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美香と光子と優子の爆笑ストーリー。光子と優子29歳  作者: リンダ


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園長先生=美鈴、孫パワーにたじたじ

◆ 園長先生=美鈴、孫パワーにたじたじ


さくら組の朝の会。


先生:

「じゃあ今日は、“好きな食べ物”をひとりずつ教えてもらいま〜す」


子どもたち:

「はーい!!」


順番に、


「ぶどう!」「ハンバーグ!」「カレー!」と続き、

いよいよ、柳川灯乃ひのの番。


先生:

「じゃあ、ひのちゃん。好きなたべものは?」


灯乃:

「ひのが いちばんすきなたべものはね〜……」


胸を張って、元気いっぱいに叫んだ。


灯乃:

「“美鈴ばあちゃんの からあげ”です!!」


先生:

「……えっ」


教室の空気が、ぴたっと止まる。


別の子:

「えんちょーせんせいの からあげ??」


灯乃:

「うん!! えんちょーせんせいの……

 “ばあちゃんの”からあげ!!!」


先生:

「“ばあちゃん”言うたーーー!!!」


その瞬間、

廊下を歩いていた園長・美鈴の耳に、

ばっちりその声が届いた。


美鈴:

「(……いま“ばあちゃん”て聞こえた気がするっちゃけど……)」


◆ 園長、美鈴。教室に入る


コンコン、とドアをノックして、

園長先生がそっと中をのぞく。


美鈴(園長モード):

「みんな〜、おはようございます」


子どもたち:

「えんちょーせんせい、おはよーございます!!」


灯乃:

「……あっ! ば……」


(“ばあちゃん”と言いかけて、慌てて口を抑える)


灯乃:

「……え、えんちょーせんせい……おはようございますっ!」


美鈴:

「(今、間違いなく“ば”まで出とったよね!?)」


先生:

「園長先生、ちょうど今、好きな食べ物の発表をしてたんですよ〜」


美鈴:

「そうねぇ。みんな、何が好きと?」


子どもA:

「ぼくはカレー!」


子どもB:

「わたしはイチゴ!」


先生:

「で、ひのちゃんがですね……」


灯乃、手をビシッと挙げる。


灯乃:

「ひのね、えんちょーせんせいの、

 “からあげ”が いちばんすき!!」


美鈴:

「(あ、ここは“園長先生”で踏みとどまった……)」


「ありがとう、ひのちゃん。

 でも、えんちょーせんせいは みんなの“園の先生”やけんね?」


灯乃:

「うん! わかっとるよ!

 おうちで“ばあちゃん”、

 ようちえんで“えんちょーせんせい”!!」


先生・子どもたち:

「「おぉ〜〜〜〜!!」」


美鈴:

「(完全に言われとるやん……)」


◆ 灯乃の“職務質問”タイム


美鈴:

「じゃあ、園長先生はお部屋を回ってくるけんね〜」


そう言って別のクラスへ行こうとした瞬間、

うしろから小さな足音がタタタタッと追いかけてきた。


灯乃:

「えんちょーせんせい!!」


美鈴:

「ど、どうしたと?」


灯乃:

「えんちょーせんせい、

 きょうは“ばあちゃんじゃない日”なん?

 “半分ばあちゃんの日”なん?

 それとも“ぜんぶばあちゃんの日”なん?」


美鈴:

「ややこしっ!!!」


先生:

「分類が独特すぎる!!」


美鈴:

「え、えーっとね……

 いまは“全部園長先生の日”かなぁ〜?」


灯乃:

「えー!! じゃあ、おやつの時間になったら

 “半分ばあちゃん”になっていいよ?」


美鈴:

「(提案してくるんかい!!)」


子どもC:

「えんちょーせんせい、ばあちゃんなの〜?」


子どもD:

「いいなぁ〜、ひのちゃん、“えんちょーばあちゃん”おると〜!」


美鈴:

「やめて!! 新しい役職つくらんで!!」


◆ お昼前:園長室にて


職員室の隣、園長室。


美鈴:

「はぁぁ……

 孫が在園しとるって、こういうことやったんね……」


副園長:

「でも、ひのちゃん、ちゃんと使い分けようとしてましたよ?

