挙式はオデーサで──2052年9月23日
◆ 挙式はオデーサで──2052年9月23日
返信の封筒を投函してから数日後の夜。
小倉家のリビングには、
美香一家・青柳一家・柳川一家が勢ぞろいしていた。
テーブルの上には美鈴特製の唐揚げとポテトサラダ、
そして優馬の入れたコーヒーと子どもたち用のジュース。
その真ん中に、
一通の招待状がそっと置かれている。
美鈴:
「じゃあ、そろそろ発表しよっかね」
光子:
「なんか、改まってからに……」
優子:
「誰か結婚すると? まさか——」
優馬:
「俺とお母さんがもう一回——」
全員:
「「それはええ!!!」」
美鈴:
「はいはい、ボケはそこまで。
真面目な話やけんね」
春介(15):
「……誰やろ。高校の誰か?」
春海(15):
「新しいいとこ増えるとか?」
陽翔(5):
「パパとママがまた結婚式すると? もう一回ケーキ食べてよか?」
結音(5):
「ゆのん、ドレス着る準備できとるよ?」
燈真(4):
「とぅま、タキシード着たい」
灯乃(4):
「ひの、花びら撒きたい!!」
彩羽(1):
「けっこん〜♡」
悠翔(1):
「けっこん〜♡ おねえしゃん♡」
すでに情報がゼロなのにテンションだけMAXである。
美鈴は、テーブルの招待状を軽くトントンと指で叩いて言った。
美鈴:
「来年——
2052年9月23日、
ウクライナの“オデーサ”で、
ソフィーアちゃんとドミトロさんの結婚式が挙げられます。
そこにね……
うちら家族全員、招待されました。」
一瞬の静寂。
次の瞬間、リビングは爆発した。
◆ 子どもたち、大爆発
光子:
「えっ……オデーサ!?
あの、黒海沿岸の?」
優子:
「ソフィーアちゃんの? ドミトロさんの?
あの舞台の? あの照明の? あの爆笑発電所ウクライナ公演の!?」
美香:
「うわぁ……本当に、おめでとう……!」
陽翔:
「ウクライナって、地球のどのへん?」
燈真:
「とぅま、地球儀ぐるぐる回して探す!!」
結音:
「ゆのん、“ウクライナってどこ?”って授業で習ったい!!」
灯乃:
「ひの、飛行機でびゅーんて行くと?」
春介:
「マジで? 俺らも行けると? ガチで?」
春海:
「うわ、めっちゃ向こうの空気吸いたい……!」
彩羽:
「うくらいな〜!!」
悠翔:
「おねえしゃんと いく〜!!」
優馬:
「おぉ〜、地球儀的にも家計的にも、なかなかのビッグプロジェクトやねぇ……」
美鈴:
「でもね、
行くよ。全員で。
あの子らの晴れの日を、この目で見ときたかけん」
◆ 「16人でオデーサへ」計画会議
そのまま、自然と家族会議モードに。
美鈴:
「招待状にはね、
美香の家族4人、光子の家族5人、優子の家族5人、
それと、私と優馬——合わせて16人って書いとんしゃった」
優子:
「総勢16人オデーサツアー……ツアータイトルつけたいくらいやね」
光子:
「“爆笑発電所ファミリーで行く・祝福と平和のオデーサ行”とか?」
春介:
「長い長い(笑)」
春海:
「でも、そのまんまやね」
美鈴:
「世界のどこかで、まだ傷ついとる人もおる。
それでも、
ソフィーアちゃんたちが“結婚式を挙げられる場所”まで
たどり着いたってことが、まず嬉しかね」
美香:
「……うん。
“おめでとう”って、
ちゃんと直接伝えたい」
優馬:
「光子と優子が、
あの戦火のニュースばかり流れよった頃から縁をつないできた子たちやもんな」
光子:
「ソフィーアが送ってくれた、
瓦礫だらけの街と、
それでも歌ってる子どもたちの動画……忘れられんもん」
優子:
「“いつか、笑って結婚式できる日を信じてる”って、
あのとき言いよったもんね……」
美鈴:
「その“いつか”が、
2052年9月23日・オデーサになったっちゅうことよ」
◆ 子どもたちの反応がいちいちカオス
陽翔:
「俺、そのとき何歳?」
光子:
「えーっと……いま5歳やろ?
