夏・吹奏楽コンクール福岡県大会当日
◆ 1.夏・吹奏楽コンクール福岡県大会 当日
7月末。
真夏の太陽が、会場のガラスにぎらぎら反射している。
福岡市民会館・大ホール。
ロビーには、あちこちの学校の制服と楽器ケース。
その一角に、ひときわ目立つ一団がいた。
光子:
「はいはーい、遅刻せんごと集合〜」
優子:
「今日は“応援団モード”やけんね、出しゃばり禁止よ」
美香:
「いや、出しゃばるのはだいたい光子と優子でしょ」
奏太:
「ギター持ってきてないだけ、今日はまだマシやろ?」
小春:
「“まだ”って言うな。“今日は”って言いなさい」
その後ろでは、
優馬と美鈴、翼、拓実、
そして陽翔・結音・燈真・灯乃たちキッズも小さくはしゃいでいた。
陽翔:
「はるにぃと、はるねぇ、がんばれ〜!」
結音:
「金賞もって帰ってきて〜!」
燈真:
「とぅま、ティンパニの音、よう聞いとく!」
灯乃:
「ひの、“おにーしゃんたちの応援係”やけん!」
⸻
◆ 楽屋前 ― 福高吹部、緊張の時間
福岡高校吹奏楽部は、
ステージ裏の待機スペースで最後の確認中。
顧問・白川先生:
「よし、チューニング終わったわね。
ここから先は“調整”じゃなくて“覚悟”の時間よ」
三輪(部長):
「はい!」
平尾(Perc):
「打楽器、スネア・ティンパニ最終確認しとこ」
春海:
「了解……(深呼吸)」
春介はチューバを抱えながら、
壁にもたれて空を見上げているような顔をしていた。
中条(2年Tuba):
「緊張しとる?」
春介:
「……すこーしだけ。
でも、なんか“いい緊張”って感じです」
舟木(3年Tuba):
「ふふ、それが一番強いんよ」
白川先生が、全員をぐるりと見渡す。
白川:
「課題曲は『風のア・ラ・カルト』、
自由曲は『暁に立つ風』。
どっちも、“今の福高吹部”をそのまんま出せば大丈夫。
音程もバランスも大事だけど――
一番大事なのは、“自分たちの音を信じること”。
いいわね?」
部員全員:
「「はい!!」」
春介・春海:
「「はいっ!!」」
⸻
◆ 2.ステージ本番 ― 課題曲&自由曲
◆ ステージ袖
係員:
「福岡高校吹奏楽部の皆さん、ステージへご案内します」
三輪:
「行こう。――福高サウンド、見せちゃろうや」
ステージ袖から見える、大ホールの照明。
客席は暗くて顔までは見えないけれど、
その向こうに確かに誰かの気配がある。
春海:
(じいちゃん、
安三郎ひいじいちゃん、
見とってよ)
春介:
(俺たち、“笑いも音楽も、本気”でやるけんね)
◆ 課題曲 『風のア・ラ・カルト』
ステージに並ぶ。
白川先生が一礼し、指揮台に立つ。
客席の後ろの方で、光子がごそごそ。
光子:
「お母さん、お母さん。
あそこあそこ、チューバのとこ……」
美鈴:
「わかっとーて。息子の孫の孫やけんね」
優子:
「表現おかしくない?」
チューニングの音がホールに溶けていく。
アナウンス:
「それでは次の団体、福岡高校吹奏楽部の演奏です。
課題曲『風のア・ラ・カルト』。どうぞ」
――タクトが振り下ろされた。
軽快なリズム。
クラリネットの軽やかなフレーズ。
木管のパッセージに、金管の合いの手。
後ろからは、
春海のスネアとバスドラが“土台”を刻む。
タン・タン・タタッ、タン・タン・タタッ
(走らせない、でも前へ前へ――)
春海の目は、譜面と指揮とステージ奥の“空気”を
常に行ったり来たりしている。
中間部の柔らかいハーモニー。
ボォォォ……
春介のチューバが、
ほんの一瞬、優しく息を吹き込む。
客席の中段あたりで、美香が小さく頷いた。
美香:
「……うん、“地に足のついた音”になってる」
課題曲の最後。
木管の細かいパッセージながらも、
誰も崩れない。
バスドラが最後の“ドン!”を打ち、
ホールに余韻が広がる。
◆ 自由曲 『暁に立つ風』
少し間を置いて、
自由曲の紹介アナウンス。
白川先生の後ろ姿が、ほんの少しだけ大きく見えた。
イントロ。
木管の静かな旋律に、ホルンがそっと重なる。
そして――低音。
ボォォォォォン……
春介のロングトーン。
緊張しているはずなのに、
音はまったく揺れない。
陽翔(客席):
「おれの“はるにぃ”、すご……」
結音:
「ゆのんの“はるねぇ”も、後ろでドンドコしよるよ」
中間部、金管のハーモニーが鳴り響く。
ティンパニ前の春海。
ペダルで音程を調整しながら、
小さく息を整える。
(ここから、“風が立つ”)
タクトが上がり――
ドン…… ドドン……
タタタタタタタッ……!
