽きたのでしょう。それにしてもルイス殿下は凄いですね。ユリウス様に一撃入れてますよ」
目を凝らしてよく見ると、ユリウスの右袖が少し破れていた。
おぉ!ルイス兄様すごい!!
ユリウスはその破れた袖を見て、眉を顰めた。
明日はいよいよ、軍事演習である。
王都から少し離れた場所で、騎士や兵士達は部隊ごとに陣地を作り、明日に向けて計画を立てている。
簡単に言うと陣取りゲームみたいな感じだね!
時間内に相手の陣地にある旗を取る、もしくは大将を戦闘不能にすることで勝利。
制限時間を過ぎても勝敗が決まっていなかった場合、その時点で動ける者の数が多い方が勝利となるよ!
「アルフィ様」
「どうしたの?レオ」
「国王陛下がお呼びです」
「えぇ〜なにぃ」
「な、なんでしょうね……」
「なんで目を逸らすの……??」
「いえ、俺は何も知りません!!」
レオはグレティスを撫でながら、僕から目を逸らす。
僕はレオを疑いの目で見つめながら、父様の書斎へ向かった。
「失礼します、父様。アルフィです」
「おぉ、アルー!!座りなさい」
なんだか、父様の向かいに座っているルーカス兄様はご機嫌斜め。
僕はルーカス兄様の隣に座る。
「アルよ。レオの剣だが、アルから貰ったと言って、見せてもくれんのだ」
「アル、私は悲しいよ」
「ル、ルーカス兄様!?」
「スキルで出たものは、全て見せてくれていると思っていたのに、一目見せてもくれなかったんだね……私だって、弟の大切なものは欲しがったりしないよ!!調べるだけ……調べるくらいはさせてくれても良いじゃないか!!」
いや、ルーカス兄様は絶対欲しがると思ったんだよ!!
そしてなんやかんやあり……
レオに渡した黒煌剣グレティスとは対になるような、白煌剣ルミナスを譲ることになった。
父様がいっぱいお金くれた。
✦ ─────────── ✦
《 UR : 白煌剣ルミナス について 》
《 白煌剣ルミナスは、所有者の意思で大剣・細身のロングソード・小型ナイフへの変形可能。所有者の魔力を蓄積し、聖魔法を放つことが出来る 》
《 所有者の魔法攻撃耐性を上げる 》
✦ ─────────── ✦
対魔用の剣でもある。
白煌剣ルミナスは巨人族ほどの大きさから、ペンダントにしてしまえるほど小さくも出来る。
こうして僕は、お気に入りの剣2本を国の英雄へ譲る事となった。
──翌日
闘技場の中央に設置されたモニターで、軍事演習の様子を見ることができる。
僕がルーカス兄様と共に作りました!!えっへん!!
「素晴らしいな、これは。アルフィとルーカスが作ったと言ったな?」
「はい、ディンゼス伯父様」
「まだ作れるのか?」
「はい、材料があればですが」
「よし、材料は全て用意しよう。私にも譲ってくれ」
「勿論ですよ、伯父様のお役に立てるのであれば是非!」
え、ルーカス兄様!?僕のお仕事が増えるじゃないか!!
軍事演習は進み、僕は一際目を引く軍師を見つけた。
「あの部隊の軍師はまだ子供じゃないか」
「ですね、10歳程でしょうか」
「少年の父親が軍師を務める予定でしたが、今朝怪我をしたため、代役として息子が出ているそうです」
「もっと他に居なかったのか?わざわざ子供に……」
「元々軍師の父にも、意見をしていたとか」
「ほう、優秀だね」
少年が率いる部隊は、見事相手の裏をかき旗を取ることに成功した。
すごい、流石は【軍師Ⅹ】【頭脳明晰Ⅸ】。
「リア、あの子」
僕が振り返ると、レオがポカンと僕を見ていた。
「あ、ごめん……」
そうだった。リア、まだ帰って来てないんだった……ずっと側に居たから、変な感じ……
順当に軍事演習は進み、優勝は騎士団合同部隊、準優勝は少年率いる部隊だった。
閉会式を兼ねて表彰式も行われた。
僕は父様に頼まれ、トーナメント戦での優勝者に白煌剣ルミナスを渡す役目だ。
父様からの激励の後、僕はルミナスを持ってユリウスの元へ行く。
遠くから見ても綺麗だとは思っていたけど、近くで見ると女性から憧れられる訳が良くわかる。
雪のように白い長髪が風になびき、日の光でキラキラと輝く。長いまつ毛に蒼い瞳、汚れひとつない真っ白な騎士団服。白銀の貴公子と呼ばれるに相応しい美青年だ。
僕はルミナスを震える手でユリウスに差し出す。
ユリウスは僕の顔を見て少し困った顔をしている。
だってぇ!お気に入りの剣なのにぃ!!
