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美香と光子と優子の爆笑ストーリー。光子と優子29歳  作者: リンダ


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17/91

紅白出場

出場歌手発表の日、NHKホールの会見場。


記者たちのフラッシュがぱしゃぱしゃと鳴る中、

司会進行のアナウンサーが、分厚い台本を手にしてにこやかに言った。



◆ 紅白出場歌手発表会見


アナウンサー:

「それでは、今年の紅組・白組の出場歌手を発表してまいります。

 続きましては――特別企画枠。

 “世代をつなぐロック・ステージ”でございます」


ざわっとする会場。


スクリーンに、バンドのロゴが映し出される。


《双春 with H&Mエイチ・アンド・エム


記者A:

「……H&Mって、あの……服じゃなくて?」

記者B:

「青柳穂乃果(Honoka)と柳川水湊(Minato)の頭文字らしいですよ」


アナウンサー:

「はい、こちらのメンバーは――」


モニターに映る4人の写真。


* ギター&ボーカル:赤嶺 春介(15)

* ドラム:赤嶺 春海(15)

* ベース:青柳 穂乃果(21)

* キーボード:柳川 水湊(18)


アナウンサー:

「爆笑発電所や各地ライブでも話題のロックユニット、双春。

 そして、青柳翼選手の妹でベーシストの青柳穂乃果さん、

 卓球界のスター・柳川拓実選手の弟でキーボーディストの柳川水湊さん。


 この4人で――

 X JAPAN『DAHLIA』をカバー披露していただきます!」


会場:

「おぉぉぉ……!」


音楽記者たちの表情が一気に真剣になる。


記者C:

「よりにもよってDAHLIA!? 本気やん……」

記者D:

「15歳であの曲は相当チャレンジだぞ……」



◆ 家に帰って大騒ぎ


その日の夜。

赤嶺家のリビングは、情報番組の再放送を見ながら大盛り上がりだった。


テレビから、先ほどの会見の様子が流れる。


ナレーション:

「今年の紅白歌合戦、特別企画枠として“双春 with H&M”が登場。

 伝説的ロックバンド X JAPAN の『DAHLIA』をカバーします」


画面に映る、自分たちの宣材写真を見て――


春介:

「……うわ、なんか、“ちゃんとしたミュージシャン”みたいやな、俺ら」


春海:

「ちゃんとしたミュージシャンやろが。

 心配なんはそこやなくてさ――ツーバス踏み抜かんかなってとこよ」


美香:

「踏み抜かんで。NHKの楽器、高いけん」


アキラ:

「でも、春海のドラミング、あの曲にはちょうどいいと思うぞ。

 あの暴れっぷり、若さの暴力やけん」


画面には、別撮りインタビューの春介が映る。


春介インタビュー

『憧れの曲ですし、

 “爆笑ファミリー”ってイメージの俺らが、

 ガチのロックもやれるってとこ、見せたいです』


続いて春海。


春海インタビュー

『とりあえず、紅白のステージぶっ壊さん程度に暴れます』


スタジオのコメンテーター:

「コメントがもうドラマーやなぁ〜」



◆ リハーサル初日 ― NHKホール


ステージにセッティングされたドラムセット。

ツーバス、クラッシュ、ライド、チャイナ、スプラッシュ――フル装備。


春海、椅子に座ってスティックをくるりと回す。


春海:

「……うん、悪くない。

 あとはテンション上がりすぎて立たんようにするだけやな」


穂乃果ベース

「春海、ほんと立つけんね、テンション上がったら。

 NHKホールでドラマーが立ったら、

 何人か心臓止まると思うよ?」


水湊キーボード

「俺も集中してんのに、視界の端で立たれたら笑うわ」


春介(ギター、シールド繋ぎながら):

「よし、じゃあ1コーラス通してみよっか」


スタッフの声:

「それではDAHLIA、リハーサル入りまーす!」


カウントが鳴る。

次の瞬間、春海の右足と左足が、機関銃みたいなツーバスを刻み始めた。


ドドドドドドドドドドッ!!


