失敗の代償
帝国の謁見の間では、皇帝が苛立ちを隠せず
にいた。
スタンピード当日の昼になっても、皇帝には
一切の報告が齎されていなかった。
皇帝は側近達を呼びつけたが、基幹国はおろか
放った密偵からも連絡がないということだった。
「そんなはずがあるわけがない⋯今日の晩には
教皇に合わねばならんのだぞ。」
皇帝直属の密偵を呼出し、
「私以外の命令は一切受け付けるな、1時間
以内にスタンピードの状況を報告せよ。」
密偵は頸を振り、
「宰相様から皇帝陛下単独の命令は受けるなと
言われてます。」
皇帝は苛つきを隠さずに、
「宰相を呼べ!」
と、怒鳴った。
呼び出された宰相は密偵の前で、ため息をつき
「陛下、それは私の策略とかそういう問題では
ありません。国の法律で定められている
もので、ございます。」
皇帝は宰相に疑いの目を向けたが、
宰相は、頭を抱えて、
「ここに、皇帝の権限の制約という項目が
ありますよね?ここに今回の件が抵触します。
もう少し、勉強の時間を増やさないと
いけませんな。」
皇帝は手元にあった剣を宰相の頸に突き付け
「皇帝に事実を意図的に報告しないというのは
罪に問われないのか?」
「落ちついて下さい陛下。情報を精査するのに
時間を要していただけです。
今暫くお待ちくだされば報告できると
思われます。」
⋯それから3時間後。
「陛下、速報でございます。
スタンピードが失敗に終わりました。」
速報?
この間抜けどもめ。
「貴様らは、速報を上げるのに何時間を
要している、そのようなもの我が帝国に
必要ない直ちに処分せよ。」
報告を上げた、情報局長は青ざめて、
「これには事情が⋯。」
「事情?処刑の前に聞いてやる、
暫くは牢にいろ!」
というと、情報局長は衛兵達に連れて行かれた。
「約束通り、基幹国を潰せ。3日以内だ。
その後は、全軍を以て反逆者を捕らえよ!」
と、怒鳴り散らすと、皇帝は謁見の間から
出ていこうとした。
そこに、宰相と軍務大臣が走り込んで来て、
「陛下。暫し、お待ちを。
基幹国に猶予をお与えください。」
と、軍務大臣がいうと皇帝の怒りは
軍務大臣に向けられた。
「与えてこの始末だ、それ以上はない!
お前の首を差し出すとでもいうのか!?」
と、軍務大臣の頸元に剣先を突きつけた。
「いえ、まだクロウが奴らと交戦中なので、
それの結果をお待ちください。」
皇帝は鼻で笑い、
「貴様も、軍務大臣ならわかってるだろう
クロウでは役不足だ。」
軍務大臣は頷き、
「三斬を派遣してます。」
「クロウをおとりにしてか?」
「ま、そういうことになります。」
と、軍務大臣は頭を下げた。
「では、明日まで待とう。三斬が土産なしの
場合はお前の頸が飛ぶぞ!」
というと、皇帝は謁見の間から去った。
宰相が小声で、軍務大臣に
「勝算はあるのか?」
軍務大臣は頷き、
「1000パーセントありますが、三斬は2人
残ればよい方かと。」
一方、クロウはようやくカナ達に追いつき、
隙を伺っている。
1人は魔法剣士、1人は魔道士か。
魔道士は分が悪いな⋯、魔法剣士からやるか。
クロウが得意とするのは、空間移動と
火系攻撃魔術だが、空間移動でカナを拉致する
作戦を立てていた。
クロウは魔法剣士の特性を理解していなかった、
魔法剣士は本能的に魔術に非常に敏感に
反応する。
「カナ、そろそろ出発するって。」
「分かった、今行く。」
クロウがカナの背後に回った瞬間、
カナは悪寒を感じ、魔法剣を抜いた。
バシュ。ポタポタ。
「ん?手応えあったけど、誰もいないか。」
カナは頸を傾げながら、ジン達の方に走って
行った。
クロウは、瞬時に避けたつもりだったが、
カナの踏み込みが鋭く避けきれず、
深手を負った。
カナ達を追うのは厳しい感じだった。
背後でその様を見ていた剣士三人は頭を
抱えながら、
「どうする?」
「我等も手ぶらでは帰れんぞ。」
⋯。
「見捨てよう。どうせ、捨て駒だ。」
そう言うと、3人の剣士はクロウを見捨て、
カナ達を追った。




