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美香と光子と優子の爆笑ストーリー。光子と優子29歳  作者: リンダ


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八日目――旅の合間のオフ日。

八日目――旅の合間のオフ日。


1 喫茶 Smile で、のんびり旅のこぼれ話


昼前。

大野城駅前の喫茶 Smile。


ガラス戸を開けると、いつものコーヒーの香りと、

マスター佐々木さんと奥さんのあったかい声が迎えてくれた。


「いらっしゃい……あらぁ、M&Yのおふたりさん」

「おかえりなさい、九州一周鉄道旅の人〜」


エプロン姿の佐々木さん(奥さん)が、

カウンター越しににこっと手を振る。


「ただいま戻りました〜」

「ただいま〜。九州と四国、だいぶ揺られてきました〜」


光子と優子は、

ほぼ“実家”みたいなテンションで席に座る。


「今日はオフ?」

「はい。さすがに今日は乗らんどこうってことで」

「さすがにね。これ以上揺られたら、体がレールになるもんね」


「レール体質って何ね」と優子が即ツッコミ。


マスターの佐々木さんが、

アイスコーヒーとケーキセットを運びながら笑う。


「で、どやった? 九州の海と鉄道の旅は」


光子が、待ってましたと言わんばかりに身を乗り出す。


「もう、門司港からスタートしてね、

 別府で温泉つかって、津久見でみかん山ほど食べて、

 佐伯で“明日4時半起きで〜す”って爆笑通信で言った瞬間、

 全支部が一斉に絶望のスタンプ送ってきました」


「“誰や普通列車・快速縛り決めたやつ”って全国からツッコミきたよね」

「うん。決めたのうちらなんやけどね」


「犯人ここにおるやん」とマスター。


そこから旅のこぼれ話が止まらない。


・青島の鬼の洗濯板で、陽翔と結音が

 「ここで洗濯したら、お母しゃんの洗濯物、

  一瞬で乾くね!」と真顔で言ったこと。

・枕崎往復の“鬼ダイヤ”で、

 「この列車逃したら、この区間、今日終わりって何!?」

 と、車内で半泣きツッコミ大会になったこと。

・天草で歴史資料を見ながら、

 彩羽と悠翔がなぜか“かくれキリシタンごっこ”を始め、

 係員さんに「演技上手ですね」と本気で褒められたこと。


佐々木奥さんは、

笑いすぎて何度もハンカチで目尻を拭いている。


「ええなぁ……聞けば聞くほど、のんびり鉄道旅したくなるね」

「なりますね〜」と光子。

「スマイルご夫妻で、九州ゆっくり一周なんてどうです?」


佐々木さんが、照れくさそうにコーヒーをかき回す。


「夢ではあるとよ。

 各駅停車で、ぼーっと海見ながらな。

 でも、店もしめなあかんし……」


「うちら、臨時“爆笑出張カフェ”とかやりましょうか?

