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美香と光子と優子の爆笑ストーリー。光子と優子29歳  作者: リンダ


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爆笑葬式

久留米の空は、少しだけ曇っていたけど、

斎場の前には、もうすでに“ただのしんみり葬式では終わらんぞ”という気配が漂っていた。


入口のボードには、遺影の安三郎が満面の笑み。

その下に、遺族が本気で悩んだ末に採用した一文。


「泣いて笑って送ってくれい ― 赤嶺安三郎」



◆ 開式前からカオス


受付近くでは、

親族たちが「この服でエロ談義していいとやろか…」と

よく分からない心配をしながらスーツのネクタイを直している。


中に入れば、

祭壇の横に、きれいな花と位牌。

そのすぐ脇には、なぜか小さなホワイトボードが立てられていて、

マジックでこう書いてある。


【本日のプログラム】

① 開式・黙祷

② 喪主挨拶

③ 思い出スピーチ

④ エロ談義(※18歳未満は“恋バナ談義”に自動変換)

⑤ 合掌・お別れ


葬儀社の人が、若干引きつった笑顔で確認する。


「本当に、このまま出されますか…?」


アキラ

「じいちゃんの正式な遺言なんで…

 ここで丸めたら幽霊になってツッコミ入れてきます」


光子

「“お前ら、ビビって改ざんしたやろ〜”って絶対言うよね」


優子

「ていうか、すでに遺影が“言いそうな顔”しとるし」


遺影:ニヤッ。



◆ 開式 ― 静かに始まり、速攻で崩れる


僧侶の読経が静かに響き、

一通りの式次第が滞りなく進む。


「では、喪主 挨拶を…」


マイクの前に立つのは、アキラ。


深く一礼して、低い声で切り出す。


「本日はお忙しい中、

 祖父・赤嶺安三郎の葬儀にお越しいただき、

 誠にありがとうございます」


ここまでは、普通の葬儀の喪主挨拶。


だが、彼の手元には、

しっかりと安三郎直筆の“遺言メモ”が挟まっている。


「祖父は、生前からずっとこう言っていました。

 『わしの葬式でしんみり泣くのは、30分まで。そのあとは笑え』と」


会場から、クスクス…と小さな笑い。


「さらに、

 『わしの葬式で誰もエロ談義せんやったら、

 化けて出て、夜中に全員の耳元で

 “お前、最近どうなん?”ってささやき続けるぞ』と…」


会場:ドッ


僧侶まで、読経のあとで視線をそらしながら笑いをこらえている。


アキラは、苦笑いしつつ続ける。


「ですので本日は、遺言に基づき、

 泣きながらも、しっかり笑って、

 時々ギリギリラインを攻めながら(※常識の範囲内で)、

 祖父を見送らせていただきます」


一礼。

拍手が起こる葬儀、あんまり聞かないけど、今日だけはアリだ。



◆ 2代目エロ大魔王、先に旅立つ


続いて、家族代表のスピーチ。

マイクの前に呼ばれたのは、優馬。


ネクタイを少しゆるめ、

深く一礼してから顔を上げる。


「えー、小倉優馬です。

 あの、“エロ大魔王”の系譜についてひと言よかですか」


会場、すでにざわっと笑う。


「赤嶺家・小倉家界隈ではですね、

 うちのじいちゃん――赤嶺安三郎が“2代目エロ大魔王”、

 そしてワタクシ優馬が“初代エロ大魔王”ということになっておりまして」


「順番おかしかろうもん!」と各所からツッコミの気配。


優馬はその気配ごと受け止めて、

少し目を細めて遺影を見上げる。


「…でもね、

 本当は“わしが初代じゃい”って、

 じいちゃん、ずーっと心の中で思っとったとやないかって、

 今朝ふと思ったとです」


会場:クスッ。


「それがさぁ…

 2代目って呼ばれよった方が、先に旅立ってしもうて。


 俺からしたら、言いたいわけですよ」


優馬は、マイクを握り直し、

わざと少しだけ声を張った。


「なんで俺より先に行くとね!

