第18話 (潰れて……死ねッ!)
「召喚するには召喚する対象と同等以上の魔力が必要なの。あなたを初めて召喚した時、私も少し魔力を消費したの。でも、あのマンティコアはその消費が一切見られない。つまり、あのマンティコアはこのダンジョンの核と魔力的な回路が繋がってるの。だから召喚魔法をノーリスク使えるの」
(なるほど……つまりアイツを殺さずともその繋がりさえ絶ってしまえばこの件は済むという事ね。でも、その繋がりはどこに?)
魔力的な繋がり。それを見ることは本来できることではない。しかし、今比呂の瞳はそれを確実に捉えている。
「そっか、ワンちゃんにはこれが視えないんだ。ならワンちゃんはあの魔物の足止めをお願い。勿論倒せるならそれが最善の手ではあるけど………魔物も人間も魔力が枯渇すれば動けなくなる。それを狙うよ」
「ヴォンッ!」(了解ッ!)
方針は決まった。あとは行動に移すだけ。しかし、成瀬には不安要素があった。それは比呂がどうしようもないほどの運動音痴で不器用という事だ。それにもし戦闘の余波で岩の破片などがとんだらと思うとそれどころじゃない。なので………
(念の為に……『影武者』と『影刀』)
「ッ!?これは……ワンちゃん?」
影を甲冑状に形作り比呂の体に纏わせ、その腰には比呂の腰程ある刀が携えられていた
「ありがとう。よし、行こっか」
「ヴォン」
成瀬は影から地上へ浮かび上がるとそのままドームの中へ入り、マンティコアの前へ立ちはだかる
「#&%$+{%$#ッ!!!」
それはこの世のものとは思えない奇声。そして、その奇声を上げると同時に召喚されたドーム内にいる他の魔物がその照準を一斉に成瀬へ向け、襲い掛かってくる
(それも想定内ッ!)
「アオォォォォンッ!」
通常サイズに戻った成瀬は襲い掛かってくる魔物の数に対抗するように己の分身を影から表出させる
「ヴォンッ!」(行けッ!)
(――ッ!)
成瀬の指示で一斉に動き始めたそれらはマンティコアが召喚した魔物達とぶつかるのだった
「よし、ワンちゃんは上手くやってるみたいね………私もッ」
ドームの端を影の中から移動する比呂は横から聞こえる戦闘音に耳を澄ませ、己の召喚獣が指示通りの行動していることを確認し、自分も計画を全うすべく動き始める
(いつもより体が軽い………ワンちゃんのこの魔法のお陰かな?これならッ)
通常の人が視るこの景色を見るとドーム状の広い空間。一面なんの変哲もない岩ばかり。しかし、今比呂が視ているこの景色はこの迷宮全体を血液の様に駆け巡る魔力そのものであり、それを見ることは本来できない。そして、その魔力は一見不規則なように見えてその実ある一点を通って迷宮全体に魔力を供給している。その大元こそ
「見つけた」
人間の頭一つ分程あるその大きな8面体こそがこの迷宮の核だ
「綺麗………」
赤紫色に輝くそれに思わず見とれてしまう。しかし、成瀬とマンティコアの戦闘の余波で引き戻される
「じゃないッ……早くこの核とマンティコアとのつながりを絶たなきゃ」
眼を凝らし、更に深く入り込む。すると蜘蛛の糸程のとてもか細い一本の糸をその瞳が捉える
「凄い魔力………」
一見か細く手で触れてしまえば切れそうに見えるその糸に内包された莫大な魔力に比呂は慄く。
(でも、内包された魔力だけならこの刀も負けてない)
そう、成瀬が比呂に持たせたこの刀と甲冑には成瀬が込められるだけの魔力がこれでもかと練り込まれている。それはまさに今の迷宮核とマンティコアと同じ状態
(それじゃあ………)
繋がりを確認した比呂は影の中から浮上し、刀を振り上げる
『ッ!?』
急に表れた謎の人間。それに気づいたマンティコアは激しく動揺する。ど、同時に疑念を抱く。『あの人間は何をしているのだ?』と………
そう、この繋がりは当事者であっても見ることは叶わないのだ
「えいッ!」
なんとも間抜けな掛け声とともに振り下ろされたその刀は勢いのままに核とマンティコアとのつながりを一刀両断するのだった
「きゃぁっ!?」
『ッ!?』
「ッ!?」(な、なんだッ!?)
その瞬間繋がりを通して流れ込んでいた膨大な魔力が一気にとおりみちを失い周囲に放出される。その衝撃は凄まじく比呂は吹き飛ばされ、岩盤に激突しそうになる
(危ないッ!)
伸ばした影の手が紙一重で岩盤とぶつかる寸前だった比呂を救い上げる
「あ、ありがとう……ワンちゃん」
衝撃の影響で放心状態の比呂を再び影の表層へ沈ませる。
(さぁ、第二ラウンドだッ!)
大多数の魔獣には知性と呼べるものがない。知性を持つとされるのは主に2級以上とされており、それ以下の魔物で観測された例は発表されていない。そして、マンティコアの等級は4級。己と迷宮核に繋がりがあったこともそれを切られてしまったことにも気づけない。そして、今その繋がりを絶たれて尚召喚魔法を行使し続けた代償
(ようやく魔力が尽きたかッこの人面野郎ッ!身体超強化5倍ッ!)
それまでは召喚された魔獣が邪魔で届かなかった攻撃が今初めて入る
『$#“$&%&%#$ッ!?』
初めてその身に届く攻撃に苦しみ悲鳴を上げる。
(痛いよなぁ。お前が散々雑魚を召喚しまくってくれたから沢山経験値を稼がせてもらったぜッ!)
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名前:ワンちゃん
種族:ブラックフェンリル
魔法適性《影》
LV:61
HP:610/610
MP:270 /270
筋力:780
防御力:592
俊敏力:498
精神力:1481
固有スキル
『真実の嗅覚』『超回復』
スキル
『影貯蔵』『身体超強化』『障壁』
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つまり………
(筋力3900だッ!)
身体超強化はレベルが上がり、ステータスが上昇する毎にその効果が顕著に表れる。しかし、纏まって魔物が現れる状況は少なくレベル上げに難航していた。しかし、この状況でソレは解決したと言っていい。ペンチェルの町に置いてきた影狼を加え、この空間での戦いそれらを倒すことであられた経験値は莫大だ。
(潰れて……死ねッ!)
影によって巨大化された前足はマンティコアすら容易に覆いつくす程だ。そして、それによって放たれる一撃は断じて見せかけなどではない。つまり………
($$%&‘&%$&%?*~~~~~ッ!!!?)
【マンティコアの絶命を感知しました。個体名『ワンちゃん』は経験値を獲得しました。レベルが5上昇しました。各種ステータスが上昇しました。】
マンティコアを討伐したことを知らせるアナウンスが成瀬の脳内に響き渡る
(よし、大元は絶った。あとは……)
「大型の魔物はワン公の子分がなんとかしてくれるッ!お前たちは小型の魔物を狙えッ!」
「複数で魔物を囲い込むんだッ!数的有利を守れッ!」
「確実に数は減ってるッ!」
「あのワン公と嬢ちゃんが迷宮核を破壊してくれるまで耐え続けろッ!」
戦況は未だ不利。しかし、誰も戦意を失っていない。それは大型の魔物を何匹も葬り致命的な1打を凌ぎ続ける成瀬の影狼のおかげである
(しかし、これではじり貧だッ……早くしてくれよ。嬢ちゃん、ワン公)




