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金魚戦記  作者: 悠布
3章 南橘北枳
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70話 メタリック・スライミー

 ウラリーに「オリハルコンを用意せよ」と言われた俺は仲間たちと共に、とある雪原へと来ていた。

 サトリ、ガル、イズナ、レイラ、オライの全員出動である。

 

 どうしてそんな事になっているかと言うと、オリハルコンの特殊な採取方法によるものだ。

 三大魔法金属の中でも「最も硬く美しい」といわれるこの金属は、「メタリック・スライミー」という魔物が時折落とす、小さなコインから生成される。

 

 だがこの魔物、非常に硬くて素早い。

 ただでさえ倒すのが難しいのに、すぐに逃げ出す臆病なモンスターなのだ。


 ゆえに効率的に狩るには、挟み討ちと人海戦術しかない。

 かと言ってその労力が全て無駄になるわけではなく、この魔物を狩れば狩るほど、その者の戦闘技術が向上していくと言われている。要は、経験を積めるということだ。

 だから皆、事情を話したら喜んでついてきた。


 現在俺たちは全員、サングラスを着用している。

 雪の反射が目に眩しい上に、銀色に光るスライミーたちがもっと眩しいからだ。


 

 黒いレンズ越しに、雪原を眺める。


 丸い形のスライミー、潰れてドロドロしたスライミー、それらが集合して超巨大になったスライミーの3種類が生息しているようだ。


「あのでっかいスライミーを倒せば、一度に何枚もコインを落としたりするのかな?」

「メタリック・エンペラー(皇帝)のことだね。

 あれも1枚だけど、他の2種類よりは落とす確率が高いらしいよ」


 異様にグラサンが似合うガルが教えてくれた。

 彼が本来の巨大な姿になれば超有利だろうに、サングラスを掛けたいらしく、人化を解いてくれない。

 見た目がおもしろ過ぎるから、全然良いんだけどね。


「作戦はどうします?」

「うーん...まだスライミー達の動きがよく分からないから、とりあえず暫く各自で相手の特徴でも掴むか」

「了解ある!」


 いきなり大規模な包囲網を敷いても失敗しそうなので、それぞれで敵に慣れることにした。


 

 まず俺は、基本的な丸いスライミーに狙いを定め――(コア)との接続を断とうとした。

 しかし、銀色の魂の表面を「ツルッ」と滑って失敗した感覚が残る。


「即死系の特技は効かないか...」


 次に、チャクラムを一斉に放つ。

 アダマンタイトの武器複数を同時にぶつけるのは、効果的だった。

 数枚をひらりひらりと躱しつつ、残りの3枚のうち2枚が、どうやらダメージを与えたようだったのだ。


 キン、キン! という金属音と共に、スライミーからショックを受けた思念をキャッチする。

 相手は俺をちらりと見ると、構えた。

 反撃に出るのかと思いきや―――雪の上を滑るように、超高速で逃げ出す。


 慌てて飛んで追ったが、敵はジグザグと急な方向転換を繰り返し、あまりにも素早い動きに次の進路の思考さえ読めない。

 ヤツが逃げた方向に運良くもサトリが居るのを発見し、叫ぶ。


「サトリ! そこの丸い、慌てた感情のヤツ!

 あと少しで倒せそうな気がするから、頼む!」

「わ、わかったわ!」


 彼女がほんの一瞬だけ、時を止めるのが感じられた。

 

 時間が再び流れ出した時には、サトリがスライミーの元に移動していて、真っ赤な爪を突き刺して止めを刺した後だった。

 すげぇ。


「ありがとう、流石だメタリックキラー!」

「変なあだ名つけないでよね!」


 誉め言葉でっせ。



 しばらくして他の者もスライミーの動きに慣れたようなので、集合して作戦を練る。


「コイン、どうだった?」

「丸いのは1割、ドロドロは2割、エンペラーは4、5割の確率ってところかなぁ...」

「丸いのしか倒せてないけど、ワタシも体感的にはそんな感じだったある」

「僕はドロドロ、3割くらいだったかな」

「いやぁ、丸いのかわいいですねー。ペットにしたい...」

「ドロドロね、あれ実はエンペラーの迷子みたいよ」


 なんという優秀な仲間たち。情報の宝庫だ。


「やっぱ、狩るならエンペラー狙いだな。余裕があればドロドロ迷子もほしいけど」

「大規模結界に閉じ込めて、徐々に範囲を狭めていくのがいいわね」


 話し合った結果、作戦が決まった。


 スライミー達には物理攻撃が効かないことが判明したので、レイラとサトリはほぼ戦力外。

 やはり狩りには暗殺系のイズナが一番向いていて、次いでチャクラムを操る俺、それから太刀のガル、弓のオライという戦力順だった。


 結界を狭めて追い詰めるには四角より三角形が優れているので、サトリ、レイラ、オライが各頂点にて結界を張り、その中で俺、イズナ、ガルが地道に狩りまくる運びとなった。


 最初に、彼らを一か所に集めなければならない。

 それに使われるオトリは―――俺だ。


 メタリック・スライミー達は「鮮やかな色の光るモノ」が大好物だという。

 生き物でも宝石でも何でも食べるくせに、地味なものには見向きもしないらしいのだ。どんな原理と胃袋だよ!