 “ばあちゃん”と言いかけて“えんちょーせんせい”って」


美鈴:

「そうなんよ。そこは偉いっちゃけどね……

 “半分ばあちゃんの日”とかいう謎概念出してくるけん……」


職員室の先生たち:

「でも、かわいかったですよ〜〜」


美鈴:

「かわいいから困るんよ!

 つい甘くなりそうになるけん、

 “ここでは園長先生”って自分に言い聞かせよるのに!」


そこへ、コンコン。


先生:

「園長先生、失礼します〜。

 さくら組のひのちゃんが、“代表でお昼のご挨拶したい”と……」


美鈴:

「……あの子、だんだん“代表スイッチ”覚えてきよるね?」


◆ お昼のご挨拶:またもや爆笑


食堂に集まる園児たち。


先生:

「それでは、お昼のご挨拶を、

 年少組の柳川灯乃さんにしてもらいます」


灯乃、前に出て、ぺこり。


灯乃:

「えっとね……」


一呼吸おいて、

しっかりと前を見て言い始める。


灯乃:

「きょうは、みんなのために、

 おいしいごはんを つくってくれた、

 きゅうしょくのせんせいと、

 えんちょーせんせいと……」


美鈴:

「(ここまでは普通)」


灯乃:

「“えんちょーせんせいの からあげのレシピ”に

 かんしゃして、いただきます!!」


子どもたち:

「「いただきまーーーす!!!」」


先生:

「レシピ限定で感謝いったーー!!」


別の先生:

「完全に“からあげ園長”になってる……」


美鈴:

「ちょっ……!!

 園長の評価、“からあげ基準”にならん!?!」


でも、こどもたちはニコニコで給食を食べ始める。


子どもA:

「えんちょーせんせいの からあげたべてみたい〜」


子どもB:

「おうちで作ってもらお〜、“えんちょーからあげ”!」


美鈴:

「商品名みたいやめんね!?!」


◆ 帰りの会:灯乃の“名言”ふたたび


その日の帰りの会。


先生:

「じゃあ、きょう楽しかったことをひとつずつ言ってみようね〜」


「すべりだい!」「おままごと!」

と続いて、灯乃の番。


灯乃:

「ひのはね〜……」


少し考えて、こう言った。


灯乃:

「きょう、えんちょーせんせいが

 “えんちょーせんせいのかお”で

 “ばあちゃんの こころ”しとったのが

 いちばん たのしかった!!」


先生:

「……え?」


子どもE:

「なにそれ〜〜?」


先生:

「ちょ、ちょっと詳しく教えてもらえる?」


灯乃:

「えっとね〜、

 ひのが まいごみたいに ないとったとき、

 えんちょーせんせいが

 “園長先生の歩き方”であるいてきて、

 “ばあちゃんの よしよし”してくれたと!!」


先生:

「……(想像してちょっとウルッ)」


灯乃:

「だからね〜、

 ひの、きょうおうちにかえったら、

 ママに言うと!

 “えんちょーせんせい、

 きょうも ひののこと、

 ばあちゃんのこころで まもってくれたよ”って!」


美鈴(廊下で聞いててガチ泣き寸前):

「やめてぇぇぇ……そういうとこ突いてくるの……!」


◆ 家に帰れば、ただの“優しいばあちゃん”


夕方、柳川家。


玄関のドアが開き、

ランドセルならぬ小さなリュックを背負った灯乃が飛び込んでくる。


灯乃:

「ただいまーー!!」


優子:

「おかえり、ひの。きょうも元気やね」


拓実:

「ちゃんとご挨拶できた?」


灯乃:

「できた!!