 まだまだエロ談義させんかい!!」


会場:ドッ ドッ ドッ


親戚席からも、「言うたー!」みたいな笑いと拍手。


優馬は、その笑いが落ち着くのを待ってから、

ふっと真顔に戻る。


「…でもね。

 じいちゃんが先に行ったってことは、

 あの世での“エロ大魔王リーグ戦”に、

 誰よりも早くエントリーしたってことでもあるわけで」


「やめぇ!」と光子が小声でツッコむ。会場、また笑い。


「先に行ったぶん、

 向こうでしっかり場を温めとってください。


 俺がそっちに行くのは、

 まだまだ先でええけど…

 行った時には、

 “おう、遅かったのぉ。

 こっちでも漫才やるぞい”って、

 また馬鹿みたいな顔で笑って迎えてくれたら、

 それで十分です」


優馬の目が、少し赤くなっている。


「じいちゃん。

 2代目とか初代とか、もうどっちでもよか。


 俺にとっては、

 “人生で一番でっかい笑いの師匠”でした。


 …ありがとう」


深く一礼。

笑いと拍手とすすり泣きが、

同時に会場を包む。



◆ エロ談義コーナー(※年齢制限付き)


いよいよ、プログラム④

「エロ談義(※18歳未満は恋バナに変換)」の時間がやってきた。


司会(親戚)があえてマイクで宣言する。


「それではここから約5分間、

 故人の強いご要望により、

 “年齢制限付きトークタイム”となります。


 18歳未満のお子さん方は、一旦ロビーでジュースとお菓子タイムとします」


春介

「えぇぇ!? なんでや!一番気になるとこやん!」


春海

「差別やん!情報格差やん!」


光子

「大丈夫大丈夫。

 あとで“R-12編集版”として教えちゃるけん」


優子

「お前らは今は“ひいじいちゃんLOVE談義”しとき。

 エロの方は、将来自分の人生で体験してから理解しなさい」


ぶつぶつ言いながらも、

子どもたちはロビーに連行されていく。

(ロビーでは案の定、「ひいじいちゃん、若い頃めっちゃモテとったらしいばい」とかいう

 微妙にギリギリな雑談が繰り広げられる)


