帰省の決意 ― 喫茶店「Smile」にて
紅白から数日後。
M&Yのスマホには、たくさんのメッセージが届いていた。
その中に――とても丁寧な文面のメールが一通。
送り主は、
Smile の佐々木夫妻(佐々木健一・美沙)。
光子がメールアプリを開いた瞬間、
画面に優しい文字が浮かんだ。
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◆ 佐々木夫妻からのメール
件名:紅白、大トリの歌……本当にありがとうございました。
本文:
M&Y 様
紅白歌合戦、お疲れさまでした。
そして、大トリの『じいちゃん、笑っていこう』……
家族みんなで拝見しました。
曲が始まって数秒で涙が出て、
サビではもう、声を出して泣いていました。
わたしたちにも、遠くに住む両親がいます。
最近は仕事の都合や距離のこともあって、
「また来年でいいか」と、帰省を延ばしがちで……。
でも、あの歌を聴いて、
“元気なうちに会いに行かないといけない” と
強く思いました。
じいちゃんの笑顔、
ふたりの声、
家族のあたたかさ。
ずっと心に残る紅白でした。
本当にありがとうございます。
Smile 佐々木健一・美沙
⸻
光子は、ふっと息をのみ、
優子にスマホを渡す。
優子:
「……泣かせてしまったねぇ」
光子:
「でもさ、
“会いに行こう”って思ってくれたんなら、
じいちゃん、絶対喜んでるよ」
優子:
「うん。
じいちゃんも天国で“ほら見ろ、やっぱワシの歌やけん!”
って調子に乗っとうよ、絶対」
光子:
「それは……間違いないね」
2人は同時に笑った。
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◆ その日の夕方
アキラが厨房から顔を出す。
アキラ:
「おまえたち、
佐々木さんからメール来てたやろ?」
美香:
「うん……見たよ。
本当に、伝わってるんだね」
アキラ:
「じいちゃん、
“みんなの心にわずかでも笑いと涙残せたら満足じゃ”
って言いよったけんね」
光子:
「ほんと、じいちゃんの功績すごすぎやろ」
優子:
「エロ大魔王の称号のまま天国行って、
今や“天界の大トリ”やね」
美香:
「あ、でも
“天界の大トリ”とか言ったら
また調子に乗るよ?」
アキラ:
「もう乗っとるやろ。
あの人が控えめとか、聞いたことないけん」
家族全員、
じいちゃんの笑顔を思い出して笑いながら、
小さく涙を拭った。
⸻
◆ ラスト
光子:
「ねぇ……
こんなふうに誰かが大事な人に会いに行こうって思ってくれたなら、
じいちゃんの歌、ちゃんと役目果たしとるね」
優子:
「うん。
まだまだ、じいちゃんに恥じん歌作らなね」
美香:
「次は“ばあちゃん応援ソング”かな?」
アキラ:
「それはそれで、また天国が騒がしくなるぞ」
笑いと涙が、同じテーブルの上で混ざり合う。
それはまるで――
安三郎が生前ずっとやってきたことそのものだった。
◆ 帰省の決意 ― 喫茶店「Smile」にて
大野城市・大野城駅前。
朝の光がガラス越しに差し込む喫茶店「Smile」は、いつもより少しだけ静かだった。
カウンターの中で、佐々木健一がコーヒー豆を挽き、美沙がモーニングセットのトーストを並べている。
店内のBGMは、紅白の翌週からずっと、M&Yが大トリで歌った「じいちゃん笑っていこう」のライブ音源だ。
美沙:
「……ねぇ、健ちゃん」
健一:
「ん?」
美沙:
「やっぱりさ、帰ろっか。
お父さんとお母さんのところ。年明け落ち着いたら」
健一は手を止めて、ほんの少しだけ目を細めた。
健一:
「…あのメール、送ったときから、もう覚悟はしとったろ?」
美沙:
「うん。
あの歌聴いてから、“また今度”って言い訳できんくなっちゃって」
紅白の夜。
二人は、店を早めに閉めて、
店内のテレビでM&Yの大トリを見た。
“エロ大魔王”と呼ばれた安三郎じいちゃんの話、
