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美香と光子と優子の爆笑ストーリー。光子と優子29歳  作者: リンダ


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テニスと卓球統括団体への要望書

 翼は、その夜すぐに机に向かった。


 テーブルの上には、

 ファイブピーチ★のアルバムジャケットと、

 アリョーナスたちの動画を流したタブレット。


 その横に、白い便箋が何枚も重ねてある。


 日本テニス協会への要望書


 翼

「……よし。逃げんぞ」


 ボールペンを握る手に、

 現役時代と同じ“試合前のスイッチ”が入る。


 日本テニス協会 御中


 私たちは、テニスを通じて世界の人々と繋がってきた者として、

 貴協会に対し、緊急に検討をお願いしたいことがあります。


 最初の一文を書いたところで、

 光子が湯気のたつマグカップを置く。


 光子

「コーヒー。砂糖なし。

 甘いのは、うちからでよかろ?」


 翼

「……うん。

 “アホでも真面目に書けます”って証明せなね」


 光子

「そこは自分で言うんやね」


 ふたりで、動画の中の言葉を何度も聞き返す。


 鉱物資源が、国民ではなく独裁者の懐に入る構造

 女性や子どもの人権が踏みにじられている現状

 その国の資源に依存することで、

 間接的に加担してしまう世界の構図


 翼

「テニスは“クリーン”なイメージがあるけど、

 ボールもラケットも、遠くの誰かの労働の上に成り立っとる。

 “知らん顔”は、もうできんよね」


 光子

「うん。

 “知らないふり”がいちばんの罪って、

 アリョーナスたちが言いよったもんね」


 翼はペンを走らせる。


 現在、私たちの競技で使用している用具・ウェア・施設整備の過程で、

 当該国の鉱物資源や関連産業が関わっていないか、

 至急の調査と情報公開、および改善の検討を求めます。


 また、国際テニス連盟・IOC・他競技団体との連携を図り、

 その国における人権侵害に対して明確な姿勢を示すことを要望します。


 署名欄の一番上に

「青柳 翼」と書き込み、

 その下に、すでに届いていたデータの名前を手書きで写していく。


 現役の日本代表選手たち

 海外のツアーで共に戦った仲間

 引退したレジェンドたち


 翼

「……“テニスは世界語”って言うなら、

 この件にも、ちゃんと声出さんとね」


 光子

「言葉のアクセントは相変わらずアホっぽいけど、

 中身は立派よ」


 翼

「フォローになっとらんっちゃけど!?」


 ふたりの軽口が飛び交う中、

 要望書は静かに完成した。


 日本卓球連盟への要望書


 同じ頃。

 柳川家のリビングでも、

 拓実がノートPCに向かっていた。


 優子

「ねぇ、たくみ。

 “一時間で書き終わるけん”って言いよったのに、

 もう三時間たっとーけど?」


 拓実

「決勝フルセットみたいなもんやけん、

 ここからやろ」


 優子

「うわ、出た。卓球メンタル比喩」


 画面には、

「日本卓球連盟 理事会 御中」と打たれた文書。


 私たち卓球選手は、

 多くの国の選手たちとラケット一本で繋がってきました。


 その中には、例の独裁国家出身の選手たちもいます。

 私たちは彼らの“競技者としての笑顔”を見つめてきた一方で、

 彼らの家族や友人が、

 どれほど過酷な環境に置かれているかも知りました。


 拓実

「卓球はさ、

 **“台の上では平等”**って、ずっと思ってやってきたんよね。


 でも、

 “台の外”であまりにも不平等があるなら、

