第十話 建国祭Ⅲ
パチパチと音を立てて、王都に炎が燃え上がる。
僕はそんな王都を、少し離れた見晴らしの良い高台から眺めていた。
家族が守った国を僕は守れなかった。
「アルフィ様!!」
「リア?」
リアの声で振り返ると、背後から忍び寄っていたドゥウム王国騎士団の隊服を着た男が剣を僕に突き刺した。
僕は刺された腹を押さえて、よろめいた。
リアはその男を始末して、僕に手を伸ばす。
痛い……熱い……痛い、痛い…痛い。
僕はリアの伸ばす手を掴もうと、手を伸ばす。
あれ、僕は……あぁ、綺麗な空。ずっと見ていたい。
僕は足を踏み外し、高台の崖から落ちていた。
リアが見える。叫んでいる。
「リ…アン……」
視界がぼやけて、目を閉じた。
僕……ずっと1人だよ。兄様、僕23歳になったよ。11年1人で頑張ったよ……
目を開けると、リアがさっきより近づいて見えた。
「アルフィ様!!」
僕が手を伸ばすと、リアは僕の手を掴んだ。
「リア……」
涙を流すリアは初めて見るよ。
「アルフィ様っ!!死んではいけません!!意識をしっかり保って下さいっ!!」
「リアは、生きて……ありがとう」
薄れゆく意識の中で、リアをフロレア王国の安全な領地へ飛ばした。
ドンッ────
「アルフィ様、起きて下さい。アルフィ様」
「シオン、なにぃ」
「もう出ますよ。アルフィ様」
僕はレオとシオン、ミレニアの3人を連れて酒屋へ向かった。
昼間より人が減り、見通しが良い。
「アルフィ様!」
酒屋の前でロゼリアが手を振っている。
「アルフィ様、この方は?」
「こちら、ロゼリア嬢。ロゼリア、この騎士はレオだよ。すごく強いよ」
ロゼリアは、僕達を酒屋の裏口に案内した。
足音を立てないようにロゼリアの後を追う。
ロゼリアは、パッと見では壁にしか見えない場所を触れる。
スーッと何かをなぞるように指を動かすと、魔法陣が光り出し、壁が長方形に切り抜かれたように無くなった。
「す、すごい。お城にも欲しいね」
「ですね。これは、知っている者にしかわかりませんよ」
「この隠し扉は、セレスティア神国で開発されたそうですわ」
「へぇ、聖信国で」
薄暗い階段を壁伝いに降りて行く。
二階分ほどの長い階段を降りたところで、ロゼリアが立ち止まった。
「も、申し訳ありませんわ。アルフィ様……」
ロゼリアの前には、昼間厨房に居た店主が立っていた。
「ロゼッタ、こんな所でなにをしている。お友達も連れて。この隠し部屋は教えていなかったはずだが」
「店主様」
「初めまして!ロゼッタと祭りで仲良くなったアルです!!ごめんなさい。僕がロゼッタに我儘を言ったんです」
「アル、ふん。この国の第三王子と似た名前だな」
「アルフィ王子殿下ですよね!僕もアルフィ王子殿下とお名前が似ていて、恐れ多いなとはいつも思っています」
「この国の王族に頭を垂れる必要はないぞ、坊主。この国の王族は我が誇り高きグランベルグ帝国の領地を奪い、さも自分達がこの地の王かのように振る舞っている!!許されない!!許されないのだよ!!」
「だから、フロレア王国の王子を攫ったのですか?」
「な、何故知っている」
「知っていますよ。僕はドゥウム王国第三王子ですから」
僕が名乗った瞬間に、レオが物陰から出てきて店主を捕らえた。
今の僕は無敵なのだよ!なんたってレオとミレニア、それにシオンも付いているからね!!魔王が来ても怖くないのだよぉ!わーはっはー!
