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美香と光子と優子の爆笑ストーリー。光子と優子29歳  作者: リンダ


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74/96

光は消えない ― ファイブピーチ★ 反戦組曲



『光は消えない ― ファイブピーチ★ 反戦組曲』


場所は都内のスタジオ。

ガラス越しに見えるブースでは、

春介と春海の入ったピーチシード★が

さっきまで新曲のチェックをしていた。


その入れ替わりで、

今度はファイブピーチ★の5人がソファに並ぶ。


* ボーカル&MC:光子

* ボーカル&MC:優子

* ギター:奏太

* キーボード&サックス:小春

* トロンボーン&ストリングスアレンジ:美香


テーブルには、光子が書き散らしたノートと、

小春が作った「アルバム全体コンセプト」のメモ。



■ アルバム全体のテーマ


優子

「ピーチシード★が“出会いと恋”なら、

 うちらは今回は、**“命と戦争と、絶対に手放したくない日常”**にしよう」


光子

「戦争って、ニュースになると“遠い国の話”みたいやけど、

 爆弾落ちるのって、ほんとは

 **“普通に笑いよったリビング”とか“いつもの通学路”やけんね」


美香

「だから、叫ぶ曲だけじゃなくてさ。

 “守りたい日常”もちゃんと描きたいな」


奏太

「10曲全部で、

 『悲しみ → 怒り → 祈り → 日常への帰還』

 って流れ、作らん?」


小春

「いいね、それ。

 一枚通して聴いたら、一つの長い物語みたいになるやつ」


こうして決まったのが、

10曲入りアルバム『光は消えない』。



■ 問題の一曲:独裁を皮肉るロック


その中でも、一番議論になったのが

**「独裁政治を痛烈に皮肉る曲」**だった。


仮タイトルは――


M-4「紙の王様ペーパークラウン


光子

「“あんたの椅子、実は紙でできとうよ”って歌にしたいやん」


優子

「威張っとるけど、

 民衆が笑った瞬間に崩れる王様みたいなね」


歌詞の断片はこんな感じだ。


* 豪華絢爛なパレード

* 無意味に長い演説

* それを義務で拍手する人々

* でも、子どもだけは

 「この王様、なんかヘンやない?」と首をかしげている


サビでは、ド直球のメッセージではなく、

あくまで“比喩”で殴りにいく。


「紙でできた王冠が 雨でふやけて

  にじんだインクが 涙に見えた

 あの日燃やされた教科書のすき間から

  『もう終わりにしよう』って声がした」


奏太のギターは、

メタル寄りのリフで攻めるが、

美香のトロンボーンと小春の鍵盤で

マーチング風の皮肉な明るさを混ぜる。


優子

「“ライブでみんな拳を突き上げたくなるけど、

 歌詞をちゃんと読んだらゾワッとする曲”にしたいっちゃん」


光子

「うちららしく、笑いに“毒”をちょびっと仕込む感じね」



■ 10曲のざっくり構成


※全部細かくは書かないけど、流れだけ。


1. 「開戦のラジオ」

  昔のラジオ放送風SEから始まる、静かなピアノ曲。

  “知らないうちに始まっていた戦争”を描く。

2. 「瓦礫のワルツ」

  崩れた街の中で、子どもたちがそれでも遊びを見つける。

  美香のトロンボーンが哀しげに歌うスロー・ワルツ。

3. 「名前のない手紙」

  前線に行ったまま帰らない人への手紙。

  光子と優子のツインボーカルで、手紙の「出す側と受け取れない側」を歌う。

4. 「紙の王様ペーパークラウン

  独裁政治への痛烈な風刺ロックチューン。(さっきの曲)

