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お絹との再会—医療の継承

1567年12月、紘一は、お絹を訪ねた。

お絹は、神崎領の診療所で、今も診療を続けていた。

紘一が診療所を訪れると、お絹は嬉しそうに迎えてくれた。

「田邊様、お久しぶりです」お絹の声は、以前より少し老いていた。

お絹は、もう五十二歳になっていた。

だが、まだ現役で、診療を続けていた。

「お絹殿、お元気そうで何よりです」

二人は、診療所の奥で、話をした。

「お絹殿、お願いがあります」紘一は切り出した。

「何でしょうか」

「再び、弟子を育てていただけませんか」紘一は頼んだ。

お絹は、少し考えてから、答えた。

「田邊様、私も、もう年です」お絹の声には、疲れがあった。

「多くの弟子を、育てる体力は、もうありません」

紘一は、お絹の状態を理解した。

「では、せめて、二、三人だけでも」紘一は頼んだ。

「宗安先生の医術を、次の世代に伝えてください」

お絹は、しばらく考えた。

やがて、お絹が答えた。

「分かりました」お絹は頷いた。

「二人なら、育てましょう」

紘一は、感謝した。

「ありがとうございます」

紘一は、すぐに、弟子の候補を探し始めた。

美濃各地で、医療に興味を持つ若者を探した。

そして、二人の若者を見つけた。

一人は、吉田という、二十歳の若者だった。

吉田は、幼い頃、病気で母を亡くしていた。

それ以来、医療に興味を持ち、独学で薬草の知識を学んでいた。

もう一人は、清水という、十八歳の娘だった。

清水は、村で病人の世話をしていた。優しく、献身的な性格だった。

紘一は、二人を、お絹に紹介した。

お絹は、二人と話をした。

「なぜ、医者になりたいのか」お絹は尋ねた。

吉田が、答えた。

「母のような人を、救いたいからです」吉田の声には、決意があった。

「母は、病気で苦しみました。ですが、医者がいませんでした」

「だから、俺が、医者になります」

清水も、答えた。

「村の人々を、助けたいからです」清水の声は、優しかった。

「病気で苦しんでいる人を、見ると、何とかしてあげたいと思います」

お絹は、二人の真剣さに、感心した。

「分かりました」お絹は言った。

「二人を、弟子にしましょう」

こうして、吉田と清水は、お絹の弟子となった。

お絹は、二人に、宗安から受け継いだ医術を、伝え始めた。

薬草の知識、治療の方法、患者への接し方。

すべてを、丁寧に教えた。

紘一は、時々、お絹の診療所を訪れて、様子を確認した。

吉田と清水は、熱心に学んでいた。

お絹の言葉を、一言も聞き逃すまいと、真剣に耳を傾けていた。

ある日、紘一が訪れた時、お絹が言った。

「田邊様、この二人は、良い弟子です」お絹の声には、満足があった。

「それは、良かったです」

「この子たちに、宗安先生の医術を、すべて伝えます」お絹は続けた。

「そして、この子たちが、また次の世代に伝えるでしょう」

お絹は、窓の外を見た。

「医術は、こうして、受け継がれていくのです」

紘一は、お絹の言葉に、深く頷いた。

「はい」

宗安の医術は、お絹を通じて、次の世代に受け継がれていく。

そして、さらに次の世代へ。

それが、医療の継承だった。


1568年の冬、美濃は、完全に織田信長の支配下に入っていた。

斎藤龍興は、伊勢に逃れ、二度と美濃に戻ることはなかった。

美濃の家臣たちは、すべて信長に従った。

美濃の平定は、完成した。

紘一は、岐阜城の天守から、美濃の景色を眺めていた。

冬の景色だった。

雪が、薄く積もっている。

だが、その雪の下では、春の準備が進んでいる。

「美濃は、信長様のものになった」紘一は思った。

「道三様の遺言が、実現した」

紘一の心には、感慨があった。

道三が、長良川で死んでから、十二年。

長い年月だった。

だが、ついに、道三の遺言が実現した。

「道三様、見守っていてください」紘一は、心の中で祈った。

「これから、美濃を、さらに発展させます」

窓の外には、雪が降り続けていた。

静かに、美しく、世界を覆っていく。

新しい時代が、始まろうとしていた。

織田信長の美濃。

そこで、紘一は、再び、人々のために働く。

美濃の復興。

そして、信長の天下統一への支援。

それが、紘一の使命だった。

紘一は、決意を新たにした。

「これから、忙しくなる」

「だが、やり遂げる」

「人々のために」

「平和な世界のために」



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