会場内では、

大人たちが少しだけ声を落として、

それぞれの“安三郎伝説”を披露し始める。


* 「若い頃、奥さんに“わしは3分で満足させる男じゃ!”って胸張って、

 “短すぎるわボケ!”って怒鳴られた話」とか

* 「入院中、看護師さんに“わし、心臓より先にスケベ心の検査してほしいわい”って言って

 看護師さんを爆笑させた話」とか

* 「敬老会でマイク持たせると、3割は下ネタ、3割はノロケ、残り4割はダジャレっていう

 謎配分のスピーチしかしなかった話」とか


どれもこれも、

ギリギリ“テレビでは流せないライン”だが、

会場の大人たちは、

涙を拭きながら腹を抱えて笑っていた。


そして、最後に光子がひと言まとめる。


「…つまりですね」


「ひいじいちゃんは、

 一生をかけて“生きることとエロと笑いはセットだ”って、

 体で教えてくれた人でした。


 “恥ずかしいことも、ちゃんと笑い飛ばせ。

 でも、相手は絶対傷つけるな”って」


優子も頷く。


「だから、

 エロ談義も立派な“人間賛歌”ということで、

 本日のところはどうかひとつ…」


会場:拍手


僧侶:袖で口を押さえて笑っている(が、プロなので顔は崩さない)。



◆ 最後のお別れ ― 泣きながら笑って送る


棺のふたが開けられ、

花入れの時間がやってくる。


優馬が、一輪の白い花をそっと置きながら、

小声で言う。


「じいちゃん。

 まだまだこっちの“エロ大魔王の座”は俺が守っとくけん。

 あの世リーグで待っといて」


アキラは、

少し震える声で花を入れながら。


「じいちゃん。

 俺、あんたみたいな“泣き笑いできる大人”に、

 ちょっとは近づけたかな。

 これからも、見とってくれ」


光子は、棺の中の安三郎の顔を覗き込み、

涙と笑顔を同時に浮かべる。


「じいちゃん。

 映画、ちゃんと観てくれてありがとう。

 原爆も震災も、

 “笑いが奪われる現実”も、

 じいちゃんと一緒に考えられた気がする。


 …これからも、

 うちら、全力で笑わせまくるけん。

 “まだまだやな〜”って思ったら、

 夢ん中でダメ出ししに来てよかけんね」


優子も、隣で花をそえながら。


「“葬式でエロ談義しろ”なんて遺言出すの、

 世界中でじいちゃんくらいやと思う。


 でも、

 そうやって“笑って送ってくれ”って言ってくれたから、

 うちら、こうして泣き笑いしながら

 ちゃんと“さよなら”言えたよ。


 …ありがとね、ひいじいちゃん」


春介と春海は、

最後に二人並んで棺のそばに立つ。


「ひいじいちゃん。

 うちら、大きくなったら、

 ちゃんと“エロ談義”の意味も分かると思うけん…

 そのときまた、

 “お前らも一人前やな”って笑ってね」


「その時まで、

 ちゃんと見とって。

 …ひいじいちゃん、大好き」


二人がそう言って花を入れた瞬間、

会場のあちこちから鼻をすする音が聞こえた。


でも同時に、

さっきまでの爆笑の余韻が残っているせいで、

誰の顔も“悲しみ100%”にはなっていない。


――泣きながら、笑っている。


まさに、

安三郎がいちばん好きだった表情だ。


棺のふたが静かに閉じられ、

最後のお別れの合図が告げられる。


一同、合掌。


「……じいちゃん、

 いってらっしゃい」


誰かがそうつぶやいた。


そして心の中で続ける。


「また、笑いながら会おうね」



この「爆笑葬儀」の噂は、

のちに親戚や近所の人たちの間で語り草になり、


「ああいうふうに見送られたら、悪くないねぇ」


と、

何人ものお年寄りがしみじみ言うことになる。


そして光子と優子は、

平和のステージに立つたびに、

ときどきこんな一言を添えるようになる。


「うちらの原点は、

 “エロ大魔王のじいちゃん”です。

 命が終わるその時まで、

 人を笑わせたがっとった人の背中を見て育ちました。

 だからこそ、

 “笑える毎日”を守りたいって、本気で思ってます」


そのたびに、

空のどこかで、

安三郎が「よう言うた!」と

ガッツポーズしている気がして――


家族はまた、

泣きながら笑うのだった。




久留米の赤嶺家。

安三郎の四十九日を少し過ぎた、静かな午後だった。


仏間には、まだ新しい位牌と、笑っている遺影。

線香のかすかな匂いが、ふすまの隙間から廊下まで漂っている。


美香、光子、優子の三人は、並んで座卓の前に座っていた。

向かい側には、黒い喪服姿の静子が、ゆっくりと正座している。


「ほんなこつ、よう来てくれたね」


かすれた声でそう言いながらも、

静子の目元は、どこか柔らかく笑っていた。


「おばあちゃん、体調はどう? 無理しとらん?」


美香が心配そうに尋ねると、

静子は「なんのなんの」と手を振った。


「からだはボチボチよ。

 ただ…心ん中は、まだちぃーっと寂しかね」


そう言って、

静子は遺影をちらりと見上げる。


その視線のあとを追って、

三人も自然とひいじいちゃんの笑顔を見た。



◆ 「じいちゃんは、あんたらの親衛隊やったとよ」


少しの沈黙のあと、静子がぽつりと話し始める。


「…あの人ね、生前よう言いよったとよ。

 “おれは美香ちゃんと、みっちゃんと、ゆうちゃんの、

 いっちばんの親衛隊っちゃけんね”って」


美香が、はっと顔を上げる。


「親衛隊…?」


「そうよ」

静子は、思い出すように目を細めた。


「テレビにあんたらが出るやろ?