 そこにも少しは口出さんと、

 “世界一のレシーブ”とか、

 なんか軽く聞こえてまうやろ?」


 優子

「……たまに、めっちゃカッコいいこと言うよね、うちの旦那」


 拓実

「たまにでええやん。

 毎回やったら疲れるやろ?」


 優子

「いや、そこは頑張れよ(笑)」


 文面は続く。


 当該国での強制労働疑惑、女性や子どもへの教育機会の剥奪、

 表現の自由の抑圧などについて、

 国際卓球連盟と連携し、

 調査と声明を出すことを要望します。


 また、今後の大会開催地やスポンサー選定において、

 人権状況を無視した判断を行わない指針作りを求めます。


 署名欄の先頭は「柳川 拓実」。

 そこに続くのは――


 かつて団体戦で共に戦った仲間、

 世界の強豪国の選手たち、

 そして今、育成世代で頑張る若手選手たちの名前。


 優子

「これ、みんなすぐ返事くれたと?」


 拓実

「うん。

 “お前が言うなら、一緒に名前出すよ”って。

 ……ありがたいね」


 優子

「ありがたいね。

 “アホな勝利インタビュー”も、

 こういう時の信用貯金になっとるっちゃろうね」


 拓実

「そこ褒めようとして失敗しとるからね?」


 連盟が動く


 数日後。

 日本テニス協会と日本卓球連盟は、

 それぞれ理事会を開き、要望書を正式に受理した。


 記者会見。


 テニス協会会長

「青柳翼選手をはじめとする選手たちからの要望は、

 極めて重いものと受け止めています。


 まずは、

 用具・施設・スポンサーなど、

 我々競技に関わるサプライチェーンを総点検し、

 当該国との関係性がないか調査を開始します」


 卓球連盟会長

「柳川拓実選手らの要望を受け、

 国際卓球連盟とも連携を取りながら、

 今後の大会開催地やスポンサー選定に

 人権チェックの観点を組み込みます。


 スポーツは、人間の尊厳を前提として成り立つものです。

 その前提が侵されている場所に、

 私たちの競技が無邪気に乗ってはいけない――

 そう考えています」


 アスリートたちの連帯


 SNSでは、

 テニス・卓球に限らず、

 他競技の選手たちが次々と声を上げ始めた。


「青柳さんたちに続きたい」

「柳川さんたちの行動に勇気をもらった」

「“静かにプレーだけしていろ”と言われてきたけど、

 それでも、声を出したい」


 M&Yのラジオでも、

 このニュースは大きく取り上げられる。


 光子

「うちの旦那と優子の旦那が、

 まさか**“アホ”から“人権アクティビスト枠”に格上げ**される日が来るとは」


 優子

「いやいや、アホはアホで継続運転中やけん。

 “アホで人権派”っていう新ジャンルやね」


 リスナーからも、メッセージが届く。


「スポーツ選手がこうやって動くの、胸が熱くなりました」

「競技を愛する人が、人も大事にしようって言ってくれるのが嬉しいです」

「うちの子にも聞かせました。“強いってこういうことだよ”って」


 統括団体が動き出す


 さらにその先では――


 国際テニス連盟が、

「人権デューデリジェンス委員会」の設置を発表。

 国際卓球連盟も、

 次回世界選手権のスポンサー選定で

 人権チェックを義務化する方向で動き出す。


 IOCの広報担当者も

「各競技団体の動きを評価する」とコメントを出した。


 それはまだ、

 世界の巨大な構造を一気に変えるほどの力ではないかもしれない。


 けれど――


 アリョーナスとカティアが語った、

 あの動画と、


 ファイブピーチ★の曲、

 爆笑発電所の発信、

 M&Yのラジオ、


 そして翼と拓実たちアスリートの要望書が、


 あきらかに“何かを動かし始めた”