 だが魔物なので、多少奇妙でも納得するしかない。


 

 小高い丘の上に立ち、仲間が配置に着いたのを確認すると、タイミングを計って人化を解く。

 サングラスがなくなって非常に眩しい。

 

 白銀に輝く雪原に突如出現した、(きら)めく深紅の丸いなにか(・・・)

 それを見たスライミー達の目の色が変わり、一斉に突撃してくる。


 おお、壮観なり。

 進撃のスライミーもりもり。


 一番スピードが速いのが、メタリック・エンペラーだ。次いで、ドロドロ迷子メタリック。


 全てのエンペラーが指定の範囲内に入ったところで、待機していた3人が結界を閉じた。

 スライミー達は驚いてパニックになり、(エサ)のことも忘れて走り回る。

 そんな彼らに背後から音もなく迫る、二人のグラサン青年。どんな光景だよ。


 ガルは着実に1匹ずつエンペラーのみを狙い、イズナは手当たり次第に手裏剣や短剣を投げつけている。


 よし、俺もやるか。


 折角なので金魚のまま、チャクラムをぶっ放した―――。



       ◇



 狩りが終わり、手に入ったコインは合計100枚を超える。

 これだけあれば俺の新しい魔道具だけじゃなくて、ウラリーの研究用にも結構使えるんじゃないだろうか。


 全員、短時間で一気に戦闘経験を積んだせいか、心なしか色々と能力がアップしたように感じられる。

 気のせいかもしれないが。


 

 さて帰ろうか―――というところで。

 一番後ろを飛んでいた俺は、圧倒的な気配を感じて凍り付いた。

 前を行く仲間たちは、気付かずに歩き続けている。


 ゆっくりと振り返ると、先程まで狩りをしていた丘の頂上に、1匹のスライミーのようなシルエットがあった。

 逆光でよく見えないが、青みがかった神々しい銀色をしているようだ。

 まろやかな美しい丸型のボディからは、王者の風格を持つ覇気が放たれている。


 ヤバい。あいつは...やばい。

 有り得ない程の膨大な魔力を保有しているくせにそれをピタリと抑え込み、人畜無害なフリをしている。

 

 この雪原のスライミー達の主か?

 だとしても、今姿を現したのは何故だ?


 ()が、フッと笑った気がした。

 そして唐突に―――雪原に散らばったスライミーたちの死体が、全て、一瞬にして消え去った(・・・・・)

 

 だが俺は見逃さなかった。

 沢山の銀色たちが皆、このヤバいスライミーの元へと吸い込まれていったのを。

 

「く―――喰った、のか...?」


 呆然と呟き、動揺して一瞬目を逸らした後に視線を戻すと―――

 もう()は、居なかった。



       ◇



 ウラリーの元へとコインを届けると、普通にぶっ倒れられた。


「お……おおお多すぎますぅぅぅ...。

 一体、何匹のスライミーを倒したので?」

「覚えてないな」

「そ―――そりゃそうでしょうとも! これだけあれば――

 一部だけではなく、魔道具本体全てに使えますね」


 それを聞いて驚いた。


「一部にしか使わない予定だったのか?」

「当然です。1枚のコインから生成できるオリハルコンは、その十分の一以下の量しかありません。

 ですが...」


 ウラリーはもう一度、コインを見た。


「サークレットにするには、ギリギリ…少し足りないかもしれませんねぇ…」

「それなんだけどさ。今度は片眼鏡(モノクル)に出来ないか?」


 片目は、普通の景色を見て常時思考を読む。

 もう片目は、思考は抑えて魔力と魂を視たい。


 そう伝えると、彼女は...燃えた。メラメラと。


「い...良いかもしれません! やってみましょう!

 当然―――」


 ウラリーが恐る恐るこちらを窺うので、ニヤリと笑む。


「ああ。レンズの部分を、ダイヤモンド魔石にするんだろう?

 大丈夫だ。むしろモノクルを敵に狙わせようと思ってな」


 へき(かい)を破壊してしまえば、ダイヤモンドに弱点は無い。その上、フレームはオリハルコン。

 それを知らない敵が俺を直接狙ったら、まずは眼鏡を壊しにかかってくると思うのだ。

 メガネを吹っ飛ばされると、弱体化しそうじゃん?


 言うと、彼女はフフフフフ……と不気味に笑いだした。


「わかりました。反撃―――カウンター機能をつけてみせます。

 フフフ……フッフフフ……!」


 頼もしい。実に楽しみだ。




 しばらくして片眼鏡(モノクル)が出来上がるのと同時に、レイラ御用達のドワーフの防具屋で注文していた、俺の新衣装が仕上がった。


 受け取ったのは、漆黒の鎧セット。

 細かい紋様の彫り込まれた籠手と腕当て・脛当て、薄めの胸当てと腰当て。そして唯一真っ赤な、首飾りのような首鎧。

 どれも単体で装着可能な、軽い見た目をしている。

 留め金は全て銀色の金属で統一され、なんともまぁ―――麗しい。


 それらと同時に着る、薄い(しゃ)のような布地の、ゆったりとした服もつけてもらっていた。


「な...なんか、すっげぇ格好いいな...。

 舞台役者か?」

悪役(・・)なんだろ? 見た目は大事だ。

 素材だって負けていないぞ、ミスリルとアダマンタイトの合成金属だ」

「え!?」


 なんですと。


「おめぇ自体がカチコチだったからな。それより柔らかい素材じゃ意味ねぇだろ」

「そ、それはそうだが...このデザイン、どういうキャラとして振舞えば...」


 色は黒だが、救世主(ヒーロー)と名乗っても納得されてしまいそうな端麗さである。

 困惑していると、店主は大口を開けて盛大に笑い、のたまった。



「言っただろ?

 ―――スマートで、ダークにやるんだよ。頑張りやがれ」

リ○ル様じゃ…ありませんよ……(汗)(゜゜)


筆がノッただけです…。

本当にヤバい奴は、表舞台に出てこないんですよねー(棒)

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