◆ 翌朝 ― “記憶ないんですけど”会議、開幕
◆ 翌朝 ― “記憶ないんですけど”会議、開幕
燈真の誕生日パーティーの翌朝。
青柳家のダイニングには、妙〜な空気が漂っていた。
光子:
「……あたま、ちょっとズキズキする……」
翼:
「そらそうやろ。シャンパン、本物やったもん」
光子:
「シャンメリーやなかったと……?」
翼:
「それ、昨日も同じ会話したからな?」
光子:
「……で、わたし、昨日なにしたと?」
翼は、にや〜っと口元だけ笑う。
翼:
「――“おかーしゃん、だっこして〜”って言いながら
自分の母親に抱きついとった」
光子:
「……は?」
ちょうどその時、美鈴がキッチンから顔を出す。
美鈴:
「おはよう、“4歳児みっちゃん”」
光子:
「ぎゃああああああ!!?」
陽翔&燈真&彩羽:
「ママ、ほんとに4歳やった!!」
光子:
「うそやろ!? 覚えとらん!!」
美鈴:
「ほらほら、ちゃんと動画あるけん(スマホ掲げる)」
光子:
「撮っとるんかーい!!!」
⸻
◆ 柳川家サイドも地獄の朝
同じころ、柳川家。
優子:
「うぅ……頭がポワポワする……」
拓実:
「おはよう、“にぃに〜”って甘えてきた嫁さん」
優子:
「やめろおおおおおお!!」
結音:
「ママね、“ゆうこ、あしつかれた〜 にぃにだっこして〜”って言いよった」
灯乃:
「ひののママ、かわいかった〜〜」
悠翔:
「ままぁ〜〜〜にこにこ〜〜〜」
優子:
「うわあああああ!!!」
「わたし、そんなこと言ったと!?!?」
拓実:
「うん。で、“しぇけんのこと、がんばる……”とか言いながら寝てった」
優子:
「“世間”噛んどるやん!!」
拓実は、ここで決定打を放つ。
拓実:
「――はい、動画ドーン」
スマホ画面には、
ソファでとろ〜んとした顔で
「ひの〜〜 ゆのん〜〜 すち〜〜〜」
と言っている優子の姿。
優子:
「動画消して!!!」
結音:
「むり!! ゆのんの心の中に保存しました」
灯乃:
「ひのの心にも“ほぞん”した!!」
優子:
「うちの娘たち、バックアップ機能強すぎる……!」
⸻
◆ 合同反省会 in オンライン通話
その日の午後。
青柳家&柳川家、オンラインビデオ通話。
画面には光子と優子、
そして後ろでニヤニヤしてる翼と拓実。
光子:
「……あのさぁ」
優子:
「なんでわたしたち、シャンパン一杯で幼児化するっちゃろうね……」
翼:
「体質」
拓実:
「あと、日頃のキャラ」
光子:
「それ、どういう意味よ」
拓実:
「もともとテンション高いから、
ちょっとアルコール入ると“素”が爆増するんよ」
優子:
「まぁ……動画見た感じ……
“素の3歳時代”に戻っとった感は否定できんね……」
光子:
「よりによって燈真の誕生日で幼児化するとか……
なんか“4歳に嫉妬した2人の3歳児”みたいやん」
優子:
「表現やめろ!!(笑)」
陽翔:
「でもね、ママたち可愛かったよ?」
結音:
「うん、ちょっとびっくりしたけど、
“あ、ママたちも昔はこんなだったのかな”って思った」
燈真:
「とぅま、“おかあしゃん いっしょにねんねしよ〜”って言われた」
彩羽:
「いろはも!!」
光子:
「……もう、爆笑発電所でネタにするしかないかな」
優子:
「どうせバレるしね……」
翼&拓実&子どもたち:
「賛成!!!」
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◆ 子どもたちプレゼン企画
「昨日のママおかしかったランキング」
数日後。
青柳家のリビングに、ホワイトボードが一台運ばれてきた。
タイトルは大きくこう書いてある。
『昨日のママおかしかったランキング
〜酔っ払い幼児化スペシャル〜』
光子:
「タイトルがもうひどい」
優子:
「しかも“昨日”って言いながら、もう数日経っとるし」
