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美香と光子と優子の爆笑ストーリー。光子と優子29歳  作者: リンダ


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釈放 日本への永住希望

ニュースは、朝のワイドショーと同時に、

ファイブピーチ★のグループLINEにも飛び込んできた。


「例の独裁国家で拘束されていた若者が釈放。

日本への永住を希望している模様」


テレビ画面には、

拘束前のふっくらとした顔つきの写真と、

釈放直後の――頬がこけ、目だけが異様に大きく見える青年の姿が並べて映し出されている。


◆ 1 痩せた青年の映像


リビングでニュースを見ていた光子が、

思わずリモコンを握りしめた。


光子

「……細っ……」


優子も隣で、言葉を失う。


優子

「同じ人、やろ……?

 こんな痩せる……?」


アナウンサー

「拘束前は音楽やアートが好きな

 “ごく普通の大学生”だったとされています。

 情報統制の厳しい国内で、第三国のネットを経由して

 ファイブピーチ★のアルバムにアクセスし、

 問題の“反戦・反独裁をテーマにした楽曲”を視聴・拡散したとして、

 国家転覆罪に問われ、拘束されていました――」


光子

「“国家転覆罪”て……

 うちら、国ひっくり返せるほどの悪やった?」


優子

「どう考えても、

 『戦争やめようね』『命大事にしようね』しか

 歌ってないんやけどね……」


画面の中で、

痩せた青年が、空港のロビーらしき場所で小さく会釈している。

背後には「第三国」の国旗。

このあと日本に向かうこと、

日本での永住を希望していることがテロップで流れた。


◆ 2 ファイブピーチ★のスタジオ


その日の午後。

都内スタジオの会議室。


ファイブピーチ★のメンバー――

美香、光子、優子、奏太、小春――が

テレビ局からの取材の合間に、テーブルを囲んでいた。


テーブルの上には、

アルバムのジャケットと歌詞カード。

問題になった曲のページは、開き癖がついている。


美香

「……ねぇ、

 やっぱり、私たちの歌が

 あの子を危険な目に遭わせたって思う?」


静かな問いに、誰もすぐには答えられない。


奏太

「“引き金”にはなったかもしれん。

 でも……引き金を“弾いた”のは、

 あの国の権力者やろ」


小春

「そう。

 音楽を聴いて“生きたい”と思っただけで

 罪になるなんて、おかしすぎるもん」


優子

「それにさ、

 もしうちらが何も歌わんで、

 ただ楽しく騒いどくだけのバンドやったら、

 あの子は――

 『こんな世界おかしい』って気づくチャンスも

 もっと少なかったかもしれんやん」


光子

「“気づいた人”を

 牢屋に放り込んで口をふさぐのが、

 一番あかんやろ、って思う」


美香

「……うん」


少しだけ、空気がほぐれる。


優子

「でもさ、

 うちらが出した声明と、日本政府への書簡、

 ちゃんと届いたっちゃね。


 国連でも議論されて、

 世界中が“それはおかしい”って声上げたけん――

 あの子は今、飛行機に乗れてる」


光子

「“歌が原因で拘束された”って言われても、

 歌った側が黙っとく方が失礼やもんね」


美香

「うん。

 あとは……日本に来たあと、

 どう支えてあげられるか、だね」


◆ 3 緊急記者会見


数日後。

青年が日本に到着したというニュースが流れたその日の夜、

ファイブピーチ★は所属事務所で

短い記者会見の時間を設けた。


記者

「今回の件、

 “自分たちの曲がきっかけで拘束された”と報じられていることについて、

 改めてどうお感じですか?」


マイクを持ったのは光子だった。

スーツではなく、

いつものラフな衣装に、

胸元の小さなピースマークのペンダントが光る。


光子

「まずは……

 彼が生きて帰ってこられたことが、何よりうれしいです。


 痩せてしまって、たくさん傷を負ったと思うけど、

 “命”があったから、

 こうして日本に来ることができた。


 それが一番大事なことだと思っています」


記者

「ご自身の責任については?」


優子が、その質問を受けるように前に出た。


優子

「私たちは、

 特定の国や、特定の政治家を名指しして

 攻撃するために曲を書いたわけではありません。


 これまでの歴史の中で、

 独裁や戦争で、

 たくさんの命が奪われてきた。


 “同じことを、二度と繰り返したくない”――

 その思いで曲を書きました。


 だから、

 『お前たちはこの国を批判した!』と言われる筋合いは

 本当はないはずなんです」


記者

「では、今回の件は――」


美香が穏やかな声で続けた。


美香

「“歌が原因”というよりも、

 **“歌を理由に、人を閉じ込めようとした側の問題”**だと思います。


 ただ、結果として彼が苦しんだのは事実なので……

 私たちはこれから、

 彼が日本で安心して暮らせるように、

 できる限り支えていきたいです」


最後に、奏太がマイクを握る。


奏太

「正直に言うと――

 怖くないかと言われたら、嘘になります。


 “歌ったら誰かが傷つくかもしれない”って思うと、

 もう何も歌えんくなる。


 でも、

 “歌わんかったら、永遠に変わらんまま”やと思うんですよ。


 だから、怖さも抱えたまんま、

 それでも歌います。


 彼のためにも、

 世界のどこかで

 “おかしいよね”って小さくつぶやいてる人のためにも」


小春

「そして、

 できればいつか、

 彼自身の“歌”も聴いてみたい。


 音楽好きって報道で聞きました。

 あの国で、どんな音楽聴いて、

 何を感じてたのか。


 私たちは、“かわいそうな人”としてじゃなくて、

 “同じ音楽を愛する一人の仲間”として

 向き合いたいと思っています」


会見場の空気が、

少し静かになり、

そして温かく変わっていく。


◆ 4 テレビの前の青年


同じ時間。

都内の小さなビジネスホテルの一室で、

青年は通訳を通しながら

その記者会見を見つめていた。


頬はまだこけ、

手首には細い傷跡。

目の奥には、拭えない影が残っている。


だが、

画面の向こうの光子たちが笑って


「生きててくれて、ありがとう」


と言った瞬間、

彼の目から、するりと涙がこぼれた。


青年

「……ぼくも、

 ありがとうって言いたい」


その言葉はまだ

日本語にはならないけれど――

その気持ちは、

いつかきっと、

ステージの袖か、

楽屋か、

小さなリハーサル室か、

どこかの“音楽の場”で、

本人たちに直接届くことになる。


その日を、

ファイブピーチ★も、

世界中のファンも、

そして何より彼自身が、

静かに、でも確かに

待ち始めていた。

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