第2話(こ、子犬だ..........)
(はて……俺は確か文芸部の部室で昨日発売されたばかりの新作ライトノベルを読んでいて、そのまま寝落ちしたはずなんだけど?まさか誘拐?校内で?いや、ないだろう。そもそも顔面も知力も平凡以下の俺を誘拐する意味って何?だとすればここはどこだ?)
眼を覚まし、成瀬が見た光景。それは、どこまでも続くかのような真っ白い空間。そんな空間で成瀬はプチパニックに陥り、ひたすら自問自答していたのだった。しかし、そんな時だった
―落ち着いてください。幼子よ
(ッ⁉)
それは何もかもを見透かしたかのような透き通るような声だった。それを聞いた瞬間、成瀬の心臓が委縮する感覚がした。そして、本能が悟る。この声の主は生物として絶対的な強者であり、楯突こうものなら一瞬で消されかねない。そんな存在なのだと
―そんなに怖がらないでください。私はその程度であなたを消滅させるほど浅慮ではありません
(か、考えがッ⁉)
―すいませんね。貴方もすでに理解していると思いますが私は神と呼ばれる存在。人の心など手に取るように分かってしまうのです。
(じゃ、じゃあ神様。ここは一体何なんですか?なんで僕はこんなところに?部室にはもう一人同級生がいたはずですが?彼女も一緒なんですか⁉)
―落ち着いてください。質問には一つずつお答えしましょう。まず、ここは神界。神である私の空間です。そして、あなたがここにいる理由は先ほどあなたが申したもう一人の転移者。比呂咲樹が関係しています。
(は、ハァ………ハァァァァッ⁉)
その後、自称神の話をまとめるとこうだった
比呂の遠いご先祖には昔世界を救った勇者が居て、そいつは地球と異世界とを行き来することが出来たんだと。で、地球に来た時、思い人が出来て地球で永住を決意したらしい。その時、神と約束したらしい。しかもその約束は血の契約。血約というものを結んだらしい。その内容は子々孫々に受け継がれるものであり、その有事の際はこれに基づき異世界の危機を救わないといけない。今回がその有事らしく、現在最もその異世界から来たご先祖様の血を濃く受け継いだ比呂さんが選ばれたわけなんだけど、濃いと言っても力なんてあったものじゃなかったらしい。なんなら異世界の勇者となんの力も持たない人間との血が混ざったいびつな魂の構造をしており、とても不安定極まりない物らしい。まぁそうだよな。勉強はできるけど、運動能力なんて皆無に等しいし。そんなわけで救済措置を施すことになったらしい。比呂さんの周囲の人間で最も魂の強い人間を一人同行させることにしたらしい。そして、その一人というのが………
(俺ってことですかいな)
―もちろん、あなたの魂であればいくつかスキルを譲渡しても魂の形を保っていられるでしょう。神界の規定に基づき、あまり下界に干渉はできないのですが、今回は例外中の例外。多少は問題ないと判断しました。できうる限りのサポートをします。まずは貴方に戦うためのスキルと魔法属性を与えます。スキルは最大で5個まで。魔法属性は1つまでなら可能でしょう
(なるほど……ちなみにあちらの世界で死んだ場合ってどうなりますか?)
―あちらの世界で死んだ場合は、地球での存在ごと消滅し、あなた方はいなかったという事になります
(時間の流れはどうなんですか?止まっていてくれますか?)
―いえ、流石に止めることはできません。ただし限りなく遅くすることは可能です。
(その比率は?)
―あちらでの一年は地球での1時間です。
(なるほど……わかりました。。では、もう一つ。あちらの世界では言葉は通じますか?)
―遥か昔であれば種族ごとに言語が異なっていましたが、現在では全種族共通言語のみを操ります。勿論お二人とも扱えるようにしておきます。
(そうですか、ありがとうございます)
その後成瀬は5つのスキルと1つの魔法適性を選んだ
(そう言えば、比呂さんにもスキルとか与えた方が良かったんじゃないですか?そうすれば俺みたいな救済措置要らなかったんじゃ)
―先ほども申し上げた通り、彼女の魂の形はとても歪で不安定です。そんな彼女にスキルや魔法適性を付与しようものなら魂は崩壊してしまいます。今、彼女は固有スキルを1つ。通常スキルを2つ。魔法1つ所有しています。しかし、これは天性のもの。勇者の血を半端に受け継いだが故の物です。その効果も叉微々たるものでしかありません。
(なるほど……理解しました。)
―では、10秒後に転送を始めます。10、9、8、7……
カウントが始まった。もう後戻りはできない。比呂さんには傷1つ付けさせない。そんなことしてみろ。瑠璃や大翔に何されるか………
―あ、そうでした。向こうではあなたは人ではなく彼女の召喚獣として働いていただきます。スキルもそれに合わせて少し変化させています。勿論あなたが彼女の召喚獣であることは伝えていません。ただ一つ。この世界を魔王から救ってほしいとだけ
(は⁉)
―その方があなたにとっても好都合だと判断しました。あぁ………スキルに関しては、本質は変わらないのでご心配なく。頑張ってください
(はいッッッ⁉ちょッ……)
最後に放たれた爆弾に物申そうとした瞬間、レオンの視界は暗転してしまうのだった
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視界が暗転してから体感にして約数秒。一変して視界は、一気に明るくなる。そのギャップに成瀬の視界は真っ白になってしまう。
「どうしたの?急に呼び出されて怖かったね。私は怖くないよぉ~」
しかし、聴覚はしっかり機能するらしい。比呂さんの声が聞こえてくる。しかし、何故だろう。それは同級生にかけるような言葉ではなかった。
そこで思い出す。神が言った最後の言葉。恐らく今、俺の体は成瀬真一ではない何かなのだろう
眼が周囲の明るさに慣れてきたとき。目を開け、最初に目に映ったのは水玉模様の入った白い何かだった。
『なんだ?』その疑問は視界を上に挙げた時理解してしまった
(パンツッ⁉)
しゃがみ込み、手を成瀬の視線の下まで下げて、伸ばしてくる比呂
(アホかッ⁉同級生の男子に何やってんだッ!……ってか、この視線の角度はまずいッ!見えちゃう!スカートの中見えちゃうッ!)
目を瞑り、その上からさらに手を覆いかぶせる。その瞬間だった。成瀬は自身の体が持ち上げられたと感じる。誰に?……と、考える。
(いやいや、比呂さんはありえないだろ。だってあの比呂さんだよ?)
思い出すのは身体能力、運動神経皆無な天然系お嬢様。だが、目を開けるとそこには………
「フフッ、こんなに可愛い子が私の召喚獣だなんて」
(え、待って?なんて?召喚獣?確かにお嬢様とは言ったけど急に女王様になれなんて言ってないよ⁉)
体重80㎏近い男子高校生を軽々と持ち上げ、召喚獣などと語る友人にツッコみが追い付かない。しかし、その時比呂の瞳に映った自身の姿が目に入る。そこに映っていたのは……
(こ、子犬だ………)
絶望の鐘が成瀬の頭に響き渡る。




