旅の21日目――パンダ電車と女子会温泉、そして千鳥乱入の爆笑ラジオナイト
旅の21日目――パンダ電車と女子会温泉、そして千鳥乱入の爆笑ラジオナイト
朝――特急くろしお・パンダ車両で乗り鉄チーム始動
白浜の朝。
昨日訪れたアドベンチャーワールドの余韻が、子どもたちの中にはまだ色濃く残っていた。朝食会場でも話題の中心は、やはりパンダだった。
陽翔がパンを頬張りながら尋ねる。
「きょうは、なに乗ると?」
燈真は待っていましたとばかりに身を乗り出した。
「パンダの電車!」
悠翔も目を輝かせる。
「前にパンダの顔がついとうやつ!」
彩羽は両手でパンダの耳を作りながら、兄たちに負けない声で宣言した。
「彩羽も乗りたい! パンダ電車の前で写真撮りたい!」
しかし、この日は旅の21日目。もともと細かな予定を決めていないフリーの日だった。
連日の長距離移動やミニライブ、配信、街歩きで、子どもだけでなく大人たちにも疲れがたまり始めている。そこで一行は、乗り鉄チームと女子部チームに分かれ、それぞれ好きな時間を過ごすことにした。
乗り鉄チームは、陽翔、燈真、悠翔と、翼、拓実、隼。
女子部チームは、光子、優子、祥子と、結音、灯乃、彩羽。
彩羽は一瞬だけ迷った。
「パンダ電車も乗りたいけど、結音お姉ちゃんと灯乃お姉ちゃんと、甘いものも食べたい……」
結音が彩羽の手を握る。
「彩羽、うちらと一緒に女子会しようよ」
灯乃も反対側の手を握った。
「ケーキもプリンも、足湯もあるよ〜」
彩羽は数秒だけ真剣に考えたあと、大きくうなずいた。
「女子会にする! パンダ電車の写真は、お兄ちゃんたちにいっぱい撮ってきてもらう!」
翼が笑いながら胸を張る。
「任せとけ。車両の前から後ろまで撮ってくる」
光子は全員を見渡した。
「じゃあ今日は、“家族で別行動して、夕方にちゃんと再会する日”ね」
優子がすかさず付け加える。
「迷子にはならんでね。主に、大人男子チームに言ってます」
翼が即座に振り返った。
「なんでやねん。子どもらより信用ないんか」
拓実も苦笑する。
「こっちはこっちで、ちゃんとパンダ観察任務をこなしてきます」
祥子は女子部の予定を確認しながら言った。
「うちらは地元スイーツ、街歩き、足湯、最後に温泉。かなり燃費の悪いコースで行きます」
隼が時計を見る。
「じゃあ、夕方にホテルで合流ということで」
こうして、21日目の自由行動が始まった。
パンダくろしおに乗り込む
白浜駅のホームへ、パンダを大胆にあしらった特急くろしおがゆっくりと入ってきた。
車両の先頭部分が見えた瞬間、乗り鉄チームの子どもたちが一斉に声を上げる。
陽翔はホームの安全な位置から身を乗り出すようにして叫んだ。
「ほんとにパンダ!」
燈真も指を差す。
「前が顔になっとる! でっかいパンダの顔!」
悠翔は早くも撮影係になっていた。
「目のところ撮る! 横も撮る! 全部撮る!」
翼もスマートフォンを構える。
「何回見ても、これは反則デザインやな」
拓実がうなずいた。
「子どもだけやない。大人まで普通にテンションが上がる」
隼は少し離れた位置から、車両と子どもたちを一緒に写真へ収めた。
「彩羽ちゃんに見せる写真も忘れないようにしないと」
陽翔が大きくうなずく。
「彩羽の分も撮る! 結音と灯乃の分も!」
燈真も続いた。
「お母さんたちにも見せる!」
車内へ入ると、子どもたちの興奮はさらに大きくなった。シートや壁、ヘッドカバーなど、あちらこちらにパンダの意匠が施されている。
陽翔が座席を指差す。
「ここにもパンダ!」
燈真は反対側の壁を見つけた。
「あっちにもおる! 車内までパンダだらけやん!」
悠翔は座席周辺を確認しながら提案した。
「パンダ電車図鑑を作ろう! どこに何匹おったか書くと!」