笑いと涙の入り混じった歌詞。
あのサビで、美沙は声を上げて泣いた。
健一も、隣で肩を震わせながら笑い泣きした。
健一:
「親父もお袋も、
“帰ってこんかね〜”って言いながら、
結局、こっちの都合に合わせてばっかりやけんな」
美沙:
「こっちもお店のことあるし、
距離あるしって思ってたけど……。
でも、元気なうちに“ただいま”って言いたい」
健一:
「よっしゃ、決めた。
定休日合わせて、二日間、がっつり帰省しようや」
美沙:
「爆笑発電所大野城支部、臨時休業?」
健一:
「“親孝行特別編”ってことで、
光子さんと優子さんも許してくれるよ」
二人は顔を見合わせて笑った。
カウンターの端には、
印刷してラミネートされた一枚の紙が貼ってある。
『紅白歌合戦 大トリ「じいちゃん笑っていこう」に感動して、
離れて暮らす両親に会いに行くことを決めました。
喫茶店Smileは○月○日・○日にお休みをいただきます。
by 佐々木』
その下には、小さく手書きで
「※爆笑発電所大野城支部 長期活動のための充電日です」
と書き添えられていた。
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◆ 帰省 ― 「ただいま」と「ありがとう」
定休日。
まだ夜が明けきらない時間に、
二人は駅のホームに立っていた。
美沙:
「なんか、緊張するね」
健一:
「何年ぶりやったっけなぁ、
“ただいま”って面と向かって言うの」
美沙:
「帰ってなかったわけじゃないけど…
ゆっくりご飯食べる時間、全然とってなかったもんね」
新幹線に揺られ、在来線に揺られ。
見慣れたはずの田んぼや山の景色が、
今日はなぜか少し違って見える。
実家の最寄り駅に降り立つと、
改札の向こうに、小さく手を振る姿が見えた。
母:
「健一〜!!美沙ちゃん〜!!」
父:
「おぉ、帰ってきたか!」
健一:
「……ただいま」
口に出してみると、とても短い言葉なのに、
胸の奥が熱くなった。
母:
「顔見たら、ほっとしたぁ。
テレビでM&Yちゃん見てからね、
あんたらも、帰ってこんかね〜って思いよったとよ」
美沙:
「えっ、紅白見てたの?」
父:
「見た見た。
“じいちゃん笑っていこう”、
あれ、反則やろ。泣いたわ」
母:
「ねぇ。あれ聴いたら、
“うちの子たちも元気でおってくれたら、それでよか”って思ったもん」
健一:
「……ごめん、なかなか帰ってこんで」
父:
「ばかたれ。
元気ならそれでよか。
でも、こうして顔見せに来てくれたら、もっとよか」
母:
「そうそう。
あんたらに会うと、
わたしたちも“笑っていこう”って思えるけんね」
玄関をくぐると、
テーブルの上には煮物と、お刺身と、山盛りの唐揚げ。
美沙:
「……わぁ、豪華」
母:
「正月逃したけん、今日が“うちの紅白”よ」
父:
「ほら、飲め。いっぱい話そうや」
その夜、テレビの前では、
録画した紅白の大トリがもう一度再生された。
M&Yが歌う画面を見ながら、
四人は笑って、泣いて、また笑った。
母:
「ねぇ、美沙ちゃん。
“会いに来てくれてありがとう”ね」
美沙:
「ううん、こっちこそ……
“ただいま”を言わせてくれて、ありがとう」
健一は、画面の中で歌う二人に、
心の中でそっと頭を下げた。
(光子さん、優子さん。
あの歌があったけん、
俺らはここに座れとるよ。ありがとう)
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◆ M&Yレギュラーラジオ ― ゲスト佐藤輝明&メール紹介
数週間後。
M&Yのレギュラーラジオ番組「M&Yの爆笑ミュージックトレイン」。
オープニングからすでにハイテンションだ。
光子:
「さぁ今夜も始まりました!
“あなたの鼓膜を爆笑で揺らす60分”、フライデー爆笑ラジオカフェ」
優子:
「本日のスペシャルゲストは、この方です!
