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【2026年04月10日書籍1巻発売】もふもふ好きのおっさん、異世界の山で魔物と暮らし始める  作者: あろえ
第二章

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第134話:マダラフクロウ

 森の奥から一匹のフクロウみたいな魔物が空を飛び、こっちに近づいてきた。


 茶色い毛並みと赤い瞳が印象的で、ウサ太よりも一回り大きく、大きな翼を広げている。


 脚には鋭い爪があるものの、負傷していて痛々しい状態だった。


 しかし、取り乱した様子を見せることがないフクロウは、風格のような雰囲気を放っていて、勇ましい。


 傷を負ったから逃げたのではなく、戦いやすい場所に移動したような印象を受ける。


 その相手となっているのは、森の方から出てくる三体のグレートウルフだ。


「ガルルルル」


 一匹のグレートウルフの口に血が付着しているので、フクロウを狩ろうとしているんだろう。


 もしも森の中にフクロウがいなかったら、グレートウルフに強襲されていたのは、俺たちだったのかもしれない。


 そんなことを考えていると、魔物たちと三すくみの状態になったこともあって、アーリィは顔をしかめていた。


「運がないわね……。グレートウルフだけならともかく、マダラフクロウまでいるだなんて」

「マダラフクロウ、か。初めて見る魔物だな」

「山の中で暮らしているとは思えない人の発言ね。マダラフクロウなんて、グレートウルフよりも厄介な魔物よ。一度被害を確認したら、冒険者ギルドが緊急依頼を発するほど危険なんだから」


 密かに、カッコイイ魔物だな……と思っていただけに、とても残念な情報である。


 手懐けたい気持ちはあるが、



 危険視されている魔物を手懐けようとするほど、俺は馬鹿じゃない。だとわかっているなら、このタイミングで『手懐けたい』とは、さすがに言うことができない。


 ウサ太の硬化スキルが突破されるとは思えないが、アーリィやクレアがいる以上、無茶なことはできなかった。


「そんな危険な魔物に怪我を負わせるなんて、やっぱりグレートウルフはただものじゃないんだな」

「まだ日が暮れていないことも影響しているんだと思うわ。マダラフクロウは、夜の闇に紛れて襲撃してくる魔物で、死神と呼ばれているの」

「夜行性、ということか。じゃあ、居眠りしているところを襲われたのかもしれないな」


 アーリィの言葉を聞いたクレアが、何かを思い出したかのようにハッとする。


「ねえ、アーリィ。あのフクロウって、金貨がいっぱいもらえるやつ?」

「そうよ。一度、私たちも襲われたことがあるから覚えてるでしょう? クレアの魔法が暴走して、偶然討ち取ったやつよ」

「うえ……。夜中にテントが壊されて、全然眠れなかったやつだ」


 クレアが渋い顔をするくらいだから、相当嫌な思い出があるんだろう。


 金貨をいっぱいもらえたというエピソードではなく、夜中にテントが破壊された方が印象に残っているみたいだった。


 しかし、そんな悪名高い体験していない俺は、マダラフクロウの太々しい態度が気に入っている。


 先ほどからグレートウルフが唸り声をあげているにもかかわらず、空から見下ろすばかりで、まるで相手にしていない。


 威嚇に怯える様子はなく、軽く聞き流しているように思える。


 むしろ、マダラフクロウはウサ太の方が気になるのか、こっちに視線を向けていた。


「きゅー……?」

「ホォー、ホォー」

「きゅー。きゅっ」

「ホォー」

「きゅーっ!」


 わからない。何を話しているのか、サッパリわからない。


 ただ、唯一確かなことがあるとすれば――。


「きゅーっ!!」


 グレートウルフに突進するウサ太は、マダラフクロウ側についたということだけだった。


 どごーんっ!


 これで三すくみの状態が解除されたわけだが、俺たちは不用意に動くことができない。


 しかし、取引をしたであろうマダラフクロウは急降下し、鋭い爪を持った脚でグレートウルフに襲い掛かる。


 ザシュッ!


 どうやらマダラフクロウはスキルを用いたらしい。


 僅かに死神が持つような鎌が見えたと思ったら、その爪よりも大きな傷跡がグレートウルフの身に刻まれていた。


 敵の命を刈り取る姿は、まさに死神と呼ばれるに相応しい。


 一瞬の出来事とはいえ、俺はその強さに目を奪われていた。


 急な展開に動揺した残り一体のグレートウルフが逃げようとするものの、そんなことが許されるはずもなく……。


 ザシュッ!


 背を向けた瞬間にマダラフクロウの爪の餌食になり、あっという間に戦闘が終わってしまった。


 その光景を見守ることしかできなかった俺たちは、呆気に取られている。


「確かに、これは死神と呼ばれてもおかしくないほどの強さだな」

「まだ明かりで姿が見える分だけいいわよ。夜分に襲撃してくる時は、暗闇で姿がわからないんだからね」

「あの時は本当に怖かったもんね……」


 呑気な感想を漏らしていると、マダラフクロウが地面に降り立つ。


 すると、そこにバーベナの花を採取してきたウサ太が近づき、それを差し出していた。


 バーベナの花を受け取ったマダラフクロウは、それをクチバシでつまみ、モグモグと食べ始める。


「ホォー、ホォー」

「きゅーう」


 今の会話は、さすがにわかる気がした。


 すまないな、と口にしたマダラフクロウに対して、気にするな、とウサ太が言っただけだ。……たぶん。


 錬金術の素材になるくらいだから、魔物が回復薬代わりに食べても、不思議なことではない。


 特にマダラフクロウの特性として、日があるうちは弱体化し、魔力を多量に消費することになるので……。


 突然、マダラフクロウの詳しい情報が頭の中に思い浮かんだことで、俺は恐る恐るウサ太の方を確認する。


「きゅっ」


 やってやったぜ、と言わんばかりのウサ太のどや顔を見て、俺はアーリィとクレアに真顔を向けた。


「何を言っているかわからないと思うが、落ち着いて聞いてくれ。どうやらマダラフクロウが仲間になったみたいだ」


 ウサ太が勝手にテイムするパターンもあるんだなーと思いながら、俺は二人のポカンッとした顔を眺めるのであった。

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