ユリウスが受け取ろうとしているのに、僕が手を離さず困っている。
これはトラウマの震えでは無い、あげたくないのだ!!でも悔しいほどに、ユリウスの容姿にルミナスの真っ白な剣は凄く似合う。
「あ、あの。アルフィ王子殿下?」
「はっ!!ごめんなさい……」
僕はルミナスをユリウスに渡した。
表彰式は順調に終わり、僕はルイス兄様に抱きかかえられている。
ルイス兄様は、ユリウスをお仲間に欲しいみたい。
「ルイス兄様、ユリウス欲しい?」
「え!?あ、あぁ。そうだね!欲しい!!」
「じゃぁ行こう、僕もルミナスの使い方伝えなきゃ」
「よし、行こう!!」
選手の控え室へ行くと、ユリウスは剣を気に入ったのか試合の時以上に輝いていた。
「失礼します、ユリウス殿」
「ユリウス、剣気に入った?」
「ルイス王子殿下!!アルフィ王子殿下も。はい、この剣は素晴らしいです」
レオと同じ反応だぁ〜。
「ルイス兄様がユリウスにお話あるって」
「そうなのですか?ルイス王子殿下」
「あ、あぁ」
ルイス兄様が気まずそうに目を逸らすから、僕が先にユリウスと話す事になった。
「ユリウス、剣の説明しとくね」
「はい、ありがとうございます。アルフィ王子殿下」
僕はルミナスの使い方と、どんな事が出来るのかを見せた。実際にユリウスも試してみると、流石は名誉騎士に最も近いと言われる男。物覚えが良く、すぐに使いこなしてしまった。
「もう大丈夫そう。流石ユリウスだね」
「ありがとうございます、アルフィ王子殿下」
「ユリウス、ルイス兄様をお願いね」
「は、はい」
僕はルイス兄様の邪魔をしないように、控え室を出た。
ルイス兄様、ユリウスをお仲間に出来るといいね!
そしてその後、僕は軍師をしていた少年の元へ向かった。
「ねぇ、シオン。あの子名前なんて言ってたっけ」
「えーっと。ルミエルだったはずです」
「ルミエル」
まだ王都へ戻って来ていないから、後日会いに行こう。
──王城 客室
「ロゼリア、お待たせ」
「アルフィ様!待っていませんわ!!わたくしも今来たところですわ」
「そう、帝国へ行くのだけれど、ロゼリアも行かない?」
「帝国ですか!?わ、わたくしは……」
「君の事情を深く聞く事はしないけれど、やっぱり無事である事は伝えるべきだと思うんだ」
「い、嫌ですわ!!あの、屋敷に帰る事だけは……嫌です。アルフィ様、わたくし何でも致しますわ。だから、帰れなんて言わないで下さいませ」
「帰れなんて言わないよ。ただ、君の兄上と父上には伝えるべきだと思う。きっと、心配しているよ」
「それは、そうですけれども。わたくしは」
「帝国には、学院へ行くんだ。兄上に事前に言伝をして、顔だけでも見せよう。そのように泣き腫らした顔でなく、元気な姿を。そして、父上にはお手紙を送って貰えば良い。どうかな?」
「ローゼス領へは行きませんの?」
「行かないよ。フロレア王国は通るけれど、王都にも寄らないしローゼス領へも行かない」
「良い、のでしょうか。わたくしは」
「家族が急に居なくなるのは、悲しい。生きた心地がしない……ただ、無事生きてくれていると分かっていたら、安心できると思うよ」
「わ、わかりましたわ。お父様にお手紙を書きますわ!!」
「うん、良かった。これで僕も安心して君を匿えるよ」