 番組表ばチェックしてからね、

 始まる10分前から、もうテレビの前に座り込んで、

 『まだ始まらんか〜』ってぶつぶつ言いながら待っとったと」


光子が、思わず笑う。


「想像つく…

 “リモコンどこいった〜”って言いながら、

 自分の尻の下に敷いとるタイプやね」


「そうそう(笑)。

 で、始まったらもう、テレビにかじりつきよった。

 『ほら見てみぃ、あれがわしの孫と、孫の嫁たちやで〜』って。

 誰もおらん部屋でも一人で自慢しよったとよ」


優子の目が、じわっと潤む。


「……じいちゃんらしい…」


静子は、今度は少し誇らしげな顔になった。


「ラジオもね。

 あんたらがゲストで出る言うたら、

 スマホの前で正座して待っとった。


 録音の仕方、最初はぜーんぜん分からんでね。

 葵に教えてもらって、“ここ押したら録音やぞ”って紙に書いて、

 スマホの裏に貼っとったと」


三人の肩が、同時に小さく震える。

笑いたいのに、笑うほど涙がこぼれそうで、

変な顔になっていく。


静子は、そっと懐からスマホを取り出した。


「これがね、

 あの人のスマホ。

 中、整理しよったら…

 出るわ出るわ、あんたたちのラジオの録音ばっかり」


ホーム画面を開き、

「ボイスメモ」のアイコンをタップする。


そこには、ずらりと並ぶ録音ファイルのタイトル。


「2049_美香ちゃんFM出演」

「2051_みっちゃんゆうちゃん生放送」

「M&Y_深夜ラジオ1」

「M&Y_深夜ラジオ2(神回)」

「ファイブピーチ★特番」


光子

「“神回”て書いとる…」


優子

「しかも“2”ってことは、1もあるやん…」


静子は、

一番上にあった、比較的最近の日付のものをタップした。



◆ ひいじいちゃんの「録音ラジオ」


スピーカーから、懐かしいジングルが流れ出す。


『今夜も始まりました、M&Yのフライデー爆笑ラジオカフェ!

 パーソナリティは、青柳光子と――

 柳川優子です!』


ラジオ特有のテンションで話す二人の声が、

居間いっぱいに広がる。


『今日はスペシャルゲストに、

 福岡交響楽団のトロンボーン奏者・赤嶺美香さんをお迎えしていまーす!』


『よろしくお願いします〜。

 普段はオーケストラで真面目に吹いてますが、

 今日はこの二人のせいで、

 たぶん真面目に終わりません(笑)』


三人は、

その時の収録をはっきり覚えていた。


(あの時、楽屋でくだらん話ばっかしよったよね)

(ADさんに“時間押してます!”って怒られたやつね…)


