ようこそ、爆笑発電所へ
1.爆笑通信 in 小倉家
―「ようこそ、爆笑発電所へ」篇―
福岡・博多区、小倉家リビング兼・爆笑通信スタジオ。
いつもより椅子が多い。
ソファには、アリョーナスとカティア。
その横に、セルゲイ&エレナ、パーベル&イリーナ、オレグ&ナターリヤ、ドミトロ&アリーナ。
ずらっと並んだ“元・独裁国家ファミリー”が、そろって緊張気味に座っている。
対面には、いつもの顔ぶれ。
光子、優子、美香、春介、春海。
その足元には、陽翔・結音・燈真・灯乃・彩羽・悠翔が、完全に“人懐っこい子犬”状態で群がっていた。
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◆ オープニング
光子
「はいどーもー! 爆笑発電所・福岡本部からお送りしまーす!
今日はスペシャルゲストデーやけんね!」
優子
「世界の情勢が大きく動きだした、そのきっかけになった動画を撮った、
“ミハイリス一家&レフチェンコ一家”が遊びに来てくれましたー!」
アリョーナス
「コンニチハ!アリョーナス・ミハイリスです。
きょうは……えーと……“腹筋をこわしに来ました”」
光子
「目的おかしいやろ!」
カティア
「ワタシ、カティア・レフチェンコです。
ニホンノ ミナサン、“わらいながら かんがえる”を、
おしえて くれて、アリガトウゴザイマス」
ぱちぱちぱち、と家族たちが拍手する。
その瞬間──
陽翔
「ありょーにゃすー!! だっこーー!!」
彩羽
「かてぃあおねーしゃんもーー!!」
2人の膝に、陽翔と彩羽が全力ダイブ。
アリョーナス、上体ごと持っていかれかける。
アリョーナス
「オォ、ハルト、イロハ、ちょっと、ボク ノ アバラ……!」
セルゲイ(ぼそっと)
「……戦場より激しいな、これは」
エレナ
「あなた、笑ってる場合じゃないわよ」
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◆ ちょっとだけ真面目タイム
撮影は、まずは短く“今の故国の状況”を語るパートから始まった。
アリョーナス
「ぼくたちの国は、こうぶつしげん(鉱物資源)が たくさんあります。
でも、その ほとんどは、じょうそうぶ(上層部)のポケットに 入ります」
カティア
「くにの たてまえ は、“はたらけば ゆたかになる”ですが、
じっさいには、やすい きんりょう(賃金)で こきつかわれて、
びょうきになっても ほっとかれる ひと が 多いです」
オレグ
「とくに、女の子は “学ぶ機会” を奪われてきた。
“子どもを産む道具”としか考えない古い価値観が、いまだに力を持っている」
ナターリヤ
「病院も足りない、薬も足りない。
小さな子どもたちが、助かるはずの病気で命を落としていくのを、
何度も見ました」
カメラの向こうで、スタッフたちも真剣な表情で見つめている。
光子
「……うちらも、あんたらの話聞いて、
“この世界で、まだこんなことが続いとるんやね”って、胸がぎゅーってなった」
優子
「でも、そこで“諦める”じゃなくて、
こうして日本に来て、“声を上げる”側に回った。
その勇気、ほんとに尊敬しとるけんね」
カティア
「M&Yと ファイブピーチの きょくに、
“もうくりかえさないでほしい”って ねがいを かんじて、
わたしたちも なにか できるかもしれないと おもいました」
パーベル
「だから、動画で話すことにしたんだ。
こわかったけど……
“黙ってたら、何も変わらない”って、
ここの人たちが教えてくれたから」
一瞬、空気がしんとする。
──その静けさを破ったのは、やっぱり子どもだった。
悠翔
「ありょーにゃす、ないちゃだめー。
なみだ、ふいとばすー。むぎゅー!」
アリョーナス
「おおっ!」
悠翔が全力ハグ。
続いて彩羽も、「むぎゅー!」と両脇から抱きつく。
セルゲイ
