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美香と光子と優子の爆笑ストーリー。光子と優子29歳  作者: リンダ


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海に近い鉄道の旅スタート

門司港駅の青い空は、朝からすでに夏の匂いがしていた。

ホームに近い改札前だけ、やけににぎやかで、やけにカラフルだ。


「……あれ?改札前で騒音出しとる集団おるけど。あれ、うちらやね」


優子がキャリーを片手に、半分あきれた顔で笑う。

そこにはすでに、青柳家と柳川家の半分が到着していて、小さなカオスが発生中だった。



◆ 門司港駅・改札前ミニパーティー


「パパ、みて! きっぷ〜!」


陽翔が、記念用にもらった硬券の「門司港→???」と書かれたダミー切符を、誇らしげに掲げている。

隣で結音も同じものを握って、


「これ、ほんもののきっぷやなかと?」


「それは“式典きっぷ”ってやつね〜。本番はこれ」


と光子がICカードをひらひらさせる。


燈真は、小さなリュックを背負いながら、


「きょうから“てつどうさんぽ ぐる〜り”のたびやろ?

 おれ、ダイヤさんぽノートつけるけんね!」


と、手作りの「ダイヤさんぽノート」を胸ポケットから取り出した。

ページにはすでに、時刻表のコピーがびっしり貼られている。


「燈真、あんた、ダイヤ眺めようとしたらまだ酔う年頃やろ」


翼が笑うと、燈真は口をとがらせる。


「よわんもん! おれ、テニスのサーブより、れっしゃのじかんのほうがおぼえとるし!」


「どんな比較よ、それ」



少し遅れて、柳川家の残りメンバーが到着する。


「ごめーん、灯乃が“おきにいりのくつしたがない事件”起こしてからにね」


優子が肩をすくめると、その横で灯乃が得意げに足を見せる。


「みて〜。きょうは“いちごとねこ”のくつしたやけん。たびびより〜」


悠翔はというと、すでに結音に貼りついていて、


「おねえしゃ〜ん、だっこ〜」


「はいはい、ゆーとくん、まずはあいさつしなさい」


結音が半分あきれ、半分うれしそうに抱き上げると、悠翔はその場で「むぎゅ〜」と彼女の首にしがみついた。



◆ 主役カップルの登場


そこへ、最後の二人が改札階段を上がってくる。


肥後祥子、その隣に、落ち着いた雰囲気の男性――

彼女の恋人・れんが、やや緊張気味にキャリーバッグを引いていた。


「お待たせしました!」


祥子が手を振ると、陽翔と結音が一斉に走っていく。


「しょうこさーん!!」


「れんおにいちゃんも来たー!」


蓮は少し驚きつつも、すぐに笑顔になる。


「お、おお。いきなり全力歓迎だね」


光子が歩み寄って、ニヤリと笑う。


「いらっしゃい、三大会連続金メダリストの元気印さんと、

 “金メダル彼氏”」


「その肩書き、まだ慣れません……!」


蓮が苦笑いすると、優子がすかさずツッコむ。


「まぁ、きょうから“長距離恋愛”やなくて“長距離鉄道旅”やけん。

 2週間くらい、うちらのカオスに耐えきったら、本物の家族って認定するけんね」


「ハードル高いなぁ!」


祥子が笑いながら、蓮の腕を小さくつつく。



◆ 旅立ちのミニパーティー


改札横の少し広いスペースには、簡易テーブルが出されていて、

そこには「門司港発・日本ぐるっと“海ぎわ”鉄道旅 出発式」と書かれた手書きの横断幕が貼られていた。


「これ、誰が書いたと?」


「わたしと春海やろ?」と春海の幻が出てきそうになるが、今日は別行動。

代わりに、光子が胸を張る。


「うちと優馬父ちゃんと、陽翔と結音の合作やけん。

 “ぐるっと”の“る”だけ三回書き直したけど」


「字の圧がすごいもんね、“ぐるっと”だけ太か」


翼がペットボトルのお茶を配り始める。


「じゃあ、とりあえず最初の乾杯するか」


「え、もう? まだ一駅も乗ってないよ?」


蓮が戸惑うと、優子が平然と言う。


「うちらの旅、“理由のない乾杯”がだいたい7割やけん」


「残り3割がなにか聞くのが怖い……」


紙コップが全員に行き渡り、

子どもたちにはリンゴジュース、大人にはお茶。


光子がコップを掲げる。


「それじゃあ――

 日本の海ぎわぐるっと旅、そして新メンバー(←祥子&蓮)も込みで!」


優子

「安全運行で、爆笑まみれの旅になりますように! かんぱーい!!」


全員

「かんぱーい!!」


ジュースとお茶のコップが、パチン、と軽く触れ合う。


陽翔

「パパ、このあと、どこまでいくと?」


「まずはね、鹿児島本線を南へ、南へ。

 今日は九州をぐるっと一周する“プロローグの日”やね」


結音

「え、きょうだけで九州まわると!? せまいやろ日本て言うけど、

 九州だけでだいぶ広いやんね?」


光子

「そう、それ。

 さっき優子と話しよったっちゃん。

 “日本は狭い”ってよう言うけどさ――」


優子

「ぜんっぜん狭くなか!!

