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美香と光子と優子の爆笑ストーリー。光子と優子29歳  作者: リンダ


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放課後・福岡高校吹奏楽部 選曲会議



◆ 放課後・福岡高校吹奏楽部 選曲会議


夕方の音楽室。窓の外はオレンジ色。

譜面台がずらりと並ぶ中、部長が一枚の楽譜を掲げた。


部長

「――で。次の定期演奏会、“OB・OGとつなぐステージ”でこれ、やりたいと思います」


表紙には、大きくこう書いてある。


ルパン三世のテーマ ’78 ジャズバージョン

〈吹奏楽&コンボアレンジ〉


部室に、ざわっ……と小さな波が走る。


美和(トロンボーン2年)

「これ、動画で見たことある!

 福高のOB・OGステージで、

 美香さんと、光子さんと優子さんがやってたやつやん!」


打楽器パートの先輩たちも、目を輝かせる。


圭人(3年・Dr)

「うわぁ、あの“爆笑発電所ルパン”か……!」


春海

「“爆笑発電所ルパン”って何その物騒なネーミング……」


部長

「歴代でも相当盛り上がったらしくてね。

 “いつか、あのステージを今の世代でもやりたい”っていうのが、顧問の先生の夢やったらしい」


顧問

「そうそう。

 その時ドラム叩いてたのが――」


顧問、ニヤリ。


顧問

「**赤嶺美香(当時:小倉美香)**さん。

 今の君たちのお母さんね?」


部室の視線が、一斉に春介と春海に突き刺さる。


春海

「……やっぱりそう来るよね?」


春介

「逃げられんね、これは」


部長

「ということで――

 “ルパン三世ジャズver.202X”のリズムセクション、

 ドラムは春海、ベースライン&チューバは春介、頼んだ。」


即決だった。



◆ 初見合奏 ― “ルパンの匂い”に引きずられる


数日後。


「じゃ、ルパン、初見いってみよっか。

 テンポは♩=160。

 リズム隊は無理せん程度に、でも“イキりすぎ禁止”ね」


顧問の一言に、

部員たちが笑いながら構える。


春海(心の中)

(……ママが叩いたルパン。

 あの動画、小さい頃から何百回も見たもんな)


(“ここは刻みに徹しろ、ここは遊んでよし”って、

 家のリビングで何回も一緒にスティック握ってくれた)


春介(心の中)

(母ちゃんのベースライン、

 M&Yのライブのときも、

 “ルパン”入った瞬間会場の空気変わるんよな)


(今度は俺らの番やんね)


「ワン、ツー、ワンツースリーフォー!」



◆ 音が走る、身体も走る


イントロ、サックスが立ち上がる。

ペットがタイトに刻みを乗せてくる。


春海の足が自然とハイハットを踏む。

スネアのゴーストノートが、譜面にない「ノリ」を勝手に生み出し始めた。


顧問

「お、春海、いいぞ、その感じ!」


ベースパートのコントラバスがうなる。

その横で、


春介

「すんません、ここ、チューバもユニゾンで行っていいですか?」


顧問

「お、やる?」


春介

「母ちゃんが“ここのベースは“地面から鳴ってこんとダメ”って言いよったんですよ」


顧問

「……言ってたな、あいつ確かに。

 よし、やれ。底から持ち上げろ」


低音が、床を震わせた。


部員

「「うわ……かっけぇ……」」



◆ 止まる顧問、止まらないリズム


サビに差し掛かる直前で、


顧問

「はい一回ストーップ!!!」


春介・春海以外、音がピタッと止まる。


……が。


春海

「(ノッてるので止まらない)」


春介

「(ノッてるので止まらない)」


ドラムとチューバだけが、

完全にトランス状態でグルーヴを刻み続ける。


部員「「「ちょ、ちょっと!!」」」


顧問

「おーい双子ぉぉ!!……じゃない、赤嶺兄妹ぉ!!」


ようやく二人の耳に届いたらしい。


春海

「……あ、ごめん、止まるとこやった?」


春介

「いま、ルパンが走り去りよったけん、追いかけよった……」


顧問

「お前ら、完全に母ちゃん譲りやな……」


部室、爆笑。



◆ 休憩時間 ― 受け継がれた“ジャズスイッチ”


休憩中、

ジュース片手にソファへ崩れ落ちる春海。


美和

「春海、マジで“プロの現場”っぽかったよ?

