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足利義昭との出会い—将軍擁立の構想

1568年7月、織田信長のもとに、一人の客人が訪れた。

足利義昭だった。

義昭は、室町幕府十三代将軍・足利義輝の弟だった。

義輝は、1565年に、三好三人衆と松永久秀に殺害されていた。

義昭は、兄の仇を討ち、将軍の座を取り戻すために、諸国を放浪していた。

だが、どの大名も、義昭を支援しなかった。

リスクが大きすぎたからだ。

義昭を擁立すれば、三好や松永と戦わなければならない。

そこで、義昭は、織田信長を頼った。

岐阜城の大広間で、信長と義昭は会見した。

紘一も、同席を許された。

義昭は、三十一歳の男だった。

顔立ちは整っているが、どこか頼りなさそうな雰囲気があった。

義昭が、口を開いた。

「信長殿、お願いがあります」義昭の声は、丁寧だった。「私を、京都に連れて行ってください」

「そして、将軍に、就けてください」

信長は、しばらく黙って、義昭を見ていた。

やがて、信長が答えた。

「承知しました」信長の声は、力強かった。

義昭は、驚いた顔をした。

「本当ですか」

「本当です」信長は頷いた。

「ただし、条件があります」

「何でしょうか」

「将軍になられたら、私の言うことを、聞いていただきます」信長は言った。

義昭は、少し考えてから、答えた。

「分かりました」義昭は頷いた。

「約束します」

こうして、信長と義昭の同盟が、成立した。

会見が終わった後、信長は、紘一を呼んだ。

二人きりになると、信長が口を開いた。

「田邊殿、どう思うか」

「上洛、ですか」

「ああ」信長は頷いた。

「リスクは、大きい」

信長は、続けた。

「だが、これを成功させれば、わしの名は、天下に知れ渡る」信長の目が、輝いた。

「そして、天下統一への、第一歩となる」

紘一は、少し考えてから、答えた。

「信長様なら、成功させられます」紘一は断言した。

「ただし、一つ、心配なことがあります」

「何だ」

「義昭様です」紘一は率直に言った。

「義昭様は、今は、信長様に頼っておられます」

「ですが、将軍になられたら、どうでしょうか」

紘一は、続けた。

「将軍の座を得たら、義昭様は、信長様の言うことを、聞かなくなるかもしれません」

信長は、紘一の懸念を理解した。

「その可能性は、ある」信長は認めた。

「だが、そうなったら、その時に考える」

「今は、上洛することが、先決だ」

紘一は、頷いた。

「分かりました」


1568年9月、織田信長は、上洛軍の編成を開始した。

総勢、約三万の大軍だった。

美濃から、一万五千。

尾張から、一万五千。

それぞれの国から、兵を集めた。

神崎家にも、召集の命令が届いた。

広信は、兵を二百名、出すことにした。

「田邊さん、私も、行きます」広信は言った。

紘一は、少し考えてから、答えた。

「分かりました」紘一は言った。

「ですが、無理はしないでください」

広信は、もう五十歳になっていた。

戦場に出るには、年を取りすぎている。

だが、広信は、決意していた。

「大丈夫です」広信は言った。

「まだ、戦えます」

紘一も、上洛軍に同行することにした。

信長から、要請があったからだ。

「田邊殿、一緒に来てくれ」信長は言った。

「京都で、政治を行う時、田邊殿の助言が必要だ」

紘一は、承諾した。

「承知しました」

上洛軍の編成が、完了した。

総大将は、もちろん、織田信長。

副将は、柴田勝家。

その他、羽柴秀吉、明智光秀、丹羽長秀、滝川一益など、主要な武将が参加した。

紘一は、後方支援を担当することになった。

兵站、医療、情報収集。

それらを、統括する。

9月12日、上洛軍は、岐阜を出発した。

三万の大軍が、京都に向けて、進軍を開始した。

紘一は、馬に乗って、軍に同行した。

外見上は若いが、心は六十歳を超えている。

長距離の行軍は、体に堪えた。

だが、紘一は、弱音を吐かなかった。

信長を支えなければならない。

それが、紘一の使命だった。


上洛軍は、まず、近江を通過しなければならなかった。

近江は、六角氏が支配していた。

六角氏は、かつては強大な勢力だったが、今は衰退していた。

織田軍が、近江に入ると、六角氏は、迎撃の準備をした。

だが、三万の大軍を見て、六角氏は、戦意を失った。

六角承禎は、家臣たちと協議した。

「どうする」六角承禎は尋ねた。

「織田軍と、戦うか」

家臣の一人が、答えた。

「殿、無理です」家臣の声には、恐怖があった。

「織田軍は、三万です」

「我らの兵は、五千にも満たない」

「戦えば、確実に負けます」

六角承禎は、決断した。

「分かった」六角承禎は言った。「降伏しよう」

六角氏は、織田軍に使者を送った。

「織田様の通過を、認めます」

「どうか、我らの領地を、荒らさないでください」

信長は、六角氏の降伏を、受け入れた。

「分かった」信長は言った。「お前たちの領地は、荒らさない」

「ただし、兵糧を、提供してもらう」

六角氏は、織田軍に、大量の兵糧を提供した。

織田軍は、戦わずに、近江を通過した。

紘一は、この信長の戦略を、見事だと思った。

「戦わずして勝つ」

それが、最上の戦略だ。

信長は、それを実践している。



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