31話 出発
次話から、また試しに少しタイトル変更します。
…その際は、ご協力いただければ幸いです。
なんだって。
「悪魔が、人に俺を召喚させた?」
「これは推測でしかないけどね。
魔族や獣人、人間など...「ヒト」が、神を殺めるなどという発想をするのは、あり得なくはない。
だが、彼らが自発的にそれを思いつくよりも、悪魔に吹き込まれた可能性の方が高いと思う」
ガルが一言一言、慎重に口に出す。
ケヴィンやウラリーが?
いや...その上の者か。
「以前、悪魔たちが突然バハムートを支持し始めた理由はわからない。
争いの結果、私たちが勝利し、バハムートは遥か北東の...エーギルよりもずっと先の海底に封印された。
悪魔も力を消耗し、ずっと魔界で大人しくしていたのだけれど...復活してきたようだ」
パレンシアでバハムートを見た時も、北東から飛んできたな。
...あれでもまだ本調子じゃなかったのだろうか。
「悪魔が元気になってきたとして、神を罠に嵌めたりできるのか?」
聞くと、ガルは眉をひそめて小さく首を振った。
「普通なら無理だ。現在の神...「フェンリル」は強いし、神の役職に就く間はさらなる力を得る。
余程の事が起きても、自分一人で対処可能なはずなんだ。
悪魔が大挙して押し寄せてきても何とかしてしまうくらいには。」
「現神はフェンリルじゃったか。アルゴスにも来たことがあるのぅ。
奴がまだ暴れまわっていた頃じゃな。いやはや懐かしい」
爺さん、神も知っているのか。しかし、暴れるとは一体...
「とにかく、「何か」があった。それを見抜くために、コダマ爺さんを連れていくという当初の予定は変わらない。
当面の問題は...エーギルだ」
ん、あいつのこと今思い出した。
「ガル。ロルカにケヴィンを待たせてるんだが、どうしようか」
「そうだね...とりあえず戻り、彼からできるだけ召喚プロジェクトの発案者や魔族の事を聞き出してほしい。
今回の侵攻の事、それに悪魔が絡んでいることは言ってもいいのだけれど...問題は...」
「ああ。ケヴィンのすぐ上の者にまで悪魔の手が及んでいた場合だな。
こちらの事を悟られ、あいつに危険が迫るかもしれない」
うーん、と頭を抱える中、いつの間にか人化していたサトリが言った。
「本来の予定は、ケヴィンと一緒に魔大陸に渡って、用意を整えた後に神の元へ行くことでしょ?
彼に詳細を話さなくても、私たちが魔大陸でコッソリ情報収集すればいいじゃない」
「その手があったか!」
そうだ、そうしよ。
あ...でも。
「向こうに行くと、エーギルの件が...」
「それなんじゃよの...今この国から、ベニ坊の戦力が外れると辛いじゃろう」
「行っておいでと送り出したいところなんだけどね...」
いつエーギルが再び攻めてくるかわからないのだ。
俺みたいな魔力バカは、一人でも多く居た方がいいだろう。
というか、ガルが張る結界があるのなら、先にそれを何とかしないと、俺を神の元に行かせても殺せないよな。
なら、絶対エーギルが先に攻めてくるじゃん。
「そういや、この世界に携帯電話...遠くの者とリアルタイムで通信できる装置はないのか?」
スマホは無いだろうが、似たようなものがあれば遠くにいても瞬時に転移で駆け付けられる。
そう考えて問いかけると、ガルが何か思いついたようだ。
「それは無いけれど、魔石通信という手があった」
聞くと、魔石通信とは、
一つの上位魔石を綺麗に二つに割り、片方に魔力を流すともう片方にも反応が出る、というものだそうだ。
何種類もの片割れの石を手元に持っていれば、携帯電話と同じようなことが出来るらしい。
もっとも、事前に決めた内容しか伝わらないのだが。
結局、瓦礫の下から掘り起こした大量の通信用魔石を持って、俺たちはケヴィンと魔大陸に行くことになった。
収納魔法で亜空間にしまい込むと魔力が伝わらないから、全て手持ちである。
赤色魔石は「直ちに帰還」黄色は「今戻るな」青色は「現在平和」緑色は「問題発生だが作戦続行」など...