◆ プレゼンター:陽翔&結音
◆ 審査員:翼・拓実・美鈴・優馬
◆ 観客:当の本人たち&ちびっこ全員
⸻
第3位:
「とぅま&いろはと一緒にアンパンマン見たがるみっちゃん」
陽翔:
「第3位は、
“おかーしゃん、アンパンマンつけて〜。
とぅまと いっしょに みたい〜”って言ったママ」
燈真:
「とぅま、そのとき“えっ ママも見るん!?”ってびっくりした」
彩羽:
「いろは、いっしょにみたかった!!」
光子:
「いや……アンパンマンは普通に今でも好きやけどさ……」
「言い方!! 完全に4歳児やん……」
美鈴:
「“アンパンマン見たいスイッチ”久々に見たわ(笑)」
⸻
第2位:
「にぃに〜って拓実に甘える優子」
結音:
「第2位はこれです!」
ホワイトボードに書かれた再現セリフ:
『にぃに〜、ゆうこ、あし つかれたぁ〜
だっこしてぇ〜〜』
拓実:
「言いました。完全に聞きました」
優子:
「ぎゃああああああ!!」
灯乃:
「ひの、はじめてママがパパのこと“にぃに”って呼んどるの見た」
結音:
「なんか、“過去のママ”が出てきたみたいで変な感じした」
優子:
「完全に黒歴史やん……」
翼:
「でも、かわいかったで?」
優子:
「フォローになっとらん!!」
⸻
栄えある第1位:
「“しぇけんのことがんばる……”と言い残して寝落ちする優子」
全員:
「あ〜〜〜〜それ!!!!」
結音:
「第1位は、
“ゆうこね……しぇけんのこと……がんばる……”って言って
そのまま寝たママです」
灯乃:
「“しぇけん”てなに?って思った」
拓実:
「“世間”です」
優子:
「言い方!!(笑)」
陽翔:
「動画見たけど、
ちゃんと“しぇけん”って言いよった」
燈真:
「なんか、“せかいのやくにたつ3さいじ”みたいでおもしろかった」
優子:
「やめろ!キャッチコピーつけるな!」
翼:
「大賞、おめでとうございます」
優子:
「なんの大賞よ!!」
⸻
◆ 特別賞:
「おかーしゃん、だっこして……のみっちゃん」
陽翔:
「特別賞はこれです」
『おかーしゃん……
ねんね したい……
だっこ……して……』
光子:
「やめてぇぇ!!!」
美鈴:
「ちゃんと“だっこ”してあげたけんね?」
光子:
「覚えとらんのが逆に恥ずかしい!!」
優馬:
「“あのときに戻ってきたなぁ”って、ちょっと泣きそうになったぞ」
光子:
「それ言われたらなんも言えん……」
陽翔:
「というわけで、
“いちばんかわいかったで賞”はママです!」
みんな拍手。
光子は顔を真っ赤にして、ちょっとだけ笑う。
光子:
「……じゃあせめて、
このランキングは“家族限定公開”でお願いします」
子どもたち:
「はーい(ニヤニヤ)」
絶対守られないやつだと、
大人全員知っていた。
⸻
◆ 爆笑発電所・特別回
「ママたちの幼児化モード 大公開!?」
数週間後。
テレビ番組「爆笑発電所スペシャル」。
セットの中央にM&Y、
その両脇にソファでちょこんと座るのは――
陽翔・燈真・結音・灯乃・悠翔・彩羽。
テロップにはドーンと、
『家族が選んだ!
ママたちの“酔っ払い幼児化ランキング”』
優子:
「いや、タイトルやめって言ったやん……」
光子:
「ファンの皆さん、
今日は温かい目で見守ってください……」
MC(別番組回のゲスト芸人):
「いや〜〜、紅白の大トリ歌ったアーティストとは思えない企画ですね!!(笑)」
優子:
「そう言われると刺さる!!」
光子:
「でもね、こういうとこ見せとかんと、
“完璧な人”って思われても息が詰まるけん」
優子:
「うん。
失敗したって、酔っ払って子どもに笑われたって、
それでも一緒に笑えればそれでよかって、
じいちゃんが言いよったしね」
客席:
「(拍手)」
MC:
「じゃあ早速、VTR行ってみましょう!
