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【2026年04月10日書籍1巻発売】もふもふ好きのおっさん、異世界の山で魔物と暮らし始める  作者: あろえ
第二章

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第133話:依頼の花

 拗ねたウサ太が動かなくなってしまったので、俺は必死に機嫌を取っていた。


「ほらっ、ウサ太の大好きなニンジンだぞ~」

「きゅ~……」


 先ほどからこんな調子で、餌をあげても食いついてこない。


 抱っこしてやろうと持ち上げても、ひょいっと腕から抜け出して、すぐにムスッとするだけだった。


 どうすればいいんだろうか……と思い、今までの生活を思い返してみると、一つだけ良さそうな方法を思いつく。


「そういえば、ウサ太の毛並みもシャンプーで綺麗になったよな。ここからブラッシングしたら、ニャン吉のような毛並みになるんじゃないか?」

「……きゅ?」


 よしよしっ、ブラッシングに興味を持ち始めたぞ。


 やっぱりウサ太は、新しいことや毛並みを整えることに興味があるみたいだ。


「山で過ごしてばかりだと、シャンプーで汚れを落としたとしても、毛玉や埃までは取りにくい。ツヤのある毛並みを目指すなら、ブラッシングで綺麗に整えるべきだと思うんだよな」

「きゅ、きゅ~……!」

「ちょうど王都に来たところだし、ブラッシングに必要な櫛を買いたいんだが……。ウサ太が機嫌を直してくれないとなー」

「きゅーっ! きゅーっ!」


 勢いよく走り回るウサ太の姿を見れば、交渉成立と判断しても間違いない。


 これからブラッシングする習慣を求められそうだが、それくらいのことであれば、付き合ってやるのもいいだろう。


 ただ、ウサ太の機嫌を取るのに時間がかかったこともあって、アーリィに呆れたような表情を向けられていた。


「どっちが飼い主なのかわからないわね」


 アーリィとクレアは、どっちが大人か子供かわからないので、お互い様だと思うが。


 そんなこんなで冒険者ギルドで受けた依頼を再開して、クレアに案内してもらっていると、すぐに小さな池がある場所にたどり着く。


 興味本位で池を覗き込んでみるものの、水深は浅く、魔物や魚がいる気配はなかった。


「トオル、見てみて! あれが依頼の花だよっ」

「きゅーっ!」


 池から少し離れた場所にある白い花の元へ、クレアとウサ太は勢いよく駆けていった。


 初めて訪れる場所なので、安全そうに見えても、注意してほしい気持ちはある。


 ただ、アーリィが神経を研ぎ澄ませている姿を見る限り、役割分担をして依頼を受けているみたいだった。


 俺と出会うまでは、こうやって二人で依頼をこなしていたのかもしれない。


「きゅーっ! きゅーっ!」


 スッカリご機嫌になったウサ太が騒いでいるので、俺はクレアの方に向かうことにした。


「依頼で採取する花は、クレアが言っていた通りの綺麗な植物だな」

「うん。依頼書には、根っこから丁寧に採取することって書いてあったよ」

「それじゃあ、丸ごと錬金術の素材になるのかもしれない。拠点で植えたとしても、採取するのは難しそうだな」

「蜂さんに怒られちゃうかもね。じゃあ、ここで花を採取することは内緒だよ?」

「わかった。ウサ太も言わないでやってくれ」

「きゅー!」


 なんだか悪いことをしているような背徳感を覚えながら、俺たちは依頼に必要な花を採取する。


 ただ、冒険者でもない俺が必要以上に手伝うべきではない。


 そのため、クレアの代わりに種を採っていくことにした。


 これが軍隊蜂の土産というのも、ちょっぴり質素なように感じるが、きっと彼らは喜んでくれるだろう。


 最近、俺は花の管理にあまり携わっていなかったから、この機会に種から栽培するのもいいかもしれない。


「そういえば、魔法の練習で使っていた軍隊蜂の蜂蜜はどうなったんだ? ハニードロップになったのか?」

「うーん、普通のものよりドロッとしてるような感じかな。頑張ってるんだけど、なかなか上手くいかないんだよね」

「言うのは簡単でも、実際にやってみると難しいことって多いからな」

「でも、少しずつコツをつかんできたから、拠点に帰るまでにはハニードロップにするんだー。それでね、蜂さんにプレゼントするの」


 またもやクレアの清らかな心に触れてしまったな……と思っていると、突然、森の奥の方で大きな音が聞こえてきた。


 ガサッ!


 ウサ太もビクッと反応して、音が聞こえてきた方をジーッと見つめている。


「ト、トオル……」

「大丈夫だ。ウサ太も様子を見ているから、すぐに危険な状態に陥ることはないだろう」


 実際に、あれだけ大きな音を立てたにもかかわらず、何かが近づいているような様子は見られない。


 俺たちが狙われたり、存在を嗅ぎつけられたりしたわけではなさそうだった。


 アーリィも落ち着いた様子で、周囲を警戒しながら近づいてくる。


「何か音がしたわね。魔物がいるかもしれないから、様子を見てくるわ」

「きゅっ」

「ん? 一緒に来たいの?」

「きゅー!」

「うーん……。守りが手薄になることを考えたら、ここに残ってもらった方がありがたいんだけど」


 そんなアーリィとウサ太のやり取りを聞いていると――。


 ガサッ! ガサガサッ!


 今度は森の奥の方で、しっかりと葉が揺れるところを確認することができた。


「様子を見に行かなくても、何かいるのは間違いないな」

「私の経験からすると、魔物同士で争っている線が濃厚ね」

「冒険者ギルドの事前情報では、このあたりに住むウルフが突然変異を起こしたんだったな」

「ええ。その影響を受けて、勢力争いが活発化しているんだと思うわ。数が多いと厄介だから、ひとまず街道まで避難――」


 そう言いかけたアーリィは、すべての言葉を発する前に剣を抜いていた。


 すると、一匹のフクロウみたいな魔物が空を飛び、こっちに近づいてくる。

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