5. 「地下室の星座」

  空襲の夜、地下室で星座の話をする家族。

  子どもの視点から、“爆音の上にかすかに光る希望”を描く。

6. 「見えない境界線」

  国境や宗教、言語の違いで争うことの理不尽さを、

  テンポ早めのポップロックで。

7. 「君を守る約束」

  “世界を変える”なんて大きなことは言えない。

  でも「隣にいる君を守る」と約束する、小さな誓いの歌。

8. 「白旗じゃなくてハンカチを」

  降伏の旗ではなく、涙を拭くハンカチを振ろう――という、

  M&Yらしい言葉遊びの効いたミドルテンポ曲。

9. 「光は消えない」

  タイトルチューン。

  失われた命を悼みつつも、

  “語り継ぐことで、その光は生き続ける”と歌う大バラード。

10. 「ただいま、おかえり」

  ラストは一転、穏やかな日常ソング。

  戦火のない朝、

  「いってきます」「いってらっしゃい」「おかえり」と交わされる声が

  どれだけ尊いかを、柔らかいアコースティックサウンドで包む。



■ レコーディング風景、ちょっとだけ


「紙の王様」のテイク中。

ブースの中で、光子と優子が全力で歌い終え、

サビの最後でシャウト気味に声を張る。


エンジニア

「はいオッケー! 今の、鳥肌きました!」


奏太

「いや〜、これはライブでやばいね。

 紙の王様コール起きるやつやん」


小春

「“おーさま、もうやめて、退陣せー!”とかね」


優子

「それ、歌詞より直接的やけん(笑)」


でも、笑いながらも、

誰の目にも本気の火が灯っていた。


「笑いながらでも、

ちゃんと“NO”って言える歌を出そう」


それが、ファイブピーチ★なりの

反戦と平和へのメッセージだった。





歌の向こう側で起きたこと


ニュースは、ある朝いきなり飛び込んできた。


「独裁国家で暮らす若者が、

日本のロックバンド・ファイブピーチ★の楽曲を“反政府的”と当局に認定され、

国家転覆を企てた容疑で拘束――」


スタジオのモニターの前で、

メンバー全員が声を失っていた。


美香が、テーブルの縁をぎゅっと掴む。


「……うちの曲、聴いてくれとったんやね……

 あの国でも」


光子が、ゆっくりと画面を見つめる。

字幕には、匿名の若者の顔にモザイクがかかり、

「第三国経由でネットに接続していた」と説明されている。


優子が、息をのんだままつぶやいた。


「“あの曲”やろうね……

 独裁とか戦争で命が奪われたことを、皮肉ったやつ……」


拓実が、静かに頷く。


「でも、あの歌詞は

 “特定の国”を名指しはしてない。

 どの時代にも、どの国にも起こり得る話を……

 “二度と繰り返さんために”って作ったとに」


スタジオの空気が、重く沈んだ。


しかし、その沈黙を最初に破ったのもまた、光子だった。


「――放っとけんね」


短く、それだけ言った。



緊急ミーティング


その日のうちに、事務所の会議室に

ファイブピーチ★メンバーと、

マネージャー、レコード会社、弁護士が集められた。


机の真ん中に置かれたアルバムのジャケット。

タイトルの「光は消えない」は、

今までになく重い意味を帯びて見えた。


マネージャー

「まず、事務的な確認からです。

 今回のアルバムは、

 あくまで歴史の教訓と反戦・平和への祈りを込めた作品であり、

 特定の国や政権を名指ししたものではありません。

 その前提は崩してはいけません」


美香

「それでも、あの国では

 “危険な歌”になってしまったってことやね……」


穂乃果が、しばらく黙っていたが、

意を決したように口を開いた。


「……私たち、

 “誰のことも見捨てんバンド”になりたいって、

 いつも言ってきたよね。


 だったら、

 今、あの子のためにできること、全部やろうよ」


春介と春海も、うなずく。


「音で励ますことしかできんけん」

「でも、その“しか”が、うちらの全部やけん」


拓実

「声明を出そう。

 それと、日本政府に書簡を出して、

 “人道的な観点からの働きかけ”をお願いしたい。

 政治の専門家じゃないからこそ、

 “人として”って立場で」


優子

「もちろんやる。

 “巻き込んでしまったかもしれない”罪悪感で

 黙っとくほうが、うちらっぽくなかもん」


光子

「ちゃんと、世界に向かって言おう。

 “私たちは憎しみを煽ったんじゃない。

 命を守りたいだけなんだ”って」



声明文を書く夜


その夜、

メンバーとスタッフは一枚の文書に向き合っていた。


PCの画面には、まだ書きかけの文章。


「私たちファイブピーチ★は、

特定の国家や政権を攻撃する意図をもって

楽曲を制作したことは一度もありません。

私たちの歌は、

過去の歴史に学び、

未来の命を守りたいという、

ただその一心から生まれたものです――」


言葉を整えるのは、美香と穂乃果。

そこに光子と優子が、

「ここ、比喩がちょっと強すぎるかも」とか

「この一文に“祈り”のニュアンス足そう」など、

いつもの曲作りと同じように意見を出していく。


春海が、ぽつりと言った。


「“私たちの歌が原因で、

 若者が投獄されてしまったことを

 重く受け止めています”って一文、

 入れたほうがよくない?」


春介

「うん。

 それを言わんと、

 “知らん顔してる”って思われる気がする」


拓実

「でも、“だから歌うのをやめます”とは絶対に書かない。

 そこだけは、はっきりさせとこう」


紙コップのコーヒーが、

何度も空になっていった。


深夜近く、ようやく声明文の骨子がまとまる。



ファイブピーチ★公式声明(抜粋)


