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美香と光子と優子の爆笑ストーリー。光子と優子29歳  作者: リンダ


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――国連欧州本部・ジュネーブ 人権理事会 特別会合

――国連欧州本部・ジュネーブ

人権理事会 特別会合

議題:「表現の自由と若者の権利 ― 音楽を聴いた罪で投獄された青年の事案」


静まり返った会議場に、各国の代表団、NGO、市民団体の代表が座っている。

通訳ブースのガラス越しに、同時通訳の声がかすかに響く。


壇上の議長が、ゆっくりと口を開いた。



◆ 1 議長の開会


議長

「本日の特別会合は、ある国において、

 反戦と平和を歌う音楽を聴いた若者が“国家転覆を企てた”として投獄された事案を受け、

 加盟国から要請を受けて開催されました。


 これは、単に一つのバンド、一人の若者の問題ではなく、

 表現の自由と、人間としての尊厳に関わる問題です」


世界のカメラが、一斉にシャッターを切る。



◆ 2 日本政府代表のスピーチ


議長

「それでは、当該アーティストの出身国である日本代表に、

 発言の機会を与えます」


日本政府代表の大使が立ち上がり、マイクの前へ歩み出る。


日本大使

「議長、各国代表の皆さま。

 日本代表として、まず申し上げたいのは、


 この問題は“音楽の内容が好ましいかどうか”ではなく、

 “音楽を聴いたというだけで、若者が投獄された”という点に

 本質があるということです。


 私たちは、表現の自由と、思想良心の自由を

 人権の根幹と考えます」


背後のスクリーンには、問題となったアルバムのジャケットが映る。

白い背景に、風に散る花びらと、どこまでも伸びる水平線。

そこに刻まれたタイトルは、

「Light Keeps Breathing ― 光は息をしている」(仮)。


日本大使

「ファイブピーチ★というグループは、

 自らの歴史認識や、虐殺・戦争の悲劇への反省を込め、

 “二度と同じ過ちを繰り返さないように”という願いから

 この曲を制作したと、公式声明で表明しています。


 我々日本政府は、その意図を確認し、

 発言の自由と表現の自由を尊重する立場から、

 問題の若者の速やかな釈放を強く求めるものであります」


場内が、静かにざわめく。



◆ 3 複数の国の声


続いて、ヨーロッパのある国の代表が発言する。


EU加盟国代表

「我々も、日本代表と同様の懸念を共有いたします。

 音楽や芸術は時に、政治を批判し、

 権力を風刺し、歴史の過ちを照らし出すものです。


 しかし、そのたびに“国家転覆罪”という名目で

 若者の自由が奪われるならば、

 世界中のアーティストと聴き手は、

 沈黙するしかなくなってしまうでしょう」


アフリカのある国の代表も、マイクを取る。


アフリカ諸国代表

「私たちの大陸も、

 独裁とクーデター、内戦の歴史を多く経験してきました。

 その中で、音楽や詩が

 人々の心を守ってきたことも事実です。


 “歌を聴いた罪”で若者が牢に入れられる世界は、

 私たちの望む未来ではありません」



◆ 4 ファイブピーチ★からのビデオメッセージ


議長

「ここで、本件に関する当事者でもある

 アーティスト・グループからのビデオメッセージを上映します。

 ファイブピーチ★の皆さんです」


会場の照明が落ち、スクリーンに

日本のスタジオからの映像が映し出される。


中央に、美香。

その両隣に、光子と優子。

後ろには、奏太と小春の姿も見える。


美香

『国連人権理事会の皆さま、

 そして、この会合を見てくださっている世界中の皆さま。


 私たちは、日本で活動している

 ファイブピーチ★という音楽グループです』


光子

『今回、私たちのアルバムに収録された一曲がきっかけで、

 ある国の若者が投獄されたというニュースを知り、

 胸が締め付けられる思いでした』


優子

『まず最初に、はっきりお伝えしたいのは――


 私たちは特定の国名を出して

 誰かを攻撃するために、この曲を作ったのではありません。


 “もう二度と、戦争や虐殺で

 誰かの大切な人が奪われることのないように”

 という祈りと、

 “過去から目を逸らさないようにしよう”