9月やけん、まだ9歳になっとらんけど、
小学校3年生やね」
陽翔:
「小3で海外遠征!? かっこよ!!」
燈真:
「とぅまも行く!!
ウクライナの子たちに、“こころまる”あげる!!」
結音:
「ゆのん、“ウクライナ語でありがとう”覚える!!」
灯乃:
「ひの、“オデーサで花びら撒く練習”しとく!!」
春介:
「オレら何しようか?」
春海:
「演奏、ワンチャンあるくない?」
美香:
「式のあと、レセプションで
ちょっと演奏してって言われる可能性、あるね」
アキラ:
「トランペット持ってくかぁ……
飛行機に“爆笑発電所専用楽器ケース”預けないかんね」
春介:
「よっしゃ、世界デビュー!」
春海:
「や、あくまで結婚式メインやけんね?」
悠翔:
「ゆうと、“おねえしゃんだっこ係”する!!」
彩羽:
「いろは、“おにーしゃんぎゅー係”する!!」
美鈴:
「平和な役割分担やねぇ……」
◆ 母として、祖母としての願いとつながる
子どもたちがわぁわぁ盛り上がる様子を眺めながら、
美鈴はふっとさっきの夜の祈りを思い出す。
——この子らが成人するころには、
争いごとのない、みんなが仲良く暮らせる世界であってほしい。
ウクライナから届いた、
ソフィーアとドミトロの結婚式の招待状。
それは、
「まだ道の途中だけど、
確かに平和へ一歩進んだ証」のようにも思えた。
美鈴:
「……よし。
この結婚式、みんなで全力でお祝いしよう。
うちらの笑いと音楽で、
“これからの平和”に花火上げちゃろうやないね」
美香:
「じゃあ私、向こうのオーケストラの人たちとも
連絡とってみるね。
現地の音楽家と一緒に演奏できたら、きっと嬉しいから」
光子:
「M&Yとしても、
ソフィーアたちに一曲プレゼントしたいね」
優子:
「うん。“泣いて笑える、平和の歌”みたいなやつ」
優馬:
「お父さんは、向こうでエロ談義せんように我慢するっちゃね」
全員:
「「そこは我慢して!!!」」
こうして、
2052年9月23日・オデーサでの挙式に向けて、
小倉ファミリー総勢16名の“平和と祝福の大移動計画” が静かに動き出す。
それはきっと、
美鈴が願った
「争いのない世界」への小さな一歩であり、
そして同時に——
ソフィーアとドミトロ、
二人の未来を祝うための、
最高ににぎやかで、愛に満ちた旅の始まりでもあった。
◆ オデーサ直通・ビデオおめでとう通話
〜笑いと涙と、想定外(1歳×2)〜
美鈴がソフィーアから届いた招待状を手に、
「今日の夜、みんなでビデオ通話つなごうね」と言った当日。
時差の関係で、日本は夜8時、ウクライナは昼1時。
青柳家と柳川家と美香一家がリビングにギュッと集合して、
スマホをスタンドに固定した。
優子:
「よし、全員そろったね?」
光子:
「……あれ? 1歳コンビどこ行った?」
彩羽(1)
「……(こそこそ)」
悠翔(1)
「……(よちよち……“おねえしゃん”探索モード)」
すでに怪しい。
アキラ:
「あー、絶対なんかやる前兆の動きやん……」
美香:
「先につないでしまおう! 行くよ!」
光子が通話ボタンを押すと、
画面の向こうに、ウェディング準備の真っただ中の
ソフィーアとドミトロの姿が映る。
ソフィーア:
『みんな! こんにちは! やっと話せた!』
ドミトロ:
『ファミリー全員か? すごいね!』
全員:
「うわーーーー!! ソフィーアーー!!!
