表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美香と光子と優子の爆笑ストーリー。光子と優子29歳  作者: リンダ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
89/90

門司港出発

 門司港駅の改札前は、朝からちょっとしたお祭り騒ぎだった。


 レトロな駅舎をバックに、スーツケースとリュックと子どもたちが入り乱れている。


「全員、集合〜! 点呼するよ〜!」


 優子が手を叩くと、子どもたちがわらわらと集まってくる。


「青柳班、はい挙手〜!」


 陽翔・燈真・彩羽

「「「はーい!」」」


「柳川班、挙手〜!」


 結音・灯乃・悠翔

「「「はーい!」」」


 翼が苦笑しながら腕を組む。


「なんか修学旅行の先生みたいになっとるけど?」


 光子がドヤ顔で胸を張る。


「本日の引率教員、M&Y鉄道爆笑ツアーズでございます〜」


 拓実

「引率教員がいちばんうるさいパターンやん、これ」


 その少し後ろで、肥後祥子と恋人の宮村隼が、少し照れくさそうに立っていた。


「……なんか、本当に一族の夏休みに乱入した感じするね」


「でも、こういう“ごちゃごちゃの旅”、前からちょっと憧れてた」


 祥子が笑うと、すかさず陽翔が駆け寄る。


「しょうこさーん! となり乗る?」


 結音

「はやとさんは、うちのパパのとなりね。アホトークし放題ゾーンやけん」


 隼

「え、アホトーク……ゾーン……?」


 優子

「大丈夫大丈夫、命までは取らんけん」


 隼の背筋に、なぜかうっすら冷たいものが走った。


 門司港 → 別府へ 普通と快速でゴトゴト


 門司港駅のホームに、青い車体の普通列車が滑り込んでくる。


「ほらみんな、乗るよ〜。乗り遅れたら九州一周どころか門司港一周ツアーになるけんね〜」


 車内はまだ朝で、そこまで混んではいない。

 窓側争奪戦だけは激しい。


「海側がいいー!」


「山も見えるとよ〜!」


 最終的に、

 ・子どもたち+祥子が海側

 ・大人組の何人かと隼が山側

 という配置に落ち着いた。


 陽翔

「ねぇねぇ、日本ってさ、“ちっちゃい島国”って習ったけどさ」


 燈真

「めっちゃ長いやんねん(←どこかで混ざった大阪弁)」


 光子

「誰に似たとかな、そのツッコミ」


 優子

「うちらやね」


 車窓からは、門司港の街並みがすぐに遠ざかり、

 やがて海がちらちらと見え始める。


 祥子は窓の外を眺めながら、ぽつりと言った。


「……“日本は狭い”って、よくニュースで言われるけどさ。

 こうやって電車で回ろうとしたら、十分広いよね」


 光子

「そうそう。しかも今回は“日本の海に近いとこ縛り”やけん。

 狭いとか言いよる暇あったら、乗り換えダッシュの心配しとかな間に合わん」


 拓実

「おい、それフラグやぞ」


 磨崖仏と、石に刻まれた“静かな時間”


 別府で一度降りて荷物をコインロッカーに預け、

 日豊本線を乗り継いで向かった先は、磨崖仏のある小さな駅。


「はい、ここからちょっと歩くけんね〜。

 おやつは歩きながらじゃなく、止まって食べましょう〜」


 灯乃

「せんせーい、もうおなかすいたー」


 優子

「先生じゃなくて“ママ”やけん」


 薄曇りの空の下、

 林の中の道を抜けていくと、

 岩肌に静かに刻まれた仏たちが姿をあらわす。


 陽翔

「……なんか、ここだけ空気ちがうね」


 結音

「声ちっちゃくなるとよ……」


 燈真も、彩羽も、悠翔も、

 なんとなく自然に声をひそめていた。


 祥子は、じっと磨崖仏を見上げる。


(何百年も、ここで人を見てきたんだろうな……

 戦争とか、災害とか、いろんな“終わりそうな瞬間”も)