 という願いを込めた歌です』


美香

『その歌を聴いた若者が、

 どれだけのリスクを背負って

 第三国のネット回線に繋ぎ、

 イヤホンで小さな音量にして、

 震える指で再生ボタンを押したのか――


 そう想像すると、

 私たちは、胸が締めつけられると同時に、

 彼の勇気に敬意を表したいと感じています』


光子

『どうか、彼を解放してあげてください。

 “歌を聴いた罪”で若者を閉じ込めることは、

 その国の未来を、

 自ら狭めてしまうことだと思うからです』


優子

『そして、これは私たち自身への戒めでもあります。

 どの国であっても、

 私たち自身の国であっても、

 過去の過ちから目を逸らさないように――


 “権力はいつも、間違える可能性がある”

 その前提に立って、

 笑いと音楽で、

 少しでも“怖くない世界”を作りたい。


 そう願っています』


最後に、5人全員が一礼する。



◆ 5 議場の空気の変化


ビデオが終わると、

しばし沈黙が続いた。


議長

「……ありがとうございました。

 アーティスト自身からの

 率直で真摯なメッセージでした」


場内の何人かの代表が、小さく拍手を送る。

賛否の色合いはさまざまだが、

誰もが、何かを考えざるを得ない表情をしている。



◆ 6 当該国代表の反応


やがて、問題とされている“独裁国家”の代表が、ゆっくりと立ち上がる。

冷静さを装いながらも、その声には硬さがあった。


当該国代表

「議長。

 まず我が国は、

 内政干渉を目的としたあらゆる試みに

 断固として反対する立場であることを表明します。


 我が国で逮捕されたのは、

 単に“音楽を聴いた”からではなく、

 その音楽を利用して――

 国家の安定を脅かす行動をとった疑いがあるからです」


ざわ……と、どよめきが起きる。


EU代表

「“安定”とは何でしょうか。

 若者が一曲の音楽に感動し、

 “今の社会は大丈夫だろうか”と

 問い直すことまで含めて、

 封じ込めてしまうのが“安定”なのでしょうか?」


当該国代表

「我々は、

 自国の歴史と主権にもとづき、

 独自の価値観を守る権利があります」


日本大使

「主権は尊重されるべきです。


 しかし――

 主権は人権を侵害する免罪符ではありません。


 音楽を聴いた若者を“国家転覆”と同一視することが、

 果たして国際人権規約に沿うものなのか。

 この場で、国際社会とともに、

 冷静に見つめていただきたいのです」



◆ 7 結論ではなく、“問い”が残る決議案


その後も、各国から発言が続き、

最終的に、人権理事会としての決議案が読み上げられる。


議長

「本理事会は、

 表現の自由および芸術の自由の尊重を改めて確認するとともに、

 “芸術作品を鑑賞したこと”のみを理由とする逮捕拘束に

 深い懸念を表明する。


 また、当該事案に関して、

 国連の特別報告者が現地調査を行うことを要請し、

 若年者を含む市民の権利が

 国際人権法にもとづき保障されるよう、

 関係国に対して建設的な対話を求める」


決議は、賛成多数で採択された。

その瞬間、拍手する国、

黙って腕を組む国、

複雑な表情で沈黙する国――反応はさまざまだ。



◆ 8 遠く離れたスタジオで


その頃、日本。

ファイブピーチ★のメンバーは、

レコーディングスタジオのロビーで

生中継を食い入るように見つめていた。


美香

「……通ったね」


優子

「うん。

 でも、ここからよね。

 あの国が、実際に彼をどう扱うか……」


光子

「私たちにできることは、

 歌い続けることと、

 あいつが一人やないって世界に言い続けることやけん」


小春

「“名前も顔も知らない誰かのために歌う”って、

 こういうことなんやね……」


奏太

「音楽で世界は一気には変えられんけど――

 『おかしいやろ?』って思う声を、

 世界中で同時に鳴らすことはできる。

 それが今、国連で起きとうことなんやろうね」


テレビの画面には、

まだ硬い表情のまま席に戻る

当該国代表の姿が映っている。


その少し後ろの傍聴席――

わずかに揺れる小さな国旗と、

胸に手を当てて決議採択を見届ける

若い外交官の姿があった。


彼/彼女の心に、

どんな“ひび”が入ったのかは、

まだ誰にも分からない。


だが、確かに世界は、

ほんの少しだけ

別の方向へと動き始めていた。


――

そしてファイブピーチ★は、

この出来事そのものを、

いつか新しい曲にするのだろう。


“歌を聴いただけで捕まった少年のためのレクイエムではなく、

 そこから始まる新しい物語のための歌”として。

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