「階段に木箱を積んでおくのは危険ですよ?店主さん」
木箱のお陰で、店主からはロゼリアと僕しか居ないと思わせることができたのだから、お礼を言わなければいけないけどね。
「あ、それと帝国では、偽った歴史を学ぶようですね。全てを鵜呑みにせず、もう少し広い視野を持って過ごした方が恥をかかなくて済みますよ」
「この、ハイエナ野郎っ」
「ハイエナではありません。アルフィですっ」
レオが逃げないように店主を縛り上げ、シオンが出入り口と店主を見張る。
奥の部屋へ入ると、リュエル君が椅子に縛り付けられていた。
「リュエル君!!」
リュエル君は、涙を流しながら首を振っている。
僕がリュエル君に近づこうと部屋へ入った瞬間、部屋に魔法陣が浮かび上がった。
「アルフィ様!!」
レオとミレニアが僕のそばへ駆け寄った。
2人が魔法陣を踏んだ瞬間、その部屋から僕とレオ、ミレニア、縛られていたリュエル君までもが姿を消した。
気付くと、だだっ広い砂漠のような場所に、リュエル君と2人きりになっていた。
僕はリュエル君の猿ぐつわを外し、ロープを解く。
「最悪だぁ、どうしよう。レオもミレニアも居ない」
「アルフィ君……ごめんなさい。ごめんなさい、私が弱いから……」
「リュエル君のせいじゃないよ。取り敢えず歩きましょう」
「はい……」
しばらく歩いてもなにも見えず、僕は途方に暮れていた。
【転移】も出来なかった。
ギュルルルルと、リュエル君のお腹が鳴った。
「ご、ごめんなさいっ。丸1日なにも食べていなかったから……」
「はい、これ食べて」
僕は亜空間からフルーツと水を出してリュエル君に渡した。
てか、なんで砂漠……いや。
僕はリュエル君が果物を食べている間に、サーチをした。
「やっぱり……」
「どうしたの?」
「レオとミレニアの所へ急ぎましょう」
「え、場所が分かったの?」
「うん、でも早く合流した方がいい。僕はリュエル君を守る力を持っていないから……」
「ううん、そんな事ないよ!私は、アルフィ君が来てくれてすごく嬉しかったです!!」
この王子、いい子すぎるよ!!
僕はリュエル君の手を引いて、歩き始めた。
「来た道を戻るのですか?」
「うん、先にレオと合流します」
1時間ほど歩いただろうか。砂に足を取られて体力が削られる。
景色も変わらないから余計疲れる!!
「アルフィ様!!」
この声は……ミレニア。先にミレニアと合流してしまった!!ちゃんとレオに向かって歩いていたと思ったのに、変わり映えのしない景色のせいで方向感覚が鈍ったかな。
「ミレニア」
「なんだか、不服そうだなぁ?アルフィ様ぁ。アタシより弟の方が良かったぁ?」
「ミレニアは、僕の魔力を追えるでしょ。レオは僕達が会いに行かなきゃ、合流出来ないんだから」
「ふむ、それもそうですねぇ」
レオの合流を目指して歩いている間、何度も魔物に襲われた。
「これ、レオ歩き回ってないよね……」
「歩き回ってるかもねぇ。全然距離縮まらなぁい」
「それにレオは1人でも大丈夫だろうけど、僕達はレオ居ないと厳しいよ」
僕達が飛ばされたのは、ダンジョンだ。
今はまだ未発見のダンジョン。
前回は四年後くらいに見つかったものだけど、今回は早かったな……場所なんて忘れちゃってたよ、テヘ……!
前回とは入り口の様子が変わっていたけど、リュエル君が縛られていた部屋は、以前ダンジョンの入り口となる石板があった場所だ。
誘拐犯達が改造したのだろう。おそらく階段から地下に大量にあった木箱は戦利品。
このダンジョンは2人以上かつ、総合魔力30,000以上ないとダンジョンへは入れない。
僕とミレニアが入ったことで条件は優に超しただろう。
それに、このダンジョンの砂漠地帯では、魔法の効かない魔物が稀に存在する。
ミレニアだけじゃ、不安なのだよ!!
レオと早く合流せねばっ!!
「アルフィ様ぁ、此処は何処なんですぅ?」
「ん〜、簡単に言うと王都の下」
「ダンジョンですかぁ?」
「正解、ミレニア天才〜」
「いぇい」
「ダ、ダンジョン!?私、初めて入りました。大丈夫でしょうか……」
「大丈夫、とは言えないかなぁ。レオを早く見つけないとね〜」
「レオさん!見つけます!!」
リュエル君は気合を入れて、キョロキョロと辺りを見渡す。
「リュエル君、一応剣渡しておくね」
「あ、ありがとうございます!」
僕は震える手を抑えながら、剣をリュエル君に渡した。
はっ!そうだ〜。
僕はシメシメと、【恩恵】を使った。
2人が魔物倒したら、僕もレベル上がるぞ〜!!