翼が笑う。
「これはもう、移動という名のアトラクションやな」
拓実は窓側に座った子どもたちを見守りながら答えた。
「今日、乗り鉄チームを作って正解やった」
やがて列車が動き出し、窓の外に南紀の海と山が流れ始める。
子どもたちは車内のパンダを探していたかと思えば、今度は海を見つけて歓声を上げる。トンネルへ入るたびに窓へ映る自分たちの顔を見て笑い、再び明るい景色へ出ると、今度は遠くの海岸線を指差した。
陽翔は撮影した写真を確認しながら言った。
「彩羽、喜ぶかな」
翼が答える。
「絶対喜ぶ。写真だけやなくて、帰ったら三人で説明してやれ」
燈真が胸を張る。
「パンダが何匹おったか、全部教える!」
悠翔がすぐに突っ込んだ。
「まだ数え終わってないやん!」
車内に、大人たちの笑い声が広がった。
女子部――スイーツと足湯と、少し贅沢な昼
一方、女子部チームは白浜の町をのんびり歩いていた。
光子と優子、祥子。その少し前を、結音、灯乃、彩羽が三人並んで進んでいる。
最初の目的地は、地元で人気のカフェだった。
ショーケースに並ぶ色鮮やかなケーキやプリン、季節の果物を使ったゼリーを見た瞬間、三人の足が止まった。
結音が目を輝かせる。
「ケーキ、きらきらしとる」
灯乃はガラスへ顔を近づけた。
「こっちはプリン〜。あっちはゼリー〜」
彩羽は左右を何度も見比べた。
「待って。どれか一つに決めるの、卓球の試合より難しい」
光子が吹き出した。
「そんなところで勝負師の顔を出さんでいいから」
優子もショーケースをのぞき込む。
「旅の途中の甘いものは正義です」
光子がうなずく。
「移動のガソリンがごはんなら、心のガソリンがスイーツやけんね」
祥子は真剣な表情で付け加えた。
「マラソン大会前の補給と同じくらい大事。今日は女子会という名のエネルギー補給です」
それぞれが好きなものを注文した。
結音は果物がたっぷり載ったショートケーキ。灯乃は濃厚なプリン。彩羽は迷いに迷った末、パンダを模した白黒のムースケーキを選んだ。
ケーキが運ばれてくると、彩羽は思わず立ち上がりかけた。
「こっちにもパンダがおった!」
光子が笑う。
「乗り鉄チームに負けてないやん」
彩羽はパンダムースをすぐには食べず、さまざまな角度から写真を撮った。
「お兄ちゃんたちに見せる。パンダ電車に乗らんでも、彩羽はパンダに会えましたって」
優子が感心する。
「負けず嫌いの方向が平和でよろしい」
甘いものを味わいながら、女子会らしい話が続いた。
昨日見たパンダのこと。次にローカル駅でミニライブを開くならどこがいいかという話。旅の中で子どもたちが繰り返すようになった「端っこなんかじゃない」という言葉についても話題になった。
彩羽がスプーンを置いて言う。
「彩羽、前は端っこって、遠くて何もない場所だと思っとった。でも、行ってみたら違った」
結音が尋ねる。
「どう違ったと?」
「人がおるし、ごはんもあるし、景色もあるし、そこで暮らしとる人の大事な場所やった」
灯乃もうなずく。
「誰かにとっては、そこが真ん中なんよね」
光子と優子は顔を見合わせた。
光子が穏やかに言う。
「旅をした意味が、ちゃんと伝わっとるね」
優子も微笑む。
「大人が何回説明するより、自分の目で見た一回の方が強いんよ」
祥子が笑う。
「ただし、理解した直後にパンダムースを鼻から食べようとするのは、どうかと思います」
全員の視線が彩羽へ集まった。
彩羽はスプーンをパンダの鼻先へ当てたまま固まる。
「どこから食べるか迷っただけ!」
店内に笑い声が広がった。
足湯と温泉街散策
カフェを出た一行は、温泉街を散策しながら足湯へ向かった。
この日は浴衣ではなく、動きやすい服装だった。それでも湯けむりの漂う通りを歩いていると、前日の温泉旅の余韻が自然によみがえってくる。
