第129話:森の探索Ⅱ
ウサ太が警戒した方に近づいていくと、開けた場所にたどり着く。
そこには、騎士の格好をした人が男女合わせて二十人ほど立っているだけでなく、一人の淑やかな女性が地面に座り込んでいた。
近くには豪勢な馬車が置いてあるので、休息を取っているように見えなくはないが、あまり良い状況とは思えない。
桃色の髪を肩まで伸ばした淑やかな女性は、気分が良くないみたいで、うつむいたまま胸を押さえている。
「馬車酔いしているみたいだな」
「そうね。護衛騎士の数が多いから、あまり関わらない方が良いと思うわ」
「うん……。なんだか空気が悪そうな感じだね。喧嘩でもしてるのかなあ」
木々に隠れながら様子をうかがっていると、一人の騎士が俺たちの存在に気づき、こちらを睨みつけてくる。
騎士の中でも屈強な体つきをしている茶髪の男性で、俺と同い年ぐらいのオッサンだった。
「誰だ!」
警戒した騎士たちが一斉に剣に手をかける姿を見る限り、面倒くさいことになりそうな気がした。
だから言ったのに……と、アーリィが大きなため息を吐くが、見つかってしまったものは仕方ない。
「ウサ太は出てくるなよ。話がややこしくなりかねないからな」
「きゅっ」
ウサ太の存在が気づかれないように、俺たちは潔く姿を見せることにした。
「どうもすみません。騎士の方が大勢いらしたので、委縮してしまって、様子をうかがっていました」
「怪しいな。善良な人間や普通の冒険者であれば、騎士に対して警戒する必要などあるまい。何か良からぬことでも考えていたのか?」
はい、魔物を隠しています……などと、口が滑っても言うことはできない。
そのため、警戒を続ける屈強な騎士には申し訳ないが、言いがかりをつけて誤魔化すことにした。
「失礼ながら、妙に殺伐としているというか、重苦しい雰囲気に見えたので、大きな事件でも起きたのかなと。妙なことに巻き込まれる前に退散しよう……と考えていたところ、見つかってしまった次第です」
「なるほどな……。こちら側が神経質になっていると言われると、強く言い返すことはできないか」
クレアの方をチラッと見た屈強な騎士は、子供に弱いのか、口をもごつかせている。
「アーリィ……」
「心配しなくても大丈夫よ」
先ほど彼は『善良な人間や普通の冒険者であれば、警戒する必要などあるまい』と口にした。
しかし、子供のクレアを怖がらせているのは、その騎士たちである。
急に大勢の騎士たちに疑いの目を向けられたら、クレアのような子供が涙目を浮かべてもおかしくなかった。
そのことが功を奏したのか、屈強な騎士は手で合図を送り、仲間たちと共に警戒を解いてくれる。
「俺は、リーフレリア王国の第二騎士団団長を務める伯爵家のハリード・ルンデモンドだ。長年、王家に仕えてきた武家の家系の人間でもある」
王都周辺とはいえ、いきなり貴族出身の騎士団長に目をつけられるなんて、堪ったものではない。
ルクレリア家のメンツもあるので、事を荒立てることは避けたかった。
「私はトオルと申します」
「トオルだな。どうやら君たちは、冒険者……と、その依頼主みたいだな。現地に直接出かけて共に素材を採取している、といったところか」
俺は依頼主ではないが、細かいことを説明することはできないので、そういうことにしておこう。
木々にウサ太が隠れている以上、できるだけ早くこの場を乗り切り、穏便に解決したかった。
しかし、どこかで見たことがあるような紫色の髪をした騎士の青年が近づいてくると、状況が振り出しに戻ってしまう。
「俺は第二騎士団の副団長を務める公爵家のウォリック・パルメシアだ。悪いが、貴様たちを拘束する」
「待て。俺の指示を見ていたのか? 警戒レベルを落とすように指示を出したはずだぞ」
「グレートウルフが現れるような危険な場所に、オッサンと子供を連れてくるなどありえない。怪しい輩には違いないため、ここは捕らえるべきだ」
そう言って警戒心を強めた紫髪の騎士が剣を抜くが――。
「好戦的になるな、ウォリック」
「様子を見すぎるのは、ハリード団長の悪い癖だ」
ハリードさんが制してくれて、ウォリックさんは動きを止めた。
最初こそ警戒されていたが、ハリードさんは話がわかる人みたいだな。




