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美香と光子と優子の爆笑ストーリー。光子と優子29歳  作者: リンダ


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福岡高校音楽科へ ― 春介と春海の、新しいスタート

 ◆ 福岡高校音楽科へ ― 春介と春海の、新しいスタート


 卒業式から数日後。

 まだ制服の詰襟もセーラー服も片づけきれないまま、

 ダイニングテーブルの上には、

 一枚の封筒が二通、並んでいた。


 表には、見慣れた校名。


「福岡県立 福岡高等学校 音楽科」


 春介:

「……開けるよ?」


 春海:

「うん、一緒に開けよ」


 アキラと美香は、少し離れたところで固唾を飲んで見つめている。

 リビングのソファでは、陽翔たちが

「どきどきする〜」「合格って出ると?」と小声でざわついている。


 春介と春海は顔を見合わせ、

 小さくうなずき合ってから、同時に封を切った。


 カサッ、と紙の音。

 二人は、震える手で紙を引き出す。


 春介・春海:

「…………」


 一瞬の沈黙のあと——


 春海:

「……っ、あった!!」


 春介:

「おれも……“合格”って書いとる!!」


 次の瞬間、ダイニングに歓声が弾けた。


 美香:

「やったぁぁぁぁ!! おめでとう!!」


 アキラ:

「マジか!! よくやった!!」


 美鈴:

「うわぁ〜〜、二人とも、ホントに……!

 お母さんと、光子と優子と同じとこに行くんやねぇ……!」


 優馬:

「小倉ファミリー福岡高校音楽科ライン、

 ここに正式継承やね!」


 光子:

「ふふ、ついに“次の世代”きたね〜」


 優子:

「福高音楽科OB・OG会がますますにぎやかになるやん」


 陽翔:

「春介にーに、高校生になってもチューバ吹くと?」


 春介:

「もちろん! 陽翔もそのうち吹く?」


 陽翔:

「う〜ん……おれはギターかも!」


 燈真:

「とぅまはドラムがいい〜」


 春海:

「じゃあ、うちらの“後輩バンド候補”やね」


 結音:

「ゆのんは歌う〜!」


 灯乃:

「ひの、花びら撒く〜!!」


 彩羽・悠翔:

「ぎゅーー!!」


 ワイワイと騒ぐちびっこたちを見ながら、

 美香はふっと、春介と春海の顔を見つめた。


 美香:

「……実はね。

 お母さん、自分が福岡高校の音楽科に通ってたとき、

 “いつか、自分の子どももここで音楽を学んでくれたら”

 って、ちょっとだけ夢見よったとよ」


 春介:

「……そうなん?」


 春海:

「知らんかった……」


 美香:

「でも、押しつけにはしたくなくてね。

 二人が、自分で決めてくれて、

 自分で受験して、自分で勝ち取った合格やけん……

 なんかもう、それが一番嬉しい」


 目頭を押さえながら笑う母の姿に、

 二人は少し照れくさそうに笑った。


 春介:

「おれさ、

 中学最後の定期演奏会でソロ吹いたとき、

 “もっと上手くなりたい”って

 本気で思ったんよね」


 春海:

「うちも。

 打楽器って、うまくいったら

 バンド全体がぐっと前に進むやん。

 あの感じ、もっと極めたくてさ」


 アキラ:

「じゃあ、これからは“福高サウンド”の一員やな」


 美鈴:

「お母さんと、美香と、光子と、優子が歩いてきた道を、

 今度はあんたたちが、自分の足で歩いていくとね。

 なんか……誇らしかぁ」


 優子:

「でも、覚悟しとき? 福高は勉強も普通にエグいけんね?(笑)」


 光子:

「“音楽科やけん勉強ラク”とか、

 そんな甘い世界やなかとよ〜?」


 春介:

「はいはい、そのへんは覚悟しとるよ」


 春海:

「うん。でも——」


 双子は顔を見合わせて、にっと笑った。


 春介:

「“春をふたつ、にこひとつ”で」


 春海:

「高校でも、笑って音楽続けていきます!」


 美香:

「うん、その言葉、最高の決意表明やね」


 その夜。


 勉強机の横に貼られた合格通知を見上げながら、

 春介と春海は静かに話していた。


 春介:

「ここからまた、三年間か」


 春海:

「うん。

 たぶん大変やけど……楽しみのほうが大きいね」


 春介:

「音楽で誰かに笑ってもらえて、

 誰かの涙も受け止められるような、

 そんな演奏、できるようになりたいな」


 春海:

「うん。

 お母さんたちみたいに――

 “音楽で人を救える大人”になりたい」


 窓の外には、

 もうすぐ咲きそうな桜のつぼみ。


 2052年の春。

 博多南中を卒業した双春は、

 母と、光子と、優子と同じ「福岡高校音楽科」へ。


 家族の笑いと期待を背に、

 新しい音楽の扉を、そっと開けようとしていた。



 福岡県庁・旅券課。

 春休みの平日午前中とはいえ、けっこうな人で賑わっている。


 受付の前で、どえらい一団がどーんと固まっていた。


 大人:美香&アキラ、美鈴&優馬、光子&翼、優子&拓実

 子ども:春介・春海、陽翔・結音、燈真・灯乃、彩羽・悠翔


 計16名。まごうことなき「カオス隊」である。


 ◆ まずは申請書との戦い


 美鈴:

「はいはい、みんな〜。

 今日は“ウクライナ行きの切符になる大事な紙”ば書きに来たとよ〜」


 燈真(4):

「きっぷ? 飛行機、しゅっぱーつ?」


 陽翔(5):

「黒海の方に行くやつやろ? グローブで地球儀見たもん!」


 結音(5):

「ゆのん、“パスポート”知っとる〜。“外国に行くための身分証”!」


 灯乃(4):

「ひの、“顔ハンコ”って聞いた!!」


 春海:

「顔ハンコて(笑)写真ね、写真」


 カウンター近くのテーブルに陣取り、

 大人たちは申請書とにらめっこ。


 優子:

「はい、子どものとこは“署名じゃなくてフルネーム”ね〜」


 光子:

「生年月日……2046年5月20日、陽翔と結音はここ揃えんごとなるね」


 アキラ:

「燈真は2048年3月21日、灯乃は4月生まれ、彩羽と悠翔は2050年……っと」


 美香:

「春介と春海は自分で書けるね?」


 春介:

「書けるっちゃけど、こういうの緊張するんよね……」


 春海:

「“赤嶺”の“嶺”が一瞬わからんくなるやつね」


 優馬:

「お父さんもいまだに“優馬”の“優”間違えられるけん、気持ちはわかる」


 美鈴:

「そこは慰めにならん!!」


 ◆ サイン欄で、早速カオス


 陽翔:

「ねぇねぇ、“自分のサイン”って書いとるやん。

 ぼく、“陽翔☆はると”って星マークつけていい?」


 翼:

「だめ。公式書類にアーティストネーム入れんの」


 結音:

「“結音♡ゆのん”もだめ〜?」


 拓実:

「ハートもっとだめやろ」


 燈真:

「“とぅま・こころまる”は?」


 光子:

「それは普通に意味がわからん」


 灯乃:

「ひの、“花びら”のマーク描きたいっちゃけど〜」


 美鈴:

「ここは“漢字フルネーム一本勝負”たい!

 星もハートも花びらも、心の中に描いとき!」


 子どもたち:

「「えぇ〜〜〜〜〜」」


 ◆ 写真撮影:真顔 vs 変顔


 一通り書類を書き終えると、

 今度は隣の撮影コーナーへ。


 職員さん:

「では、お子さんたちの写真を順番に撮りますね〜。

 パスポートは“笑いすぎない・口を閉じる・まっすぐ前を見る”でお願いしまーす」


 その条件が、

 この一族にとってどれだけ難易度が高いかを、

 職員さんはまだ知らない。


 ■ トップバッター:陽翔


 カメラの前に座る陽翔。


 職員さん:

「はい、じゃあお口を閉じて、

 あまり笑わずに、まっすぐお顔をこちらに……」


 陽翔:

「(……あかん、“笑うな”って言われたら逆におかしくなるやつや……)」


 口角がピクピク。


 後ろで春介が小声で囁く。


 春介:

「陽翔、“うんこ”って考えるなよ。絶対考えるなよ」


 陽翔:

「(……うんこ……あ)」


 ニヤッ。


 職員さん:

「はいストップ、その笑いかけはギリギリアウト〜。

 もう一枚撮りましょうね〜」


 美鈴:

「お父さん!! 下品なワードぶち込まん!!」


 春介:

「お父さんじゃなくて俺やし!」


 アキラ:

「父のせいみたいにすんな(笑)」


 ■ 結音、プロ根性を見せる


 結音:

「ゆのん、マイク持って歌うときの、“歌う前の顔”にする!」


 拓実:

「その基準がもうプロ」


 結音、スッと顎を引いて、

 すっとカメラを見つめ、

 きゅっと口を結ぶ。


 パシャッ。


 職員さん:

「おぉ〜、これは素敵な写真になりましたよ」


 全員:

「「さすがゆのん!!」」


 陽翔:

「ずるい〜! ぼくもやり直したい!!」


 ■ 燈真、安定のマイペース


 燈真:

「とぅま、じっとできるよ。

 “こころまる”の顔する」


 職員さん:

「……それは普通の顔と違うんですか?」


 燈真:

「“やさしい顔”」


 ふわっと力の抜けた、

 不思議に穏やかな表情。


 パシャッ。


 美香:

「……うわ、なんか本当に“優しい顔”に写ってる」


 アキラ:

「お前、将来何者になるんやろな……」


 ■ 灯乃、やっぱりやらかす


 職員さん:

「じゃあ次、ひのちゃんね〜」


 灯乃:

「ひの、わかった!!」


 カメラをじっと見つめ——


 にちゃぁぁぁぁ…… と、

 “悪いこと企んだ顔”になる。


 美鈴:

「なんでそうなると!!」


 職員さん:

「ごめんね、それはちょっと“いたずら顔”すぎるから、

 もうちょっと普通の顔にしようか」


 灯乃:

「え〜、“普通の顔がわからん”」


 優子:

「日頃からキャラがぶっ飛びすぎなんよ……」


 最終的に、

 美鈴と優子が視線の先で笑いを必死にこらえ、

 ようやく“そこそこ普通”な灯乃の写真が撮れた。


 ■ 1歳コンビは、抱っこで勝負


 彩羽(2歳手前)と悠翔(同じく)は、

 ママ抱っこ&パパあやしながらの撮影。


 職員さん:

「カメラのほう見て〜……」


 彩羽:

「……(じーーー)」

 → なぜか職員さんの名札ガン見


 悠翔:

「おねえしゃーん……」

 → カメラじゃなくて結音と灯乃を連呼


 結音:

「ゆうと、こっち向いて〜!」


 灯乃:

「“ケーキあるよ〜”って顔して!!」


 美鈴:

「変な誘導せんでよか!!」


 何度か撮り直しながらも、

 奇跡的瞬間で「全員なんとなくカメラを向いた」写真が撮れた。


 職員さん:

「はい、これなら大丈夫です!」


 美鈴:

「……県庁の皆さん、本当にありがとうございます……」


 職員さん:

「いえ、こちらこそ……

 なんか元気もらいました(笑)」


 ◆ 申請完了。ウクライナ行きへの一歩


 書類と写真を提出し、

 手数料も支払い、すべてが終わったころ。


 優馬:

「よし、これであとはパスポートができあがるの待つだけやな」


 優子:

「いよいよ現実味出てきたね」


 光子:

「“オデーサ行き16人旅券作戦”、無事ミッションコンプリートや」


 春介:

「パスポートって、初めて持つからちょっと楽しみ」


 春海:

「“自分の名前で、世界に出ていくチケット”って感じするよね」


 陽翔:

「オレ、それ持って飛行場歩きたい!!」


 結音:

「ゆのん、パスポートケース買う〜!」


 燈真:

「とぅま、“こころまる”のマークつけたい〜」


 灯乃:

「ひの、“花びらパスポートケース”にする!!」


 彩羽:

「ぱすぽーとぉ〜!!(よくわかってないけどテンションMAX)」


 悠翔:

「おねえしゃんと、ウクライナいく〜!!」


 美鈴はそんな光景を見つめながら、

 心の中でそっとつぶやいた。


 美鈴:

「この子らが、争いのない世界で、

 安心して空を飛べる時代でありますように。

 その一歩目が、

 こうして“パスポート申請”になるっちゃねぇ」


 優馬:

「お母さん、今日だけでだいぶエネルギー使ったろ?」


 美鈴:

「そらもう。

 でもね——

 “幸せな疲れ”って、こういうのたい」


 そう言って、

 窓の外の春空を見上げた。


 そこには、

 まだ見ぬオデーサの海につながる、

 澄んだ青が広がっていた。

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