「……この子たちといると、泣いてる暇がないな」
イリーナ
「でも、あったかいね。
ここに来て、はじめて“普通に笑う子ども”を毎日見てる気がする」
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◆ 爆笑タイムに切り替え
光子が、ぱんっと手を叩く。
光子
「はい、ここからは“通常運転”やけんね!」
優子
「爆笑通信、世界支部福岡ベース、
『はじめての日本カルチャーショック選手権〜!』」
一同
「おぉ〜〜!」
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①「初めての温泉」事件
優子
「まずはセルゲイさん。
日本に来て、一番カルチャーショックやったことは?」
セルゲイ
「おお……それは、あれだ。
“おんせん”だ」
光子
「あ〜やっぱり!」
セルゲイ
「最初に案内された時、
『ここで、みんなで入る』と聞いて、
“水着を忘れた”と言ったら、
“要りません”と言われた」
スタジオ爆笑。
セルゲイ
「“いや、必要だろう!”と本気で主張したら、
優馬さんに肩つかまれて、『男は黙って、ケツ出して入らんかい』
と言われた」
春介・春海
「じいちゃん、何やってんの!?」
ナターリヤ
「わたし、あとから聞いて、床転げて笑いました」
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②「日本語むずかしい」事件
カティア
「わたしは、“日本語の イントネーション”……」
優子
「なになに?」
カティア
「このまえ、ラジオのコメント動画 どりょくして とったんです。
“爆笑発電所のおかげで、
わたしの毎日が‘ハライタイ’です”って」
光子
「腹痛いやん!!」
カティア
「ほんとは、“笑いすぎてお腹が痛い”って いいたかったのに、
コメント欄で
“それは褒めてるのか心配してるのか”って つっこまれました」
春海
「最高すぎるやろ、その日本語ミス」
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③「博多弁デビュー」事件
パーベル
「ぼく、博多弁の授業うけました」
光子
「授業って(笑)」
パーベル
「“なんしよーと?” “よかよか〜”は覚えました。
でも、このまえコンビニで、
スイーツ見ていて、店員さんに
**“このプリン、よかよか?”**って聞いたら」
優子
「通じた?」
パーベル
「店員さんが笑いながら
『よかよか〜、それ一番人気〜!』って言ってくれました。
その瞬間、“日本で生きていける”って思いました」
一同
「それは確かに(笑)」
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撮影が終わるころには──
アリョーナスもカティアも、両親も、兄妹たちも、
笑いすぎて本当に腹筋を押さえていた。
エレナ
「この家族と一緒にいると、
“笑うことが普通”になっていくのね……」
アリーナ
「でも、ちゃんと“たいせつな話”もしてくれる。
それが、すごく不思議で、あったかい」
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2.M&Yラジオ
―「世界とアホと、ちゃんと真面目な夜」篇―
金曜夜19時。
番組はいつものジングルから始まる。
♪ M&Yの〜〜
フライデー爆笑〜〜ラジオカフェ〜〜♪
光子
「こんばんは〜、ポニテのほう、光子です!」
優子
「ツインテのほう、優子です!
今夜はね、“いつもよりちょっと真面目に、でも爆笑で”お届けします!」
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◆ 国際部解説員・登場
優子
「今日のゲストはこの方です!
