ヨハネスブルク・卓球会場 男子シングルス 5回戦(ベスト8決め)・テニスセンター 男子シングルス 5回戦(ベスト8決め)
◆ヨハネスブルク・卓球会場
男子シングルス 5回戦(ベスト8決め)
柳川 拓実(日本) vs ムバリ・ジョエル(南アフリカ)
アフリカンビートが鳴り響くような歓声の中、
地元・南アフリカのエース、ムバリ・ジョエルが入場する。
アナウンサー
「会場の声援を一身に受けているのは、
地元・南アフリカのムバリ。
一撃の破壊力と、コートカバーの速さが持ち味です!」
解説
「完全アウェーですね。
柳川にとっては、“空気ごと敵”みたいな試合になります」
拓実は、ブーイングと歓声のミックスを
“いつもの練習場のざわめき”くらいにしか感じていない顔をしていた。
(いいね。
こういう“全部押し寄せてくる感じ”は嫌いじゃない)
◆ 第1ゲーム:爆発力 vs 吸収力
ムバリのサーブから始まる。
いきなりバックハンドでチキータ、
そこから超速フォアドライブ。
観客席が「ウォォォッ!!」と揺れる。
アナウンサー
『いきなり地元エースがフルスイング!!』
しかし――
そのボールは、
テーブルのギリギリでオーバー。
拓実
(はい、“最初のオーバー”いただき)
序盤はムバリの派手なドライブと、
それを微動だにせずブロックし続ける拓実、
という構図が続く。
ムバリ
(なんでそれ全部入るんだよ……!)
拓実のブロックは、ただ返すだけではない。
回転を増やし、深く、時に少し遅く。
相手の瞬発力が生む“球の勢い”に、
自分の回転を足して“重さ”に変えてしまう。
解説
「柳川は、相手のパワーを“そのまま返さず、
一度自分の中で消化してから出している感じですね」
ムバリがさらに力を込めれば込めるほど、
ボールは自分のコートに重く戻ってくる。
第1ゲーム 11–6 拓実。
◆ 第2ゲーム:瞬発力の“逆利用”
2ゲーム目。
ムバリはコースを散らし、
早い展開で勝負しにくる。
だが、拓実は
あえてラリーのテンポを上げない。
・速いボールには、
ブロックで“1テンポ遅いリズム”を返す。
・甘いボールには、
コンパクトなカウンターで逆コース。
ムバリ
(振った瞬間に、“次の一歩”が出せない……)
(足が、ほんのちょっとだけ遅れる……!)
アナウンサー
『南アフリカのムバリ、攻撃は悪くないんですが、
“全部ほんの少しだけ崩されている”印象ですね!』
解説
「瞬発力のある選手ほど、
“自分のタイミング”を狂わされるとキツいんですよ。
柳川はそこを、的確に突いています」
拓実は中盤、
サーブを短く・長く・横回転・下回転と細かく変え、
ムバリの“出足のスイッチ”を狂わせ続ける。
気がつけば
第2ゲーム 11–4。
◆ 第3ゲーム:ギアアップで締め
3ゲーム目、
ムバリは最後の力を振り絞るように、
開始からフルスイングを続ける。
会場も総立ち。
まるで決勝のような騒ぎだ。
アナウンサー
『会場は完全にムバリ一色!!』
拓実
(よし、ここで“世界トップの速さ”見せとこ)
それまで少し後ろで受けていた位置を、
半歩前に詰める。
同じスイング。
でも、タイミングがほんの少し早くなる。
その瞬間――
ムバリのドライブが、
ことごとくブロック・カウンターで返り始めた。
・クロスに打てば、ダウン・ザ・ライン。
・フォア側を狙えば、逆クロスのカウンター。
ムバリ
(追いつけない……
“自分の速さ”が、そのまま自分に返ってきてる……)
最後は、
ラリーの中でじっくり回転をかけたドライブを混ぜ、
一瞬のタメからのフォアスマッシュ。
11–7。
レフリー
「ゲーム、セット、マッチ!
