第12話(居た堪れねぇぇ~~)
野盗……それは山賊ともいわれ定住せずに山や野原をテリトリーとし、旅人や村を襲い金品を強奪。あるいは襲われたのが女性であればゴブリン同様その意思に関係なく強姦される。実質ゴブリン=野盗と言っても過言でもない。なんなら知性を兼ね備えている分野盗の方がたちが悪い
(おいおい、あいつがフラグなんて立てるから……)
「キャッキャッキャッ!上玉の嬢ちゃんだぜ」
「今日はツイてるなぁ」
「あぁ、だが、この嬢ちゃんは商品だからな?今夜はほどほどにしろよッ!」
下卑た笑みを浮かべ、下品な皮を面前で繰り広げるゴミ屑ども
「ヒッ……ど、どうしよう。これ盗賊ってやつだよね」
比呂が目の前のゴミ屑どもを見て後退る。しかし、いつの間にか包囲されていた。密着している比呂が震えているのが分かる。
(どいつもこいつも下衆ばかり。俺の友人をこんなに怖がらせたんだ。しっかり落とし前つけてやるッ)
「グォォォォォッッ!!」
その瞬間、狩るものと狩られるものとが逆転する
「う、うわァァァッ!」
「な、なんだ急にでかく成りやがったッ。ただの魔獣じゃなかったのかよッ!」
影と物体は密接な関係にあると言っていい。物体が変化すればその影もまた変化する。ならばその逆はどうなるか。己の影を吸収することで大きすぎる体を小さくすることもその逆も可能となる。先ほどまでは3mちょっとだったのが、全ての影を解放した成瀬は1軒家を見下ろせる程大きくなっていた。
「わっ!すごいッすごいよワンちゃんッ!!」
成瀬の背中に乗っていた比呂は、その大きさに比呂は思わず声を張る。その顔には先ほどまでの恐怖心は消えてた。
(野盗になったことを……いや、比呂さんを怖がらせたことを悔いて死に晒せ)
身体強化3倍を発動し地面にたたきつける
「うわわぁぁッ」
野盗の汚い悲鳴が野原に響く。それでもなお彼らが死んだことを証明するアナウンスが成瀬の脳内に鳴り響かない。
(チッ……しぶとい奴らめ。影魔法『影領域』)
地面を影が侵食する。それは半径500mまで広がる。
そして……
(『影棘』)
彼らが死んだことを証明するアナウンスが成瀬の頭の中に広がる
【個体名:ゴミ—。ガーズ。グーズー。ガーバー。ヌケマダ。ムーノーの絶命を感知しました。経験値を獲得しました。レベルが3上昇しました。各種ステータスが上昇しました。】
(お、あいつら合わせたらそれなりに強かったのか?それとも人間っていう種族自体が経験値の宝庫なのか?………って、俺この世界にきて初めて人を殺したのに何の感情も浮かばねぇ……心が体に引っ張られるってのは案外本当なのかもな)
その後すぐに影袋の中に野盗の死体を収納する。スプラッターが苦手な比呂がこの惨状を見ればかなりの確率でトラウマ確定案件だ
その後は日が暮れるまで元の大きさで走り続け、気が付けば日が暮れ始めていた。その間、魔物とは遭遇しなかった。……という言うよりも近づいてこなかった。
(まぁ、見逃してやらんのだが……)
移動中は常に影を吸収しつつ、その影を媒介とした影狼を放つ。目的は魔獣の排除と先ほどのような野盗が居れば先手を打って殺しておくこと。しかし、後者に関しては考え過ぎだったようで見当たらなかった。
「さぁッ!今日のご飯は干し肉と野菜を沢山挟んだバゲットパンと具沢山スープだよッ!」
比呂さんは影から取り出したものを器用に使い、SNSでバズってそうな映えるご飯を作った。しかも大量にだ
(おぉ~、大翔から聞いてたし写真でも何回も見せてもらってたけど実際にその過程を見てるとすごいな……)
おいしそうなそれを見ていると食事を必要としない体なのに食べてみたいという欲求が沸き上がる
「……1口食べてみる?」
それを見ていた比呂がバゲットパン千切って木皿に装ってくれた
「ワンッ!」(頂きますッ)
「召し上がれ」
頂きますを込めて吠えたそれに答えてくれる比呂。その顔は笑顔で満ち溢れていた
「いつも私を助けてくれてありがとうッ。もし……もし日本に帰れるときは君も一緒にいこう。私ね、私にはとても騒がしくて、いつも楽しそうで、普段はバカばっかりしてるのにほんの偶にカッコイイところを見せてくれる大好きな彼氏といつもはクールなのに私や他の友達が傷ついたら誰よりも怒り、心配してくれる大事で大切な大親友。そして、絶対何かしらでドジをするポンコツで、皆を笑わせてくれるムードメーカーがいるの……その人は私の彼氏とは大親友で、私の大親友である瑠璃を愛してやまない私の友達。他にも先輩思いの後輩たちや私の温かい家族がいるの。みんな優しいから君も絶対歓迎してくれるはずだよ」