某キー局・国際部の解説員、朝倉 真一さんでーす!」
朝倉
「よろしくお願いいたします。
……って、こんなテンションで入って良かったんでしょうか?」
光子
「よかよか〜。
ここ、最初にテンション落とすと逆にやりにくくなるとこやけんね」
朝倉
「なるほど、“空気がすでに出来上がっているスタジオ”というのは、こういう……」
優子
「解説モード入らんでよかです(笑)」
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◆ 前半:きっちり解説パート
光子
「さて朝倉さん。
うちらの曲がきっかけのひとつになって、
アリョーナスとカティアの国で、大きなうねりが起き始めました。
“鉱物資源”とか、“大国の利権”とか、
ニュースでちらちら聞くけど、
正直、何がどうつながっとるか、イメージしにくい人も多いと思うんよね」
朝倉
「そうですね。簡単に言うと──」
・資源が豊富な国ほど、権力者が利権を握りやすくなること
・その資源を買う大国・大企業が、“安さ”を優先すると、人権問題が見えにくくなること
・不買運動や国際世論が動くと、企業が“この国から買うのはリスクだ”と判断し始めること
・それが、独裁政権にはプレッシャーになり、同時に国民が「外の世界は違う」と気づくきっかけになること
を、朝倉は丁寧に、かみ砕いて説明していく。
朝倉
「今回のケースは、
アリョーナスさんたちの“告発動画”と、
ファイブピーチ★の“反戦・反独裁へのメッセージ”が、
世界のあちこちで同時に届いたことで、
“点と点が線になった”印象がありますね」
優子
「なんか、うちらのやったことが、思ってたよりでっかい渦に繋がっとるの、
正直ちょっと怖くもあるっちゃけど……」
朝倉
「でも、それが“音楽と笑い”で届いた、というのが大きいと思います。
拳を振り上げるだけじゃなく、“一緒に笑える希望”がある。
それが、人を動かしたんじゃないでしょうか」
光子
「……なんか、今日のうちら、
ちゃんとNHKっぽくない?」
優子
「うん、“Eテレの真面目な番組”っぽい」
朝倉
「そこは“教育枠”なんですね(笑)」
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◆ 後半:もちろん爆笑へ
光子
「じゃあここからは、“いつものM&Yっぽさ”もお届けしていきます」
優子
「実はですね、アリョーナスとカティアから、
この番組宛に音声メッセージが届いとるとよ」
SE:ピロン♪
──録音音声。
アリョーナス(日本語)
『ミツコさん、ユウシさん、こんばんは。
いつも、ハラタチマギレに 聴いています』
スタジオ
「腹立ち紛れ!?」
優子
「なんでそうなるとね!」
光子
「たぶん“イライラした時も笑えてスッキリする”みたいな意味やろうけど!」
朝倉
「新しい褒め言葉ですね、“腹立ち紛れリスナー”」
もう一通。
カティア
『おかげさまで、わたしたちの こくないでも、
“わらって かんがえる”という ことば が ひろがっています。
**“アホでも、世界をかえられる”**という コンセプトは、
とても だいじ だと おもいます』
光子
「それ翼や!!」
優子
「アホのグランドスラムや!!」
朝倉
「国際政治の文脈で“アホでも世界を変えられる”って言われる番組、他にないですよ」
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◆ 国際部解説員、崩壊する
優子
「ところで朝倉さん。
ぶっちゃけ、このスタジオ入ってから、
落ち着いて解説できとる時間、どれくらいありました?」
朝倉
「えーっとですね……
最初の3分くらいは、ギリギリ“ニュースっぽい自分”を保っていたと思います」
光子
「残り27分は?」
朝倉
「ただの視聴者です」
スタジオ爆笑。
朝倉
「いや、本当に。
国連だの制裁だの、普段は堅い話ばっかりしてるんですが、
今日は途中から
“あ、これ普通に聴いてた番組だ”ってなってしまって……」
優子
「それ、最高の褒め言葉やね」
光子
「“国際部解説員をただのリスナーに戻す番組”
M&Yのフライデー爆笑ラジオカフェです」
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◆ エンディング
光子
「今日は、“笑いながらちゃんと考える”って話を、
アリョーナスたちのことを通して一緒に考えてもらいました」
優子
「世界は広くて、問題も山ほどあるけど、
笑いがゼロの正義は、どこかで息切れするって、うちらは思っとる。
だからうちらは、
“アホで、まじめに、しぶとく”いきます」
朝倉
「そのスタンス、
国際報道にも必要かもしれませんね。
**“絶望の中にも笑える余白を残しておく”**という視点は、
とても大事です」
光子
「というわけで本日のゲスト、
国際部解説員の朝倉真一さんでした〜!」
優子
「来週も、“アホでも世界を考える金曜夜”でお会いしましょう。
M&Yの──」
2人
「フライデー爆笑ラジオカフェでした!」
ジングルが流れ、ON AIRランプが消える。
スタジオには、
まだしばらく、笑い声と、
どこかじんわりした余韻だけが残っていた。




