紅白の大トリ
ニュース明け。
時計の針は、いよいよ年越しが近づきつつあった。
NHKホールの照明がふっと落ち、
テーマジングルが短く流れたあと――
再び、M&Yがカメラの前に立つ。
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◆ 後半トップバッターは――
光子:
「さぁみなさん、お待たせしました。ここからは紅白・後半戦です!」
優子:
「前半のラストは、赤嶺双春 with H&M が
伝説のロック『DAHLIA』をぶちかましてくれましたが――」
光子:
「後半のトップも負けとらんよ?」
優子:
「ロックで始まって、ロックで再起動。
博多発、“最強はなまる姉妹”いきます!」
スクリーンにタイトルがドーン。
紅組・後半トップバッター
はなまるツインズ『好き』
その下に小さくテロップ。
Drums:赤嶺 春海
Guitar:柳川 水湊
客席が、一気にざわつく。
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◆ ステージセット
ステージは前半の「DAHLIA」の赤黒世界から一変、
夜空みたいな濃紺と、ピンクゴールドのライティング。
中央には、スタンドマイクが2本。
左右にはギターアンプとキーボード。
奥には、さっきと同じセットだが雰囲気を変えたドラム。
バスドラムのヘッドには、
手書き風の文字でこう書いてある。
「はなまる × 双春」
春海:
(ふふ…カメラにちゃんと抜いてくれるかな)
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◆ メンバー配置
・ドラムセットに座る 赤嶺 春海(15)
さっきのDAHLIAモードより、少し軽やかで楽しそうな顔。
・ステージ右、ギターを構える 柳川 水湊(18)
今度はエレキ。艶のあるストラトタイプ。
・ステージ中央に並ぶのは――
八幡ひなた & 枝光みずほ(はなまるツインズ・23)
ひなたは、燃えるような赤のショートドレス。
みずほは、ディープブルーにゴールドのアクセントが入ったロングスカート。
2人とも、目は完全に“ロックモード”。
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◆ 曲紹介
イントロ前、
ひなたがマイクを握って一歩前に出る。
ひなた:
「後半トップ、はなまるツインズです!」
みずほ:
「わたしたちからお届けするのは――
“好き”という気持ちまるごと、爆発させたロックナンバーです。」
ひなた:
「家族でも、友だちでも、恋でも、
ステージでも、音楽そのものでも。
どうしようもなく“好き”になってしまった思いを――」
みずほ:
「全部まとめて“好き”って叫んでもいいやろ?
って曲を、作りました!」
春海:
(よっしゃ、暴れつつも歌をちゃんと前に出すやつね)
水湊:
(“音で告白”の気持ちで弾くか)
ひなた:
「聴いてください」
2人そろって。
はなまるツインズ:
「『好き』!!」
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◆ イントロ
水湊が、ジャーン!とコードを鳴らす。
ディレイのかかったギターの響きが、夜空に飛んでいくよう。
春海がスネアでタカタカッと軽快なフィルを入れ、
そのまま8ビートに乗せる。
テンポは速め。
前へ前へ、背中を押すようなロック。
ステージ背後のスクリーンには、
赤やピンクの光が線となって走り、
ときどき“好き”の文字が、
落書きみたいにビュッと走り書きされる。
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◆ Aメロ ― ひなたの熱
ひなた:
♪ まぶしい とか すごい とか
そんな言葉じゃ 追いつかないくらい
きみのこと 目で追ってるたびに
心が走り出す
声に芯がある。
パワーもある。
でも、決して怒鳴らない。
「熱」が喉じゃなくて胸のあたりから出ている感じ。
春海のドラムは、
ハイハットを軽快に刻みながらも、
キックはしっかりと前ノリ。
ちょっとパンク寄りの押し出し。
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◆ Bメロ ― みずほの優しさ
みずほ:
♪ へたくそな 恋の歌
何回も 消して は書き直して
それでもまだ ぜんぶは書けなくて
だから いま 歌うよ
声質はやわらかいのに、
音程の芯はぶれない。
ひなたの“前へ飛ぶ声”に対して、
みずほの声は“包み込む音”。
2人のハーモニーに、
水湊のギターがエモい単音フレーズを絡める。
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◆ サビ ― タイトルフレーズ炸裂
ひなた&みずほ:
♪ 好きだ 好きだ 好きだーーー!!
