復興の軌道
1570年の春、美濃は、大きく変わっていた。
織田信長が美濃を手に入れてから、約三年。
その三年で、美濃は、劇的に発展した。
農業生産は、増加した。道三の時代を超える水準に達していた。
教育も、普及していた。寺子屋の数は、四十箇所を超えた。
医療も、改善された。診療所が増え、医師の数も増えた。
商業も、活発だった。楽市楽座により、市場は活気に満ちていた。
交通網も、整備された。道路と橋が、美濃全域に張り巡らされていた。
領民たちの生活は、明らかに良くなっていた。
そして、領民たちは、信長を慕うようになっていた。
「信長様は、素晴らしい領主だ」
「道三様以来の、名君だ」
そのような声が、美濃中に広がっていた。
ある日、信長が、領内を視察した。
紘一も、同行した。
村を訪れると、多くの領民が、信長を出迎えた。
「信長様」
「ようこそ、いらっしゃいました」
信長は、領民たちと、直接話をした。
「皆、元気にしているか」
「はい、信長様のおかげで、元気です」
信長は、田んぼを見た。
稲が、青々と育っている。
「今年の収穫は、どうだ」信長は尋ねた。
農民が、答えた。
「良いです」農民の顔には、笑顔があった。
「田邊様が教えてくださった方法で、育てています」
「収穫は、以前の二倍近くになりそうです」
信長は、満足そうに頷いた。
「それは、良かった」
信長は、寺子屋も訪れた。
子供たちが、熱心に学んでいた。
信長が入ってくると、子供たちは、驚いた顔をした。
「信長様だ」
「本物の信長様だ」
信長は、子供たちに微笑んだ。
「皆、勉強は楽しいか」
「はい」子供たちは、元気よく答えた。
「字が読めるようになると、嬉しいです」
信長は、教師にも話しかけた。
「子供たちの様子は、どうだ」
教師は、嬉しそうに答えた。
「皆、熱心に学んでいます」教師は言った。
「これも、信長様が、寺子屋を支援してくださるおかげです」
信長は、頷いた。
「子供たちは、美濃の未来だ」信長は言った。
「しっかりと、育ててくれ」
「はい」
視察が終わった後、信長は、紘一に言った。
「田邊殿、美濃は、本当に良くなった」信長の声には、感慨があった。
「これも、田邊殿のおかげだ」
「いえ、信長様のご支援があってこそです」紘一は答えた。
信長は、首を横に振った。
「いや、田邊殿の力だ」信長は言った。
「田邊殿の、人々への思いやりが、美濃を変えた」
信長は、続けた。
「わしは、武力で美濃を手に入れた」信長は言った。
「だが、本当に美濃を治めているのは、田邊殿だ」
紘一は、信長の言葉に、恐縮した。
「そんなことは、ありません」
「ある」信長は断言した。
「田邊殿がいなければ、美濃は、ここまで発展しなかった」
信長は、紘一の肩を叩いた。
「これからも、頼む」
「はい」
紘一は、岐阜城の天守から、美濃の景色を眺めた。
春の景色だった。
田んぼには、水が張られ、稲の苗が植えられている。
村々には、人々の活気がある。
「ここまで、来られた」紘一は思った。
美濃の復興は、軌道に乗った。
だが、まだ終わりではない。
信長は、天下統一を目指している。
その過程で、多くの戦いが待っている。
紘一は、できる限り、戦いを避けたい。
外交で解決したい。
だが、それが無理な時もあるだろう。
その時には、紘一は、信長を支える。
戦いを、できるだけ短く、犠牲を少なくする。
そして、戦いが終わったら、すぐに復興する。
それが、紘一の役割だった。
「これからも、頑張ろう」紘一は、自分に言い聞かせた。
窓の外には、春の風が吹いていた。
優しく、温かく、希望に満ちた風が。
1570年の夏、美濃全域で、信長の評判は、さらに高まっていた。
信長が美濃を手に入れてから、約三年。
その三年で、美濃は、目覚ましい発展を遂げていた。
領民たちの生活は、明らかに良くなっていた。
食料は豊富になり、商品は安く買えるようになり、医療も受けられる。
子供たちは、寺子屋で学べる。
道路は整備され、移動も楽になった。
領民たちは、この変化を、実感していた。
「信長様が来てから、生活が良くなった」
「本当に、良い領主だ」
そのような声が、美濃中に広がっていた。
ある日、岐阜城下の市場で、騒ぎが起こった。
二人の商人が、喧嘩をしていた。
商品の取引で、揉めていたのだ。
周りの人々が、止めようとしたが、二人は聞かなかった。
その時、信長が、たまたま市場を視察していた。
信長は、騒ぎを聞きつけて、駆けつけた。
「何事だ」信長の声が、響いた。
二人の商人は、信長を見て、驚いた。
「信長様......」
信長は、二人から、事情を聞いた。
一人の商人が、商品を売った。
だが、もう一人の商人が、商品に欠陥があると主張している。
代金を返せと言っている。
だが、売った方は、商品に問題はないと主張している。
信長は、商品を確認した。
確かに、小さな傷があった。
だが、使用に支障はない程度だった。
信長は、判断した。
「商品に、小さな傷がある」信長は言った。
「だが、使えないわけではない」
信長は、続けた。
「代金の半分を、返せ」信長は、売った方の商人に命じた。
「そして、買った方は、商品を受け取れ」
二人の商人は、信長の判断に、納得した。
「分かりました」
「ありがとうございます、信長様」
騒ぎは、収まった。
周りの人々は、信長の公正な判断に、感心した。
「さすが、信長様だ」
「公正で、賢い」
この出来事は、すぐに美濃中に広がった。
信長の評判は、さらに高まった。
紘一は、この話を聞いて、満足した。
「信長様は、本当に変わられた」紘一は思った。
かつての「大うつけ」は、もういない。
今の信長は、賢明で、公正で、人々のことを考える領主だった。
「このような領主なら、人々は、喜んでついていく」
紘一の予想は、正しかった。
美濃の人々は、信長を、心から慕うようになっていた。