実に10種類以上の石をぶら下げて、龍宮城跡からロルカに転移した。
白桔梗亭に向かう最中、また狼に戻っているサトリ。
コダ爺は普通の人には見えないから、翼のある仔狼を連れた俺一人が歩いているように見えているはずだ。
ただでさえ注目を集めるのに、時々会話をしているせいで、凄く変な目で見られる。
あー、もういっそ「ジャスパー」になってやろうかな。……冗談だが。
「なあサトリ。街中にいる時くらい、人化していてくれよ。
コダ爺も巨大化して姿を現してくれるとさらに助かるんだが」
「...しょうがないわね。狼の方が慣れてるから楽だけど、まぁいいわ」
「ワシは嫌じゃよ。自分で歩きとうない。年寄りを労われ」
サトリは人化してくれた。
...大通りで人になったせいで、今思いっきり注目されてるが...ま、有難い。
コダ爺は俺の肩から降りたくないようだ。
精霊なんだから、足腰が弱るとかないだろ...なんなら地中だって進めるのに...
なぜか先程よりもこちらをチラチラ見る人が増えたが、なんでだろうな。
「あ。そうだ、冒険者ギルドに寄らないと」
リディに聞いたのだが、冒険者はランクが上がると、本登録をした場所のギルドでその旨を報告しなければならないようなのだ。
所属している高ランクの冒険者に、緊急で高難易度の依頼要請をする事があるらしい。
近くまで来たのだから、一応報告だけはしておこうと思う。
「私も登録したい!」
「サトリも?」
妖怪でも登録できるのかな。
魚が出来たんだから、可能か。
少し進路を変更し、先に冒険者ギルドに行った。
彼女の詳細な個人設定を考えだして、一緒に登録カウンターに向かう。
すんなりと登録と報告を終え、出口に歩き出す。
だが、
小洒落た軽い雰囲気の若い男どもがさり気無く寄ってきた。
はい、来ましたよ新参者の洗礼。俺の時は酔っ払いだったのに、なんだこの差は。
誰かしら暇な奴らがたむろってんだな。
「可愛いお嬢さん。冒険者になったばかりなんだね。
よければ、僕たちがサポートするよ? ひょろい兄貴一人じゃ頼りないだろう」
兄妹に見えるのか。髪の色が黒と白、翼の有無の違いはどうなってんだ。
...あ、見えてないな、コイツらには。サトリしか見とらん。
「ベ兄ぃ、怖い。なんとかして」
俺の後ろに隠れたサトリが、背を押し出してくる。
丸投げかよ。洗礼は自分で受けるものだろうが。
てか、誰だよベニィって。
仕方がないので兄貴面してチャラい奴らに向き直る。
「お誘いありがとうございます。しかし御覧の通り、人見知りの妹が怖がっていますので...。
もう少し慣れた後で、ぜひまたお誘いください」
これで引き下がってくれないかなー。引き下がれー。
「チッ、年下の癖に生意気だな。口の利き方を教えてやろうか」
「てめぇにゃ聞いてねーんだよ。オイ、表に出ろ」
俺が応対した途端にガラが悪くなったな。
人によって態度を変えるような連中に、お兄ちゃんは大事な妹を渡せません。
...あれ?