おめでとおおおおお!!!!」
画面が揺れるほどの大歓声。
ソフィーアは両手で口元を押さえて涙がこぼれる。
ソフィーア:
『みんなの声……恋しかった……!
本当に、本当にありがとう……!』
美鈴:
「ソフィーアちゃん、ドミトロさん……
この度は本当におめでとうございます。
招待してくれてありがとうね」
ソフィーア:
『おばあちゃんミスズ……来てくれるだけで幸せです……』
優馬:
「いやぁ〜もう、うれしかねぇ。
初対面で“エロ談義禁止令”発動されるとは思わんかったけど」
ソフィーア:
『ユウマ、式の日も禁止よ!』
全員:
「そらそうや!!」
大爆笑。
◆ 涙の時間と、忍び寄る“1歳コンビ”
ここで光子がしんみり語り始める。
光子:
「ソフィーア……ずっと、
“いつか笑って結婚式ができる日を信じてる”って
言ってたよね。
いま、その“いつか”が本当になったと思うと……」
優子:
「……うちら、ほんと嬉しいよ」
美香:
「おめでとう……」
春介(15):
「うわ、なんか泣ける……」
春海(15):
「うん……こういうの弱いんよ……」
陽翔(5)・結音(5):
「ソフィーアおねえちゃん、泣かんで〜!」
燈真(4):
「とぅま、祝福の“こころまる”送る!!」
(※両手を丸にして胸に当てる謎の儀式)
灯乃(4):
「ひのの、花びら撒きも本番でやるからねー!!」
ソフィーア:
『うわぁ……みんな本当に……愛しい……』
……と、ここまでは完璧な感動シーンだった。
だが。
背後で“ゴソゴソ……バサァッ……”という物音。
光子:
「……ちょっと待って。
これ……なんか嫌な音ば聞こえた」
優子:
「まさか……」
美鈴:
「1歳コンビ、どこ行ったと?」
――その瞬間。
ドンッ!!!!
画面の下から突然、
彩羽(1)がジャンプして登場。
彩羽:
「ソフィーアちゃーー!!おにーしゃん!!」
続いて悠翔(1)が突撃。
悠翔:
「おねえしゃーーん!!けっこんーー!!」
スマホの三脚にダイレクトタックル。
画面が回転し、天井と床とみんなの顔が高速切り替え。
ソフィーア:
『キャーー!? かわいすぎるーー!!!』
光子:
「ちょ、ちょっと!? 彩羽!? スマホ倒れる!!」
優子:
「悠翔、なんで“けっこん”叫ぶと!? 今誰と!?」
悠翔:
「おねえしゃんとーー!!」
結音(5):
「いや、ゆのんと? ひのと? どっち!?」
灯乃(4):
「ひのと結婚したかったら、まず“ごあいさつ”やろ!!」
陽翔(5):
「俺とも結婚すると言いよったやん!」
燈真(4):
「とぅまとは!?!?」
美鈴:
「ああもう、恋愛模様が渋滞しすぎ!!」
全員:
「「「ははははははは!!!」」」
画面の向こうでは、
ソフィーアもドミトロも笑いすぎて涙を流していた。
ソフィーア:
『あなたたち、本当に最高……
日本に行きたくなりました……!』
ドミトロ:
『この家族に会えて、僕たちは幸運だ。
結婚式、絶対に最高の一日にしよう』
美鈴:
「うん。
うちら全員、平和の花束抱えて行くけんね」
光子・優子・美香・アキラ:
「「「ソフィーア、ドミトロ——
本当におめでとう!!!」」」
子どもたち:
「おめでとーー!!」
悠翔:
「けっこんーー!!」
彩羽:
「ぎゅーー!!」
またスマホがぐらり。
全員:
「「「こらーーー!!」」」
◆ 最後に、画面の向こうから
ソフィーア:
『みんな……
9月23日、オデーサで待っています。
笑顔も涙も、全部いっしょに味わいましょう。』
ドミトロ:
『僕らの未来に、日本の家族がいてくれることが、
なによりの祝福です』
通話終了ボタンが押されるころには、
リビングは愛と笑いと小さな暴走でいっぱいだった。