元・阪神タイガースの4番、
あの“伝説のホームラン男”!!」
光子&優子:
「佐藤 輝明さーーん!!」
佐藤:
「よろしくお願いしまーす。なんか紹介が盛られてますねぇ(笑)」
リスナーからのメッセージも山ほど届いている。
光子:
「まずはラジオネーム“甲子園の風”さん。
『佐藤さん、ホームランの秘訣はなんですか?』」
佐藤:
「え〜っとですねぇ……
“洗濯機プリンを食べないこと”ですね」
優子:
「そこ? なんでうちの黒歴史から入るとですか!」
光子:
「※説明しよう、洗濯機プリンとは――
過去に我が家で発生した、
“洗濯機をプリンで満たして遠心力で固めようとした事件”のことである!」
佐藤:
「そのエピソード聞いたとき、
“この人たちの前ではどんな凡ミスも怖くないな”って思いましたもん(笑)」
優子:
「プロ野球の4番にそこまで言わせたくないわ!」
光子:
「でも、ホームランとギャグは似てますよね?」
佐藤:
「……似てます?」
光子:
「“ここだ!”ってタイミングで、
一発でスタンドにぶち込むところとか!」
佐藤:
「あ〜、それは確かに(笑)
空振りしたときの恥ずかしさも似てますね」
優子:
「ギャグ空振りしたときの、あのスタジオの空気……。
“今日の風は逆風やったね”って自分で処理するとです」
三人:
「アハハハハ!!」
しばし、爆笑トークが続いたあと。
ジングルが流れ、少しだけ落ち着いたBGMに変わる。
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◆ メール紹介 ― Smileからの想い
優子:
「さて、ここからは少し雰囲気を変えて、
紅白のあとに届いたメールを一通、ご紹介したいと思います」
光子:
「ラジオネーム、“喫茶店Smile”さん。
――実は、大野城市・大野城駅前の喫茶店で、
“爆笑発電所大野城支部”を名乗ってくださっているご夫婦です」
佐藤:
「おお、支部増えてますねぇ(笑)」
光子は、少しだけ息を吸い込んでから、
ゆっくりと読み始めた。
光子:
「『M&Y様。紅白歌合戦、お疲れさまでした。
大トリで歌われた“じいちゃん笑っていこう”を、
私たち夫婦は、お店を早めに閉めて二人で見ました。』」
スタジオの空気が、すっと静かになる。
光子:
「『曲が始まってすぐに涙があふれて、
サビでは声をあげて泣きました。
私たちにも、遠くに住む両親がいます。
仕事や距離を理由に、帰省を後回しにしてきましたが、
あの歌を聴いて、
“元気なうちに会いに行かなければ”と強く思いました。』」
優子:
「『年明けにお休みをいただいて、
両親のもとへ“ただいま”を言いに行きました。
“帰ってきてくれてありがとう”と
泣き笑いしながら迎えてくれた両親を見て、
この決断を後押ししてくれたのは、
あの歌だと、改めて実感しました。』」
光子:
「『安三郎さんの話、
じいちゃんを笑って送り出そうとする家族の姿。
他人事とは思えず、
私も、今そばにいてくれる人たちを
大事にしようと思いました。
本当に、本当にありがとうございました。
喫茶店Smile 佐々木』」
読み終えると、
スタジオにはしばし、言葉のない時間が流れた。
佐藤:
「……いいメールですね」
優子:
「うん……。
私らも、最初このメール読んだとき、
控え室で二人で泣いたよね」
光子:
「“歌って、ちゃんと届くんやな”って。
じいちゃんのこと、ただ思い出話としてじゃなくて、
誰かの“会いに行こう”って行動に変わっとるんや、って」
佐藤:
「野球やってても思いますけど、
自分の一打で、
“明日も頑張ろうかな”って思ってくれる人が
どこかにいてくれたら嬉しいじゃないですか。
それと同じですね。
M&Yさんの歌で、
“親に会いに行こう”って人が動いたなら、
それはもう、立派なホームランですよ」
優子:
「うわ、4番から『ホームラン』いただきました!」
光子:
「やった〜! “じいちゃん弾”!」
三人:
「アハハハ!」
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◆ リスナーへの一言
優子:
「ラジオの前にいる皆さんも、
もし、“最近顔見てないなぁ”って人、
頭に浮かんだら――」
光子:
「全部の事情をほったらかして会いに行けとは言わんけど、
電話一本、メッセージ一通だけでもね。
“元気?”って、
それだけでもいいけん、
送ってみてほしいなって思います」
佐藤:
「僕も、番組終わったら親に連絡しようかな。
『お前また太ったな』って言われるの覚悟で(笑)」
優子:
「それはそれで、
“親ってそういうもん”っていう安心感ありますね」
光子:
「喫茶店Smileさん、
素敵なメールありがとうございました。
また大野城で“支部会”やるときは、
こっそり飲みに行きます!」
優子:
「そのときは、“じいちゃん笑っていこう”を
店内BGMでさりげなく流しつつ、
唐揚げとコーヒーで語り合いましょう!」
ジングルが流れ、
番組は再び、いつもの爆笑トークモードへ戻っていく。
けれど、
この夜の放送を聴いていた何人ものリスナーが、
スマホを手に取って
「久しぶり、元気?」と一通のメッセージを送ったことを、
M&Yはまだ知らない。
ただ一つ確かなのは――
安三郎じいちゃんの“笑っていこうや”は、
紅白を飛び出して、
ラジオを通して、
喫茶店Smileを通して、
静かに、でも確かに広がり続けているということだった。
ラジオ局・収録スタジオの外。
「本番終了」のランプが消え、ブースの扉がガチャッと開いた。
スタッフ:
「はーい、おつかれさまでしたー!!」
光子:
「おつかれさまでしたぁぁぁぁ!!」
優子:
「なんか今日は、ホームラン打たれた気分っちゃんね…いろんな意味で」
佐藤:
「打つほうですけどね、本来(笑)」
⸻
◆ とりあえず水、そしてツッコミ
控え室に戻ると同時に、
テーブルの上には紙コップとペットボトルがずらり。
光子:
「テッテキュン(※佐藤さんのあだ名)、
しゃべりすぎて喉渇いてないですか?」
佐藤:
「テッテキュンは初耳ですね(笑)
でもたしかに、試合後インタビュー並みにしゃべりましたわ」
優子:
「今日のMVPは、
“洗濯機プリンを食べないことがホームランの秘訣”発言ですね」
佐藤:
「あれ、オンエアで大丈夫やったんですかね?」
ディレクター(廊下から顔出して):
「ギリギリセーフです!!(笑)
“中継ぎスタッフ”が全力でフォローしました!」
光子:
「中継ぎスタッフって何!(笑)」
⸻
◆ 「親に電話します」宣言の、その後
優子:
「そういえば、本番で言ってましたよね。
“終わったら親に連絡しようかな”って」
佐藤:
「あー、言いましたねぇ」
光子:
「もしや、もう送った?」
佐藤:
「さっき、CM中にちゃちゃっと」
スマホの画面をチラ見せしてくれる。
『今、ラジオ生放送終わった。
また今度、ゆっくり電話するわ。元気しとる?』
優子:
「あ〜〜〜、その“素っ気ないけど嬉しいやつ”!!」
光子:
「返事きました?」
佐藤:
「来ました来ました。
『テレビでM&Yちゃんと出てるの見たよ。
太りすぎんごとしなさい』って」
全員:
「出たーーーー!!」
優子:
「親って、ほんと、まず体型の話から入るとよね!」
光子:
「うちもよ。“ちゃんと食べよる?”じゃなくて、
“ちょっと痩せた? 大丈夫ね?”から入る」
佐藤:
「親あるあるで、世界一周できますね(笑)」
⸻
◆ 安三郎じいちゃん、タイガースに紛れ込む疑惑
スタッフが差し入れのお菓子を持ってくる。
阪神タイガースロゴ入りのクッキー缶。
光子:
「うわぁ、これ可愛い!」
優子:
「タイガースクッキーや。
……じいちゃん、絶対天国でこれ持って応援しよるよ」
佐藤:
「球場行ってました?」
優子:
「行ってました行ってました。
じいちゃん、“タイガース勝った日はビールがうまい”って、
タイガース負けても普通に飲むんですけどね」
光子:
「で、酔ってきたら毎回同じ話するとよ。
『ワシが若い頃はなぁ〜』って」
佐藤:
「その“若い頃”に、
甲子園でビール売っててもおかしくない雰囲気ありますね(笑)」
優子:
「たぶん今、天国の甲子園おるよ。
“天界阪神タイガース 応援団長”やもん」
光子:
「ベンチで選手に向かって
