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【2026年04月10日書籍1巻発売】もふもふ好きのおっさん、異世界の山で魔物と暮らし始める  作者: あろえ
第二章

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第124話:王都までの旅路Ⅵ

 再び王都に向かって歩き進めていくと、夕暮れ時になったことで、本日の旅は終わりを告げる。


 見晴らしの良い場所で馬車を停めて、それぞれ役割分担をして、野営の準備を進めることになった。


 ルクレリア親子とロベルトさんでテントを張り、アーリィとクレアで食材を調達して、俺とウサ太で焚火に必要な素材を集める。


 今回は異世界に訪れた頃のような無謀なサバイバルではなく、本格的な野営になることもあり、キャンプみたいな雰囲気に近かった。


 そんなことに懐かしさを覚えながら作業していると、あっという間に時間は流れて、夜がやってくる。


 月明かりと焚火に照らされる中、アーリィがスープを作り終えると、ようやく夜ごはんにありつけることができた。


「うん。これでバッチリね」


 前回の軍隊蜂の縄張り調査の時は、アーリィがキノコスープを作ってくれたが、今回はまた違うものだ。


 仕留めてきたばかりのウィンドバードと呼ばれる鳥の魔物と、ほうれん草のような野草を使ったシンプルなスープを作ってくれた。


 すでに鶏ガラの良い香りが漂っているので、期待させてもらうとしよう。 


「私は器にスープを盛りつけていくから、トオルはパンを配ってもらってもいい?」

「ああ、わかった。初日から飛ばしすぎなような気もするが、アレも出すとするか」

「いいと思うわ。焼いてきたパンが食べられるうちに使うべきね」


 アーリィからの後押しもあり、俺はマジックバッグの中からあるものを取り出した。


「ジャムパンなんて、久しぶりだな」


 拠点で焼いてきた甘みのあるミルクパンと、トレントの果実を使ったリンゴのジャムを合わせただけのもの。


 日本の感覚だと、単調な料理のように思うが……。


 異世界ではジャムが珍しく、露店やパン屋で販売されているところは見たことがない。


 スキルで自作して、ようやく食べられることを考えると、感慨深い思いで胸がいっぱいだった。


 それを失礼がないようにルクレリア公爵から順番に配っていくと、苦笑いを浮かべられてしまう。


「トオルくんがいると、王都までの道のりも優雅な旅に変わるものだな。接待を受けているのかと、勘違いしてしまいそうだよ」

「そう思っていただけて、何よりです。これで心置きなく、王都でもウサ太のことをお願いできますから」

「はっはっは、今さらだな。トオルくんと良好な関係を築く方が、ルクレリア家にとっても、リーフレリア王国にとっても利益が大きい。多少のことは目をつむるよ」


 アーリィがスープを器をよそい、慎重に配る中、ルクレリア家の面々は早くもジャムパンを口にしている。


「しっかりと果肉の食感と甘みがあり、パンとの相性もいい。砂糖を使っていても、リンゴの酸味がちゃんと味を引き締めてくれているな」

「そうですね。王都のカフェでいただいたことがあるリンゴのパンケーキと雰囲気が似ているような気がします」

「いやはや、これはなかなか面白い食感ですな。普通のジャムとは違い、トレントの果実で作られたものは、しっかりと果物を食べているような食感がありますぞ」


 まさかたった一つのジャムで、これほど貴族の舌を唸らせるとは……。


 おいしい果物だと認識していたが、トレントの果実の潜在能力の高さに驚きを隠せなかった。


 ルクレリア家が新商品の試食会のような雰囲気を放つ一方、クレアとウサ太は純粋に食事を楽しんでいる。


「ジャ~ムパンッ♪ ジャ~ムパンッ♪」

「きゅ~っ♪ きゅ~っ♪」

「んん~っ! おいしい~!」

「きゅ~んっ!」


 平和って、いいよな。俺はこっちの緩い雰囲気に混ざって食事したいよ。


 そんなことを考えながら、アーリィからスープを受け取った俺は、それを口にした。


 鶏ガラと岩塩を組み合わせたスープは、シンプルながらも深い味わいをもたらしてくれる。


 弾力のある鶏肉からもしっかりと旨味を感じるし、野草もやっぱりほうれん草だったみたいで、優しさを引き立ててくれるような味わいだった。


「この短時間の間で、よくこれだけおいしい出汁が取れたな」

「ウィンドバードは、煮込み料理やスープに向いている食材なの。焚火の火力が強い分、出汁も取りやすかったわ」


 あたかも簡単に作れたような物言いだが、それを口にしたアーリィはご満悦の様子だ。


 満面の笑みをこぼしながら、相変わらずおいしそうに食べ進めている。


「むふふふっ」


 そんなアーリィが自分の世界に浸り始める頃、本人の知らないところで評価が上がっていた。 


「調理のできる冒険者が護衛依頼を受けてくれるのは、嬉しい誤算だな」

「長距離移動の苦痛が和らぎますし、非常時でも頼りになりますからね」

「アーリィさんは、戦闘にも長けていますぞ。あの若さで玄人のように落ち着いて戦われますからな」


 今後はアーリィも忙しくなりそうだなーと思いながら、俺はジャムパンを口にする。


「うおっ……! トレントの果実を凝縮したみたいで、味わい深いな。これはミルクパンにして正解だったわ」


 しっかりと準備してきただけあって、旅の食事に大満足するのであった。

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