 しかもね〜、きょうは “えんちょーせんせいのかおで、

 ばあちゃんのこころデー”やった!!」


優子:

「なにそのカレンダーみたいな言い方(笑)」


そこへ、ピンポーン。


ドアを開けると、

買い物帰りの美鈴が立っていた。


美鈴:

「おじゃましま〜す。ひの、おかえり〜」


灯乃:

「ばあちゃーーーん!!」


さっきまで

「えんちょーせんせい」と呼んでいた人に、

全力で飛びつく灯乃。


優子:

「こっちでは、完全に“ばあちゃん”やね」


美鈴:

「もうここは“園長先生スイッチ”切ってよかと〜」


灯乃:

「きょうもね、えんちょーせんせいがね――」


その日の出来事を、

身振り手振りで全力報告。


美鈴:

「そうかそうか。

 じゃあ、ばあちゃんも頑張ってよかったねぇ」


優子、ふと真顔になって小さく言う。


優子:

「お母さん、

 **“顔は園長先生で、心はばあちゃん”**って、

 あの子、ちゃんと見抜いとるよ」


美鈴:

「……やめんしゃい、そういうの。泣くやろ」


でも口元は、

どうしてもにやけてしまう。


灯乃:

「ばあちゃん、

 こんどひの、“えんちょーせんせいだいすき券”

 つくってあげる!!」


美鈴:

「なにそれ!? そんな券、100枚くらい欲しいやん!!」


優子:

「使用期限、今日の夜までとかにしとかなね。

 甘やかされすぎるけん(笑)」


こうして――


博多南幼稚園では

「からあげ園長」「えんちょーばあちゃん」など

謎の呼び名が増えつつも、


園では“園長先生の顔”で子どもたちを守り、

家では“ばあちゃんの心”で孫を抱きしめる、


美鈴と、

爆笑ネタを振りまきながらも、

ちゃんとその背中を見ている灯乃との、

にぎやかで優しい日々は、

まだまだ続いていくのだった。



博多南幼稚園

第1話「園長先生と、最強すぎる孫たち」


 その日は、博多南幼稚園の参観日だった。


 しかも、ただの参観日ではない。


 兄姉も一緒に園へ立ち寄れる、年に一度の「ファミリーデー」。


 園庭には、朝から保護者と園児たちの声が響いていた。


「ママー、見てー!」


「パパ、こっち来てー!」


 そのにぎやかな園庭に、さらに強烈な一団が現れた。


 青柳陽翔。五歳。


 柳川結音。五歳。


 青柳燈真。三歳。


 柳川灯乃。四歳。


 全員、小倉美鈴園長の孫である。


     *


「はるとおにーちゃんだー!!」


「ゆのんおねえちゃーん!!」


「とぅまくん、この前テレビ出とった!!」


「ひのちゃーん!!」


 園児たちが、一斉に駆け寄ってくる。


 陽翔は、すっと胸を張った。


「どーも。“うさぎ大量発生男子”です」


 結音が即座にツッコむ。


「自分で言わんとって!? しかも幼稚園で名乗る名前やないやろ!!」


 灯乃は、誇らしげに両手を腰に当てた。


「はるとおにーちゃんと遊ぶとね、おなかでうさぎがぴょんぴょんすると!」


 園児たちが目を輝かせる。


「すげー!」


「うさぎ出るん!?」


「どこから!?」


 美鈴園長は、園庭の端で固まっていた。


「……うさぎの数で人気が決まる幼稚園になっとる……」


 そこへ燈真が、てくてく歩いてくる。


「えんちょーせんせい」


「はい、燈真くん」


「きょうも、こころ、やわらかい?」


 美鈴は一瞬で崩れた。


「う……っ」


 結音が慌てて叫ぶ。


「とぅまくん! 朝イチで園長先生の涙腺攻撃せんで!」


 陽翔も続く。


「園長先生は、ぼくたちの超つよか味方です!」


「陽翔までやめてぇぇ! 園長、仕事前に泣くわけにはいかんとよ!」


 灯乃がにこにこしながら言った。


「ばあちゃん、がんばれ!」


 その瞬間、空気が止まった。


 美鈴は小声で言う。


「灯乃ちゃん……園では、園長先生……」


 灯乃は、真剣な顔でうなずいた。


「わかった!」


「ほんと?」


「半分ばあちゃん先生!」


「混ぜんでぇぇぇ!!」


     *


 家族ゲーム大会が始まった。


 最初は、しっぽ取り。


 陽翔は園庭を走り回り、次々にしっぽを取っていく。


「速い!」


「はるとおにーちゃん、つよい!」


 結音は、無駄のないステップで相手をかわす。


「ほらほら、足元見らんと転ぶよ!」


 すでに幼児とは思えない落ち着きだった。


 燈真は、予測不能な動きで相手を翻弄する。


 右に行くと思わせて左。


 止まると思わせて、しゃがむ。


 そして灯乃は――


「うわああああああ!」


 叫びながら突撃していた。


 美鈴は頭を抱える。


「灯乃ちゃん、作戦が勢いだけ……!」


 その時、灯乃が叫んだ。


「とぅまおにーちゃん、まもってー!」


「まかせて」


 燈真が走る。


「ひのちゃん、こっち!」


 陽翔も走る。


 次の瞬間。


 ドテーン!


 二人は同時に灯乃を守ろうとして、見事にぶつかって転がった。


 結音が叫ぶ。


「男子同盟、仕事下手すぎ!!」


 燈真は砂を払いながら、ぽつりと言った。


「倒れても、また立てばいいとよ」


 園庭が静まり返る。


 美鈴の目が潤む。


「……燈真くん……」


 結音が両手を広げる。


「だから! しっぽ取り中に名言を挟まんで!」


     *


 次は椅子取りゲーム。


 音楽が止まった。


 ドシン!


 陽翔が座る。


「勝った!」


 灯乃が頬を膨らませる。


「ずるいー!」


 一方、燈真は椅子を取れずに立っていた。


 美鈴が声をかける。


「燈真くん、残念やったね」


 燈真は静かにうなずく。


「席がなくても、心に椅子があれば大丈夫」


 結音が固まった。


「椅子取りゲームを精神論で攻略する人、初めて見た!!」


 美鈴は、もう限界だった。


「この子、将来ぜったい作詞家になる……」


     *


 夕方。


 柳川家のリビングには、青柳家と柳川家、そして美鈴が集まっていた。


 美鈴はお茶を飲みながら、ぐったりしていた。


「今日だけで、寿命が三回縮んだ気がする……」


 優子が苦笑する。


「お母さん、灯乃、園で“ばあちゃん”何回言いかけた?」


 灯乃は指を折って数える。


「えーっと……三十回くらい?」


 拓実がつぶやく。


「ほぼ常時やん」


 陽翔が胸を張る。


「でも、ばあちゃん先生、人気やったよ!」


 美鈴が即座に反応する。


「ばあちゃん先生は禁止!」


 結音がうなずく。


「園では園長先生。家ではばあちゃん。ちゃんと切り替えんとね」


 灯乃は真剣に言った。


「わかった。あしたから、園では“えんちょーばあ――”」


「惜しい! 惜しいけどアウト!」


 燈真が美鈴の横に座った。


「とぅまは、えんちょーせんせいも、ばあちゃんも、どっちもすき」


 美鈴は、また涙腺を攻撃された。


「……もう、今日は勘弁して……」


 光子が笑いながら言う。


「お母さん、孫たちはちゃんと見とるっちゃんね」


 優子もうなずく。


「園長先生としてのお母さんも、ばあちゃんとしてのお母さんも、どっちも大好きなんよ」


 美鈴は、少し照れくさそうに笑った。


「……そう言われたら、怒れんやん」


 灯乃が両手を上げる。


「ばあちゃん、さいきょうー!」


 美鈴は慌てて言った。


「園では園長先生!」


 陽翔、結音、燈真、灯乃が声をそろえる。


「はーい!」


 しかし、その返事の顔には、まったく自信がなかった。


 優子がぽつり。


「これは明日もやるね」


 光子がうなずく。


「やるね」


 美鈴は天井を見上げた。


「園長先生、明日もがんばります……」


 その横で、灯乃がそっと美鈴の手を握った。


「ばあちゃん、ひのがまもるけんね」


 美鈴は、もう何も言えなかった。


 園長としては困る。


 けれど。


 ばあちゃんとしては、たまらなく幸せだった。

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