“お前、もっと腰入れて振らんかい!”って言うタイプ」
佐藤:
「めちゃくちゃいます、そういう人(笑)
……もしかして、もう紛れ込んでたかもしれんなぁ」
全員:
「それはある!!」
⸻
◆ 「じいちゃん笑っていこう」裏テーマ
ディレクター:
「それにしてもさ、
今日のメール紹介は本当に良かったよ。
喫茶店Smileさんのやつ」
優子:
「ね。
ラジオで読むと、改めてずしっと来た」
佐藤:
「ああいうの聞くと、“歌ってすごいな”って思いますよ。
野球も、見てくれた人の一日を変えられたらいいなって思ってましたけど、
“会いに行こう”って行動に変わるのは、すごいことですよ」
光子:
「でもね、じいちゃんね、
“ワシの功績や”って絶対言うよ」
優子:
「間違いない」
佐藤:
「いや、あの歌、安三郎さんプロデューサー説ありますもん」
ディレクター:
「天国エグゼクティブプロデューサー:赤嶺安三郎」
音声さん:
「肩書きが長い(笑)」
⸻
◆ もし安三郎じいちゃんがゲストに来たら
光子:
「もしさ、じいちゃんが生きとったら、
絶対このラジオのゲストに呼びたかったなぁ」
優子:
「“本日のゲストは、伝説のエロ大魔王こと赤嶺安三郎さんです!”」
佐藤:
「NHKさんが真顔でNG出すやつですね(笑)」
ディレクター:
「いや〜、でも聴取率は爆上がりしそう」
優子:
「“今日のテーマは、孫自慢と青春話です”とかやって」
光子:
「たぶん途中から、佐藤さんのことも“テッテキュン”って呼び出す」
佐藤:
「じいちゃんと同じあだ名で呼ばれるの、光栄なような複雑なような…(笑)」
⸻
◆ 野球×爆笑発電所コラボの悪だくみ
優子:
「ところでさ、テッテキュン」
佐藤:
「はい?」
優子:
「もし将来、甲子園で“爆笑発電所ナイター”とかやったら、
始球式、誰がいいですかね?」
光子:
「候補:
1)春介(※双春の兄)
2)春海(※双春の妹・暴れドラマー)
3)安三郎じいちゃん(※天国中継)」
佐藤:
「3)は怖いんよ(笑)
“天からボール降ってきたら”ニュースになりますから」
優子:
「『甲子園上空に不思議な光が…』みたいな」
佐藤:
「でも1と2やったら、
春海ちゃんが全力投球しすぎて、マウンドごと削りそう」
光子:
「ドラムじゃないときも地面削るんや…(笑)」
ディレクター:
「実現したら、番組で特番組むわ」
⸻
◆ それぞれ、帰り道に
そろそろお開きの時間。
佐藤が荷物をまとめて立ち上がる。
佐藤:
「今日はありがとうございました。
なんか、ただ笑ってただけじゃなくて、
ちょっと心ほぐれました」
優子:
「こちらこそです。
“ホームラン級の笑い”いただきました!」
光子:
「あとで本当に、お父さんお母さんと電話してあげてくださいね。
“太るな”って言われても、
それ、愛情やけん」
佐藤:
「はい。
……じゃあ帰りの電車で、もう一回LINE送っときます。
『今度、実家帰るわ』って」
光子:
「それそれ! それが一番、じいちゃんも喜ぶやつ!」
優子:
「喫茶店Smileさんも、いま頃ラジオ聴きながら、
“うちもまた帰ろうね”って話してくれてたらいいな」
佐藤:
「今度、大野城行くことあったら、
その“Smile”寄ってみようかな」
ディレクター:
「そのときは、こっそりサイン置いてきてください。
“爆笑発電所大野城支部公認・4番”って」
佐藤:
「なんの4番なんですか、それ(笑)」
⸻
廊下に出ると、
夜のラジオ局は、少しだけ静かだった。
光子:
「……ねぇ、優子」
優子:
「ん?」
光子:
「じいちゃん、今日の放送
絶対どっかで聴いとったよね」
優子:
「聴いとるよ。
で、“ワシの話で番組できとるやないか〜!”って
また胸張っとる」
光子:
「……やっぱずっと、
笑っていかないかんねぇ」
優子:
「うん。
泣きながらでも、最後はちゃんと笑ってな」
二人は顔を見合わせて、
いつもの、あの“爆笑一歩手前”の笑みを浮かべた。
エレベーターの扉が閉まる直前、
遠くで聞こえた“ジングル収録”の音が、
なんだか安三郎じいちゃんの笑い声に
少しだけ似ている気がした――。