一気に疾走する中盤。
トランペットの鋭いテーマ。
サックスの駆け上がり。
トロンボーンのグリッサンド。
低音隊は、
全員で“踏み固められた道”を作るみたいに刻む。
ボン・ボン・ボン・ボン!
春介のチューバ、
中条&舟木と完全に一体化している。
春介:
(ここで、置いて行かん。
全員を“前に押す低音”になる)
クライマックス手前。
一瞬、音がすっと抜ける。
そこに入るのは、春介の短いソロ。
ボォォォ…… ボォン……
ホール後方の暗がりで、
優馬が目頭を押さえた。
優馬:
「……なんやろうな。
“じいちゃんの笑い声”が、
ちょっとだけ重なって聞こえるばい」
美鈴:
「うん……」
◆ ラスト・クライマックス
タクトが高く振り上がる。
白川:
(ここからは、“福高の風”だけでいい)
タタタタタタッ!!
春海のスネアロールから、
全パート一斉フォルテ。
金管・木管・打楽器・低音。
全員の音が、
一瞬だけ“真ん中”で重なる。
最後の一打。
ダァァァァァン!!
――世界が、静かになった。
客席は、一瞬だけ息を詰め、
そのあと割れるような拍手に包まれた。
光子:
「ブラボー!!!」
優子:
「福高、やるやん!!」
美香:
「……春介、春海。よくやったね」
奏太:
「テンポ、1ミリも崩れとらんかった」
小春:
「音の“抜きどころ”も完璧やった」
陽翔&結音:
「「はるにぃーー!! はるねぇーー!!!」」
⸻
◆ 3.結果発表 ― 福高吹部、ついに“あの色”を手にする
全団体の演奏が終わり、
夕方のホールに、結果発表の時間がやってきた。
ステージ上には、各校の代表者が並んでいる。
福岡高校からは、三輪部長。
アナウンス:
「それでは結果を発表します。
まずは、銀賞の団体――」
番号と校名が読み上げられていく。
自分たちの番号が呼ばれないことを祈りながら、
福高の部員たちは手を握り合う。
春海:
(銀は……嫌だ……!)