三人の子どもたちは靴下を脱ぎ、並んで足を湯へ入れた。
結音が肩の力を抜く。
「あったかい……」
灯乃は足をゆっくり動かした。
「今日は半分だけ温泉〜」
彩羽は湯の中で足の指を動かす。
「足が茹で上がりそう」
優子がすぐに返す。
「料理みたいに言わんの」
光子も足を湯へつけながら、深く息を吐いた。
「全身で入る温泉もいいけど、こうして足湯に入りながら話すのも好きやな」
優子が答える。
「旅も21日目やけんね。最後まで楽しむためにも、力を抜く日は必要よ」
祥子は空を見上げた。
「ガチ移動とライブを詰め込んだ分、今日は笑いながら深呼吸する日って感じやね」
しばらくすると、彩羽が母の光子へ体を寄せた。
「お母さん」
「ん?」
「みんなでずっと一緒も楽しいけど、女の子だけの日も楽しいね」
光子は彩羽の頭を優しく撫でた。
「そうやろ。別々の時間を楽しんで、あとで話を持ち寄るのも家族旅行の面白さなんよ」
結音が笑う。
「帰ったら、パンダ電車の話と女子会の話、どっちがすごかったか勝負やね」
灯乃が両手を上げる。
「こっちはスイーツと足湯の二刀流〜」
彩羽も胸を張った。
「しかもパンダムースまでおった。こっちもパンダ付き!」
女子部の戦力は、予想以上に充実していた。
夕方――再合流とハイライト発表会
夕方前、一行はホテルで再合流した。
先に戻っていた乗り鉄チームの子どもたちは、女子部が姿を見せた瞬間、一斉に駆け寄った。
陽翔がスマートフォンの画面を差し出す。
「パンダ電車、すごかった!」
燈真も負けじと訴える。
「写真、百枚くらい撮った!」
悠翔は自分で作ったメモを広げた。
「くろしおの中におったパンダを全部数えようと思ったけど、途中で分からんくなった!」
彩羽は三人の写真を順番に確認しながら目を輝かせる。
「ほんとに顔がパンダ! 今度は彩羽も乗る!」
陽翔が言う。
「次は一緒に乗ろう」
燈真も約束する。
「彩羽の席、窓側にするけん」
今度は彩羽がパンダムースの写真を見せた。
「でも女子部にもパンダがおったよ」
悠翔が驚く。
「食べるパンダやん!」
結音はケーキの写真を見せる。
「スイーツ、おいしかったよ」
灯乃は足湯の写真を開いた。
「足もほかほかになった〜」
彩羽は満足そうにまとめる。
「パンダ電車も楽しそうやけど、女子会も大成功でした」
翼は全員の顔を見渡した。
「どっちも、いい時間を過ごした顔をしとる」
拓実もうなずく。
「こういう別行動からの再集合って、家族旅行の中ではかなり贅沢やな」
光子が答える。
「それぞれ違う場所におったのに、あとで話を持ち寄ると、同じ一日としてちゃんとつながるんよね」
優子は子どもたちを食事会場へ促す。
「そこから一緒にごはんを食べて、今日のハイライト発表会をする。これが最高なんよ」
夕食では、乗り鉄チームと女子部チームが交互に今日の出来事を発表した。
乗り鉄チーム代表の陽翔は、車両先頭部のデザインと車内のパンダについて熱弁した。
女子部代表の彩羽は、パンダムースをどこから食べるべきか真剣に悩んだ話を発表し、結局、最初に耳を食べたことまで正直に報告した。
悠翔が叫ぶ。
「パンダの耳、食べたと!」
彩羽は平然と答える。
「ムースです」
その一言で、夕食会場は大笑いとなった。
夜――一週間ハイライト番組オンエア
夕食後、全員がホテルの広い部屋へ集まった。
この日はテレビで、
『M&Y一家・瀬戸内~南紀“端っこなんかじゃない”ツアー 一週間ハイライト』
が放送される日だった。
番組が始まると、これまで自分たちが訪ねてきた場所が、編集された映像となって次々に映し出された。
足摺岬でのシルエットアカペラ。
多奈川と加太で行った正体明かしのミニライブ。
