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勇者様、お守りします  作者: 神無月 瑠奈
第1章

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第17話 “物知り”


後方の冒険者たちが魔物と接敵し始めてからどのくらい経っただろう。成瀬は体を元のサイズまで戻し、身体超強化を発動させた状態で魔物の大群の中へ突っ込む。それは崩壊した迷宮への最短距離。成瀬がその巨体で突っ込むだけで物凄い衝撃がその周辺に広がる。その衝撃だけで雑魚は死ぬ。因みに比呂はというと、成瀬の背中は物凄い衝撃を受けるので影狼の背中に乗って成瀬の後ろを移動している。勿論比呂を囲う形で影狼を6体配置している。


魔物を殺したというアナウンスが永遠と脳内に響き渡る。


「あぁ~~もうッ!どれだけ迷宮から溢れ出してるのッ!?これじゃあキリが無い」


実際比呂の言う通りどれだけ奥に進もうが魔物は一切少なくなる気配がない。


(これが迷宮崩壊……恐ろしい。急がないと俺たちが迷宮の主を殺す前にペンチェルの皆が死んじまうなッ)


焦る気持ちとは裏腹に時間は刻一刻と過ぎる。比呂に負担がかからない速度で走ること40分程。ようやくお目当ての迷宮を目視することが出来た。しかし、その入り口からは絶えず魔獣が溢れ出す。そのどれも高原にはいなかった魔物ばかりだ


「あの中にどうやって入ろっか………」


他の入り口があるならばそこから入りたいものだが迷宮の入り口は一つしかない。しかし、その入り口は魔物でギチギチ詰め。中に入る余地などなかった…………普通であるならば


(下が空いてるじゃん)


「ヴォンッ」

「どうしたの?」


成瀬は前足で比呂の影を踏む。


「?………ッ!?」


その瞬間堅い地面だったそれはどんどん柔らかくなり、足が沈んでいくではないか


「こッ、これ何ッ!?」


驚く比呂とは対極的に成瀬は冷静にその中に潜っていく。


「これ……もしかして影の中?」


比呂と成瀬が沈んだ先………それは成瀬が変化させた影だ。成瀬が普段魔物の死体を収納する影袋や生野盗やあの馬鹿どもを閉じ込める影牢は真っ黒な影の中でその中では光源が一切存在しない深層だ。しかし、ここは見上げれば地上を見ることが出来る表層。その為、息もできるので窒息の心配はない


迷宮の中は文字通り迷いの宮。幾重にも枝分かれした道が存在し、本来迷宮を攻略する際は地図を持ち、マッピングしながら進むのが鉄則。ギリシャ神話ではアリアドネが英雄に渡した糸を用いることで攻略に成功したと描かれている。しかし、今回に限ってはその必要はないと判断した。その理由は………


(ボスモンスターに至る道を探せ)

((((ッ!))))


影の中で放った40体の影狼が迷宮を完全自動で攻略し始める。影狼が通った道が成瀬の脳内で記録される。その情報量は膨大で人間がこれを使ったならば10秒と経たず脳細胞が壊れることは間違いない。しかし、成瀬は魔獣……それも神によって再構成された準1級の魔獣。すでにその脳構造は人間とは一線を画しているのだった

影狼を放ってから5分経った頃だった


(見つけた……)


「ヴォフ……」

「見つけたんだ……よし、行こう」

「ヴォンッ!」





階段を上り下りし、影の中を進むこと30分。ボスモンスターのいる場所の手前までたどり着いた。そこは半球のドーム状の広場となっており、その中心には全体像はライオンのくせに顔は人間。尾はサソリのキメラ魔獣は両サイドに等身サイズ魔法陣を展開している。そして、そこから魔獣が続々と現れ続けるのを確認する


「マン、ティコア………あのモンスターはマンティコアって名前みたい。『魔獣召喚』っていう固有スキルを持ってる。アレがいるとどれだけ倒しても意味がない。早く倒さないとッ」


小声でスキル『鑑定』で覗き見た情報を成瀬に伝える


(魔獣召喚……なるほど。無限に魔獣が湧き出るのはそれが原因か。つまり、本来の迷宮崩壊はこんなに大規模ではないんだな)


「ワンちゃん……あのマンティコアって魔獣かなり強いから注意してね。多分君の身体強化を全力で使ってようやく同じくらいだから」

「ッ!?」(おい、マジかよッ!………なら、まずは影魔法で別方向に囮を撒いて、そっちに気をつられた隙を超強化5倍で叩くか?いや、あの尻尾の蛇がどの程度機能するかが未知数すぎるアレとも視界を共有しているなら死角はないも同然……どうしたもんだか)


奇襲の策を考えるが良い作戦が思いつかない。無い頭をひねり作戦を考える成瀬であったが………


「…………」


そんな攻めあぐねる成瀬を見ていた比呂は………


「多分大丈夫だと思う。ワンちゃんなら勝てると思う」

「………ッ?」


比呂の言葉は気休めなどではない。そこには確信的なものがあり、比呂は目を見開き、思考する


(あ、入った………)


()()()


それが何を意味するのかを知っているのは地球でも数少ない。恐らく文芸部の仲間と比呂の家族ぐらいだろう


「召喚魔法は本来魔力を消費して魔獣を召喚する。それは魔獣とて同じ。でも、あのマンティコアはそれが見られない。つまりどこかから魔力の供給を得ているはず………」


(おぉ~相変わらず物知りだなぁ………)


“物知り”


それだけでは済まされないことが起きている。しかし、それを理解でき得る人間はどこにもいない


「見える……繋がりが」


(スッゴッ!今まで見たことないくらい碧くなってる)


比呂咲樹の瞳は通常時黒に近い藍色なのだが、このような状態に入った時どんどんその色が明るく輝きだすのだ。これまでに成瀬がそんな状態の比呂を見たのは2回だけ。しかし、そのどれにも勝るほど明るく綺麗な蒼へと変化したその瞳はどこか不気味さを帯びていた


(…………)


比呂の変化した様相に思わず成瀬の尻尾が垂れ下がるのだった


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