 その最初の波であることだけは、誰の目にも明らかだった。





 夏の陽ざしが、福岡のマンションの窓ガラスを白く照らしていた。


 リビングのテレビでは、テロップが何度も切り替わる。


「**市民、一斉ストライキ突入**」

「**独裁政権への抗議デモ、全国に拡大**」


 アリョーナスは、リモコンを握ったまま固まっていた。

 隣では、カティアが膝の上で両手をぎゅっと握りしめている。


 光子

「……始まったね」


 優子

「うん。

 “ここからがスタート”って感じやね」


 画面が切り替わり、あの国の首都の映像が映る。

 工場、港、役所――。

 人の流れが止まり、代わりに広場へと人々が集まっていく。


 ナレーション

『この国では、主要都市の労働者たちが一斉に仕事を止め、

 “民主化”と“独裁者の退陣”を求めるストライキに入っています』


 群衆の中には、ボロボロの作業服、

 痩せ細った女性たち、

 幼い子どもの手を引きながら歩く父親の姿もあった。


 カティア

「……信じられない。

 こんなに、こんなに人が……」


 アリョーナス

「みんな、ずっと我慢してきたから……

 限界、超えたんだ」


 春介と春海も、ソファの後ろからテレビを覗き込んでいた。

 陽翔と彩羽は事情がよくわからないながらも、

 大人たちの張り詰めた空気を感じ取って静かにしている。


 宮殿を包囲する人の波


 ニュース映像は、やがて例の豪奢な宮殿へと切り替わった。


 真っ白な塀、金色に輝く門。

 その前に、黒い制服の警備員がずらりと並んでいる――


 ……はずだった。


 ナレーション

『市民を制止するはずの警備隊の一部が、

 次々と武器を捨て、デモ隊側に合流しています』


 画面には、

 手を上げて市民の輪に入る警備員たちの姿。


 群衆

「一緒に来い!」

「お前たちも、同じ国の人間だろ!」


 光子

「……うわ。ほんとに“雪崩”やん」


 優子

「ここまで来たら、もう止まらんね」


 カメラが揺れながら、

 宮殿の門へ押し寄せる人の波を追いかける。


 塀を乗り越える者、

 門の鍵をこじ開けようとする者、

 内部から扉を開ける誰かの手。


 ナレーション

『ついに、宮殿の敷地内へと群衆がなだれ込みました……!』


 アリョーナスは、無意識に身を乗り出していた。

 膝の上で握った拳に、白く力が入る。


 アリョーナス

「……頼む、誰も撃たないでくれ……」


 カティア

「誰も、撃たれないで……」


 だが、銃声は聞こえなかった。

 聞こえるのは、怒りと涙と歓声と、

 長年押し殺されてきた叫び声だけ。


 やがて、アナウンサーが抑えた声で告げる。


『速報です。

 独裁者と、その側近の一部が拘束された模様です。

 今後、国際刑事裁判所に身柄が引き渡される見通しです――』


 リビングに、静かな溜息が広がった。


 涙と笑いが一緒にこぼれる瞬間


 優馬が、テレビを見つめながらぽつりと言った。


 優馬

「……長かったやろうねぇ、この瞬間まで」


 美鈴

「うん……。

 やっと、“止まってた時計”が動き始めた感じがする」


 アリョーナスは、両手で顔を覆った。

 肩が震えている。


 アリョーナス

「お父さん……お母さん……

 弟も、妹も……

 生きて、この日を見られた……」


 カティアも、隣で泣いていた。

 涙でぐしゃぐしゃになりながらも、笑っている。


 カティア

「うちの妹、

 ぜったい、デモの真ん中で叫んでる……

 “独裁者はもう終わり!”って……

 あの子、そういうタイプだから……」


 光子は、そっと二人の背中を撫でた。


 光子

「大丈夫。

 あんたたちが、世界に向けて

 “今のこと”を話してくれたけん、

 今日はちゃんと“届いとる”よ」


 優子

「独裁者は捕まるけど、

 あんたたちの動画は、

 もう世界中のどこにも戻されん。


 『見てしまった人たちの心』の中に残っとるけんね。」


 アリョーナス

「……日本語の慰め方、

 なんでこんなにグサッとくるんですか……」


 光子

「仕様です」


 優子

「爆笑発電所バージョン最新ファームやけん」


 涙の中に、ふっと笑いが混じる。

 いつもの、小倉家らしい空気になっていく。


 国際裁判所へ、そして“これから”