私たちファイブピーチ★は、

今回、私たちの作品をきっかけとして

ある国で暮らす若者が拘束されたという報道を受け、

深い衝撃と悲しみを感じています。


まず何よりも、その方とご家族の恐怖と苦しみに

心から寄り添いたいと思います。


私たちは、特定の国や政権を攻撃する意図をもって

楽曲を制作したことは一度もありません。

私たちの歌は、

過去の歴史において多くの命が奪われた事実から目をそらさず、

その悲劇を二度と繰り返さないために、

“命の尊さ”と“平和への祈り”を

音楽という形で表現したものです。


もし私たちの作品が、その方の心に

「生きたい」「自由になりたい」という願いを灯したのだとしたら、

音楽家として、それは誇るべきことだと感じています。

しかし同時に、そのことによって

ご本人が危険な立場に置かれている現状を、

大変重く受け止めています。


私たちは、この若者の一日も早い釈放を強く求めます。

また、日本政府をはじめ国際社会の皆様に対し、

人道的な観点からの働きかけを心よりお願いいたします。


音楽は、人々を傷つける武器であってはならないと信じています。

音楽は、本来、

人の心をつなぎ、

暗闇の中に灯りをともすものだと信じています。


私たちはこれからも、

憎しみではなく、

いのちへの敬意と、

誰かの明日を願う思いをこめて歌い続けます。


2052年4月10日

ファイブピーチ★


文末の署名のところに、

メンバーそれぞれのフルネームが並ぶ。


光子が、画面を見つめながらぽつりと言った。


「……よし。

 これで、今の私たちの“全部”は伝えられる気がする」


優子

「うん。

 完璧やないかもしれんけど、

 “逃げてない”って胸張って言えるね」



日本政府への書簡


同時に、日本政府宛ての書簡も用意された。


「私たちは政治の専門家ではありません。

しかし、音楽家であり、一人の市民として、

そして何より“子どもたちに未来を手渡す大人”として、

この問題を見過ごすことはできません――」


そこには、


* この件が“政治的な対立”ではなく

**“人間の尊厳の問題”**であること

* 日本政府に、“対話”と“人道的配慮”という形で

働きかけをしてほしいこと

* 自分たちは「政府に圧力をかけてほしい」とは言わないが、

「命と自由を守るための声」を

どうか外交の場に届けてほしい、ということ


が、丁寧な言葉で綴られていた。


美香が読み上げると、

春海が小さく手を挙げる。


「最後に一文、追加してもいい?」


「何?」


「“音楽を愛するすべての人が、

 恐怖ではなく、自由な心で歌や音を楽しめる世界を

 私たちは望んでいます”ってやつ」


光子と優子が、同時に笑う。


「うちの子、かっこよすぎん?」

「これは入れよ。決まり」



世界の反応、そして静かな夜


声明は、

ファイブピーチ★公式サイトと各種SNSで公開された。


数時間もしないうちに、

世界中でハッシュタグが飛び交い始める。


#PrayForThatYoungListener

#MusicIsNotACrime

#FivePeachVoice


海外メディアも取り上げ、

“Japanese Band Stands Up for Imprisoned Fan”

という見出しが並んだ。


——しかしその夜の小倉家では、

テレビを消したあと、

少し静かな時間が流れていた。


リビングで、

光子と優子、美香、拓実、翼、子どもたちが輪になって座っている。


陽翔

「ママたちの歌、

 聴いてくれた人が、つかまっちゃったと?」


光子

「うん……

 その人は、うちらの歌で

 “自由になりたいな”って思ってくれたんやと思う。


 でも、その国は

 “そんなこと考えるな”って言う国なんよ」


結音

「なんで?

 じゆうになりたいって、いかんと?」


優子が、少し考えてから答える。


「本当はね、いかんはずない。

 でも、その国には

 “えらい人の言うことが絶対”ってルールがあってね。


 “自分で考えること”を怖がっとる大人たちが

 たくさんおると」


燈真

「……こわいね」


彩羽と悠翔は、意味はわからないまま、

不安そうな顔で大人たちを見つめていた。


美香が、子どもたちを見回して、ふっと微笑む。


「だからこそ、

 うちらは歌うんよ。


 “暴力よりも言葉を選べる人になろうね”って、

 “誰かの自由を奪うんやなくて

 隣に座って一緒に笑える人になろうね”って、


 歌で伝えたいんよ」


拓実

「歌一つで、世界全部は変えられん。

 でも、

 “画面の向こうの誰か一人の心”くらいなら、

 動かせるかもしれん。


 その“一人”が今、

 向こうの国で頑張りよる彼なんかもしれんね」


光子

「……うちらの声が、

 あの子に届くといいね」


優子

「泣きよるんやないとよ。

 “絶対、諦めんけんね”って顔で

 待っとってほしいね」



そして、ステージへ


数日後。

ファイブピーチ★は、予定通り

春のツアー初日を迎えた。


ステージ袖。

出番前、マイクを握る光子の手には、

あの声明文のコピーが一枚、折りたたんで入っている。


優子

「ビビらんでよかよ。

 うちらは、“いつもの仕事”しに行くだけやけん」


光子

「うん。

 いつもどおり、

 全力で笑わせて、全力で泣かせて、全力で祈る」


SEが流れ、客席の歓声が一気に膨れ上がる。


暗転の中、

光子は、胸の中でそっとつぶやいた。


(――見とってね)

(うちら、

 あんた一人のためにも、

 ちゃんと唄うけん)


ライトが一斉に点き、

ファイブピーチ★の春ツアーが幕を開ける。


そのステージのどこか、

まだ名前も知らない

“あの国の若者”への想いが、

確かに、強く、熱く、

音となって飛んでいくのだった。


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