みんなもレベル上がるから、許してね!
さらに1時間くらい歩くと、遠目に人影が見えた。
「レオ〜!!」
「レオさん!?」
みんなで叫んでいると、レオが気付いて走って来た。
流石は名誉騎士。
「アルフィ様!!ご無事で良かった!!」
「歩き回ってたでしょ」
僕は頬をパンパンに膨らませてレオを問い詰めた。
「も、申し訳ありません!!アルフィ様が心配で!!」
「お陰で1時間も歩いたじゃないか!」
ムーッと拗ねていると、遠くから何かに追いかけられている人が見えた。
「このダンジョン内に居るってことは、リュエル君誘拐・監禁犯の仲間だね」
「捕らえますか?」
「いや、邪魔だからいいよ。僕達が先にダンジョンから出れば……いや」
木箱は大量にあった。誘拐犯達はダンジョンの途中で帰る手段を持っている。もしくは知っている。
このダンジョンは結構難易度が高かったはず。誘拐犯達くらいの実力で踏破出来るとも、短期間で周回出来るとも思えない。
「捕まえて」
レオとミレニアは、僕とリュエル君の前に立ち、剣と杖を構えた。
男達の後ろを追うのは、硬い甲殻を纏ったサソリのような魔物、スカルディオンだ。
「ミレニアは足留めとレオのサポート、レオは関節を狙って!魔法は効かないよ!!」
「はぁいっ」
「仰せのままに、アルフィ様!!」
逃げてきた男達は僕とリュエル君の後ろに隠れた。
それでも大人か?
ミレニアが足を凍らせて、レオが足の関節を狙う。
足は切れず、氷を破壊して僕達の方へ突っ込んでくる。
「クソっ」
「尻尾の針には猛毒あるから気をつけてー!」
「す、すごいね。アルフィ君、あの魔物見たことあるの?」
「うん、ちょっとね」
僕は【強くなぁれ】をレオに使う。
レオは先に尻尾を斬り落とそうと、剣を振り下ろした。
甲殻に剣が触れた瞬間、ピキッと剣にヒビが入り、パキンッと折れた。
「レオの剣が折れたぁ、アルフィ様ぁ!」
「見えてるよ!!」
僕は【ルーレット】で獲得していた剣を出した。
かっこいいから誰にもあげたくなくて、ルーカス兄様にも隠していた剣だけど……仕方ないよね……
「はぁ……」
僕は肩を落としながら、ミレニアに頼みレオへ剣を投げてもらった。
✦ ─────────── ✦
《 UR : 黒煌剣グレティス について 》
《 黒煌剣グレティスは、所有者の魔力で剣を変形させることができる。刀身で触れた者の魔力を吸収し、蓄積する。その魔力で闇魔法を放つことも可能 》
《 所有者の物理攻撃耐性を上げる 》
✦ ─────────── ✦
黒煌剣グレティスを獲得してから数日間、寝ずに使い方を研究していたら、構造と仕組みさえ理解していれば、剣以外にも変形することが分かった。
レオなら上手く使ってくれるだろう……
もう一回当てれば良いだけだもんね!!
なんだか、涙が込み上げてくるよぉ……
無事硬い甲殻を断ち切った。
そりゃそうだよっ!僕のグレちゃんは凄いんだ!!
グレちゃんは、ミスリルナイフも触れただけで切っちゃうんだから!!