道後温泉から浴衣姿で届けた爆笑通信。
りんくうタウンで実現した支部総出演回。
そして、白浜のアドベンチャーワールドで過ごした一日。
画面の向こうでMCが感嘆する。
「いやあ、この家族、旅の密度がおかしいです」
直後、画面の下へ大きな文字が現れた。
《普通の方は決して同じ日程を組まないでください》
翼が吹き出す。
「注意書きが出たぞ」
拓実が腕を組む。
「確かに、そのまま真似したら途中で動けんようになる」
番組には、美鈴からのコメントVTRや、優馬が父親の目線で語ったメッセージも挟まれた。国内外の各支部からも、応援と笑いに満ちたコメントが届いていた。
陽翔は画面と自分の顔を交互に見る。
「テレビの中に自分たちがおる」
燈真は不思議そうに首をかしげた。
「なんか、別の人を見よる感じがする」
悠翔は足摺岬の映像を見つめながら言った。
「でも、楽しかったところをちゃんと残してくれて、うれしい」
結音は、画面の中で歌う家族を見つめる。
「テレビの中でも、みんな笑っとる」
灯乃がテロップを指差した。
「“端っこなんかじゃない”って出た!」
彩羽は、自分が海を見つめている場面が映ると、少し照れながら光子の腕へ抱きついた。
「彩羽、すごく真面目な顔しとる」
光子が笑う。
「その直後、ソフトクリーム食べとったけどね」
画面は容赦なく、そのソフトクリームの場面へ切り替わった。
彩羽が口元を真っ白にしながら笑っている。
優子が大笑いする。
「編集さん、流れを分かっとる!」
彩羽は両手で顔を隠した。
「真面目な余韻を返して!」
部屋中に笑い声が響いた。
光子は番組全体を振り返る。
「編集さんのセンスに拍手を送りたいわ」
優子もうなずいた。
「笑いと祈りとローカル線と温泉。そのバランスがばっちりやね」
番組が終わる頃には、全員の心に同じ思いが生まれていた。
明日からの旅も、焦らず、無理をせず、最後まで大切に歩いていこう。
彩羽は消えたテレビ画面を見つめながら、小さく言った。
「まだ終わってないんよね」
光子が答える。
「うん。まだ旅の途中」
「じゃあ、明日もいっぱい覚えとく。あとでテレビにしてもらえるくらい」
優子が笑う。
「テレビになるかどうかは別として、心には全部残しとこうね」
ラジオ生放送――M&Yと千鳥、爆笑トークの夜
テレビ番組の終了とほぼ同時に、光子と優子はラジオ局との中継回線へ接続した。
ホテル内に用意された簡易中継ブースで、二人はヘッドホンを装着する。
番組は、おなじみの
『M&Yのフライデー爆笑ラジオカフェ』
この日のゲストは、千鳥の二人だった。
オープニングジングルが流れたあと、回線の向こうから聞き慣れた声が飛び込んでくる。
ノブが勢いよく挨拶した。
「どうも、クセがすごいほうです!」
続いて大悟。
「どうも、顔のわりに繊細なほうです」
光子が声を弾ませる。
「本日のゲストは、このお二人。千鳥のお二人です!」
優子も拍手を送る。
「やっと来てくれました! ずっと一緒にしゃべりたかった先輩です!」
ノブが笑う。
「いやいや、こっちがやで。うちの子どもら、お二人の“端っこなんかじゃないポーズ”をずっと真似しとるからな」
大悟も続ける。
「“ごはんとお風呂と笑いがあれば”のやつもな。うちの風呂で言うとるもん」
ホテルの部屋で放送を聞いていた子どもたちも、一斉に例のポーズを取る。
もちろん彩羽も、結音と灯乃の間で両腕を大きく広げていた。
紅白司会の裏話
優子が最初の話題を切り出した。
「以前ご一緒したときの話から行きましょうか。紅白の司会をやらせていただいたときの裏話とか」
ノブがすぐに反応する。
「あのときな、裏で進行の段取りを話しとるのに、お二人だけ“どこでボケるか”の相談をしよったからな」
光子が慌てて否定した。