何回言っても 足りないから
声が枯れても 叫んでいたい
世界でいちばん――
春海、ここでライドシンバルに切り替え、
音の天井を広げる。
春海(心の中):
(はい、ここ感情爆発ゾーン。
でも、歌が主役やけん、叩きすぎ注意……叩きすぎ注意……)
→ 結局ちょっと叩きすぎる。
ツーバスを控えめに入れてしまい、
カメラがニヤリと春海を抜く。
客席:
「出た、“控えめ”って言いながら控えめじゃないやつ!」
スクリーンには、
大きな「好き」の文字が、
花火みたいに何度も弾ける。
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◆ 2番&間奏 ― 兄妹チームの熱
2番では、歌詞にぐっと現実の距離が近づく。
ひなた:
♪ ケンカして 泣いた夜
それでも やっぱ 会いたくなって
意地張ってる 自分ごと
好きだって言えたら いいのに
みずほ:
♪ ごめんねの 言い方も
さよならも うまくないけど
手を伸ばした 指先で
明日をつかみにいこう
スクリーンの映像には、
街の夜景、電車、
廊下でふたり並んで座ってるシルエット――
誰の物語にも重ねられそうな、ふわっとした映像。
間奏に入る前、
春海が派手なフィルを回す。
春海:
(ここや、ここはちょっとだけ暴れていいやつ!!)
タカトコタカトコタカトコドドドド!!
→ 間髪入れず、水湊のギターソロ。
水湊のソロは、
テクニカルさよりも“メロディの熱”。
フレーズのラストで、
思いっきりチョーキングして、
ぎゅーーっと伸ばす。
客席:
「うわ〜〜〜」「エモい!」
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◆ ブリッジ ― しゃべるような歌
音が一度ぐっと落ちる。
ドラムはスネアとハイハットだけ。
ベースはルートをポン…ポン…と鳴らすだけ。
ひなた:
♪ まっすぐなんて こわいよね
だって 逃げ道なくなっちゃうもん
みずほ:
♪ でも きみを見てたら 思ったの
逃げなくていい ここにいるって
2人:
♪ わたしの全部で――
好きって言ってみたい
ここ、歌詞が刺さる。
客席の中高生あたりが、
「あ〜〜〜」と小さく崩れる。
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◆ ラストサビ ― 大合唱
春海、クラッシュを叩きつけて全開モードへ。
ひなた&みずほ:
♪ 好きだ 好きだ 好きだーー!!
泣きたくなるほど 好きなんだよ
もしも明日が こなくても
きみを好きでいたい
スクリーンには、
“好き”の文字が多言語で次々と表示される。
「好き」「LOVE」「사랑해」「I like you」
「Я люблю тебя」「Te quiero」…
光子:
「世界中の“好き”かぁ……反則やろ、これ」
優子:
「翻訳しても“胸キュン”は万国共通やね」
ラストフレーズ。
ひなた&みずほ:
♪ 世界でいちばん――
好き!!
春海の一撃。
水湊の最後のコード。
ライトが白くフラッシュして、曲が終わる。
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◆ 拍手・コメント
客席、総立ちに近い拍手。
光子(花道で登場しながら):
「はなまるツインズ、そしてバックバンドの春海ちゃん・水湊くん!!
めちゃくちゃ熱かったーー!!」
ひなた(息切れしながら):
「はぁ…はぁ…ありがとうございます!!」
みずほ:
「“好き”って気持ちって、
なんか恥ずかしいけど、
言わんと伝わらんから…
歌に乗せて全部言っちゃえ、って曲です」
優子:
「いや〜、23歳の“好き”は破壊力あるねぇ〜」
光子:
「春海ちゃん、またちょっと暴れとったやろ?」
春海(苦笑い):
「“控えめに”って自分に言い聞かせてたんですけど、
サビ入った瞬間、足が独立しまして…」
客席:
「アハハハ!」
水湊:
「でも、はなまるの2人の“好き”が
ちゃんと前に飛ぶように、音のバランスは頑張りました!」
ひなた:
「水湊くん、さっきまで『DAHLIA』弾いてた人と同一人物とは思えんよね」
みずほ:
「ギターの表情も“好き”って言ってました!」
光子:
「ロックで始まる後半トップ、
紅組らしい“情熱の一発目”でした!」
優子:
「はなまるツインズ、『好き』でしたーー!!」
大きな拍手と歓声。
カメラがゆっくり引いていく中、
ひなたとみずほが客席に深く一礼した。
紅組・白組の曲も、残すところわずか。
会場の空気が、「もうすぐ終わるんだ」という少しの切なさと、
「ここからクライマックスだ」という高揚で揺れている。
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◆ 白組・大トリ前の曲紹介
白組司会席。
とんずらーの2人が、ちょっと緊張した顔で立っている。
ツッコミの方が、台本を見ながら一息つく。
ツッコミ:
「さぁ、それではいよいよ…
今年の白組、大トリの時間が近づいてまいりました」
ボケ:
「いや〜、“大トリ”って言葉だけで胃がキリキリしますねぇ」
ツッコミ:
「お前がトリみたいに言うな! お前はただの前説や!」
客席:
「アハハハ!」
ボケ:
「でもね、今日の大トリの曲、
正直、ぼくらもリハーサルで泣きました」
ツッコミ:
「お前、裏で“こんなん反則やん…”って
ハナすすりながら言いよったもんな」
ボケ:
「だってね?