 スマイル in 博多とか」


「それ赤字必至のやつやろ」と優子。


店内は終始、笑いと“いいなぁ、いつか行きたいねぇ”という

夫婦の本音が混ざり合っていた。


帰り際、奥さんがふと真顔で言う。


「でもさ、

 あなたたちの作った曲で、

 一つの国の政治が揺れたって、やっぱすごいよ。


 ……難しいことはよう分からんけど、

 あの若者たちが今、ここに笑っているのを見るとね、

 “音楽と笑いの力って、ほんとに世界を動かすんやな”って思うよ」


光子と優子は顔を見合わせ、

少し照れながらも、まっすぐ頷いた。


「うちらも、あの子らにいっぱい救われよるけんね」

「だから、これからも、アホ全開で真面目なことやります」


「最高の宣言やね」と佐々木さん夫婦は笑った。



2 博多ドンタクスの体育館へ


午後。

博多の体育館のひとつ、

“博多ドンタクス”が練習に使っているコートは、

今日も元気な声で満ちていた。


「ナイスレシーブ!」

「今のトス、最高!」

「はいそこ、笑いすぎて動き止めない〜!」


光子と優子がそっと観覧席から顔を出すと、

すぐにボールが二人のほうへ飛んできた。


「M&Y来たーー!!」

「キャプテンの光子さん、今日は見学〜?」


美鈴のママ友でもある、

博多ドンタクスのママさんたちに加え、


今年入団した新メンバー、

そして――


「サーブ入れます!」

「レシーブ、お願いします!」


体育館の一角で、

セルゲイ、エレナ、オレグ、ナターリヤたち、

アリョーナスとカティアの両親組が、

汗を流していた。


「いやぁ、セルゲイさんのブロック高くない?」

「オレグさんのサーブ、素人の域超えとる」


光子が思わず呟くと、

優子が小声でツッコむ。


「独裁国家抜けてきたと思ったら、

 こっちでは“ネット際の独裁者”になりよる」


「それ褒め言葉なんかな……」


休憩時間になり、

アリョーナスとカティアもコート脇に合流する。


「光子さん、優子さん!」

「今日、うちの父さん母さん、めっちゃ楽しそうです」


セルゲイがタオルで汗を拭きながら、

たどたどしい日本語で笑う。


「ワタシ、“アタック快感”デス」


「もう日本語の覚え方が完全にバレー部なんよ」と優子。


エレナとナターリヤも並んで座り、

水を飲みながらにこにこしている。


「ここ、笑い、多い。とても、いい。

 前の国、笑い、少ない……」


「ここ来て、やっと、大きい声で笑える」


それを聞いたママさんメンバーが、

すかさず輪に入ってくる。


「じゃあ、もっと笑わせちゃるけん!」

「次の紅白戦、負けたチーム、モノマネ一本な〜!」


「世界標準の“罰ゲーム文化”やね」と光子。


コートでは、

日本語・英語・少しの母国語が飛び交いながら、

スパイクとレシーブと笑い声が、

絶妙なリズムで行き交っていく。


観覧席から見ていた光子がぽつり。


「……なんか、いいね」


「うん。

 前は“命からがら逃げてきた家族”って

 ニュースで見る存在やったけどさ」


優子が頷く。


「今目の前でこうして、

 “バレーして、汗かいて、笑って”ってしよるの見たらさ、

 “ああ、うちらと同じ、普通の家族になっとるんやな”って思う」


少し感傷的になりかけたところで、

コートから声が飛んでくる。


「光子さーん! サーブ一本打っていきません?」

「優子さーんも! “笑い付きジャンプサーブ”お願いします!」


「出た、“笑い付き”って何ね」と優子が立ち上がる。


「行くしかなかろーもん」と光子も笑ってコートへ。


結局、ふたりもそのまま

ミニゲームに巻き込まれて汗だくになり、

体育館はいつものように爆笑のるつぼになった。



3 夜――全支部をつなぐ、爆笑通信


その夜。

日が落ちた博多のマンション。


リビングのテーブルの上には、

ノートPCが開かれ、

全国・世界の「爆笑発電所」各支部とつなぐ

オンライン会議(という名の大喜利タイム)の準備が整っていた。


「音声オッケー?」

「アフリカ支部、聞こえる〜?」

「メルボルン、映ってるよ〜!」


画面の中に、

福岡・京都・熊本・江津・徳島・札幌、

さらにはメルボルン、パース、

ロサンゼルス、ブエノスアイレス、オデーサ、キーウ……


世界中の“爆笑仲間”たちの顔が並ぶ。


MC席には光子と優子。

その隣に、ゲストとしてアリョーナスとカティア。

後ろには、陽翔と彩羽もちゃっかり座っている。


「さぁ、今夜も始まりました、

 “爆笑発電所・世界同時多発ギャグ通信”〜!」


『イエーーイ!!』


各支部から拍手と歓声があふれる。


まずは、今回の日本海に近い鉄道旅・九州編の報告会。


「門司港から始まってですね〜」

「別府で温泉、津久見でみかん、佐伯で“4時半起き宣言”」


各支部の画面に、いっせいに悲鳴スタンプが飛ぶ。


「で、みんなに聞きたい。

 “誰が普通・快速縛り決めたと思う?”」


コメント欄:

《お前らやろ》《M&Y以外おらん》《犯人ここ》《自首しろ》


「正解〜! 犯人自首済み〜」

「それでもやってしまう、それがうちら〜」


続いて、

アリョーナスとカティア、

そしてその家族の近況報告コーナー。


画面にセルゲイとエレナ、オレグとナターリヤも映り、

世界の支部に向けて手を振る。


「今日、バレー、すごく楽しい。

 わたし、サーブ入ったら、

 “ナイス独裁サーブ!”って言われた」


「そのあだ名やめてあげて」と光子が即ツッコミ。


オデーサ支部からは、

「今度こっち来たら、ビーチバレーやろう!」

というコメントが入る。


そして、真面目モードにも一瞬だけスイッチ。


「今日のテレビでも言ったけどさ」

「“知らないこと、知らないふりすることが、一番の罪”ってやつね」


光子が画面を見渡す。


「うちら、笑いながらマジなことガチで言うスタイルやけど、

 アリョーナスたちの母国で起きとったこと、

 本当に“知らん顔”しとったら、

 きっと今も、あの家族はここにおらんかったと思うとよ」


優子も続ける。


「だから今日も、笑いつつ、ちゃんと知って、

 “ほんなら自分たちは何できる?”って考える夜にしよーや、

 ……とか言いながら、

 このあと“本日のベストアホ大賞”発表するとばってんね

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