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美香と光子と優子の爆笑ストーリー。光子と優子29歳  作者: リンダ


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爆笑発電所・社内研修(後半戦)



◆ 爆笑発電所・社内研修(後半戦)


「――というわけで、

 **“安い原材料”の裏には、

 “安く扱われる命”がくっついていることが多いんです」


アリョーナスがそう締めくくると、

会議室はしんと静まり返った。


プロジェクターには、

かつての母国の鉱山の写真。

安全靴もヘルメットもない若者たち。

粉塵で白くなった顔。


少し間をあけて、

カティアがマイクを受け取る。


「わたしたちの国では、

 “知らないふり”が、いちばん簡単で、

 いちばん危険な生き方でした。


 “政治のことはわからない”

 “ニュースを見ると暗くなるから見ない”


 そうやっている間に、

 気づいたら、友だちは牢屋の中。

 親戚は“事故”で消えていました」


社員たちの喉が、ごくり、と鳴る。


前列でメモを取りながら聞いていた美香が、

無意識にペンを止めた。


アリョーナス

「でも、誤解してほしくないのは……

 “真面目に暗く生きろ”って話じゃないんです」


カティア

「そうそう。

 この会社、名前からして“爆笑発電所”ですからね?」


会議室に、ふっと笑いが漏れる。


アリョーナス

「ぼくたちがここに来て驚いたのは、

 “笑いながら、ちゃんと考えてる人が多い”ってことです。


 光子さんと優子さんは、

 最初に会った時からずっとそうでした。

 ギャグ言いながら、

 “それはおかしい”“それはおかしかろ?”

 って、ちゃんと口に出してた。」


優馬

「……それは、まあ、口が勝手に動くっちゃんね……」


社員たち、くすくす。


カティア

「私たちが今日お話ししたかったのは――


 “知らないままでいることは、

 誰かの暴力に、無意識に加担してしまうこともある”


 “でも、知ってしまったなら、

 もう知らないふりはできない”


 その、境界線の話です」


古賀真理子が、手を挙げる。


「質問、よかですか?」


「どうぞ」


「私たちみたいな、

 ただの福岡の主婦とか社員とかが、

 何をしたらいいんでしょうか?

 世界を変える力なんて、ないような気もして……」


アリョーナスは、少し笑って首を振る。


「ぼくたちからすると、

 真理子さんたちが、いちばんこわいです」


会場「えっ」。


カティア

「“普通の人”が動き始めたら、

 どの独裁者も、ものすごく困ります。


 不買運動。

 会社に“この原材料どこのですか?”って聞いてみること。

 SNSで“これ、おかしくない?”って

 静かに、でもはっきり書くこと。


 それを世界中で、

 “ただの一市民”がやり始めたら――

 独裁者は、ほんとうに、眠れなくなります」


真理子

「……なんか、ちょっと、やる気が出てきたっちゃんけど」


会場から笑いと拍手。


光子が、座席から立ち上がって、まとめる。


「うちら“爆笑発電所”の仕事は、

 笑いと音楽で、

 考えるきっかけをばらまくことやけんね。


 きつい現実も、

 ちゃんと見て、ちゃんと知ったうえで、

 “じゃあ、うちら何できる?”って、

 笑いながらでもいいけん、一緒に考えていこ」


優子

「“知らんふり”せんこと。

 それが、今日の研修の宿題やね」


会議室に、大きな拍手が巻き起こった。


アリョーナスとカティアは、

何度も何度も頭を下げた。



◆ レギュラーテレビ番組でのトーク


数日後。

M&YがMCを務める情報バラエティ生放送。


ゲスト:

