夜――全支部をつなぐ、爆笑通信(続き)
八日目――旅の合間のオフ日
3 夜――全支部をつなぐ、爆笑通信(続き)
優子も続ける。
「だから今日も、笑いつつ、ちゃんと知って、
“ほんなら自分たちは何できる?”って考える夜にしよーや。
……とか言いながら、このあと“本日のベストアホ大賞”発表するとばってんね」
画面いっぱいに笑い声が広がる。
「さぁ、それでは!」
光子が勢いよく手を振った。
「本日のベストアホ大賞エントリー、一組目!」
画面が徳島支部へ切り替わる。
そこには、おなじみのインコ一家。
せきちゃん閣下。
せいちゃん姫。
きびまる。
あわみ。
しらゆき。
全員が妙に気合いの入った表情をしていた。
由理恵が苦笑しながら紹介する。
「今日はですね……閣下がどうしてもM&Yさんの真似をしたいって言いまして。」
「嫌な予感しかしない。」
優子が頭を抱える。
光子も苦笑い。
「だいたい、うまくいった試しなかもんね。」
すると。
せきちゃん閣下が胸を張り、
翼を大きく広げた。
「ピーーーッ!」
そして得意満面に叫ぶ。
「オレはインコ界のM&Yやぁーー!!」
ドン!!
後ろで紙吹雪が飛ぶ。
……はずだった。
ところが。
紙吹雪のひもが足に絡まり、
「ピギャッ!!」
見事に前へ一回転。
そのまま止まり木から転げ落ち、
ケージの床へ。
ゴン。
「……。」
世界中の支部が一瞬静まり返る。
そして。
《ドカーーーーン!!》
《またやったーー!!》
《期待を裏切らない!!》
《開始五秒で大賞決定!!》
コメント欄が爆発した。
せいちゃん姫は額に羽を当てる。
「もう……何しよるんですか。」
閣下は何事もなかったように立ち上がる。
「これは演出や!」
「どこがですか。」
「インコ界にも転倒芸は必要や!」
「必要ありません。」
間髪入れずにせいちゃん姫がツッコむ。
光子は腹を抱える。
「出たー!」
優子も涙目。
「この夫婦漫才、安定しとる!」
すると閣下は胸を張り直した。
「今日はM&Yの名曲を歌う!」
「えっ。」
光子と優子が顔を見合わせる。
「『雪の約束』を歌う!!」
画面の向こうでは拍手。
「おぉーー!」
「これは楽しみ!」
ピアノ伴奏が流れ始める。
閣下は目を閉じ、
感情たっぷりに歌い始めた。
「♪ゆ〜き〜の〜
や・く・ざ〜♪」
……
優子が即座に立ち上がる。
「誰が反社会的な歌にしたん!!」
コメント欄。
《約束じゃなくてヤクザになっとる》
《一文字で大事件》
《歌い出しで終わった》
閣下は気にしない。
「♪き〜み〜と〜
たべ〜る〜
焼きそば〜♪」
光子が吹き出す。
「焼きそば!?」
本来そこは恋人への想いを歌う大事な歌詞。
それが突然、
昼ごはんの話になっていた。
さらに。
「♪雪が降る〜
ラーメン煮る〜
カレーも混ぜる〜♪」
せいちゃん姫が両翼で顔を覆う。
「何の約束なんか、さっぱり分からんようになっとるやないですか!」
世界中が大爆笑。
《料理番組!?》
《鍋になった!》
《ラブソング消滅》
《カレー混ぜる必要ある!?》
閣下は熱唱を続ける。
しかし。
音程が。
高い。
低い。
高い。
さらに高い。
最後には完全に迷子になり、
「ピーー……
ピョーーーー……
ピョロロロロ……」
音階がどこか遠い世界へ旅立っていった。
優子が耳を押さえる。
「音程まで、あっちの世界に行っとる!」
光子は机を叩いて笑う。
「誰か連れ戻してー!」
せいちゃん姫は静かに立ち上がると、
閣下の肩を優しくつついた。
「閣下。」
「なんや。」
「その音程。」
「うん。」
「シベリア経由で南極まで行って帰ってきてません。」
「そんなに旅した?」
「世界一周しております。」
ドッ!!
画面の向こうで拍手喝采。
由理恵は笑いすぎて椅子からずり落ちそうになる。
「もう無理……お腹痛い……。」
メルボルン支部。
ロサンゼルス支部。
ブエノスアイレス支部。
キーウ支部。
世界中の画面で笑いが止まらない。
光子が涙をぬぐいながら言う。
「いやぁ……閣下。」
「なんや。」
「歌は全部間違えたけど。」
「うん。」
「笑いだけは百点やった。」
閣下は胸を張る。
「それがインコ界のM&Yや!」
せいちゃん姫が即座に締める。
「違います。」
「インコ界の『迷子&ヤラカシ』です。」
その完璧なツッコミに、再び全世界の爆笑通信は大きな笑いに包まれた。




