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農業改革の再開—新技術の導入

1568年の春、紘一は農業改革を再開した。

間断灌漑は、すでに美濃全域で定着していた。

だが、紘一は、さらなる改善を目指した。

まず、肥料の改善だった。

紘一は、美濃各地の農民を集めて、説明会を開いた。

約二百名の農民が、集まった。

紘一は、前に立って、説明した。

「皆さん、今日は、肥料の作り方について、お話しします」

農民たちは、真剣に聞いていた。

「肥料は、作物の成長に、不可欠です」紘一は説明した。

「良い肥料を使えば、収穫が増えます」

紘一は、具体的な方法を説明した。

「堆肥を作る時、重要なのは、混ぜるものです」紘一は言った。

「稲わら、落ち葉、家畜の糞。これらを、バランスよく混ぜます」

紘一は、詳しい比率を説明した。

そして、実際に、堆肥を作るところを、見せた。

農民たちは、熱心に見ていた。

「質問はありますか」紘一は尋ねた。

一人の農民が、手を上げた。

「田邊様、家畜の糞が、手に入りにくいのですが」

「その場合は、人糞を使っても構いません」紘一は答えた。

「ただし、よく発酵させてから使ってください」

他の農民たちも、次々と質問した。

紘一は、一つ一つ、丁寧に答えた。

説明会が終わった後、農民たちは、満足そうに帰っていった。

「田邊様の説明は、分かりやすい」

「これなら、俺たちにもできる」

次に、紘一は、新しい作物の導入を試みた。

紘一は、美濃の気候に合った、収穫の多い作物を探していた。

そして、大豆に注目した。

大豆は、栄養価が高く、米との二毛作に適していた。

紘一は、試験的に、いくつかの田んぼで、大豆の栽培を始めた。

春に米を植え、秋に収穫する。

そして、冬に大豆を植える。

これにより、一つの田んぼから、年に二回、収穫できる。

最初の年、試験栽培は、成功した。

大豆の収穫は、良好だった。

紘一は、この結果を、農民たちに報告した。

「大豆の栽培は、成功しました」紘一は言った。

「米だけでなく、大豆も育てれば、収入が増えます」

農民たちは、興味を示した。

「田邊様、大豆は、どうやって売るのですか」

「市場で売れます」紘一は答えた。

「大豆は、味噌や醤油の原料になります」

「需要は、高いです」

農民たちは、納得した。

翌年から、大豆の栽培は、広がっていった。

美濃の農業生産は、着実に増えていった。

秀吉は、紘一の農業改革を見て、感心していた。

「田邊様、見事です」秀吉は言った。

「こうした地道な改革が、国を豊かにするのですね」

紘一は、頷いた。

「はい。派手ではありませんが、確実に効果があります」

秀吉は、紘一の方法を、しっかりと学んでいた。

いつか、自分が領地を治める時に、活かそうと思っていた。


1568年の夏、紘一は教育改革にも着手した。

寺子屋を、再び拡大する計画だった。

平吉が、その責任者になった。

平吉は、まず、教師の育成から始めた。

神崎領の寺子屋に、教師養成課程を、再び設けた。

美濃各地から、優秀な若者を集めた。

約二十名の若者が、集まった。

平吉は、彼らに、一年間、集中的に教育を施した。

教え方、生徒への接し方、教材の作り方。

すべてを、丁寧に教えた。

平吉自身も、長年の経験で、教育の技術を磨いていた。

その経験を、若い教師たちに、伝えた。

平吉は、五十歳を超えていた。

だが、まだまだ現役だった。

教育への情熱は、衰えていなかった。

ある日、紘一は、教師養成課程を訪れた。

平吉が、若い教師たちに、授業をしていた。

「皆さん、教師は、ただ字を教えるだけではありません」平吉は言った。

「生徒の心を育てるのです」

若い教師たちは、真剣に聞いていた。

「字を教えることは、技術です」平吉は続けた。

「ですが、心を育てることは、技術だけではありません」

「愛情が、必要です」

平吉は、自分の経験を語った。

紘一から学んだこと。生徒たちと接してきた経験。

すべてを、率直に話した。

若い教師たちは、平吉の言葉に、感動していた。

紘一は、その光景を見て、満足した。

平吉は、立派な教育者になっていた。

授業が終わった後、紘一は、平吉と話をした。

「平吉、よく頑張っているな」

「田邊さん、ありがとうございます」平吉は嬉しそうだった。

「これも、田邊さんから学んだことを、伝えているだけです」

紘一は、平吉の肩を叩いた。

「いや、お前は、私を超えている」

平吉は、驚いた顔をした。

「そんなことは......」

「本当だ」紘一は断言した。

「お前は、教育の本質を、理解している」

「そして、それを、次の世代に伝えている」

平吉の目に、涙が滲んだ。

「田邊さん......」

一年後、二十名の新しい教師が育った。

彼らは、それぞれの場所で、新しい寺子屋を開いた。

美濃各地に、寺子屋が増えていった。

紘一は、寺子屋を訪問して、様子を確認した。

ある寺子屋では、三十名の生徒が、熱心に学んでいた。

若い教師が、前に立って、字を教えている。

「これは、『人』という字です」教師は、大きく字を書いた。

「皆さんも、書いてみてください」

生徒たちは、筆を持って、紙に字を書き始めた。

紘一は、その光景を見て、満足した。

次の世代が、育っている。

教育の成果が、実を結んでいる。

紘一は、教師に声をかけた。

「よく頑張っていますね」

教師は、驚いて振り返った。

「田邊様」教師は、深く頭を下げた。

「いえ、頭を上げてください」紘一は微笑んだ。

「生徒たちの様子を、見せていただきました」

「皆、熱心に学んでいますね」

「はい」教師は嬉しそうだった。

「生徒たちは、学ぶことが好きです」

紘一は、生徒たちを見た。

「皆さん、勉強は楽しいですか」

生徒たちは、元気よく答えた。

「はい」

「字が読めるようになると、嬉しいです」

「本が読めるようになりたいです」

紘一は、生徒たちの言葉に、感動した。

子供たちの目は、輝いている。

学ぶことの喜びに、満ちている。

「皆さん、これからも、頑張ってください」紘一は励ました。

「はい」

紘一が寺子屋を出る時、一人の少女が、追いかけてきた。

「田邊様」

「どうしたの」

少女は、恥ずかしそうに言った。

「私、将来、先生になりたいです」

紘一は、驚いた。

「先生に、ですか」

「はい」少女の目は、真剣だった。

「私も、田邊様や、うちの先生みたいに、人に教える人になりたいです」

紘一は、少女の頭を撫でた。

「素晴らしい夢ですね」紘一は言った。

「ぜひ、叶えてください」

「頑張ります」

紘一は、少女の姿を見送った。

次の世代が、育っている。

紘一の意志を、継ぐ者たちが、生まれている。

それが、紘一にとって、何より嬉しかった。


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