爆笑発電所・国際部(?)特別解説員、

そしてアリョーナス & カティア。


スタジオの大スクリーンには、

彼らが撮影した母国の現状の動画が、

編集されて流れる。


VTR明け。


光子

「――というわけで、

 なかなか“胃にズシンとくる”映像でしたが……」


優子

「ここからは、

 **“ちゃんと笑いながら考えるパート”**に行きたいと思います」


解説員

「ハードル高いですねえ……(苦笑)」


光子

「いやいや先生、

 この番組、“シリアスだけ”は逆に怒られるけん」


スタジオ笑い。



◆ 「知らないふりが、いちばんの罪」


優子

「さっき、VTRの中でも出てきましたけど、

 先生のこの言葉、

 SNSでもすでにバズりかけてます。


 **“知らないことより、

 知ろうとしないふりをすることが罪だ”**って」


解説員

「いやあ……ちょっと言い方強かったかな、と

 反省してたんですが……」


光子

「よかと思う。

 うちらもそれ、痛いほどわかるしね」


優子

「“知らんで済むなら、そのほうが楽”って、

 正直、誰でも思うやん?」


光子

「でも、“知らんまま笑いよる”と、

 どこかで誰かが泣きながら働かされとるかもしれん。」


解説員

「そうなんです。

 全部を追いかけるのは無理だとしても、

 “問題がある”という情報が目の前に転がってきた時に、


 “見なかったことにする”

 “難しいからスルーする”


 それを積み重ねていくと、

 気づいたらとても暗いところまで

 社会全体が沈んでしまうんです」


カティア

「わたしたちの国では、

 それをやり続けた結果が、“今”です」


アリョーナス

「だから今日、ここで話すのは怖かったけど――

 日本のみなさんには、

 “知らないふり”を選んでほしくなかった。」


光子

「でもね、

 日本のみんなは“まじめに考えながら、

 ちゃんと笑う”の得意やけん。


 しんどいこと考える時こそ、

 ちょっと笑いのスイッチ入れて、

 “よっしゃ、やったるか”って行こ。」


優子

「今日の結論。

 “知らんふり禁止”。

 “考える時は、腹筋も一緒に鍛える”」


解説員

「後半の結論、斬新ですねえ(笑)」


スタジオに再び笑いと拍手が広がり、

番組は、

「世界と笑いと、ちょっと真面目」な空気のまま

エンディングへ向かっていった。



◆ 放送後に起きた “大きなうねり”


その夜。

番組の公式サイトとSNSには、

コメントが雪崩のように押し寄せた。


「正直、知らない国のことだと思ってた。

でも“知らないふりは罪”って言葉、刺さりました」


「会社の購買部に、

“うちの原材料どこの使ってますか?”って

聞いてみようと思います」


「子どもと一緒に観ました。

“安いものの裏に、誰かの涙があるかもしれない”って

ちゃんと話せました。ありがとう」


翌日のニュースでは、

いくつもの大企業のトップが

コメントを発表していた。


アナウンサー

「〇〇商事は、

 自社が扱う鉱物資源の調達先について、

 人権侵害に関与していないか、

 至急調査を行うと発表しました。


 また、家電メーカーの△△電機も、

 “番組の内容を重く受け止め、

 サプライチェーン全体の洗い直しを行う”とコメントしています」


画面の端には、

ハッシュタグが躍る。


#知らないふりは罪

#笑って考える

#爆笑発電所TV


会議室で、

そのニュースを見ていた爆笑発電所のメンバーは、

しんと静まり返ったあと――


真理子

「……ほんとに、

 世界、動き始めようとしとるね」


美香

「うん。

 でも、“世界の端っこ”からじゃなくて、

 自分たちの台所から、

 自分たちの職場から

 動き始めるんやなって」


光子

「“爆笑発電所”の名前、

 伊達やなかったね」


優子

「笑いと音楽でスイッチ押したら、

 あとはみんなが動き出してくれる。


 ……そう信じて、

 これからもネタ作らなね」


アリョーナスとカティアは、

その様子を少し離れたところで見ながら、

小さく拳を握った。


アリョーナス

「ここから、だね」


カティア

「うん。

 これは、まだ――

 始まりの、始まり。」


その“始まり”は、

やがて母国の政権崩壊と民主化、

そしてファイブピーチ★による

“凱旋ライブ”へと続いていくのだが――


その物語は、

もう少し先の章で語られることになる。

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