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診療所の拡充—医療網の整備

1568年の秋、紘一は医療体制の拡充にも取り組んだ。

お絹の弟子、吉田と清水は、順調に成長していた。

一年間の修行を終え、基本的な診療ができるようになっていた。

紘一は、二人に、それぞれの診療所を任せることにした。

吉田は、美濃北部の診療所へ。

清水は、美濃東部の診療所へ。

二人は、不安そうだった。

「私たちに、できるでしょうか」吉田は言った。

お絹が、励ました。

「大丈夫です」お絹の声は、優しかった。

「二人とも、よく学びました」

「自信を持って、診療してください」

紘一も、二人を励ました。

「困ったことがあれば、いつでも、お絹殿に相談してください」

「はい」

二人は、それぞれの診療所に赴任した。

最初は、戸惑うこともあった。

だが、お絹から学んだことを活かして、一人一人の患者を、丁寧に診た。

患者たちは、若い医師を、温かく迎えた。

「先生、ありがとうございます」

「よく診てくださって、助かります」

吉田と清水は、徐々に自信をつけていった。

紘一は、定期的に、診療所を巡回した。

吉田の診療所を訪れた時、吉田は、一人の老人を診ていた。

老人は、咳が止まらないという。

吉田は、丁寧に診察した。

そして、薬草を調合した。

「これを、一日三回、飲んでください」吉田は言った。

老人は、感謝した。

「ありがとうございます、先生」

診療が終わった後、紘一は、吉田に声をかけた。

「よく診ていますね」

吉田は、嬉しそうだった。

「田邊様、お絹先生から学んだことを、思い出しながら、診ています」

「それで、いいです」紘一は言った。

「一人一人の患者を、大切にする」

「それが、医師の基本です」

吉田は、深く頷いた。

清水の診療所も、順調だった。

清水は、特に、女性や子供の患者に、人気があった。

優しく、丁寧に接するからだった。

ある日、紘一が訪れた時、清水は、赤ん坊を診ていた。

赤ん坊は、熱を出していた。

母親は、心配そうな顔をしていた。

清水は、優しく、赤ん坊を診察した。

「大丈夫です」清水は、母親に言った。

「風邪ですね」

「この薬を、飲ませてください」

母親は、安堵した。

「ありがとうございます、先生」

診療が終わった後、紘一は、清水に言った。

「患者への接し方が、素晴らしいですね」

清水は、恥ずかしそうに答えた。

「お絹先生が、いつも言っておられました」

「患者の不安を、取り除くことも、医師の仕事だ、と」

紘一は、お絹の教育の素晴らしさを、改めて感じた。

「お絹殿は、良い先生ですね」

「はい」

こうして、美濃の医療網は、着実に拡充されていった。

診療所の数は、増え続けた。

そして、お絹の弟子たちが、さらに弟子を育て始めた。

医療の継承が、進んでいった。


1569年の春、紘一は商業の活性化にも取り組んだ。

美濃の商業は、この十年で、大きく衰退していた。

市場の活気は失われ、商人たちの数も減っていた。

紘一は、信長に、新しい政策を提案した。

「信長様、楽市楽座を、導入してはどうでしょうか」

信長は、興味を示した。

「楽市楽座、か」

「はい」紘一は説明した。

「市場での商売を、自由にするのです」

紘一は、具体的に説明した。

「従来、商人たちは、座という組合に所属していました」紘一は言った。

「そして、座に、高い会費を払っていました」

「さらに、新しい商人が、市場に参入することも、制限されていました」

信長は、頷いた。

「それでは、商業が発展しないな」

「その通りです」紘一は続けた。

「ですから、座を廃止します」

「そして、誰でも、自由に商売できるようにします」

「税も、軽減します」

信長は、少し考えてから、答えた。

「面白い」信長の目が、輝いた。

「やってみよう」

信長は、すぐに、楽市楽座の導入を決めた。

まず、岐阜城下の市場で、試験的に実施することにした。

布告が出された。

「今後、岐阜城下の市場では、誰でも自由に商売ができる」

「座は、廃止する」

「市場税は、半分にする」

この布告は、商人たちに、大きな衝撃を与えた。

既存の商人たちは、困惑した。

「座が廃止されるのか」

「では、我らの特権は、どうなる」

だが、新しい商人たちは、喜んだ。

「これで、俺たちも、商売ができる」

「税も安くなる」

楽市楽座の導入から、数ヶ月後、効果が現れ始めた。

新しい商人たちが、次々と、市場に参入してきた。

市場の店の数が、増えた。

取り扱う商品の種類も、増えた。

米、野菜、魚、肉、布、陶器、道具。様々なものが、売られるようになった。

価格競争も、起こった。

同じ商品を売る店が増えたので、店同士が競争し、価格が下がった。

領民たちは、喜んだ。

「物が、安く買えるようになった」

「市場が、活気づいている」

紘一は、市場を視察して、その変化を確認した。

確かに、市場は活気に満ちていた。

商人たちは、声を張り上げて、商品を売っている。

客たちは、品物を見比べながら、買い物をしている。

「これが、本来の市場の姿だ」紘一は思った。

紘一は、一人の商人に話しかけた。

「商売は、うまくいっていますか」

商人は、嬉しそうに答えた。

「はい、田邊様」商人の声には、活気があった。

「税が安くなったので、利益が増えました」

「そして、客も増えました」

「これも、信長様と田邊様のおかげです」

紘一は、商人の喜びを見て、満足した。

楽市楽座の成功を見て、信長は、美濃全域に、この政策を広げることにした。

各地の市場で、楽市楽座が導入された。

美濃の商業は、急速に回復していった。

秀吉は、この政策を見て、感心していた。

「田邊様、この楽市楽座は、素晴らしいです」秀吉は言った。

「規制を減らし、自由にする」

「それが、経済を活性化させるのですね」

紘一は、頷いた。

「はい。人々の自由な活動を、保証する」

「それが、繁栄への道です」

秀吉は、この教訓も、心に刻んだ。


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