タイトル聞いた時点で、もうダメなんですよ」
ツッコミ:
「ほな、紹介しよか…」
2人、客席とカメラに向き直る。
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◆ M&Y、大トリへ
ツッコミ:
「今年、白組・紅組の垣根をこえて、
“大トリ”として歌ってくれるのは――」
ボケ:
「この紅白の総合司会でもあり、
歌でも、笑いでも、言葉でも、
いろんな“祈り”を届けてきた2人です」
ツッコミ:
「大事な家族を、
笑って送り出したいと願った、ひとりのじいちゃんの歌」
ボケ:
「亡くなった、赤嶺安三郎さん。
“エロ大魔王”なんて言われながらも(笑)、
いちばん家族思いで、
孫たちのステージを、一番近くで応援していたおじいちゃん。」
客席から、ふっとあたたかい笑いが漏れる。
ツッコミ:
「そんなじいちゃんを思って、
M&Yが作った曲です」
ボケ:
「少し笑えて、でも、気づいたら涙が出てる――
そんな歌です」
2人、深く一礼して。
とんずらー:
「大トリ・M&Y『じいちゃん、笑っていこう』
どうぞ!」
(※タイトルはイメージで。ここでは仮にこう呼びます)
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◆ ステージセット ― 安三郎じいちゃんへのステージ
ステージ中央。
そこには派手な映像も炎もない。
代わりに、
畑を思わせるような柔らかいグリーンのライトと、
木のテーブルと椅子がひとつ。
テーブルには、
・湯呑み
・新聞
・そして、小さな写真立て。
写真には、
笑顔の 赤嶺安三郎と、
幼い頃のアキラ、美香、光子、優子たちが写っている。
ゆっくりと歩いてくる、ドレス姿の光子と優子。
ドレスはさっきまでのきらびやかなものより少し落ち着いた、
深い紺とワインレッド。
光子が、写真立てを両手で持ち上げて、
客席とカメラにそっと見せる。
光子:
「ねぇ、じいちゃん。
とうとう、ここまで来たよ」
優子:
「今日はさ…
じいちゃんに、ちゃんと“ありがとう”言うために歌ってもいい?」
照明が、2人を静かに包む。
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◆ 1番 Aメロ ― じいちゃんの日常
軽くアコギが鳴る。
ピアノがやさしく和音をつける。
バンドはいるけど、音量はあくまで控えめ。
光子(Aメロ):
♪ 朝いちばんに テレビつけて
“今日は誰が出とると?”って
ちっちゃい孫の名前を
画面の向こうに 探してた
優子(続けて):
♪ 焼けた畑の 手のひらで
ぎこちなく 頭 なでながら
「お前らの声が いちばん効くばい」って
照れくさそうに 笑ってた
スクリーンには、
・畑で笑うじいちゃんの後ろ姿
・テレビの前に正座してるじいちゃんのシルエット
・ラジオに耳を近づける横顔
そんな“誰の家にもいそうな”じいちゃんたちの映像が、
モンタージュのように流れる。
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◆ Bメロ ― 爆笑とエロ大魔王
光子:
♪ 口を開けば 下ネタまじりで
ばあちゃんに しばかれよったけど
優子:
♪ それでも 私ら 本当は知っとった
その分だけ 誰より 優しかったってこと
客席にくすくす笑いが広がる。
でも、その笑いの奥はもう、ちょっと潤んでいる。
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◆ サビ1 ― 「笑って見送れ」の約束
2人でまっすぐ前を見て、ハモる。
♪ 泣くな 泣くなと 言ったくせに
こっそり 涙ぐむ じいちゃんを見た
あの日の 背中を ずっと忘れんよ
笑って 見送ってくれって 言ったやろ
♪ ならね こっちも 約束守るけん
じいちゃんの話は いつもオチつきで
みんなで 大声で 笑いながら
「行ってらっしゃい」って 手を振るけんね
スクリーンには、
葬儀の日、
笑いながらじいちゃんを送った家族のイラストのような映像。
涙と笑顔が、ごちゃまぜになっている。
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◆ 2番 Aメロ ― 隠し場所と、バレた宝物
少しテンポが上がる。
ここは“ちょい笑える”ゾーン。
優子:
♪ 押し入れの 一番奥に
“大事なコレクション” 隠しとって