ルーカス兄様から借りたミスリルナイフを真っ二つにしてしまったのは、内緒なのだ。
「アルフィ様!!この剣凄いですよ!!」
「うん。そうでしょうね」
涙を流しながら言うとレオはオロオロと気まずそうにしていた。いたたまれなくなった僕は諦めた。
レオが強くなることは、良いことだ。
「レオにあげる、使い方はまた教えるね」
「使い方?」
「うん、変形させる時のコツとか」
「変形!?」
レオは子供のように目を輝かせている。
変身とか、変形とか憧れるよね。分かる〜。
僕達の後ろに隠れた情けない大人達はというと、やはり誘拐犯だった。
いつものように儲けようと、ダンジョンへ入ったところスカルディオンに遭遇し、魔法も効かず、剣も通らない魔物に怖気づいたリーダーは、1人で魔道具を使って帰ってしまったそうだ。
シオンとロゼリアだけ残して来てしまったけど、大丈夫かなぁ。
2人の男が言うには、ダンジョン産の質の良い素材は使い道が多く、高値で売れるため、帝国に横流ししていたそうだ。
どっちがハイエナだか……
波に乗りに乗ったレオは、どんな魔物も止めることはできなかった。
普通であれば攻略に何日もかかるダンジョンを1日もかからず攻略してしまった。
付いて行くだけの僕達の方が疲れてしまったよ。
ダンジョンの最下層で、難なくボスを倒すと転移魔法陣が浮き上がった。
僕達が魔法陣に乗ると、ガタガタと地面が揺れ、瓦礫が落ちてくる。
レオが僕とリュエル君に覆い被さる。
立っていられない程の揺れが収まり、気付くと僕達はダンジョンの入り口に立っていた。
入った時の部屋とは違い、薄く水が張り、重厚な扉から石盤まで石畳が続いている。
扉を開けると、酒屋の外に出た。
いや、ダンジョンが踏破された事で、ダンジョンの入り口が人目につく場所に出て来たのかもしれない。
周りには酒屋の看板や、木屑が散乱していた。
ダンジョンも色んな人に、攻略して欲しいのかな?
5年もの間、人の手によって隠され独占され続けたダンジョンは、99周年建国祭5日目の夕方、日の目を見ることとなった。
のだが……
僕の目の前には、腕を組んで明らかに怒っているルーカス兄様。
リュエル君も助け出して、悪い人も捕まえたのに僕は怒られるのだろうか。
シオンは、誘拐犯のリーダーも無事捕まえてくれているようだし、僕はお暇しよう!
何も言わず、ソーッとその場を去ろうとしたら、ルーカス兄様に止められた。
「アルフィ」
ルーカス兄様が、社交的な場以外でアルフィと呼ぶ時は、怒っている時なのだ!!
僕は冷や汗をかきながら振り返った。
そこには笑っているのに目が笑っていない、すごく怖いルーカス兄様!
僕はミレニアの背後に隠れる。
「ミレニア!!ラスボスだよ!!レオが全部倒しちゃったから、消化不良でしょ!?倒しちゃって!!」
「いやぁ、アルフィ様の頼みでもぉ。流石にルーカス様に手出したらアタシ首飛ぶぅ〜」
僕はルーカス兄様に、首根っこ掴まれてズルズルと引き摺られながら帰路へ就く。
「みんなの薄情者ぉ〜!」
「アルフィ君!!」
リュエル君が僕に叫ぶ。
「ありがとう!!」
「リュエル君……」
そう思ってくれているなら助けてよぉ〜!
僕は無事、ルーカス兄様とマシュと共に王城へ着いた。
父様と母様に怒られ、ついでにアスリー伯母様にまで怒られた。
部屋に戻ると、ルーカス兄様とルイス兄様にこんこんと怒られて、すごく悲しい。
「あ、そうだアル。これを」
「何ですか?これはお手紙?」
封蝋には、グランベルグ帝国の紋章が刻まれていた。
「寮を改装したいんだよね?一応学院長には、話を通しておかないといけないと思ってね。早速学院長の第四皇子殿下から返事が来たよ」
「ありがとうございます。ルーカス兄様」
「当日は私達も行くから」
「ルーカス兄様とルイス兄様も来るの!?」
「当たり前だろ?弟が俺たちの為に動こうとしてくれているのに、俺たち自身が何もしないなんてカッコ悪いだろう」
「ルイス兄様はかっこいいです!」
「それに私達は、何ヶ月もアルと会えなくなるのは嫌なんだよ。来年の春には学院へ入って長らく会えなくなるって言うのに!!」
「改装、そんな何ヶ月も掛かりませんよ?数日です。すぐ帰ります」
「そんな訳ないだろ!?寮を改装するんだから」
「はい、ルイス兄様。ですので時短のために必要な物資は、こっちで用意して持って行きます」
「いや、そういう問題では……」
「あ、行きは馬車で行くのでひと月は戻りませんけどね」
──翌朝
ルイス兄様は、騎士のような服を着ていた。
「ルイス兄様?」
「今日は優勝者が決まるからな。ちゃんと見といてくれよ、アル。俺の活躍」
「うん!!」
ルイス兄様は、今回の大会でベスト8入りしたのだ!
最終日は、その8名で優勝を争うのだ。
凄いぞ兄様!いけいけ兄様〜!!