“問題の夜・完全再現スペシャル”!」
光子&優子:
「ちょっと待てぇぇぇぇ!!!」
⸻
◆ まとめの一言
収録後、楽屋。
光子:
「……はぁ。全国放送で幼児化さらした女って、そうおらんよね」
優子:
「でもさ、
あのVTR見て笑っとるファンの顔見たら、
“まぁいっか”ってなったね」
光子:
「うん。
子どもたちも、
“大人になっても失敗するし、変なところある”って
笑ってくれたなら、それでよかね」
優子:
「……ただし、シャンパンは今後完全禁止。」
光子:
「異議なし!!」
二人はハイタッチ。
その頃、リビングでは子どもたちがまたホワイトボードに、
新しいタイトルを書いていた。
『つぎの ねんまつの
ママおもしろかったランキング よていひょう』
――どうやら、
この一家の“カオスと爆笑”は、
2052年も、その先もずっと続いていきそうだった。
◆ 2052年4月――灯乃、ついに幼稚園デビュー
春の風がちょっとだけ冷たさを残している朝。
柳川家は、朝からてんやわんやだった。
優子:
「ひの〜! スモック反対に着とる〜!!」
灯乃(ひの/4歳):
「えっ!? うしろ前と!? ひの、うしろ前すき〜!」
拓実:
「いや“好みの問題”やない(笑)」
結音(ゆのん/年長):
「ひのちゃん、今日から“ようちえんのこ”なんやけん、
ピシッとしとかなあかんよ〜?」
灯乃:
「ゆのんねえちゃん、“ピシッ”てなんね?」
結音:
「……だいたいでいいけん、ちゃんとしとけばOK!」
悠翔(ゆうと/1歳):
「ひーちゃ〜〜ん!! ようちえんいく〜〜〜!!」
優子:
「ゆうとは今日はお留守番〜。
そのかわり玄関で“いってらっしゃいぎゅー”ね」
⸻
◆ 博多南幼稚園・入園式会場
ホールには、真新しい制服の園児たちと、
スーツ姿の保護者たちがずらり。
園長先生:
「それでは、入園式を始めます」
──保護者席の端っこでは、
M&Yこと光子と優子の姿も。
光子:
「ひの、似合っとるねぇ〜。
“柳川家の爆笑幼稚園部門”ついに始動やね」
優子:
「やめて、その言い方(笑)」
翼&拓実&陽翔&燈真&彩羽&悠翔も、それぞれの場所から見守る。
⸻
◆ 入園児代表挨拶、まさかの人選
園長先生がマイクを持つ。
園長:
「本日はたくさんのご出席、ありがとうございます。
それではここで、新入園児を代表して、
ご挨拶をしてもらいましょう。
年少組・柳川灯乃さん、お願いします」
優子:
「……え?」
拓実:
「ちょっと待って、初耳なんやけど!?」
光子:
「聞いとらんよ!? なんで代表しとると!?」
園長:
「※事前の面談で、受け答えがしっかりしていたため、
急きょお願いしました」
優子:
「園長先生ぇぇぇぇぇ!!!」
⸻
◆ 灯乃、マイクの前に立つ
ちょこちょこと前に歩いていく灯乃。
制服の袖はまだ少し長くて、
スカートの裾をぎゅっとつまみながら、
緊張半分・わくわく半分の顔。
副担任の先生が、そっとマイクの高さを調整する。
先生:
「ひのちゃん、ゆっくりでいいから、自分の言葉でね」
灯乃:
「……はいっ!!」
会場がしん、と静まる。
⸻
◆ 爆笑入園児代表挨拶
灯乃:
「えーっと……」
一拍おいて、
ぱぁっと笑顔になって、ハキハキと言い始めた。
灯乃:
「きょうから、ひのは、
“ほんものの ようちえんのこ” に、なりました!!」
(会場クスッ)
灯乃:
「ママは、“もうすぐやね〜、もうすぐやね〜”って、
なんか、クリスマスみたいに まちよったとです!」
(保護者ざわ… → クスクス)
優子:
「うわぁ……バラされた……」
拓実:
「クリスマス扱いされとったんか、入園式……」
灯乃:
「ひのは、
このまえまで、“おうちのプリンセス”やったけど、
きょうからは、
“ようちえんの ちょっとおてんばプリンセス” になります!!」
(どっ と笑い)
光子:
「肩書き盛ってきたねぇ〜!」
園長先生も肩を震わせている。
灯乃:
「それからね――」
一瞬、まじめな顔になる。
灯乃:
「ひの、おうちで、
“ないちゃうときも あるかもしれんけど、
さいごは わらって“いってきまーす”て いうんだよ”って
ママとパパに ならったとです」
優子・拓実:
(ここだけで既にうるうる)
灯乃:
「だから、
ひのが ないとったら、
“だいじょうぶよ〜、さいごに わらえば まる”て
せんせいたち、いってください!!」
(爆笑&拍手)
先生たち:
「“最後に笑えば丸”……名言出た……!」
灯乃:
「おともだちとは、
おもちゃをなかよく つかって、
ときどきケンカしても、
“ごめんね”と“いいよ〜”を
ちゃんと いいあえる ようになります!!」
(会場から「お〜〜」という声)
陽翔:
「……なんか、今日のひの、すごくない?」
燈真:
「とぅま、いま“人生のおべんきょう”してる気がする……」
灯乃:
「さいごに――」
マイクをぎゅっと握りしめる。
灯乃:
「きょうは、ひのたちのために、
きれいな おはなや、
かわいい かざりを ありがとう ございました!!