光子:
♪ ばあちゃんに見つかって 空から叫んどった
「あれはワシの青春ばい!」って
客席:
「アハハハ!!」
※ 実際の“DVD”とか具体ワードは避けて、NHK仕様のやんわり描写。
スクリーンには、
押し入れのダンボールから“何か”が大量に出てくるアニメ風シーンと、
天国のじいちゃんが頭を抱えてるコミカルな絵。
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◆ 2番 Bメロ ― スマホの中のラジオ
光子:
♪ スマホの中の フォルダには
私らの ラジオが ぎゅうぎゅう詰めで
優子:
♪ 再生ボタン 何回も押した跡
そこにあったのは “親衛隊”のしるし
ここで、一瞬音が落ちて、
光子が語るように。
光子:
「ねぇ、じいちゃん。
全部、録っとったんやね。
私ら、自分の声、あんなに何回も聴いてもらっとるって、
知らんやったよ」
優子:
「“エロ大魔王”ってからかわれても、
いちばん“ジジバカ”やったもんね」
客席から、また笑いとすすり泣き。
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◆ サビ2 ― 「今もどこかで笑いよるやろ?」
2人:
♪ どうせ今ごろ 天国のどこかで
ばあちゃんや 見知らん人も巻き込んで
エロ話と 孫自慢で ひとり漫才して
周りの天使 ひっくり返しよるやろ
♪ こっちはこっちで まだ歌いよるけん
「あいつら相変わらず バカやなぁ」って
笑いながら 聴きよってくれたらいい
それがいちばんの 供養やけん
スクリーンには、
天国の宴会場みたいな場所で、
安三郎が腹抱えて笑ってるシルエット。
周りで天使たちも転げ回っている。
⸻
◆ ブリッジ ― ひ孫たちの声
音がふっと落ちて、
ピアノだけになる。
そこに、録音された小さな声が重なる。
陽翔(5歳/録音):
『ひいじいちゃん、はるとでんちゃ、きょうも うんこうしてるよ〜!』
結音(5歳):
『ゆのんの うたも ききよってね〜!』
燈真(3歳):
『とーまの れんあいそうだんも きこえる〜?』
灯乃(3歳):
『ひーちゃん、きょうは つぶされてないよ〜!』
彩羽&悠翔(1歳):
『あー! ばぁ! きゃっきゃ!』
客席:“あぁ〜〜〜”って感じの笑いと涙が同時に漏れる。
光子(ブリッジ歌):
♪ ひ孫の声が
ちゃんと届いとるなら
それだけで こっちは
明日も 笑って暮らせるけん
優子:
♪ だからね じいちゃん
たまには 夢の中でいいけん
「お前らよう頑張っとるぞ」って
いつもの調子で 笑いに来て
⸻
◆ ラストサビ ― 「笑っていこう」
ドラムが静かに戻り、
ストリングスがふわっと広がる。
2人:
♪ 泣いて 笑って 怒って また笑って
ぐちゃぐちゃな日々を 受け止めてくれて
ありがとねって まだ言えてないから
今日くらいは 素直に言わせて
♪ じいちゃん じいちゃん
出会ってくれて ありがとう
うちらが 歌える場所までくるまで
見守ってくれて ありがとう
♪ これから先も
なんべん転んでもいいやろ?
立ち上がるたび きっと思い出す
「笑っていこうや」っていう じいちゃんの声
最後の一行だけ、
ふたり、マイクを少し離して生声に近い音で。
♪ だから 今日も――
笑って いこうか
ピアノの和音が、
そっとホールに溶けていく。
⸻
◆ 静寂と拍手
一瞬、音が消える。
客席の誰も、すぐには拍手できない。
ほんの2秒――
でも、永遠に感じる沈黙。
そして――
割れんばかりの拍手。
立ち上がる人。
ハンカチで目を押さえる人。
笑いながら涙を拭う人。
家族席で、アキラがうつむいて、
そっと目をぬぐっている。
横で美香も、静子も、
目を真っ赤にしながら笑っている。
静子:
「…あの人、
また空の上で調子に乗って話しよるね、きっと」
⸻
◆ エンディング前のひと言
光子(涙をぬぐいながら、でもちゃんと笑顔で):
「じいちゃん。
見とってね。
これからも、うちら――
笑って、歌って、生きていくけん。」
優子:
「悲しいことも、つらいこともぜんぶ、
最後には“笑っていこうか”って言えるように。
みんなで、ここからも生きていくけんね」
客席から、ひときわ大きな拍手が送られ、
紅白歌合戦はラストの全員合唱と、勝敗発表へと向かっていく。
でもこの夜、
多くの視聴者の胸に残ったのは、
「大トリの派手さ」よりも――
一人のじいちゃんを笑って見送ろうとした、
家族の歌だった。




