表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

236/238

長篠の戦い開始—武田軍の突撃

 1575年6月28日、夜明け前。設楽原には、緊張が満ちていた。

織田・徳川連合軍の兵たちは、武器を手に、静かに待機していた。

馬防柵の後ろで、鉄砲隊が、構えている。紘一は、医療班陣営で、夜明けを待っていた。

空が、徐々に明るくなってくる。もうすぐ、戦いが始まる。紘一の心は、重かった。

また、多くの人が死ぬだろう。それを、止めることはできない。紘一にできることは、負傷者を救うことだけだった。


 夜が明けた。そして、武田軍が、姿を現した。約一万五千の大軍。旗が、風になびいている。

武田菱の旗印が、朝日に照らされている。武田勝頼は、馬に乗って、前線にいた。織田・徳川の陣を見て、笑った。


「馬防柵を作ったか。だが、我が武田の騎馬隊を、止められるものか」


 勝頼の側には、重臣たちがいた。山県昌景、馬場信春、内藤昌豊、原昌胤。武田四名臣と呼ばれる者たちだった。山県昌景が、口を開いた。


「殿、敵は大軍です。そして、馬防柵を作っています。正面から突撃するのは、危険かと」


 馬場信春も、同意した。


「山県殿の言う通りです。慎重に、進むべきかと」


 だが、勝頼は、聞かなかった。


「恐れるな。我らは、武田だ。父上が築いた、最強の軍だ。織田など、恐れるに足りない」


 勝頼は、続けた。


「父上は、三方ヶ原で、織田・徳川を破った。わしも、父上のように、勝つ。いや、父上を超える。全軍、突撃せよ」


 重臣たちは、これ以上、反対できなかった。


「承知しました」


 武田の騎馬隊が、動き始めた。

約五千の騎馬が、一斉に、織田・徳川の陣に向かって突進した。

地響きがした。馬の蹄の音が、轟いた。凄まじい迫力だった。

大地が、震えているようだった。織田・徳川の兵たちは、恐怖を感じた。

武田の騎馬隊の迫力は、圧倒的だった。


「来る......」


「武田の騎馬隊が......」


 兵たちの声が、震えている。だが、信長は、冷静だった。

信長は、馬防柵の後ろに立ち、騎馬隊を見ていた。騎馬隊が、近づいてくる。

百メートル、五十メートル、三十メートル。


「まだだ」


 信長は、待った。二十メートル。


「撃て」


 信長の命令が、下された。鉄砲隊の一段目が、一斉に発砲した。

ドン、ドン、ドン、ドン、ドン。約千挺の鉄砲が、火を噴いた。

硝煙が、立ち上った。銃弾が、武田の騎馬隊に、降り注いだ。馬と騎士が、次々と倒れた。

悲鳴が、上がった。馬の嘶きが、響いた。だが、武田の騎馬隊は、止まらなかった。

残りの騎馬が、さらに突進してくる。


「二段目、撃て」


 二段目の鉄砲隊が、発砲した。また、約千挺の鉄砲が、火を噴いた。さらに、多くの騎馬が倒れた。だが、まだ止まらない。


「三段目、撃て」


 三段目の鉄砲隊が、発砲した。三度目の銃撃。

武田の騎馬隊は、ついに、崩れた。あまりにも多くの騎馬が、倒れた。

残った騎馬は、馬防柵の前で、立ち往生した。柵を越えられない。

そこを、また鉄砲隊が撃った。一段目が、再装填を終えて、また撃った。

武田の騎馬隊は、壊滅した。約五千の騎馬のうち、半数以上が、倒れた。

生き残った騎馬も、退却を始めた。


 紘一は、後方の医療班陣営から、その様子を見ていた。鉄砲の音が、響いている。硝煙が、立ち上っている。そして、悲鳴が、聞こえてくる。


「始まった......」


 紘一は呟いた。しばらくして、最初の負傷者が、運ばれてきた。織田軍の兵だった。矢傷を負っていた。武田の弓兵が、反撃してきたのだ。


「先生、助けてください」


 兵は、苦しそうに言った。吉田が、すぐに治療を始めた。矢を抜き、傷口を洗い、薬草を塗る。そして、包帯を巻く。


「大丈夫です。傷は、浅いです。すぐに、治ります」


 兵は、安堵した。


「ありがとうございます」


 だが、次から次へと、負傷者が運ばれてきた。

今回は、比較的少ないが、それでも、数十名の負傷者がいた。

医師たちは、必死に治療した。紘一も、治療を手伝った。

傷口を洗い、包帯を巻く。手は、血で染まっていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