ヤナガワ、スリーゲームズトゥラブ!」
拓実は、
会場四方に軽く会釈しながらベンチへ戻っていった。
(ありがとう、ナイスファイト。
君の瞬発力のおかげで、こっちもいいギアに入れた)
◆ ヨハネスブルク・テニスセンター
男子シングルス 5回戦(ベスト8決め)
青柳 翼(日本) vs ダニエル・テスファイ(エチオピア)
場所は変わって、テニスのコート。
対戦相手のダニエル・テスファイは、
エチオピア期待の超新星。
フットワークとカウンターが武器の“走れるストローカー”。
アナウンサー
「こちらも、“瞬発力と脚力の怪物”と言われるテスファイ。
青柳にとっては、やりがいのある相手です!」
翼はベースラインでストレッチをしながら、
相手のフットワークをじっと観察していた。
(うん、速い。
でも、“速さの使い方”までは、まだ体が覚えきれてない感じ)
◆ 第1セット:走らせる側が、走らせ“きる”
最初の数ゲームは互いにキープ。
テスファイは、
とにかく走る、走る、走る。
・逆クロスに放ったボールでも追いつく。
・ドロップショットにも全力疾走。
・コートの外からでもカウンターを放つ。
観客
「おおおお!!」
アナウンサー
『テスファイ、驚異的な走力です!』
しかし、
翼の頭の中には、
すでに“何ゲーム後かの絵”が見えていた。
(いいね。
じゃあ、その瞬発力――
全部こっちの設計図の上で使ってもらおうか)
ラリーの中で、
翼はあえて“ギリ届く”ボールを配球する。
・クロス→クロス→逆クロス
・フォア側を空けておいて、最後にそこへ打つ
・ベースラインギリギリの深さを維持
テスファイは、
ほとんどのボールに追いつくが、
最後の一本でどうしても体勢が崩れる。
ミスが増え始め、
ゲームカウントはじわじわと日本に傾く。
6–3 翼。
◆ 第2セット:瞬発力が“重くなる”時間
2セット目序盤、
まだテスファイの足は動く。
だが、
ラリーが長くなればなるほど、
ショットの精度が落ちてきた。
解説
「青柳は、“相手の瞬発力が落ちる時間帯”を
最初から計算して試合を組み立ててますね。
とにかく“走らせきる”ラリーを繰り返している」
テスファイ
(まだ走れる、まだいける……!)
そう思って全力スプリントを続ける。
だが、呼吸と足の動きが、
微妙にかみ合わなくなってきた。
そこに、翼の“静かな一撃”。
ドロップショット。
ロブ。
ネットに詰めてのボレー。
プレーの“種類”を、ここで一気に増やしてくる。
アナウンサー
『青柳、ここにきてプレーの幅を一段階広げてきました!』
6–2 翼。
◆ 第3セット:逆手取りの締め
3セット目。
テスファイはまだあきらめない。
走る。
叫ぶ。
打つ。
スタンドからも、「ダニエル!」コール。
だが、
翼の中では、もう答えが出ていた。
(君の速さは、本当に素晴らしい。
でも今は――
“どこに走るか”まで俺が決める側やけん)
・外へ振って、内側に戻さない。
・逆をついたあと、さらに逆で“脚の入れ替え”を強制。
・最後の最後は、エースを狙うのではなく、
“返すだけになった球”を淡々とコーナーに運ぶ。
テスファイの振り抜いたラケットが、
何度も何度も空を切る。
自分の瞬発力が、
自分を追い詰める形になっていく。
最終スコア 6–3 / 6–2 / 6–3。
レフリー
「ゲーム、セット、マッチ! 青柳、スリーセットストゥラブ!」
握手の時。
テスファイは、
肩で息をしながらも、
笑って言った。
テスファイ
「君とやると、自分が“もっと賢くならないと”ってわかったよ」
翼
「いや、今日はただ、
君の速さを“俺のテニスの一部”として使わせてもらっただけ。
すぐに、もっと強くなるよ」
◆ 日本・ちびっこ応援センターの反応
またしても、
夜のリビングは大騒ぎ。
陽翔
「パパ、めっちゃ走らせとった〜!」
燈真
「“にげられない鬼ごっこ”みたいやった!」
彩羽
「ぱぱ〜、かっこいい〜♡」
結音
「たくみパパも、“じぶんはあんまり動かんのに、
ボールだけめっちゃ動いとった」
灯乃
「“しずかにあいてをつかれさせる作戦”やね!」
美香
「表現がもう、スポーツ漫画の解説みたいになっとる(笑)」
光子
「でもほんと、
“瞬発力のある相手ほど、
落ち着いたほうが強い”っていう、教科書みたいな試合やったね」
優子
「さぁ、これで2人ともベスト8。
ここから先は、
1試合1試合が“伝説入りコース”やねぇ」