穂乃果:

「相変わらずエグいわ、その足……」


水湊:

「でも気持ちいいよね、この“壁”」


春介のギターが、鋭く切り込むようなディストーションで乗ってくる。

シンコペーションするリフに、ベースが重く絡み、

その上でキーボードが冷たい光みたいに旋律を描いていく。


サビ前、ブレイク。


一瞬、静寂。


春海:

「——っ!」


クラッシュを叩く音と同時に、

全員のサウンドが爆発するみたいにぶち上がる。


ステージ袖で見ていたスタッフがポツリ。


スタッフ:

「……15歳やんな? あのドラマー」


別のスタッフ:

「はい。しかも普段、爆笑コントもやってます」


スタッフ:

「どんな育ち方したらそうなるん?」



◆ 本番当日 ― 紅白・特別企画ステージ


M & Y の二人が、総合司会席から花道に出てくる。


光子:

「さぁ続いては、特別企画ステージです!」


優子:

「笑いのイメージが強いファイブピーチ★ファミリーから、

 “ガチのロック”が飛び出します!」


光子:

「紅白出場、双春 with H&M!!

 曲は――X JAPAN『DAHLIA』!!」


客席から大きなどよめきと拍手。


照明が一気に暗転し、

ステージ後方から白い逆光が差し込む。


シルエットになって立つ春介と穂乃果。

ドラムセットに座る春海。

キーボードに手を添える水湊。


カウント。


ワン、ツー、スリー、フォー――


爆発するようなドラムロール。

ギターのイントロが鋭くホールを切り裂く。


お茶の間のSNSタイムラインが、一斉にざわつく。


「双春、マジでロックバンドやん」

「春海のドラム、プロレベルじゃない?」

「ツーバス速すぎて何がどうなってるか分からんw」

「穂乃果さんのベース、音太い〜〜」

「水湊くんの鍵盤、Xリスペクトを感じるアレンジ……」


カメラが春海の足元を抜く。

ペダルが信じられない速さで上下している。


春海の顔は、普段のふわっとした笑顔ではなく、

完全に“音に憑かれた”ロックドラマーの表情になっていた。


ブレイクで、一瞬だけカメラが客席の家族席を映す。


美香:

「……やば。あれ、うちの娘やと?」


アキラ:

「お、おう。あのパワーは……俺の遺伝子かな?」


光子(横から):

「いや、爆笑発電所で鍛えた肺活量やろ」


優子:

「なんでも笑いに結びつけんでよか!」


ステージ上では、ラスサビに向けてテンションが最高潮に達する。


春介のボーカルが張り上がり、

ギターソロでは客席からどよめきが起きる。


穂乃果のスラップ気味のフレーズが下から突き上げ、

水湊のキーボードが、原曲への敬意と自分たちの色を

絶妙なバランスで乗せていく。


最後の一撃。


全員でぴったり止まる。


シンバルが長く余韻を引き、

春海がスティックをくるりと回して、頭上でクロスさせる。


静寂のあと――


会場、割れんばかりの拍手と歓声。



◆ 曲終わり、MCコメント


光子(ステージに駆け寄りながら):

「……ちょっと待って、ほんとに15歳!?」


春海(汗だくで笑いながら):

「いちおう、戸籍上は15歳です(笑)」


春介:

「でも、今日ばっかりは、 

 “爆笑”じゃなくて“本気”でロックさせてもらいました!」


優子:

「いや、爆笑もロックも、どっちも“生きてる証拠”やけんね」


光子:

「X JAPANさんの名曲を、

 こうやって次の世代が自分たちなりに燃やしてくれるのは、

 きっと喜んでくれとると思います」


優子:

「双春 with H&Mのみんな、

 最高のDAHLIAをありがとう!」


客席、再び大きな拍手。


春海は胸の前で小さくピースを作りながら、

心の中でそっとつぶやいていた。


(おじいちゃん、ひいじいちゃん。

 うちら、ちゃんと“音”でもカッコつけられるようになったけんね)


その夜、SNSのトレンドには


「双春」「春海ドラム」「DAHLIA」「H&Mバンド」


といったワードが並び、

“爆笑ファミリー=笑いだけじゃない”という事実が、

また一つ、世の中に強く刻まれることになった。

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