首を傾げていると、意外なところから助けが入った。
チャラ軍団の後方に居たヤツだ。
「...おい、何言ってんだおまえら。その子、お姉ちゃんだろうが」
呆然とした顔で信じられないように仲間を見ている。
...。
なんて助けだ。だが無いよりはマシか。
「おまえ、女の子だったのか...? ベニーちゃん...?」
「...さぁ、どうでしょうね」
見る見るうちに気持ち悪い笑顔に変貌していく奴らを見るに堪えず、ショックを受けたふり(実際受けたが)をして、サトリの手を引いて外に走り出た。
建物の外でため息をつく。
なんとか上手く切り抜けた(?)が、肩の上ではずっとコダ爺が大笑いしてるし、地味にグサッとダメージを負ってしまった。
「コダ爺! こんな時こそ、マッチョ爺さんになって助けてくれよ!」
「ふぉっふぉっふぉっ、いやぁ面白かったのぅ!」
ダメだ、てんで役に立たないらしい。
サトリもまだ下を向いて震えて(笑って)いる。
「また同じような事があったら、最初からベニーお姉ちゃんでいこうね!」
「やめぃぃ!!」
少しして、兄妹(?)が去っていったギルドにギルマスが依頼から帰還した。
「ギルマス、お帰りなさい。ついさっきまで、以前あなたが気にしていた黒髪の子が来ていましたよ」
「なんだと。戻ってきたのか?」
「ランクが上がった報告に立ち寄っただけのようです。新しい子を連れてきていましたね」
「どちらも、ぜひとも見たかったな...」
「あなたって本当、昔からいつもタイミングが悪いですよね...」
「気にしてんだから言うなよ。つか、フラグ立てないでくれ」
と、悲し気に愚痴をこぼすギルマスが、目撃されたとかされなかったとか。
しばらく歩いて白桔梗亭に到着し、ケヴィンの部屋で手短に事態を話す。
・エーギルがヴォルカに攻め入り、龍宮城は崩壊、俺の師匠も殺された事。
・悪魔がエーギルを利用し、暗躍していること。
・神の元にも、悪魔がいる可能性が高いこと。
・魔族や人間の中にも、紛れ込んでいるかもしれない事。
それ以上は話さなかった。彼なら、何かきっかけがあれば自分で気づくだろう。
下手に話して敵に心を読まれると危ないからな。
「話はわかった。できるだけ早く魔大陸に渡り、神の元に行く準備をしている間に、おまえ達だけで密かに悪魔に関する情報を集める。
その途中でお前の国が侵攻を受けるだろうから、その際は一旦転移で戻るという事だな」
「ああ。王も調子を取り戻しつつあるし、俺が駆けつける必要は無いかもしれないが」
だとしても、絶対に向かう事には変わりないんだがな。
「...ベニッピー。おまえ、何か変わったか?
魔力量が増えている上、少し武人のような雰囲気が混じっているぞ」
ケヴィンが首を傾げる。
「それは...師匠が死ぬ間際に、棒術の技量を丸ごと継承させてくれたから、だな。
魔力の事はよくわからん」
「そんな事ができるのか。海底はすごいな」
妙な感心をされている。
するとコダ爺が笑った。
「んな反則みたいな芸当ができる奴は、人外でもそうおらんよ。あ奴は特別じゃったようだの。
あと、ベニ坊は覚醒進化したから魔力も増えたんじゃよ」
覚醒、進化?
したような、してないような...あ、過去視は出来るようになったか。
「例えば、「半妖」から「妖精」になるのが種族進化じゃ。
覚醒なら、妖精のままどこかが少し変わったはずじゃよ。詳しくはワシにもわからんがな」
コダ爺の目が「鑑定せよ」と言っていたので、やってみる。
【ベニッピー・ジャスパー(熾妖精)】
年齢:1歳(不老)
性別:男(無)
種族:金魚(琉金)
追記:異世界生まれ(地球)
新種
なんか増えてる! 鑑定精度が上がってる!
新種になったのか。いや、それより。
「性別の(無)ってなんだ。何がだ!」
「何かが無いんじゃろ」
「私には鑑定結果は見えないけど、(有)って出るより良いんじゃない?」
「無性でも何も問題なかろう」
「性別は「男」って出てんだよ!」
皆が好き勝手な事を言っている。くそぅ、面白がってるな。
憮然としながらも、この先のルートと予定を軽く決める。
基本的にはケヴィン達が俺を探していた時と同じ道筋で、さらに最短部分を通るのだ。
地図で確認していると、途中で敵国エーギルのすぐ傍を通ることに気付いた。
エーギルはヴォルカと違い、陸地に近い浅瀬に中心の城が立っているという。
住人も、半分陸棲の者も多いらしい。
なので人との交流もあるようで、ベルタは正体を隠して「人間の冒険者」として潜入していると言っていた。
「急ぐ道だが、エーギルの傍を通る際には情報を得ていきたいな」
「ああ、勿論だ。存分に見てくるがいい」
ケヴィンも快く了承してくれたので、さりげなく侵攻の情報などを収集していくことになった。
そうして、俺たち4人は魔大陸への旅に出た。
人化したサトリは超可愛いんです。
ベニッピーも実はかなりの美形なんですけど...人間の美醜に興味が無い上に、周りに指摘してくれる者も居ないので気づいていません。
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