 特に子連れ+荷物+鉄道オンリーやと、むしろ“銀河系”よ」


祥子

「いやさすがにそれは盛りすぎですよ(笑)」



◆ 改札を抜けて、いざホームへ


改札を通ると、古いレンガ造りの駅舎からホームへ抜ける風が、潮の匂いを運んでくる。

門司港の「0キロポスト」を見つけた燈真が、目を輝かせた。


「ここ、“はじまりのばしょ”なん? おれ、メモする!」


「いいとこ見つけたね。

 “たびのはじまりの 0キロポスト”って書いとき」


光子がしゃがんで、燈真のノートをのぞき込む。

灯乃もそれを見て、


「灯乃もノートほしい〜!」


「はいはい、灯乃には“おやつチェックノート”ね」

優子が小さなメモ帳を渡す。


「おやつ……ちぇっく……」


「灯乃ちゃん、それ、おやつ食べた数とか書くと?」


「ううん、“ゆのんおねえちゃんがこっそり食べたおやつ数”かくと」


結音

「やめんね!? それブラックボックスにしといて!!」


一同爆笑。



◆ 旅ルール発表


ホームのベンチに全員がなんとか腰を下ろすと、

翼がタブレットを掲げて、簡易ブリーフィングを始めた。


「はい、今回の旅のルール、もう一回確認します」


1. 基本は普通列車と快速のみで乗り継ぐこと。

2. 私鉄は、別料金不要の列車なら特急OK。

3. 1日に1回は、どこかで必ず“観光+ご当地グルメ”休憩を入れる。

4. ケンカ禁止。ただしボケとツッコミの殴り合いは可。

5. 一番最初に「つかれた〜」と言った大人は、

その日の夜の子どもたちの寝かしつけ担当。


優子

「4番と5番、誰が作ったとね」


光子

「うちと祥子さん」


祥子

「はい、“現場の声”を取り入れた結果です」


「え、寝かしつけ担当……?

 これ、命かかってません?」


「だいじょうぶ、うちの子ら、

 全員“寝かしつけ中に大人のほうが先に落ちる現象”得意やけん」



◆ 最初の列車が入ってくる


構内放送が流れる。


『まもなく、一番乗りばに、

 鹿児島本線、普通列車、折尾・博多方面行きが、参ります――』


ホームの向こう側から、白い車体の列車が近づいてくる。

陽翔と結音が先頭の位置まで駆け出し、窓の向こうをのぞき込む。


「来たーっ!!」


「れっしゃ、はじまったー!!」


祥子は、その様子を少し離れたところから見つめ、

隣で蓮が小さく呟く。


「……すごいね」


「何が?」


「こんなににぎやかな“旅立ち”って、初めて見た。

 今まで、マラソンの遠征とか、合宿とか、

 だいたい“ストイックです”みたいな顔して飛行機乗ってたから」


祥子は笑いながら、蓮の腕に軽く肘を当てる。


「じゃあ今日は、“ストイック”じゃなくて――」


「――“ストレートにアホな旅”だね?」


「そう、それ!」


二人の会話を、

少し離れたところで光子と優子が聞きつける。


「ちょっとあんたら、うちらの旅勝手に“アホ認定”しよらん?」


「え、違うんですか?」


蓮の素直すぎる返しに、全員が吹き出した。



列車のドアが開き、

それぞれのキャリーバッグとリュックを抱えながら、

12人の一行が乗り込んでいく。


陽翔

「パパ、きょうのゴールどこ?」


「秘密。

 でもひとつだけ言えるのは――」


「――今の時点で、もう“日本は狭くない”って悟ったよね」


光子と優子が声を揃えて言うと、

大人たちの笑い声が、ゆっくり動き出した列車の中へと吸い込まれていった。


こうして、

「日本の海に近い鉄道をぐるっとめぐる旅」第一章・門司港発は、

にぎやかで、ちょっとだけ胸が熱くなるスタートを切ったのだった。

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