第22話 炎の精霊
次の日……
依然としてフーリィニアからの連絡がない成瀬と比呂は昨日断念した迷宮攻略を再開する事にした
「今日こそは碧焔の迷宮攻略しちゃうぞッ!」
「アオォォォッ!」
成瀬と比呂は影移動で31階層まで省略した
「昨日はこの暑さにやられちゃったけど今日はしっかり対策してるから大丈夫ッ!」
外套を羽織った比呂は本来であれば熱中症待ったなしの熱風の迷宮内をすいすいと歩き進める。
(サラマンドラゴの皮膚を特殊加工し、遮熱の魔法陣を刻み込んだ魔道具。使用者に熱の遮断効果と斬撃耐性を与えてくれる。しかし、必要だったとはいえ高かったなぁ……まぁ、攻略のためには仕方がないか)
そう、昨日大量に手に入れたサラマンドラゴから剥ぎ取ったサラマンドラゴの皮膚をとある魔加工店に持っていき加工してもらったのだ。サラマンドラゴの皮膚を持ち込んだことで材料費は浮いたが加工費や魔法陣を刻み込むための特殊加工費など諸々で金貨2枚を持っていかれた。それにプラスして、。いい加減制服でウロチョロするのは良くないのでこの機会に服を買う事にした。防御系の魔法陣が編み込まれた特殊な服を何着か購入した。値は張るがこれも必要経費というやつだ
32階層に進むと湧いて溢れていたサラマンドラゴが居なくなり、代わりに炎の中位精霊が巨万といた。成瀬の中で精霊とは神聖な存在であった。しかし、奴らは成瀬を認識した瞬間躊躇なく攻撃してきたことで今まで成瀬の中にあった綺麗なイメージは崩れ去った。
(クッソガァァッ!)
攻撃を避けながら成瀬は心の中で毒づくのだった
奴らは主に火の玉のような姿をしており、一体を核に寄り集まることで形を成す。32階層に進んで初めに戦った炎の精霊はサラマンドラゴの姿をしていた。
(クソッ!やっぱり物理攻撃も通じないかッ)
精霊は非物質。魔法での攻撃かもしくは弱点である水の攻撃でしか有効打に成り得ない。
「魔法での攻撃。もしくは水…………水?そうだッ!ワンちゃん影に入れた水を全排出してッ!」
「ッ!?」
そう、それは以前この近くにある町『エンテイ』までの道中でのことだった。大きな湖があった。休憩がてらそこの湖畔で一休みしていた。しかし、そこはターヴゲーターと呼ばれる鰐型の魔物の住処となっていたのだ。ターヴゲーターとの戦いにおいて水中戦は不利だと判断した比呂が成瀬に湖の水を全て吸収するように指示したのだ。ターヴゲーターの機動力と持久力は水中ではしか発揮されずそれらを失ったターヴゲーターは文字通りまな板の上の鯉状態と化したのだ。
(この場合鯉ではなくまな板の上の鰐だが……確かにあの水量ならやれるか?)
成瀬は炎の精霊との間に影の壁を作りそこから湖から吸い取ったすべての水を排出する洞窟を影で
「――!?」
突然現れた大量の水に炎の精霊は混乱する。『何故!?』と、この碧焔の迷宮内では水源が存在せず、あるとしても業火に煮えるマグマ溜まりだけ。
しかし、腐っても炎の中位精霊。襲い来る水の物量に対して自身をより高温にすることでそれらを蒸発させようと試みる。しかし、そんな無茶を続けられるほどの魔力を精霊は保有していなかった
【炎の精霊の絶命を感知しました。個体名『ワンちゃん』は経験値を獲得しました。レベルが1上昇しました。各種ステータスが上昇しました。】
(ふぅ~~なんとか倒せた。でも、一匹に対してこれだけの水が必要なんだとすればここから先の攻略は結構面倒なんじゃないか?)
先ほどのサラマンドラゴ型の炎の精霊に使用した水の量は凡そ40%。消費量が半端じゃない
(影を通して水をほぼ無限に供給できる場所があればいいんだが………それが出来るとすればやっぱり海か?いや、そもそも買った地図には海は載っていなかった。つまり、この近くにはなくもっと遠くにあるってことだ。そこまで行くのにどれだけ掛かる?却下だな)
「ワンちゃん、さっきの水の物量攻撃なんだけどもっと放出口を狭められないかな?」
「………?」
(狭める?そんなことすれば全然水が出なくなるんだけど?)
言っている意味を理解できない成瀬は首を傾げる
「水鉄砲ってわかる?容器があるとして、その底に小さな穴をあけて、水をいれるとその穴から水が流れるよね…………」
比呂は説明しながら地面に絵を描く。そこで漸く成瀬も比呂の意図に気付く。一通りの説明を受けた成瀬はイメージを固める。先ほどのサラマンドラゴ型炎の精霊戦がダムの放水のようなものだとすれば、これからやろうとするのは超高圧縮された水弾
(水をため込んだ影の容器を圧縮………)
影を操作し、徐々に内部へ圧力をかける。当然圧力をかければかけるだけ必要な力は増える
(今ッ!)
今できる精一杯の圧縮をした成瀬は迷宮の壁に向けて水の弾丸を放つ。その瞬間―――
ダガァンッッッ!!!
凄まじい音を立て、壁を抉り取ったのだ
(行ける。これなら最小限の水で最大限のダメージを与えられるッ!)
その後は、大した威力は見込めないものの囮として影弾や近接を入れつつ、隙を狙い水圧砲弾を放つ戦法で蛇、馬、猪。果ては炎の鬣を纏った百獣の王の姿を模した炎の精霊を撃破する事に成功するのだった
碧焔の迷宮39階層攻略中…………