春介:
(ここまできたんやけん、
じいちゃんに“金やったぞ!”って言いたい)
アナウンス:
「続いて――金賞の団体です」
場内が一段と静かになる。
「エントリー番号〇番――
福岡高校吹奏楽部」
一瞬、音が消えた。
次の瞬間、
福高ブロックが爆発した。
「「やったぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
春海の目から、
ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
春介:
「取った……! 金取った……!」
隣の3年生たちも、
肩を抱き合って泣いている。
アナウンスは続いた。
「なお、今年の代表団体として――
福岡高校吹奏楽部が、
九州大会へ推薦されました」
場内:
「「おおおおおお!!!」」
平尾(Perc):
「うそ……代表まで……」
佐伯(Fl):
「夢みたい……」
三輪(部長):
「……福高吹部、
“全国への扉”が、ひとつ開いたぞ……!」
⸻
◆ 4.楽屋裏 ― 号泣と笑いのごった煮
ステージ裏に戻った福高吹部。
白川先生が入ってくるなり、
三輪が深々と頭を下げた。
三輪:
「先生……金賞、そして代表、本当に……!!」
白川:
「頭を上げなさい。
これは私の賞じゃないわ。
“あなたたち”が勝ち取った音の結果よ。」
ちょっとだけ、声が震えている。
白川:
「……でも、一つだけ言わせて。
ありがとう。
あなたたちの音が、私の宝物になりました。」
その瞬間、
3年を中心に、あちこちで号泣の輪が広がった。
春海:
「センセぇぇぇぇ……」
春介:
「まだ引退じゃなかとに、卒業式みたいになっとるやん……」
◆ そこへ乱入・M&Y&ファイブピーチ★
ガラッ。
光子:
「失礼しまーーす!」
優子:
「おじゃましまーーす!」
美香:
「入っていい?」
奏太:
「代表おめでとう。マジで震えたばい」
小春:
「泣きすぎてメイク全部落ちた」
白川先生:
「わっ、みなさん……!?」
光子:
「ブラボーやったけんねぇ。
“もうプロの入り口”って感じやったよ?」
優子:
「打楽器隊、キレッキレやったし。
低音、ホールの床抜けるかと思った」
春介・春海:
「「ありがとうございます……!」」
美鈴と優馬も入ってきて、
孫たちをぎゅっと抱きしめた。
美鈴:
「やったねぇ……代表やね……!」
優馬:
「お前たちのおかげで、
じいちゃんにまた自慢できるばい」
春介:
「……うん。
“ひいじいちゃん、俺ら、代表やったぞ”って
絶対報告する」
春海:
「九州大会でも、
もっとええ音届けるけんね」
⸻
◆ 5.打ち上げ → ファイブピーチ★の爆笑ギャグタイム
その夜、
学校近くの大きめのファミレスを貸し切っての打ち上げ。
顧問・白川先生も含め、
部員全員+M&Y&ファイブピーチ★+家族がぎゅうぎゅう状態。
店員さん:
「ドリンクバーのグラス、足りなくなったの初めてです……」
三輪:
「じゃあ、部長としてひと言。
金賞&代表、おめでとう!
そして、これから九州大会に向けて――
もっとおもろく、もっと上手くなるぞ!!
かんぱーい!!」
「「かんぱーーい!!!」」
ジュース、ウーロン茶、コーラ、
そして大人組のノンアルカクテルが一斉に掲げられる。
⸻
◆ ファイブピーチ★、待ってましたの爆笑ショー
一通り食べて飲んで、
みんなお腹が落ち着いた頃。
光子:
「それじゃあ……ここからは、
“祝・金賞&代表記念・爆笑ミニライブ”
しちゃってよかですか〜?」
部員:
「「よかです!!!(全力)」」
店員さん(心の声):
(今日、この店なんかすごい人たちおるな……)
優子:
「じゃあ、最初はショートコントからいこか。
タイトルは――
『コンクール九州大会当日、
絶対にしてはいけない福高吹部の行動』」
部員:
「(デジャヴ……)」
■ コントその1:本番直前のあり得ない光景
光子(指揮者役):
「はーい、福高吹部のみんな〜、本番5分前やで〜。
気合い入っとう?」
優子(Trp):
「センセー、今日のマウスピース……
家の犬が“ガジガジガジッ”て……」
深町(Trp/ガチ本人):
「いや、やめてください実話みたいな話は!!!」
店内:
「ギャハハハハ!!!」
美香(Perc):
「センセー、ティンパニの皮がさっき“ビシィ!”って……」
春海(素で):
「やめて!? 想像しただけで胃が痛い!!」
小春(Cl):
「“ビシィ!”って言った瞬間に
**“諦めのミ♭”**に移調します」
部員:
「また出た“諦めのミ♭”!!」
奏太(Tb):
「センセー、九州大会、
みんな緊張しとるけん、俺、
ステージ上で“おならブー・セーフティーロック”やっていいすかね?」
光子(指揮者):
「それは二度と九州大会に呼ばれん!!」
全員:
「腹いてぇぇぇ!!!」
⸻
■ コントその2:福高吹部・もしも審査員だったら
優子:
「じゃあ次は、
**“福高吹部の人たちが審査員やったら”**って設定で」
光子(審査員役):
「えー、では講評です。
“トランペット、とてもよく鳴っていました。
ただし、出番前に“マウスピースでソフトクリーム食べた?”