 隼が横で小さくつぶやく。


「こういう場所に立つと、

 “自分の悩み、ちっちゃいな”って思わされるね」


「うん。でも、“今の自分”も全部見られてる気がする。

 走ってる自分も、倒れそうだった自分も、

 ここに立ってる自分も、ぜんぶ丸ごと」


 光子がふと、子どもたちに背を向けたまま少しだけ真面目な声を出した。


「ね、みんな。

 ここはね、昔の人たちが“ずっと残したい”って思った場所やけん。

 笑うのはいいっちゃけど、石を蹴ったり、いたずらしたりは絶対せんこと。

 わかった?」


「「「はーい」」」


 悠翔だけ手をぶんぶん振って、

 ついでに隣の灯乃に抱きつき、


「おねえしゃーん♡」


 灯乃

「も〜、ここでは静かにむぎゅーせんね〜」


 結局、ほんわか笑いが零れるのを、

 磨崖仏は少し優しそうな顔で見ているようだった。


 別府で温泉三昧


 再び列車に乗って別府に戻ると、

 一同は“海沿いの温泉”へ直行した。


「見てみて! 露天から海見えるとよ!」


 陽翔と結音が湯船のへりにつかまり、

 きらきらした目で沖を見つめる。


 燈真

「おふろで海見るとか、なんかへんな感じやねん」


 悠翔

「おねえしゃーんといっしょなら、なんでもサイコー♡」


 結音

「はいはい、ひーちゃん、溺れんごとしときー」


 男湯のほうでは、

 翼と拓実と隼がすでにのぼせかけていた。


 隼

「……あの、

 お二人の爆笑夫婦トーク、

 サウナより体力使うんですけど」


 翼

「え、まだウォーミングアップやん?」


 拓実

「本番は“鉄道車内でM&Y合流”からやけん」


 隼

「マジですか……」


 別府の湯けむりは、

 この旅の最初の疲れと一緒に、

 みんなの体からふわりと抜けていった。


 津久見で、みかんタイム


 午後、普通列車で津久見へ。

 駅前には、“みかん推し”の看板がずらり。


「はいはーい、本日のご当地おやつターイム!」


 光子が袋を掲げると、

 子どもたちの目が一斉に光る。


「みかんやー!」


「うち、3個までなら食べても太らん?」


「誰に聞きよるとね」


 祥子と隼も、

 試食コーナーのみかんを一粒。


 隼

「……なにこれ、甘っ!」


 祥子

「うわ、やば。

 これ、箱で買って帰りたくなるやつ」


 優子

「送るよ送るよ。“爆笑発電所・福利厚生みかん”で経費落としとくけん」


 翼

「経理が泣くやつやろ、それ」


 駅前のベンチで、

 子どもたちは口のまわりをみかん色にしながら、

 次々に皮をむいていく。


 彩羽

「おにーしゃん、これあげる〜」


 陽翔

「ありがとう、いろは。かわりにこれ、甘いやつやけん」


 悠翔

「ひーちゃんにも〜!」


 灯乃

「もう、みかんの皮、ここに山つくらんとよ〜!」


 こうして、

 津久見駅前には、一時的に

「みかんの皮・小さな山」ができあがったのだった。


 そして佐伯へ 旅の一日目、夜の“爆笑通信”


 夕方、日が傾き始める頃、

 一行は佐伯駅に到着した。


 海の匂いが混じる風の中、

 商店街の先にある小さな旅館にチェックイン。


 夕食は、

 地元の魚と、ちょっとだけ贅沢なごちそうが並ぶ。


「かんぱーい!」


 大人はノンアル、子どもはジュースでグラスを合わせたあと、

 食後のロビーで、いよいよ


「日本の海に近い鉄道乗りつぶし旅・爆笑通信」

 の初回収録が始まった。


 カメラ係は翼。

 進行はもちろんM&Yだ。


 光子(カメラに向かって)

「どーもー!

 “日本海じゃなかった、日本の海ツアー”

 初日の夜でーす!」


 優子

「門司港から佐伯まで、

 普通と快速だけで来ましたけど……

 まず一言いいですか?」


 光子

「どうぞ」


 優子

「日本、広か!!!」


 一同爆笑。


 翼

「さっき“狭いけんすぐ一周できるかも”とか言いよったの誰やった?」


 結音

「ママやろ?」


 燈真

「ママとおばちゃんが、どっちも言いよったで」


 光子

「バラさんでよか!」


 ◆ 今日のハイライト発表


 優子

「じゃあ、今日の“爆笑&感動ハイライト”ベスト3いくよ〜!」


 第3位:津久見みかん、子どもたちの胃袋に消える


 陽翔

「みかん10個くらい食べた〜」


 結音

「うちも〜」


 優子

「それ第3位どころか、“ビタミンCオーバー賞”やけん」


 第2位:別府温泉にて、隼くんサウナより消耗


 隼

「いやほんと、

 翼さんと拓実さんの“オリンピック裏話”、

 情報量とボケが多すぎて……

 途中から景色がぐるぐる回ってました」


 光子

「それ温泉のせいやない?」


 拓実

「まぁ半分は湯気のせい、半分は俺らやな」


 第1位:磨崖仏の前で、悠翔くんの“静かなるおねえしゃん攻撃”


 優子

「ちゃんと静かにしとったんよ。

 そしたらいきなり――」


 悠翔

「おねえしゃーん♡(小声)」


 結音&灯乃

「「ここでむぎゅーはやめい!!」」


 光子

「でも、静かな“むぎゅー事件”は、

 磨崖仏の人もたぶん笑っとったと思う」


 祥子

「うん……あそこ、なんかすごく優しい空気だったからね」


 ◆ 祥子&隼、今日の感想コーナー


 優子

「じゃあ最後に、

 スペシャルゲストの祥子さんと隼くんにも、

 今日の感想を一言ずつもらおうかね」


 祥子

「はい。

 ……あの、正直言うと、

 “フルマラソンより体力使う一日”でした(笑)


 でも、磨崖仏みたいな静かな場所で、

 日本の歴史を感じられて、

 別府でゆっくりして、

 津久見でみかん食べて……


 “ちゃんとした観光”も“ちゃんとしたアホ”も、

 同じ一日に詰め込めるんだなあって思いました」


 光子

「褒められとるんかな、これ?」


 隼

「僕は……そうですね……


 “日本は狭い”って言ったやつ、

 今すぐ門司港〜佐伯を普通列車で往復させたいです(笑)


 でも、窓から見える海とか、

 子どもたちが列車のたびに『わぁ〜!』って言うたびに、

 “あ、ちゃんとこの国の景色を見てなかったな”って

 反省させられました。


 明日も、よろしくお願いします!」


 子どもたち

「「「よろしくおねがいしまーす!!」」」


 ロビーの窓の外では、

 佐伯の夜が静かに更けていく。


 部屋に戻るとき、

 陽翔と結音は、興奮が少し収まった声でぽつりと言った。


「ねぇ、まだ九州の一日目やろ?」


「まだぐるっと一周して、四国行って、本州も行くっちゃん?」


 燈真

「日本、ガチで広い説やな……」


 彩羽

「でもたのしーから、いい〜」


 明日の行き先は、

 さらに南の海と、

 まだ見ぬ駅と、

 また新しい“爆笑通信”。


 旅はまだ、始まったばかりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