21話 碧焔の迷宮
あれから二日後。今比呂と成瀬はとある迷宮に足を運んでいた。そこはカーティアの町から西に少し進んだ先にある碧焔の迷宮と呼ばれる危険度で言えば5級の中でも上位クラスの危険度の迷宮へ来ていた
「アレはサラマンドラゴ。レベルは68。背中に炎を生成・蓄積する器官があるのが特徴だよ。牙には強力な麻痺毒があるから気を付けて」
「ヴォンッ!」
この迷宮は長年土地を浸食し続けており、溢れ出す炎の魔力によって周辺の生態系を乱している。本らであれば早く迷宮を攻略して迷宮核を破壊すべきなのだろう。そうすれば迷宮はその存在を維持できなくなり消え去る。しかし、内部ではうだるようなあ暑さと高レベルな魔物によって迷宮の攻略を困難にしてる。現在公式に攻略が完了しているのは28階層までだ。農作物にも影響が出始めている以上町の冒険者ギルドもかなり頭を抱えている問題だ。そんな迷宮に今、成瀬と比呂は挑んでいた
知識と鑑定を駆使した成瀬のサポートがだんだんと板に付いてきた比呂は成瀬の後方で成瀬の戦う姿を見つめる
(やっぱり私も魔法を覚えた方が戦闘に役立つんじゃ……)
サポートしかできない歯がゆさを心の中で燻ぶらせていた
強力な蒼炎のブレスに応戦するべく成瀬も影魔法を放つがその強大な光量に影がぶれる
(チッ……やっぱ相性悪いな。魔法攻撃は有効打にならない。結局これしかないかッ)
辛うじてブレスを受け流した成瀬は身体超強化を発動し粉塵に紛れる。と、同時に影狼をサラマンドラゴへ肉迫させる
「――ッ!」
先ほどまで中距離から魔法の応酬をしていたサラマンドラゴは急な切り替えに驚くが、それでも反応は鈍ることなく影狼を撃破する
「………ッ!?」
しかし、それはブラフ。粉塵に紛れ、影の中へ入った成瀬は影狼を囮にサラマンドラゴの真下の影に入り込む
(そこッ!)
影狼は実体を持つ分身体。しかし、倒されれば影は霧散し消えていく。サラマンドラゴの攻撃で消えた影狼を探し、周囲を見渡すサラマンドラゴの腹部を真下から両前足爪で抉り裂いた
【サラマンドラゴの絶命を感知しました。個体名『ワンちゃん』は経験値を獲得しました。レベルが1上昇しました。各種ステータスが上昇しました。】
(ふぅ~これで漸くレベルは70か。90まで先は長いな……)
影狼を野に放ち、魔物を狩ることでレベルアップの効率を図っているもののレベルの上昇に伴いそこら辺の魔物程度では簡単にレベルが上がらなくなってしまったのだ
「これで漸く下層に行けるね」
「ヴォンッ!」
先ほどのサラマンドラゴは中層から下層へ行くための階段を守る所謂階層主というやつでペンチェルの迷宮ではいなかった類の魔物だ。
この碧焔の迷宮はわかっているだけで30階層あるその上層20階は20~40程度のレベルの魔物が徘徊しており、徘徊している魔物は主にその他にゴブリンやオーク。その他低レベルの炎の魔獣ヘルハウンドなどだった。中層10階は40~60程度のレベルの魔物が徘徊している。碧焔と名の付く通り主に炎属性の魔物がメインだ
(ここから下の階層は、影魔法は使い物にならないな)
強力な火の魔法はそれだけ光量がすさまじくどれだけ強固に魔力を練って影魔法を行使しても打ち消されてしまうのだ
「よし、行こッ!」
「ヴォンッ!」
下層は文字通りレベルが違った。先ほど倒したサラマンドラゴ級の魔物は当たり前のように迷宮を徘徊しており、先ほどの様に周到な準備と奇襲が使えない。しかし、奴らには明確な弱点が存在する
「このサラマンドラゴの視野は広いけど穴はある。ワンちゃんの強化した腕で地面を叩いて土煙で煙幕を作って、その後地面全域に影を展開。影の中を移動し、腹部を切り裂いてッ!」
「ヴォンッ!」
比呂の指示通りに動き下層での初戦を難なく切り抜けた成瀬はその余韻に浸ることも休憩を取る暇すら与えられることなく襲い掛かってくる魔物を倒し続けるのだった
無限に感じられた襲い掛かってくる魔物達もいなくなり、成瀬と比呂は少し休憩することにした
「ケホッケホッ……流石にこれだけ魔物がいるとしんどいね」
「ワフゥ~……」
指示を出し続けた所為で少し喉を傷めてしまったようで、かなり声がかすれていた。成瀬も身体的な疲れは超回復で癒せるが精神的な疲労はどうしても溜まり続ける一方だ。影袋から水を取り出し、比呂へ渡す
「ありがとう」
それを受け取った比呂は幸せそうに水を飲む
碧焔の名にふさわしくこの迷宮内もかなり高い温度となっており、かなりきつめの蒸し風呂状態だ。
(あまり長引かせると比呂さんが倒れかねん。かといって影狼では一瞬で消されるのがオチか………)
影魔法を使わない最短の迷宮攻略法を考えるが中層より下の地図は地上には出回っておらず、少しずつ地図を書きながら道を進むしかないのだ。しかし、保険もしっかり用意している。もし、比呂が限界だと成瀬が判断した場合影を渡り地上へ帰還する。その為のマーキングも施しており、いつでも帰ることが出来る。
「はぁ、はぁ、はぁ………」
時間と共に比呂はあまりしゃべらなくなり、息も上がってきている。顔も青白くなってきており、目も虚ろだ。総じてこれ以上の潜行は不可能だと判断した成瀬は帰還することにした。
碧焔の迷宮31階層攻略中…………




