柳川 拓実(日本) vs リム・ウェイシン(シンガポール)
◆ 男子シングルス決勝
柳川 拓実(日本) vs リム・ウェイシン(シンガポール)
場内アナウンス
「メンズ・シングルス、ゴールドメダルマッチ!」
相手は、
シンガポールのエース・リム。
回転のキレがエグいサーブ
安定した両ハンドドライブ
メンタルも強く、粘りまくるタイプ
◆ 試合展開ざっくり
1ゲーム目:
リムのサーブと台上テクニックに翻弄され、
9-11でリム先取。
2ゲーム目:
拓実がレシーブを修正、
3球目攻撃で主導権を握り 11-7。
3ゲーム目:
お互いブレイクの取り合い、
最後はリムの強打が決まって 10-12。
4ゲーム目:
「このセット落としたら終わる」という場面で、
拓実が強気のバックハンドを連発。
11-8で取り返し、2-2。
5ゲーム目:
どちらも譲らず 13-11で拓実。
しかし6ゲーム目を 9-11 で落とし、
3-3。
そして――
◆ 最終ゲーム(第7ゲーム)
スコアは、気づけば 20-20。
会場は総立ち。
ラリー1本ごとに悲鳴と歓声が入り混じる。
タイムアウト明け、
タオルで顔を押さえながら、
拓実は目を閉じる。
(優子、何て言いよったっけ……)
――少し前。
出発前のリビングで。
優子
『あんたね、ミス怖がってラケット止めたら、
その瞬間に負けやけんね。
振り抜いて負けたら、うちは怒らん。
ビビって止めたら、説教3時間コースばい。』
拓実
『それ、勝っても負けても地獄やない?』
優子
『よかけん、前に前に振り抜いてこんかい。』
……その声が、耳の奥によみがえる。
拓実
(そうやった。ビビって止めるのが一番ダサい。
怒られたくなかったら、止めるな、振り抜け。)
◆ 20-20――運命のラリー
リムのサーブ。
回転の分かりづらい横下回転。
拓実、ギリギリまで引きつけて――
迷わずバックで振り抜く。
ガツッ……!
ボールは、
ネット際ギリギリで卓球台の“エッジ”をかすめ、
角度を変えて相手コートへ。
リム
「……っ!」
どうにもならないコース。
審判が即座にコール。
「エッジボール! ポイント ジャパン!」
スコア:21-20(拓実のチャンピオンシップポイント)。
◆ 3球目攻撃――フィニッシュ
拓実サーブ。
ここで選んだのは、
フォア前ギリギリに止まる、キレッキレの横下回転。
リムは、迷いつつも
フォアでフリックしてくる――
その瞬間。
拓実
(これや!)
半歩回り込んで、
“三球目攻撃”フルスイング。
フォアドライブが
対角線の深い位置へ刺さる。
リムのラケットは、
ボールにかすりもせず――
試合終了。
主審
「ゲーム、セット、アンドマッチ!
柳川! 4-3!!」
観客席、日本ベンチ、総崩れ。
拓実は天井を見上げ、
こぶしを高く突き上げた。
男子シングルス、金メダル。
◆ 優勝インタビュー(拓実)
インタビュアー
「おめでとうございます!
