第23話 .........................へ?
40階層。それはこれまでの階層とは異なり別れ道がなくただの一本の道だった。罠を警戒して何匹か影狼を先行させてみた。その結果わかったことがある。それは……
(どうやらこの階層が最後みたいだな)
一本道の最奥。そこには装飾が施された重厚な扉が置かれていた。
ガコンッ……ギギギィィィ
長い年月使われることのなかった扉は錆びつき、開けるだけでもかなりの力が必要あった。そして、その扉が開かれた先にいたのは………
(これはッ………)
全身の毛が逆立つのが感覚的にわかる。『格が違う』と、本能が全力で警報を鳴らす
(今の俺のレベルは79。ステータスも相応に上昇している。今ならサラマンドラゴ程度の炎なら影魔法で対応できるだろう。でも、コイツは次元が違い過ぎるッ!)
「グオォォォォッ!」
打撃、斬撃、果ては魔法攻撃。すべての攻撃を無に帰す世界で2番目に堅いとされる硬度の鱗と羽ばたくだけで竜巻を発生させる大きな翼。そして、何より先ほど戦った炎の精霊など比較にならない程の炎のブレスを放ち、生ける天災と呼ばれる魔物
「ドラゴンモ……きゃッ?!」
(いや、無理だろコレェェッッ!)
間近で見るドラゴンに腰を抜かしてしまい、動けなくなってしまった比呂を影の中に押し込んだ成瀬は急ぎ回れ右しようとする。しかし、迷宮は最奥までやってきた者を逃がす気はないらしい
ガチャンッ
重厚な扉はひとりでに閉まり、成瀬と比呂を閉じ込める。『ならば』と、成瀬は影移動を使い地上へ出ようとするが技が上手く発動しない。魔法自体は発動しているはずなのに何か得体の知れない力によって透明な膜のようなもので遮られているような感覚だ
(くそっ!やられた)
扉は開かず緊急離脱用の影移動も使えない。それが意味することとは………
“殺す”か“殺されるか”
という事になる
普段の戦闘において成瀬はあまり自分の“死”について身近に感じることは少ない。先ほどまでの戦闘でもそうだ。強い敵ではあったがそいつらによって己の生命が脅かされることはないと思っていた。
しかし、今成瀬の前に立ちふさがるこの生物は安易に自身の命に鎌をかけるどころかそのまま引き裂くことが出来る。
『ワンちゃん!』
広瀬の声が影を伝って、成瀬へと伝わってくる。その瞬間、全身に寒気が走る。咄嗟に影の中へ入り込みこの空間内の別の場所へと移動する………と、同時に凄まじい衝撃音が響く。先ほどまで成瀬がいた場所が居た場所は高温の何かがぶつかり深く抉り取られており、その表面は真っ黒に焦げていた
(あっぶねッ!……今の何?魔法ッ!?とにかく比呂さんありがとぉぉッ)
紙一重の回避に冷や汗が止めどなく流れる
ドラゴンはそこら辺の魔物より知性というものを有しており、魔法を使用することが出来る。サラマンドラゴの様にただブレスを放つだけではなくそこに指向性を持たせることが出来る他に、人間であれば何十人の魔法使いが長い詠唱と予め何重にも描いた魔法陣を必要ようとする大魔法を事も無げに一瞬で発動してしまうと言われている
ギャオォォォッ!
(グッ……クソッ!ただの咆哮でこの威力かよ)
吹き飛ばされそうになる体を影で地面に縛り付ける。さらに、成瀬はある違和感に気付く
(な、なんか力が抜ける……)
----------------------------
名前:ワンちゃん
種族:ブラックフェンリル
魔法適性《影》
LV:79
HP:790/790
MP:671/680
筋力:1040《416⤵》
防御力:976《390⤵》
俊敏力:894《358⤵》
精神力:1700
固有スキル
『真実の嗅覚』『超回復』
スキル
『影貯蔵』『身体超強化』『障壁』
----------------------------------------------------
(これはステータス値減少ッ!?3……いや、4割は持ってかれたかッ!)
4割減のステータスに魔法も物理も効かない鱗。正直言って負け確もいいところだ。しかし、それらの要素だけでは成瀬がこの化け物に立ち向かわない理由にはならない。
(最悪泥試合だ。どっちが早く音を上げる勝負だ。行けッ影狼たち!)
数十と呼び出した影たちと共にドラゴンへと突進してゆく。しかし、その時、影の中から再度成瀬を呼ぶ声が聞こえる
『ワンちゃんッ!アレはドラゴンモドキ……見た目はドラゴンだけどワンちゃんの攻撃力でも十分通じるよッ!』
(…………へ?)
比呂の言った言葉に一瞬思考が止まり、体が固まる
(い、いや、さっきの咆哮すごかったじゃん………へ、えッ!?)
比呂の言葉を信じないわけではないがそれでも目の前に立ちはだかる20m級の化け物を目の前にするととても信じられない。しかし、その疑念は次の瞬間驚愕へと変わる
襲い掛かる影狼たちを薙ぎ払おうと攻撃を仕掛けてくるがその攻撃を潜り抜け、影狼たちは影魔法へと変化する。
ギャオォォォンッ!?
影魔法『影棘』
放った影狼たちは近距離で影棘へと変化し、強固だと思われていたその鱗を貫通し、ドラゴンモドキへダメージを与える
(うぉッ!マジだ……)
目の前にいる魔物が脅威ではないと判断した成瀬は影から比呂を出す
「ね?言ったでしょ。ワンちゃんでも倒せるって、でも油断は駄目だよ。ステータス値自体は今のワンちゃんより上だからね。超強化のスキルを使って体制を整えられる前に倒すよ」
「ウォンッ!」
先ほどまで強大に感じられていた目の前の魔物が急に小さく感じてしまう。
(ドラゴンモドキ。さっきの影狼たちの攻撃以降強大に感じていた存在感が無くなってる。誤認させるスキルか?)
スキルにより強化された身体能力による強力な攻撃。それが一撃だけであればドラゴンモドキも耐えられたであろう。しかし、成瀬は影から影を渡り縦横無尽にこの空間内を移動する。一撃を耐え、反撃を試みるモドキもその動きには対応しきれない。
(これで終わりだッ!影の手『肥大化』)
影をその手に纏わせ、本来の手の大きさの倍以上へと変化させる
(お手ッ!)
その後、アナウンスが脳内に流れドラゴンモドキが死んだことを確認する。ドラゴンモドキを倒したことによりレベルが3も上がった
「あとはこの迷宮核を壊せば終わりだね」
「ヴォンッ!」
成瀬は身体強化5倍を発動させた前足で思いっきり迷宮核を粉砕した
迷宮核を失い、迷宮を維持する為の魔力供給がされなくなった碧焔の迷宮は徐々に崩壊をはじめた迷宮は、40階層から順に崩壊していき、夕方を過ぎるころには迷宮の入り口も完全に消え去ってしまうのだった
「よし、帰ろっか」
「ウォンッ!」
そうして、迷宮が完全に消え去るのを確認した二人は碧焔の迷宮跡を後にし、町へ帰るのだった
ドラゴンモドキ
LV,89
魔法適性《炎》
筋力:1400
防御力:1340
俊敏力:780
精神力:821
固有スキル
『咆哮』(自身よりステータス値が劣っている場合、威圧とステータス減少を与えることが出来る。ただし、精神力が高い相手には効きづらい)
スキル
『魔法効果倍増』(文字通り魔法の効果を倍増させる)
『飛行』(飛ぶことができる)
『地を這うトカゲ』(地上にいる間はステータス値が1.3倍になる)




