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勇者様、お守りします  作者: 神無月 瑠奈
第1章

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19/23

第19話 (君が望むのならッ)

それはマンティコアを討伐した成瀬は、その死体を影袋に収納し、町へ戻る道中のことだった。そこに至るまでの道のりにいた魔獣どもを片っ端から捻り潰しながら帰っていると………


「ワンちゃんッ!なるべく早くお願い!」

(早く戻らないと。マンティコアは倒したけど召喚された魔物は戻らない。つまり、今も皆は戦い続けてる)


「ヴォンッ!」

(そんなに早く帰りたいなら……)


心なしか焦りを見せる比呂に『ならば……』と勢いをつけて一本の木へと突進する


「え、えッ!?ちょッぶつかッ………」


木に衝突する瞬間目を閉じ、衝撃に備えようとする。しかし、身構えた衝撃は中々来ない。恐る恐る目を開けるとそこには


「え、うそ………」


それはなんと数十キロと離れ、目を閉じた一瞬ではたどり着けない場所。そう、ペンチェルの町だ


「もしかして影を通じた距離の省略が出来るの?」

「ヴォンッ」


驚きを隠せずにいる比呂に得意げに吠える


「すごいッ!すごいよ。ワンちゃんはッ!そんなことまでできるなんてッ」


呆気に取られつつも『すごい』と頭をワシャワシャしてくれる


「って、そんなことしてる場合じゃないよね………お願いできる?」

「ヴォンッ!」(君が望むのならッ)


レベルアップによって加算されたステータス値は、それ以前に造った影狼には影響しない。

故に今残っている影狼たちはレベル50前後のステータスしか持ち合わせていない。着実に減ってはいるがそれでも魔物の数は数千にも及ぶ。戦況は依然振りのまま。ただし、ソレはこの瞬間までの話だ


(生まれろ。新たな影狼たちッ!)

「アオォォォォォォォンッ!」


その遠吠えは戦場のいたるところに響き、成瀬が帰ってきたことを知らせると同時にアップデートされた新たな影狼を誕生させる。


「おせぇよッ……野郎共ッ!俺たちの英雄がご帰還だッ!最後まで踏ん張りやがれッ!」

「「「「「「「「「「オオオオォォォォォッ!!!!」」」」」」」」」」」


魔物の血肉によって澱んだいた空気を吹き飛ばす程の生気が戦場に満ち溢れるのだった




「それでは皆の衆ッ!今日は俺の奢りだッ!飲んで食いまくれェェッ!」

「「「「「「シャアァァァァァッ!」」」」」」


結局魔物を倒しきったのは日が暮れ始めたころだった。その後、町への被害を含め野に山の様に積み上げられた魔物の死骸の処理にかなりの時間を要し、こうして皆が飲み始めたのは既に日が変わろうかという時間だった。結局のところ致命的な1打は防げたもののそれでも町には多少の被害が出ており、復旧作業もかなりかかるとのこと。しかし、今回はそんなことよりも人的被害がほとんどなかったことが奇跡に等しいと皆が口をそろえて言う。今回の様な大規模な迷宮崩壊が起こるとよくて数百人規模で死者が出る。最悪は町の住民ごと魔獣どもの餌となってしまう。しかし、今回は、ケガ人はいるものの死者は0。町の被害も軽微なもので収まるというまさに奇跡といっても過言ではないのだ。


「いやぁぁ~、俺はあの嬢ちゃんはやる子だと思ったね」

「嘘つけッお前あの嬢ちゃんに迷宮主を倒させるって支部長が言った時めちゃくちゃ言ってたじゃねぇか」

「なんにしてもだッ!今回の功労者は誰がなんと言おうともあの嬢ちゃんとワン公だなッ!」

「嬢ちゃんとワン公にかんぱぁぁいッ!」

「「「「「かんぱぁぁぁいッ!」」」」」


そんな既に出来上がった野郎どもを支部長室の窓から眺め、長かった一日を振り返る支部長は対照的にとてもゲッソリとしていた。その原因は比呂からの報告だった


「そんなことになっていたとは……魔獣によって魔獣を召喚なんて聞いたことがない。しかも、魔獣と迷宮核との間に魔力の繋がり?通りであんな小さな迷宮からあれだけの規模の魔獣が出てくると思った……しかもその繋がりを絶っただと?そもそも魔力の流れなんてものは見えるものじゃねぇんだ。それをあまつさえ断ち切っただと?人の言語を操る知能の高いブラックフェンリルを使役しているんだから只者じゃねえとは思っていたが想像以上だ」


これまでの人生で計り知れないと感じたものはいくつもあった。しかし、それらを凌ぐほどの得体の知れない何かにへラクールは心底頭を悩ませるのだった



・・・・・・・・・・・・・・


迷宮崩壊から3日が経とうとしていた。未だに町の至る所に迷宮崩壊の影響が見かけられる。しかし、それでも以前のような活気は戻りつつあり、今日も比呂は家を失った人たちに炊き出しのお手伝いをしていた。成瀬も比呂の願いで復旧作業に従事していた。そんな昼下がりのことだ。支部長から呼び出されているとギルドの職員から連絡が入った。


「なんだろ……」

「ヴォフ?」


首をかしげながらも比呂と成瀬は支部長室へと向かった



コンコンコン


「入れ……おぉ、サキか。すまんな、この町の英雄なのに炊き出しの手伝いまでさせちまって」

「いえ、皆さんのお役に立てるのであればそれでいいんです。それよりも私を呼び出した要件は何ですか?」

「それなんだが、これを師匠に届けてほしい」


そう言って一通の手紙を差し出す。


「以前お前が届けてくれた手紙の返事だ。今回の件も含めてお前の活躍について書いておいた。本来であればこのギルドで諸々の手続きをしてやりたいのだが、見ての通りそれどころじゃない。だから討伐した魔物を含めあちらで処理してもらうことにした。」

「わかりました。では、今日の夕方にでもカーティアに戻ります」

「おいおい、それじゃあすぐに夜になっちまうだろ」

「いえ、この子にはマークした影と影の間を一瞬で移動する能力があります。すでにカーティアにもマーキングしているようなのですぐにでもあちらへ行くことが出来ます」


そう、迷宮崩壊の終息後改めて成瀬の能力について比呂は成瀬ことワンちゃんに何が出来るのか尋ねたのだ。その際『どうせなら……』と喋れる事と影牢に捉えているゴミども以外ことについて実演で答えたのだ


「その能力のおかげでマンティコア討伐後すぐにこちらへ駆けつけることが出来たんです」

「………そ、そうだったのか」


またしても初耳な規格外の能力にヘラクールは頭を抱えるのだった





「暇が出来ればいつでも来いよ」

「そうですね。この町の影にはすでにこの子のマーキングが施されていますからいつでも行けますし、今度来るときは支部長と副支部長も一緒に連れてきますね」

「おう、その時は歓迎するぜ」

「よろしくお願いますッ」


比呂と成瀬が帰るとなれば町の住民は皆見送りをしてくれただろう。なにせ二人はこの町にとっての英雄なのだから。しかし、今は自身の見送りよりも、町の復興作業に集中してほしいという想いから比呂は何も言わずに帰ることに決めたのだ。


「じゃあな!」

「はい、また機会があれば」


こしてペンチェルの町を去るのだった


ここで第一章は終了となります。第二章は8/24から開始します。

ここまで読んでくださった皆さん。本当にありがとうございます( ;∀;)

まだまだこの物語は続きます。良ければ高評価とブックマークよろしくお願いします('◇')ゞ


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