懐かしさで胸がいっぱいになりかけたその時――

録音の中から、別の音が割り込んできた。


「おーおーおー、始まった始まった……!」


明らかにスタジオの音ではない、

低くしゃがれた、でも聞き慣れた声。


静子が、小さく笑う。


「これね、じいちゃんの声。

 本人、録音しよること忘れて、

 普通に喋りよるとよ」


スピーカーから、ラジオ本編と同時に、


『あれがわしの孫の嫁やで〜。

 美香ちゃんもおるやんか、今日はトリプル推しの日やな〜』


という、

ご機嫌なじいちゃんの声が被さる。


光子

「被せ解説、入っとるやん…!」


優子

「副音声つきやん…!」


ラジオの中の自分たちが、

バカみたいに笑いながらハイテンションでしゃべっている横で、


『今のツッコミよかったのぉ、さすがわしの孫の嫁じゃ』

『おお、そのフレーズええな、“メモメモ”…』

『美香ちゃんの低音、今日もよぉ響いとるわい…』


という、

完全に“ただの一ファン”としてのコメントが延々と続いている。


その声は、

いつも電話越しに聞いていた、

あのひいじいちゃんの声そのままだった。


美香の視界が、一気に滲む。


「……ずるい…

 こんなん、反則やろ…」


光子も、

手で口を押さえながら、肩を震わせる。


「ひいじいちゃん、

 うちらのラジオに副音声つけて聴きよったとか……

 もう、

 愛が重たすぎる…」


優子は、涙をぬぐうことも忘れて、

スマホをじっと見つめた。


録音は続く。


『はい、ここCM入ったな……

 よし、巻き戻しとこ。今のトーク、もっかい聴きてぇわ』


ガガッ、と巻き戻しのガサガサ音。

そして、さっきの自分たちのトークに戻る。


『いやそこ戻すんかい!

 もっとええとこあったやろ〜』


と、

じいちゃん自身が、ひとりでツッコミを入れている。


静子は、

そんな録音を何度も聴いたのだろう、

目を細めて微笑んでいる。


「ね? 言ったろ。

 あの人、あんたたちの“親衛隊”やったとよ。


 会場に行けん時は、

 こうやってラジオとテレビで、

 ずーっと追いかけよった」



◆ 「一番のファンに、恥ずかしくないように」


ラジオの録音を止めたあとも、

しばらく誰も何も言えなかった。


鼻をすする音と、

遠くで鳴くカラスの声だけが、

ゆっくり時間を進めていく。


やっとのことで、

光子がぽつりとつぶやいた。


「……じいちゃん」


「なに?」


静子が優しく促す。


「うちらのこと、

 そげんまで…好きでいてくれたんやね…」


優子も、

涙声のまま続ける。


「“親衛隊”って、

 今どきの言葉やし…

 きっと誰かから聞いて、

 無理して使いよったんやろうけど…


 “いちばんの味方やけん”って、

 言い換えたかったんかな…って思ったら、

 もう……」


言葉が途切れて、

三人とも、完全に泣き崩れた。


美香は、

ぐしゃぐしゃの顔で笑う。


「……ママとパパもそうやけどさ。

 じいちゃんも、

 “ステージのお客さん”っていうより、

 完全に“家族席の最前列”やったんやなって。


 …一番のファンに、

 恥ずかしくないように生きなきゃ、って、

 改めて思った」


静子は、

三人の手を順番にぎゅっと握る。


「大丈夫。

 あんたたち、もう十分ようやりよる。


 でもね、

 あの人、きっと天国でこう言いよるよ」


三人が顔を上げる。


静子は、

少しだけ安三郎の声色を真似て、言った。


「『お前ら、

 まだまだやぞ〜。

 もっと人ば笑わせて、人の涙ば拭いて、

 最後は自分らも笑うんじゃい』って」


三人の頬を、

新しい涙がつーっと伝う。


でもさっきまでと違って、

その涙の中には、

少しだけ“力”が混ざっていた。


光子

「……分かった。

 ひいじいちゃんの副音声に、

 恥ずかしくないように、

 もっともっと、ちゃんとやる」


優子

「うん。

 いつか天国ライブやるときに、

 “今日も100点やったぞ〜”って言わせちゃる」


美香

「その時は、

 オーケストラも連れて行くけん。

 じいちゃんの席、一番いいとこに空けといてって、

 神様に頼んどいてねって、今から言っとこ」


静子は、

本当にうれしそうな顔で笑った。


「…あの人、きっと、

 “よっしゃ、まだまだ出番あるのぉ”って、

 ガッツポーズしよるわ」


仏壇の上の遺影は、

いつもと変わらない笑顔のはずなのに――

その日だけは、

少しだけ誇らしげに見えた。


そしてその夜。

三人は自分たちのスマホにも、

じいちゃんの「副音声入りラジオ」をコピーして持ち帰る。


どれだけ売れても、

どれだけ世界中のステージに立っても――


一番最初に再生ボタンを押してくれた「ひいじいちゃんのボイスメモ」が、

ずっと、自分たちの原点だと確かめられるように。

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