「違いますって! ちゃんと紅白モードで真面目に打ち合わせしてました!」
大悟が低い声で続ける。
「でも本番で、さらっと“端っこなんかじゃない”を入れてきたやろ。NHKの偉い人の表情が、一瞬だけ止まったんは忘れんよ」
優子が笑う。
「そのあと、客席の子どもたちが一斉にポーズしてくれたんですよ。それを見て、“あ、セーフや”って思いました」
ノブが突っ込む。
「紅白の司会が、客席の反応で安全確認すな!」
光子が答える。
「生放送は、最後は度胸です」
大悟が感心したようにつぶやく。
「その度胸の使い方が独特なんよ」
視聴者からは、あの場面で泣いて笑って忙しかったという反応が数多く寄せられたという。
テレビ共演と「安心してスベれる関係」
光子が別の共演を振り返った。
「バラエティーでご一緒したときも、千鳥さんが一緒やったら、笑いの心配がないんですよ」
優子が補足する。
「こっちは、どれだけ安心してスベれるかを試せるという」
ノブの声が大きくなる。
「スベる前提で話すな!」
大悟は笑いながら答えた。
「でも実際、この二人が横におるなら、どれだけ飛び込んでも大丈夫やろという安心感はあるよな」
光子がすぐに返す。
「それは、こっちのセリフです!」
優子も続けた。
「芸人さんにそう言ってもらえるのは、いちばんうれしいです」
ホテルの部屋では、彩羽が不思議そうに翼へ尋ねていた。
「安心してスベるって、どういうこと?」
翼は少し考えてから答える。
「失敗しても、周りがちゃんと受け止めてくれるということかな」
彩羽はうなずいた。
「じゃあ、家族と同じやね」
翼は優しく笑う。
「そうやな。笑いの現場でも、家族みたいな信頼があるということや」
浴衣回――宿毛と道後の「少しセクシー」な話
優子が少し声を落とした。
「今日、絶対に聞かれると思っていたんですけど」
光子が先回りする。
「宿毛と道後の浴衣回ですね?」
ノブが即答した。
「そりゃ聞くやろ。あんなもん、日本のお父さんたちの癒やし特集やったやん」
大悟も笑う。
「湯上がりで笑いながらしゃべっとるだけなのに、“なんか色気あるな”と全国がざわついとったぞ」
光子が慌てる。
「本当に、ただのお風呂上がりで暑かった人なんですって!」
優子も力説する。
「こっちは湯冷めせんようにしとっただけです。完全な実用ファッションです」
ノブが声を張る。
「なんで実用で、あんな破壊力が出るんじゃ!」
大悟が淡々と付け加える。
「しかも、しゃべっとる内容がガチでアホな話やからな。色気とアホさの二刀流やった」
光子が改まった口調になる。
「視聴者の皆さまには、健康と笑いと、少しの血行促進をお届けしただけでございます」
優子は少しだけ真面目な声で続けた。
「でも、歳を重ねたうえで、笑いながらきれいでいられたらいいなというのは、本気で思っています」
大悟が穏やかに答える。
「それはもう、しっかりかなっとるわ。笑いながら歳を重ねられるというのは、いちばん贅沢なことやからな」
ノブも続ける。
「今日もラジオなのに、浴衣回の想像で頭がいっぱいになった人が、かなりおると思うで」
光子は最後まで笑いに変えた。
「皆さん、想像の中で湯冷めせんように気をつけてください」
優子も締める。
「放送が終わったら、ちゃんとお風呂に入ってください」
ホテルの部屋では、彩羽が母の言葉を聞いて首をかしげていた。
「お母さんたち、温泉に入っただけなのに、なんでこんなに話が大きくなっとると?」
結音が答える。
「それがテレビとラジオの世界なんよ」
灯乃が付け加える。
「そして、それがお母さんたち〜」
彩羽は納得したようにうなずいた。
「なるほど。いつものことか」
翼、拓実、祥子、隼が一斉に吹き出した。
爆笑裏トークと同時進行の爆笑通信