 なんか、“スティック握った瞬間スイッチ入る感じ”」


志穂(クラ1年)

「春介の低音もえぐかった。

 “ルパン、床から生えてきた?”って感じ」


春介

「ルパンが床から生えるとは」


春海

「でもねー……

 ママのルパン動画見たら、まだまだ全然やなって思うよ」


ポケットからスマホを取り出し、美香の高校時代――

いや、音大時代のセッション動画をみんなに見せる。


画面の中、美香は笑顔でドラムを叩いている。

隣には、若き日の光子と優子。

その後ろに朱里や樹里やしおりもいる。


映像の中の美香

『ここ、リズム崩れるけん、

 “笑わず真顔で叩け”って先生に言われたけど、

 双子が目の前で変顔しよるけん無理やった――』


(動画の中でも笑いが起きてフェードアウト)


美和

「……うわ、これ、何回でも見れる」


志穂

「ねぇ、これ、定期演奏会で“OB・OG映像”流してから、

 うちらのルパンやったらめっちゃエモない?!」


部長

「それ、顧問に提案しよ」


春介

「やばい、“公開親子比較コーナー”ができる……」


春海

「プレッシャーたか!!」


でも、二人の顔には、

どこか嬉しそうな影もある。



◆ 2回目の合奏 ― “今の世代のルパン”に


数週間後。

細かいリズムやブレイクも決まり、

合奏は2回目の“通し”に入っていた。


顧問

「よし、今日は止めん。

 頭から最後まで、ノンストップで行くよ。

 “間違えても走れ。ルパンやけん”」


くすくす笑いが起きる。


春海(心の中)

(ママ、見とってね)


春介(心の中)

(母ちゃんたちのルパンに、

 “俺たち世代のリズム”混ぜてくるけん)


「ワン、ツー、ワンツースリーフォー!」


──サックスが走り出す。

──トランペットが追いかける。

──トロンボーンが厚みを重ねる。


そして、


──チューバとバスドラが、「ドッ」と床を揺らす。


部員の目つきが、

一瞬で“吹奏楽”から“バンドマン”のそれになる。


サビ手前。

顧問は、今度は止めなかった。


春海の手数は、

美香より少しだけ多く、

 でも同じくらい歌っている。


春介のベースラインは、

譜面よりもほんの少し“跳ねて”いる。

優馬のウォーキングベースと、美香のバンドサウンドの血が混ざったようなノリで。


ラストのキメ。


全員

「ダダッ、ダーン!!」


シンバルが炸裂する。

音楽室の空気が震えたまま、静寂が訪れる。


顧問

「…………」


部員

「…………」


そして――


顧問

「はい、これはもう本番でやる。文句なし。」


部室

「「「うおぉぉぉぉぉ!!!」」」


美和

「やばい、鳥肌立った!!」


志穂

「なんか、“昔と今が繋がっとる”感じした……」


圭人

「これ、OB・OG来たら、絶対泣くやつやろ」


顧問

「泣かせるつもりでやるからね。

 こっちはそのために、何年も温めてきたんやけん」



◆ 夜・グループ通話


その夜。


春介&春海から、

美香・光子・優子にグループビデオ通話が入る。


春介

『ルパン、本番レベルまで行ったけん、報告〜』


春海

『今度、リハの録音送るね』


画面の中で、美香の目がきらきら光る。


美香

『マジで!? あのルパン!?』


光子

『あー、母ちゃんたちが“高校で一番暴れたやつ”ね』


優子

『警察音楽隊の樹里が、

 “あのルパンで人生決まった”って言いよったやつやん』


春海

『プレッシャーばっかり増やさんで!?』


美香

『でもさ……

 同じ学校で、同じ曲を、

 時代またいでやれるって、ちょっと嬉しいね』


光子

『あの音楽室でさ、

 “ルパンのテーマ”がまた鳴るってだけで感無量よ』


優子

『今度、リハ見に行っていい?

 ちゃんと“笑いは封印して真面目に”見てあげるけん』


春介

『絶対なんかやるやろ……』


春海

『でも、

 ママたちが高校のとき置いてった“笑いと音楽”の足跡、

 ちゃんと受け取って、ちょっと上塗りしてくるけん』


画面の向こうの三人が、一瞬黙って笑う。


美香

『……うん。

 楽しみにしとく。

 あたしも、“母ちゃんの威風堂々”じゃなくて、

 “母ちゃんのルパン”でドヤ顔したいけんね』


光子

『あー言ったね?』


優子

『それ、ラジオで喋るけんね?』


春介・春海

『やっぱりそこに繋げるんかーーーい!!』


笑い声が、またひとつ増えた。



こうして、

美香たちが高校時代に叩き込んだ“ルパン三世ジャズver.”は、

福岡高校吹奏楽部の新しい世代――

春介と春海たちによって、

“今のリズムと笑い”をまとって蘇っていくのだった。

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