壮絶なフルゲーム、ファイナルゲーム20-20からの勝利でした。
今のお気持ちは?」
拓実
「しんどかったです。正直。
でも……最後までラケットを振り抜けてよかったなって思ってます。」
インタビュアー
「20-20の場面では、何を考えていましたか?」
拓実
「優子に言われたことを思い出しました。
“ビビってラケット止めたら説教3時間”って……」
会場、ドッと笑い。
拓実
「だから、
**『怒られたくなかったら、とにかく振り抜け』**って。
あの一言が背中押してくれましたね。
――これで、とりあえず
優子に怒られずに済みました。
まずは“ちゅ〜ポイント”1ゲット〜。」
会場:大爆笑&拍手。
インタビュアー
「“ちゅ〜ポイント”ですか?」
拓実
「ええ。
これから団体戦もあるんで、
ちゅ〜ポイント、もっと貯められるようにがんばります」
◆ 女子シングルス決勝
三浦 結衣(日本) vs 張 玲(中国)
女子は、最強王国・中国が相手。
張 玲は、世界ランク1位。
スピード・パワー・精度、すべて一級品。
◆ 試合は当然のようにフルゲーム
1ゲーム目:張の圧力に押され 7-11。
2ゲーム目:結衣の台上テクニックが光り 11-8。
3ゲーム目:ラリー戦で張が押し切り 9-11。
4ゲーム目:結衣がコース配分を変えて 11-6。
5ゲーム目:互角の打ち合いを張が 10-12。
6ゲーム目:結衣、サービスからの展開を磨き 11-9。
そして、最終ゲーム。
男子と同じく“世界の頂上決戦”は、
当然のようにデュースへ。
◆ 最終ゲーム 終盤
スコア 9-9 → 10-10 → 11-11……
止まらないデュースの応酬。
ベンチに戻って、
結衣は深呼吸を一つ。
(拓実さんも、優子ちゃんに怒られたくなくて
振り抜いたんよね……
じゃあ私は、“自分の卓球を好きでいたい”ために振り抜こう。)
コーチ
「三浦。悔いが残らんように、
一番好きなボール打ってこい。」
結衣
「はい。」
◆ 20-20 → 決着
張のサーブ。
回転の読みにくい横上回転。
結衣は、
一瞬だけ躊躇して――その躊躇を、自分で笑う。
(迷ったらダメ。前に、前に)
バック側に来たボールに対し、
ぐっと腰を落として――
バックハンドカウンター。
角度のない、
鋭いストレート。
張のラケットは届かず、
ボールがサイドライン際に吸い込まれる。
主審
「ポイント ジャパン!」
21-20(結衣のチャンピオンシップポイント)。
最後のポイント、
張の強打を結衣がブロックでコースを変え、
ツッツキで揺さぶり、
甘く浮いたボールに――
もう一度、
バックハンド。
今度はクロス。
ネットすれすれで突き刺さる。
張のラケットは、
ほんの数センチ届かなかった。
主審
「ゲーム、セット、アンドマッチ!
三浦! 4-3!!」
女子も、日本が金メダル。
◆ 優勝インタビュー(結衣)
インタビュアー
「三浦選手、おめでとうございます!
中国のエースとの大激戦、見事な勝利でした。
今のお気持ちは?」
結衣
「ありがとうございます。
ただ、ただ……今は“打ち切れた”ことが嬉しいです。
途中で怖くなる場面もありましたけど、
最後まで前に出るって決めてたので。」
インタビュアー
「20-20からのバックハンドは見事でした。
何か意識していたことは?」
結衣
「拓実さんが先に金メダル獲って、
“ちゅ〜ポイント1ゲット〜”とか言ってたじゃないですか」
会場、爆笑。
結衣
「正直、“ずるいな”って思ったんで、
私も旦那にご褒美ちゅ〜おねだりできるように、
最後まで振り抜こうって。」
インタビュアー
「ここにも“ご褒美ちゅ〜”が(笑)」
結衣
「はい。
でも一番は、
自分が胸張って“やりきった”って言える卓球ができたこと。
その上で、旦那にちょっとくらい甘えてもいいかなって思ってます」
◆ 日本・柳川家リビング
テレビから、
拓実の「ちゅ〜ポイント1ゲット〜」
→ 結衣の「ご褒美ちゅ〜」まで全部流れる。
優子
「……あんたら夫婦、揃いも揃って何言いよるとね……」
結音
「パパ、ちゅ〜ポイントいっぱいになったと?」
灯乃
「ママは、パパになんちゅ〜する? ほっぺ? くち?」
悠翔
「おねーしゃん、ちゅ〜!!(関係なく突進)」
優子
「ひとまず言っとくけど……
金メダル2枚分の説教は、ちゃんとするけんね。
その上で“ちゅ〜ポイント”は考えちゃる。」
結音&灯乃
「ママ、ツンデレ〜〜!!」