これから 3ねんかん、
せんせい、よろしくおねがいしまーーーす!!」
深々と、頭をぺこり。
……のつもりが――
勢い余って、ほぼ直角におじぎしてよろける。
客席:
「わぁぁぁ!!」→「あはははは!!!」
先生が慌てて支え、
そのまま会場は拍手と爆笑の渦に包まれた。
園長:
「……すばらしい挨拶でした。
“最後に笑えば丸”――
私たちも、忘れずにいたい言葉です」
⸻
◆ 式のあと、異常事態発生
入園式がつつがなく終わり、
門の前で写真を撮ったり、
先生に挨拶をしたり、
あちこちで笑い声が響いていた。
が――その裏で。
博多南幼稚園・最寄りの整骨院
「みなみはりきゅう・整骨院」
受付のお姉さん:
「え、えっと、今日はどうされたんですか?」
お母さんA:
「さっきの“代表挨拶”で笑いすぎて……
腰が“ピキッ”て……」
お父さんB:
「自分は、肩が……
“最後に笑えば丸”のとこで、
拍手しながら変な角度になって……」
おばあちゃんC:
「大声で笑ったら、首から背中までガチガチになってしもうて……
あの子は罪な子やねぇ……(褒め言葉)」
受付の後ろから、
院長先生がそっと顔を出す。
院長:
「今日は……なんかイベントでもあったんですか?」
受付:
「幼稚園の入園式だそうです」
院長:
「入園式でぎっくり腰多発ってどういうこと!?」
⸻
◆ 幼稚園に寄せられる“謎の報告”
数日後。
園の職員室。
事務の先生:
「園長先生、ちょっとよろしいですか」
園長:
「どうしました?」
事務:
「近所の“みなみ整骨院”さんから電話があってですね……
“入園式の日から腰痛と肩こりの患者さんが急増したんですが、
何か激しい運動でもされましたか?”って」
園長&先生たち:
「「「運動はしてない!!(笑)」」」
副園長:
「たぶん……
**灯乃ちゃんの代表挨拶による“笑いすぎダメージ”**かと……」
担任:
「保護者アンケートにも、
“腹筋崩壊しました”って書かれてました……」
園長:
「“腹筋崩壊”は教育用語に入らんけど……
まぁ、いいか」
⸻
◆ 家に帰ってからの“戦犯”の自覚ゼロ
その日の夕方、柳川家。
優子:
「ひの、今日ね、すっごいがんばったね〜!!」
灯乃:
「ひの、“かわいいプリンセス代表”やった!!」
拓実:
「正式名称違うけど、まぁ合っとる(笑)」
結音:
「ひのちゃんの“最後に笑えば丸”ね、
ゆのん、ちょっと泣きそうになった」
灯乃:
「えっ!! なんで!? ゆのん、まるになった!?」
悠翔:
「ひーちゃん、まる〜〜!!(ぐるぐる回る)」
優子:
「でもね、ひの……
あんたの挨拶で笑いすぎて、
整骨院に行った人もおるらしいよ?」
灯乃:
「えーーー!?
ひの、人をなおす しごとしたかったのに……
“こわす しごと”してしもうたと!?!?」
拓実:
「いや“壊して”はない!(笑)」
優子:
「“笑いすぎて痛くなるくらい楽しかった”ってことやけん、
それは“よかしごと”したとよ」
灯乃:
「そっか!!
じゃあ こんどは、“こころをほぐす しごと”する!!」
優子:
「もうやってるよ、ひの」
光子(ビデオ通話越し):
「うん、間違いなくやってる。
今日から“幼稚園の爆笑プリンセス”やね」
⸻
こうして、
柳川灯乃の幼稚園生活は――
・入園式で腹筋を破壊し、
・整骨院の患者数を微増させ、
・でも誰よりも“こころをほぐす挨拶”でスタートを切る、
という、伝説級の第一歩となったのだった。




