開幕:1歳コンビ、覚醒
◆ 開幕:1歳コンビ、覚醒
日曜の午後。
床一面には柔らかいマット、カラフルなおもちゃ。
テレビではアンパンマンが流れている。
ソファには**春介と春海(15歳)**が並んで座り、
スマホをいじりながら、ちびっこたちを見張っていた。
春介:
「……なんか、今日は静かやな」
春海:
「フラグ立てんときって言ったやん」
そのときだった。
プレイマットの上で、
**彩羽(いろは1歳)と悠翔(ゆうと1歳)**が同時にムクッと起きる。
いろは:
「……ふぇ?」
悠翔:
「……ひ?」
2人、目が合う。
いろは:
「いろは、はしる〜〜」
悠翔:
「ゆーと、いく〜〜」
春海:
「……あ、やば」
春介:
「“やばい”ボタン押された音したな、いま」
◆ 1歳児タッグ、ギアチェンジ
いろは、よちよち数歩歩いたと思ったら――
いろは:
「とてててててーーーー!!」
突然トップスピード。
悠翔:
「ひーー!!」
→ 高速ハイハイにギアチェンジ。
手足がブレて見えるレベルの爆速。
マットの上を、1歳児2人が
ドドドドドドッ!! と走り抜ける。
◆ 第1ターゲット:ひーちゃん(灯乃・3歳)
灯乃は、お絵かき中。
ひの:
「ひの、いちご かいてる〜♡」
そこへ、いろはが
絵を覗き込みにやってくる。
いろは:
「ひーたん♡(※ひのちゃんと言いたい)」
ひの:
「いろはちゃん〜♡」
ほのぼのした一瞬。
しかし、その背後から
轟音と共に迫る白い影。
悠翔:
「ひーーちゃぁぁぁぁ!!」
ひの:
「ぎゃああああ!!きたぁぁぁ!!!」
ドスン!!
悠翔、全体重で背中にダイブ。
いろはもつられて前から抱きつく。
いろは:
「ひーたん むぎゅ〜〜♡」
悠翔:
「ひーちゃ むぎゅ〜〜♡」
灯乃:
「ひのの からだが、
サンドイッチ なっとるぅぅぅ!!」
◆ 第2ターゲット:結音(ゆのん・4歳)
結音は、お人形遊び中。
ゆのん:
「おひめさまね〜、きょうは けっこんしき で〜……」
振り向くと、
1歳児2人が並んでニコー。
いろは:
「ゆのん♡」
悠翔:
「ゆのん♡」
ゆのん:
「え、まって。
これ、“ふたりと けっこん”パターン?」
背後からは、
さっきようやく解放された灯乃が
「ゆのんにげてぇぇぇ!!」と叫ぶ。
時すでに遅し。
いろは:
「ゆのん、ぎゅー♡」
悠翔:
「ゆのん、ぺたー♡」
→ 2人同時に膝に乗ってくる。
結音:
「おひめさま じゃなくて、
クッション になっとるぅぅぅ!!」
◆ 第3ターゲット:陽翔(はると・4歳)
陽翔はブロックで電車を作っていた。
はると:
「ごちょーしゃ、ありがとございまちゅ〜。
はるとでんちゃ、しゅっぱつしまーす」
そこへ、いろは&悠翔が突撃。
いろは:
「でんしゃ、のる〜〜!」
悠翔:
「はると〜、のる〜〜!」
はると:
「ちょ、あかん! ここ きゃぱおーばー!!」
どん!!(いろはが車両にタックル)
ごしゃーーん!!(悠翔が線路に特攻)
ブロック電車、大破。
陽翔:
「はるとでんちゃぁぁぁぁ!!
だいじこーぉぉぉぉ!!」
いろは(満面の笑顔):
「たのち〜〜♡」
悠翔:
「あっあっ♡」
春介:
「今、“ごちょーしゃ”どころか“ご愁傷さま”やな」
春海:
「はるとでんちゃ、事故率高すぎ問題」
◆ 第4ターゲット:燈真(とうま・3歳)
燈真は、隅っこでお菓子をこっそり食べていた。
とーま:
「とーま、ここ ひみつきち〜。
ここなら、あかちゃん けえへん……」
フッと影が差す。
見上げると――
いろは&悠翔:
「とーまん♡(いろは)」「とーま♡(悠翔)」
燈真:
「やっぱり来たーーー!!」
お菓子に向かってダイブする1歳児2人。
いろは:
「ぽりぽり〜♡(※勝手にスナック確保)」
悠翔:
「ぱく〜♡」
とーま:
「あぁぁぁ!! とーまのおやつぅぅぅ!!」
春海:
「とーま、学びなさい。
隠れて食べるお菓子は必ず見つかる」
春介:
「人生の真理みたいに言うなや」
◆ 15歳コンビ、ついに動く
リビング中、悲鳴と笑い声でカオス。
灯乃:
「ひの、2かいめ つぶされたぁぁ!!」
結音:
「ゆのん、けっこんしき どころやない〜〜!!」
陽翔:
「でんちゃ、しゅうりちゅう〜〜!!」
燈真:
「ぼくの ぽてちーー!!」
1歳児2人はテンションMAXで
まだまだ追いかける気まんまん。
春海:
「……そろそろ止めよっか」
春介:
「せやな。これ以上いくと“保護者会案件”や」
2人、立ち上がる。
春介:
「いろはー、ゆーとー」
「お兄ちゃんとお姉ちゃんに、ぎゅーは1回ずつな〜」
いろは:
「いっかい?」
悠翔:
「いっかい?」
春海:
「そうそう。2かいめからは“有料”になるけん」
いろは:
「ゆーりょー?」
悠翔:
「???」
春介:
「“おやつ 1こ” ずつ徴収します」
1歳児2人:
「「やだーーー!!」」
走る方向が変わる。
いろは:
「にげろ〜〜!!」
悠翔:
「にげろ〜〜!!」
今度は春介&春海が追う側に。
春海:
「はいはい、愛の徴収やで〜」
春介:
「“高速ハイハイ税”と“爆速つたえ歩き税”な」
◆ その結果
ソファの上に避難していた
灯乃・結音・陽翔・燈真が、
ぐったりしながら並ぶ。
ひの:
「ひの、きょう 10ねんぶん つかれた……」
ゆのん:
「ゆのんも……」
はると:
「はるとでんちゃ、きょうは うんこう しゅうりょう〜」
とーま:
「ぼく、もう“れんあいそうだんしょ”ひらくげんきない……」
春海:
「おつかれ、ちび組」
「そのうち“ちび運動会”で正式競技にしよっか。
“1歳児から逃げ切れ”ってやつ」
春介:
「優勝商品、“お兄ちゃんお姉ちゃんのひざまくら券”」
ちび組全員:
「やるーーーー!!」
いろは&悠翔(まだ走ってる):
「あそぶ〜〜!!」「あそぶ〜〜!!」
春海:
「……これさ、」
春介:
「ん?」
春海:
「この家系、将来まじで世界の笑い制するよね」
春介:
「せやな。
誰も、“平和は退屈”とは言わんやろな」
リビングいっぱいに響く、
子どもたちの笑い声と悲鳴とバタバタ音。
今日も小倉ファミリーの家は、
カオス=平和 の公式そのものだった。