僕は、ルイス兄様を見送ったあと、身支度をして闘技場へ向かった。
「アルフィ君!」
「リュエル君、昨日はごめんなさい。先に帰っちゃって」
「大丈夫です!私もあの後、父上や兄上からしこたま怒られました!」
「リュエル君が怒られることじゃないのに……僕がちゃんと警戒していなかったから」
「いえ!一国の王子たるもの、命を狙われるのは日常茶飯事!!自分の身は自分で守れるようになれと言われました。その通りです、私も強くなります。アルフィ君のように」
「僕は強くないよ?」
リュエル君は笑って首を振った。
今日は闘技場の会場を、広い1コートに模様替えをし、1試合ずつ進める。
ここからは15分試合、延長5分。
審判は、騎士団各部隊長達が務める。
『さぁさぁ!!いよいよ準決勝!!どちらが決勝戦に出場するのか!!』
『東門より入場するは、我らがドゥウム王国第二王子にして、騎士団副団長の愛弟子!!ルイス・ドゥウム!!えー、ここまで傷ひとつなく勝ち進んで参りましたが、ここからは歴戦の猛者達が立ちはだかります!!果たして若き王子は、この高き壁を乗り越え、決勝の舞台へと駒を進めることはできるのかーーー!!』
東門からルイス兄様が登場すると、会場中が歓声に包まれる。
うちの兄様人気者で鼻が高ぁ〜いよぉ〜!!
『えー、西門より入場するは、誇り高きドゥウム騎士団第一部隊隊員、ラウル!!32歳!!ここまで危ない試合はちょくちょくありましたが、見事に勝ち抜いて来た!!相手は子供だぞ!大人の意地を見せろー!!初の決勝へ向けて勝ち進め!!』
試合開始の合図とともに、闘技場はルイス兄様を応援する声で溢れる。
アウェイが過ぎるよ!!可哀想だよ!!
「ラウルさん頑張れ!!ルイス兄様なんて倒しちゃえ〜!!」
ふっふっふっ〜、心の中で悪態つくのは良いのだよ!
目を開けると、ルーカス兄様もリュエル君も、みんな僕を見て目を丸くしている。
「ありゃ、声に出てた……?」
心なしか、声が聞こえてないはずのルイス兄様とも目が合った気がした。
ルイス兄様とラウルの試合は長引き、延長に入った。
ルイス兄様の方が動きも速く、体力もある。
けれど、ラウルの方が力はあるようで、今までルイス兄様が対戦相手を吹っ飛ばして来た技も耐える。
鍔迫り合いになると、ルイス兄様の方が押されている。
ラスト3分。2人とも疲弊している。
ルイス兄様は、剣に火炎魔法を纏わせる。
ルイス兄様が一歩足を踏み出した瞬間、炎が燃え上がり僕には不死鳥のように見えた。
次の瞬間、ラウルは場外へと吹き飛ばされていた。
ルイス兄様は決勝戦への出場が決まった。
『ルイス・ドゥウムの勝利。決勝戦進出です!!初出場で決勝進出!!素晴らしい活躍です!!』
その後、決勝でルイス兄様と当たる騎士達の戦いを見て、決勝戦だけを残しお昼休憩となった。
ルイス兄様の控室へ行くと、ルイス兄様は手首を痛めたのか右手首を押さえていた。
「ルイス兄様、怪我したの?」
「あぁ、大したことはない」
ルイス兄様の腕は火傷で皮膚が爛れていた。
「すぐ治さなきゃ!」
「大丈夫だ、これくらい。アルが心配することじゃない」
「ルイス兄様は、優勝したくないんですか?」
「優勝したいさ」
ルイス兄様は、自分の魔法で火傷をしたそうだ。
ラウルとの試合で最後に使った炎の技は、まだまだ発展途上で、時折炎の制御が効かなくなり、火傷をしてしまうらしい。
僕がルイス兄様の袖を捲ると、火傷の痕がいくつもあった。
僕はルイス兄様の腕を、治癒魔法で治した。
古い傷痕も無くなり、綺麗な腕になったよ!よかったね!!
「す、すげーな。アルは」
「ルイス兄様の魔法もすごくかっこよかったよ!不死鳥みたいで綺麗だったぁ〜!!」
「不死鳥??」
「うん!」
その後は、リュエル君と屋台リベンジをして、試合再開までに闘技場へ戻った。