 数日後。

 ニュースは、独裁者一味が国際刑事裁判所(ICC)に移送されたことを報じた。


 ニュースキャスター

『長年、国民を圧迫し、多数の人権侵害を繰り返してきた

 政権幹部たちは、今後、

 “人道に対する罪”などで裁かれる見通しです』


 解説者

『この国では暫定政府が発足し、

 自由選挙に向けた準備が進められています。

 簡単な道ではありませんが、

 国民たちが初めて“自分たちの代表”を選ぶ機会を得ようとしています』


 春海

「……やっと、“国がリセットボタン押した”みたいな感じ?」


 春介

「でも、ゲームと違って、

 “続きから再開”ってわけにはいかんよな。

 家も、仕事も、生活も、全部あるけん」


 美香

「だからこそ、

 “音楽”とか“笑い”の出番なんやろうね」


 光子

「うちらも、

 『あの国が落ち着いたら、いつか必ず行こう』って約束しとったろ?」


 優子

「“ファイブピーチ★・凱旋ライブ”計画のメモ、

 どこ置いとったっけ」


 美鈴

「もう“凱旋”て決めとるとね。

 さすが、うちの娘たち」


 アリョーナスとカティアは、

 少し顔を赤くしながら、それを聞いていた。


 アリョーナス

「……本当に、行くんですか?

 僕らの国に」


 光子

「行くよ。

 あんたたちが“戻りたい”と思える国になったら、なおさら」


 優子

「“昔の怖い国”やなくて、

 “あんたたちの大事なふるさと”として、

 観光パンフに普通に載る国にしてしまおうや、みんなで。」


 カティア

「……それ、

 聞いてるだけで泣きそうなんですけど……」


 陽翔

「ねぇねぇ、ママ、

 そのライブ行く時さ、

 “ふわもちぷにすけ”も連れてっていい?」


 結音

「わたしたちも、“せかいのともだちライブ”したい!」


 光子

「もちろん。

 スケールでかくなってきたねぇ」


 優子

「よし、“世界支部集合スペシャル”やね」


 まだ“序章”でしかない


 ニュースキャスターは、

 締めくくりにこんな言葉を添えた。


『独裁者は退陣し、拘束された――

 ですが、この国の人々の苦難が

 今日で終わるわけではありません。

 この日を“自由へのスタート地点”にできるかどうか。

 世界は、試されているのかもしれません』


 テレビの電源が落ち、画面が暗くなる。


 静けさの中で、アリョーナスがぽつりと言った。


 アリョーナス

「……これからですよね。

 “倒した”あとが、本当の勝負だ」


 カティア

「うん。

 でも、もう一人じゃない。


 日本の人たちも、

 世界中の人たちも、

 たくさん見てくれてる。


 “知らないふり”する人が減っただけでも、

 きっと、世界はちょっと変わってる」


 光子

「じゃあ、こっからは――」


 優子

「“爆笑発電所・復興支援モード”やね。

 ライブと、番組と、ツアーと……

 やること、てんこ盛りばい」


 アリョーナス

「日本語……やっぱり、時々バグって聞こえます……」


 カティア

「でも、嫌じゃないよね、これ」


 アリョーナス

「うん。

 “世界を変えよう”とか、

 大きなこと言いすぎるとしんどいけど――


 今日みたいに、

 誰かがテレビ見て、ラジオ聴いて、

 『知らなかった、知ろう』って

 思ってくれるだけでも、

 もう十分“始まってる”んだなって思いました。」


 光子

「じゃあ、決まり。

 いつか“あの国の民主化●周年”ってタイミングで、

 ファイブピーチ★の凱旋ライブ、

 タイトル決めとこうか」


 優子

「『笑いと歌と、再起動ボタン』とかどう?」


 アリョーナス

「長いし、でもめっちゃ合ってます……」


 カティア

「きっと、その日が来たら――

 うち、お母さんと一緒に

 最前列で泣きながら笑ってます」


 陽翔

「そのときは、

 “パパ、またアホなこと言うんやろ?”」


 結音

「“ママもやろ〜?”」


 光子&優子

「そらもう、全力でね!」


 こうして、

 独裁政権崩壊のニュースは、

 アリョーナスとカティア一家にとって


 **「過去からの解放」**であると同時に、

 小倉家と爆笑発電所、

 そしてファイブピーチ★にとっては


 **「新しい約束のスタートライン」**となっていく

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