ってくらい甘い音でした”」
深町:
「いる!? その比喩!!」
白川先生:
「でも、なんか具体的で分かりやすいわね……」
美香(審査員):
「“打楽器、たいへんノリがよく素晴らしかったです。
けれども、テンポが走るたびに、
後ろでファイブピーチ★がニヤニヤしていました。
気を付けましょう。”」
打楽器パート:
「これ一番怖い!!」
奏太(審査員):
「“低音パート、よく支えていました。
でも時々、
“俺が支えてやってんだぞ感”が音から漏れてました。”」
春介:
「それ、絶対言われたくないやつ!!」
中条&舟木:
「刺さる刺さる!!」
店内、笑いすぎて
何人か椅子からずり落ちている。
⸻
◆ トドメ:双春&ファイブピーチ★コラボギャグ
光子:
「じゃあ、最後は――
“双春+ファイブピーチ★”の
スペシャルコラボネタで締めちゃろかね?」
春介:
「え、俺らもやる流れ!?」
春海:
「まぁ……ここまできたらやるしかないか……」
光子・優子・美香・奏太・小春・春介・春海、
7人が横一列に並ぶ。
光子:
「タイトルは――
『九州大会の朝、
全員寝坊してもなぜか間に合ってしまう福高吹部』」
部員:
「(フラグが強すぎる!!!)」
■ 開始
春介:
「九州大会当日の朝――
福高吹部は、まさかの全員寝坊した!!」
全員:
「「うわぁぁぁぁぁ!!!」」
春海:
「“集合時間に起きる”って、
もう集合終わっとるやん!!」
優子(Trp):
「“とりあえず化粧だけしてきました”」
坂口(Fl):
「いやそこじゃない!!!」
美香(Perc):
「打楽器だけは昨日のうちに搬入してたけんセーフ」
白石・金田:
「そこだけリアル!!」
奏太(Tb):
「“今日は全員、譜面忘れましたー!!”」
三輪(部長):
「いちばん忘れちゃいかんやつ!!」
小春(Cl):
「でも大丈夫。
“全部心に刻まれとうけん!”」
白川先生:
「それがいちばん理想的なんだけども!!」
最後に、
春介と春海が一歩前に出る。
春介:
「そんなわけで――
“春をふたつ、にこひとつ。
忘れ物しても心は忘れません!”」
春海:
「“安全運行で、九州のステージに向かいます!”」
2人:
「双春でしたーー!!
ストップ! ぎゅー! ライト!!」
\ウィンク→ちゅっ→両手ストップポーズ/
福高吹部:
「「あっち世界行くーーーー!!!」」
笑いすぎて、
テーブルに突っ伏す者、
涙を流して床を叩く者、
「腹筋が死んだ」とうずくまる者。
店員さん:
「こんなに楽しそうな打ち上げ、初めて見ました……」
白川先生:
「……ふふ。
この子たちなら、九州大会もきっと“泣いて笑って”終えられるわね。」
光子:
「音楽って、そういうもんやけん」
優子:
「“音が止まっても、笑顔は止めんでよ”」
美香:
「それが、うちらの教わってきた“音楽の形”やもんね」
⸻
その夜、
福岡高校吹奏楽部のメンバーは、
**“笑いすぎて全員ヘロヘロ”**になりながらも、
「九州大会、もっとええ音出そうぜ」
「今日みたいな音、今度はもっと広い会場で鳴らしたい」
と、
それぞれ胸の中で静かに誓っていた。
――そしてその横で、
ファイブピーチ★のメンバーはと言えば。
光子:
「ねぇお母さん、うちらも高校時代に
こんな打ち上げしたかったねぇ」
美鈴:
「いや、あんたらはあんたらで、
十分カオスやったけん」
優子:
「それな」
笑いと音楽に包まれた一日は、
こうしてゆっくりと幕を閉じていった。
――まだまだ、物語は続いていくけどね。




