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【2026年04月10日書籍1巻発売】もふもふ好きのおっさん、異世界の山で魔物と暮らし始める  作者: あろえ
第二章

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第135話:名誉の負傷

 ウサ太の協力を得て(?)、俺はマダラフクロウをテイムしてしまった。


 そのため、飼い主としての責任を果たすべく、マダラフクロウの傷口に癒しの軟膏を塗っていた。


「グレートウルフは鉄の剣を噛み砕くと言われているだけあって、かなり傷口が深いな。痛くないのか?」

「ホォー、ホォホォ」

「こんなものは傷のうちに入らん、という顔だな」

「ホォー」


 当たり前だ、と言っているような気がするので、かなり強気な性格なんだろう。


 本来であれば、群れで行動したり、誰かの下についたりするような魔物ではないのかもしれない。


 そのため、テイムできたことが不思議に思うが……。


「ホォー、ホォー」


 助かった、と言わんばかりに頭を軽く下げる姿は、意外に素直な魔物だった。


 しかし、マダラフクロウに嫌な思い出があるアーリィとクレアは、様子をうかがっている。


「マダラフクロウって、手懐けられるものなのね」

「今までの魔物の中で、鳥さんが一番怖いかも」


 今後のことを考えると、マダラフクロウに対する二人の恐怖心を取り除き、仲良くしてもらいたい。


 そこで、俺は危険がないことをアピールしようと、マダラフクロウの顎をマッサージするようにカキカキしてみる。


「心配しなくても、もう人を襲うことはないと思うぞ。そうだろう? フク助」

「ホォー、ホォー」


 仕方ないな、と言っているような気がするので、問題はないだろう。


「協力に感謝する。今後は討伐依頼が出回らないように、魔物を襲うようにしてくれ」

「ホォー」


 意外にフク助は、撫でられたり、かいたりされることが好きみたいで、すぐにとろけるような表情を浮かべている。


 この姿を見たアーリィたちも、さすがに呆気に取られて、キョトンッとしていた。


「そうしてるところを見ると、ホーンラビットとあまり変わらないのよね」

「うん。大人しくしてるところは可愛……ヒッ」


 フク助が急に目をカッと開いたことで、アーリィたちの評価が振り出しに戻った気がする。


「きゅっ!」

「ホォー……」


 思わず、先輩であるウサ太が注意してくれたみたいだが……。


 肝心の本人にはうまく伝わらなかったみたいで、難しい奴らだ……と、困惑している様子のフク助なのであった。


 ***


 池の周りで依頼の花を採取した後、俺たちは王都方面に向かって、街道を歩いていた。


 さすがにフク助と共に行動するわけにはいかないので、街道に出る前に別れている。


 本人も必要以上に慣れ合うつもりはないみたいで、特に気にした様子を見せなかった。


 山の拠点に戻れば、話は変わってくると思うが……、王都ではウサ太のことで精いっぱいだ。


 しばらくは様子を見て、合流できるタイミングを計ろうと思っている。


 そんなこんなで王都にたどり着くと、ルクレリア公爵の口添えもあり、いとも簡単に門を通ることに成功した。


 門兵さんに怪しまれるどころか、ウサ太を持っていることを確認すると「どうぞ、お通りください」と言われて、ほぼ顔パス状態になっていた。


 おそらく、ホーンラビットのぬいぐるみを持っている男性は通せ、と言われているに違いない。


 よく考えれば、身分を証明するものを持っていないので、ありがたい配慮だった。


 冒険者ギルドに報告に向かうアーリィたちと別れた後、俺はウサ太と共に露店に顔を出す。


 ウサ太とブラッシングの約束をしたため、早急に(くし)を入手しなければならないからだ。


 また機嫌を損ねてしまったら、今度こそ関係を修復する術がない。


 よって、怪しまれることを気にすることなく、ウサ太の櫛を選ぶことにした。


「この高級感のある櫛はどうだ?」

「……」


 ウサ太の頭を軽く押してみても、気に入らないみたいで、鳴くことはない。


「いや、こっちの白い櫛の方が、毛の色とお揃いでいいかもしれないな」

「……」


 やっぱり鳴かない。


「この木のデザインのものもシンプルでいいよなー」

「きゅ~」


 鳴いた。よしっ、これを買おう。


「そうか。これがいいか。じゃあ、これにしようなー」

「きゅ~」

「あっ、すみません。これを一つください」

「……は、はい」


 たとえ、露店の人に怪しい目を向けられようとも、背に腹は代えられない。


 ぬいぐるみに話しかけながら櫛を購入するという前代未聞の痛いオッサンになった自覚はあるが、その事実を受け入れよう。


 ウサ太が魔物と気づかれるわけにはいかないのだから。


 これは名誉の負傷だったな……と思いながら、俺はルクレリア家の屋敷に戻っていくのであった。

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