ラジオ本編の生放送が終わったあとも、配信用の「爆笑裏トーク」の収録は続いた。
千鳥と一緒にローカル駅でアカペラライブをするなら、どの駅がいいか。
ノブに「端っこなんかじゃない」ポーズを実演してもらう。
大悟に「ごはんとお風呂と笑いがあれば」の自分版を考えてもらう。
大悟は少し考えてから言った。
「酒と島と、帰れる家があれば、そこが世界の真ん中じゃ」
ノブが即座に突っ込む。
「一人だけ映画の最後みたいに言うな!」
その頃、ホテルの部屋では、子どもたちと大人たち、さらに全国の支部をつないだ爆笑通信が始まっていた。
テレビとラジオを見聞きしていた各地の支部から、コメントが次々に流れてくる。
《千鳥回、最高》
《裏トークを早く公開してください》
《浴衣回の話を広げすぎ》
《パンダくろしおがうらやましい》
《女子会スイーツの写真も見たい》
《彩羽ちゃんのパンダムース、かわいすぎる》
《ローカル駅アカペラを、うちの最寄り駅でもお願いします》
そこへ、ラジオ収録を終えた光子と優子がリモートで乱入した。
光子が画面へ大きく手を振る。
「はい、ラジオブースから、そのまま爆笑通信に乱入しています!」
優子が尋ねる。
「ラジオを聴いてくれた人?」
画面いっぱいに返事が流れた。
《聴きました》
《二回聴いた》
《まだ生放送が終わったばかりです》
《アーカイブ待ち》
ノブも少しだけ顔を出した。
「どうも、さっきまでラジオでいじられ続けたほうです」
大悟も画面へ入る。
「温泉と浴衣と笑いの組み合わせは最強という結論だけ、伝えに来ました」
各支部から賛同が殺到する。
《その通り》
《完全に同意》
《健康診断の問診票に書きたい》
すると、彩羽が結音と灯乃の間から画面へ顔を出した。
「今日はパンダ電車だけじゃありません。女子会にもパンダがおりました!」
光子が尋ねる。
「彩羽、何パンダがおったと?」
彩羽は堂々と答えた。
「ムースケーキです。そして、耳から食べました」
ノブがすぐに突っ込む。
「報告が怖いんじゃ!」
大悟が笑う。
「この子も、しっかり母親の血を継いどるな」
光子が胸を張る。
「青柳家の笑いと食欲の後継者です」
翼が画面の外から声を上げる。
「卓球も入れてやって!」
拓実が続く。
「まず競技者として紹介せんかい!」
コメント欄が一気に加速した。
《彩羽ちゃん強い》
《女子会代表の締めがパンダの耳》
《将来有望》
《乗り鉄組と女子部、両方大成功》
最後に、光子が全員へ呼びかけた。
「では、今日もみんなで行きましょうか」
優子が続ける。
「ごはんとお風呂と笑いがあれば――」
陽翔、燈真、彩羽、結音、灯乃、悠翔も、画面の前で一斉に両腕を広げた。
「パンダ電車の中でも!」
「女子会スイーツでも!」
「足湯でも!」
「浴衣回でも!」
「ラジオブースでも!」
最後は全員の声が重なった。
「ここが世界の真ん中やけーん!」
画面は拍手と笑いのコメントで埋め尽くされた。
《今日も最高》
《六人全員そろった》
《彩羽ちゃんが加わって女子部も最強》
《明日の旅も楽しみ》
こうして旅の21日目は、乗り鉄チームが満喫したパンダくろしお、光子、優子、祥子、結音、灯乃、彩羽による女子会スイーツと足湯、テレビで放送された一週間のハイライト、千鳥とのラジオ生放送、そして全国の仲間をつないだ爆笑通信によって幕を閉じた。
彩羽が加わった女子部には、結音と灯乃を慕う末っ子らしいにぎやかさと、勝負師らしい妙な負けず嫌いが加わった。
それぞれが別の場所で違う景色を楽しみ、その思い出を持ち寄って、最後は再び一つの家族へ戻る。
21日目は、「笑いながら休み、離れて過ごした時間まで家族の思い出に変える日」として、静かに、けれど最後までにぎやかに終わっていった。