頭を撫でながら言い聞かせてくる。それでそのポンコツな彼はというと………
(居た堪れねぇぇ~~)
ものすごぉ~く気まずくなるのだった
依頼2日目
朝食は簡単に昨日のスープとヤスラギで奥さんから貰ったジャムをパンにつけて食べた。皿などに付いた食べかすは影で掬い取った。
(影って便利ぃ~……)
その後、先に放った影狼の異変を感知しながら影狼が複数体倒されればその道を避け、できるだけ接敵しないように移動した。大まかな方向はピクティスから貰ったコンパスで確認できたのでそれに従いながら移動した。
その日は、成瀬の警戒があったおかげで昨日のような野盗との遭遇は起こらなかった。その日の夕ご飯はアメリカン風ハンバーグと野菜の盛り合わせだった。因みに使った肉はホーラビットさんだった
依頼3日目
この日は道中で野盗に襲われている旅の一団を発見した。比呂の鑑定スキルによると全員が10~15程度のレベルで、抜きんでたステータス値も危ないスキルも所有していないとのことだった。しかし、1人だけ統率と呼ばれるスキルを所持していた。成瀬としては面倒なのでスルーしても良かったが旅の一団が劣勢で、今にも殺されてしまいそうな状況だったのを見て比呂が『助けないと』とお人好しを発揮したので成瀬は加勢に回ることになった。野盗のレベルを見た時、全体的に護衛のレベルに劣るもののその差を帳消しにする人数差だった。更にそれを統率するスキル持ち。確かに厄介だ。しかし、成瀬はレベル・手勢の多さのどちらでも優位にある。であれば劣勢はひっくり返せる
(問題ない。影魔法『影狼』)
影狼の難点はスキルの使用が出来ないという事。しかし、影魔法を予め持たせておけば、その持たせた魔法を使用することが可能となるという特性を秘めていた。ストックできる魔法の数は2つ。それを踏まえ、影狼には影の密度を上げ、通常以上の重さと威力をかさ増しし、身体超強化の代用とした。もう一つは影袋だ。これがあれば影を通して影狼が倒した魔獣の死骸を収集でき、報酬もかなり増えることになる。
そんなこんなで野盗の一味はリーダーである男を除くすべての下っ端の無力化に成功した。殺しをすると比呂さんが悲しむかもしれないので影の中に仕舞い込み。影の中で殺す。それがのちのちに面倒がないと考え、影狼に無力化させられた野盗は一人、また一人と影の中へ収納されていった。
「あ、あのッ……この度はお助けいただきありがとうございますッ!」
護衛の一人。恐らくこの衛兵の中の指揮官にあたるであろう人物からお礼を言われる。
「当たり前のことをしただけです。それにしても、あちらの馬車はとても高価なように見えます。名のある貴族のお方なのでしょうか」
「申し訳ない。この件に関して郊外を禁止されているので何も言う事が出来ません。しかし、『この御恩はいずれ何らかの形で返させていただく』と我々の雇い主がおっしゃっていました。よろしければお名前を伺ってもよろしいでしょうか」
「私の名前はサキと言います。カーティアの町で冒険者をしています」
「冒険者……あれだけの従魔を従えているという事はかなり高位の冒険者だとお見受けします」
「いえ、つい先日冒険者になったばかりの新人です」
「新人ッ!?それではこれからが楽しみですね」
そんな何気ない会話をした後、あちら側も急ぎの様だったようでそれ以上話すことはなく別れた
依頼4日目
「よ、ようやく町が見えたぁ……」
野を駆け、山を三つほど
越えたところで漸くカーティアより少し大きい位の町が見えてきた
「止まれッ!」
念の為に体を小さくしていることが功を奏したのか、カーティアの町の時の様に武装した人間が大勢押し寄せてくることはなかった。……が、やはり見かけない狼型の魔獣という事でかなり警戒された。
「身分を証明できる物とこの町に来た要件。そして、そこの魔獣があなたの従魔である証拠を提示しろ」
「はい、これが私の冒険者証です。この町に来たのはカーティアの冒険者ギルド支部長より、そちらの支部長さんへの手紙を預かってきました。この子の首にカーティアで発行してもらった従魔の証を付けています」
全てを提示した後、銀貨1枚を従魔の通行料として支払いペンチェルの町へ足を踏み入れるのだった




