13話 裏側2
建物から出て、壁に寄りかかって待っていたベルタの元に行く。
「悪い、待たせたな先輩」
「待ってないっすよー。新参者の洗礼は上手く切り抜けたっすか?」
「ああ。良いヤツに助けられた。
それでな、人探しの依頼の中に、俺がいた。探しているヤツはもうこの街にはいないようで、すぐに追おうと思う。
もうちょっと先輩に色々聞きたいこともあったんだが、ここで別れた方がいいな」
「...そうっすね。こういう状況では、即追った方がいいっす。
何かあったら、すぐ城に報告に戻るんすよ?」
「わかった。ここまで案内ありがとな。あとは俺一人でなんとかコソコソやってみるよ」
「了解っす。身の安全が最優先っすからねー!」
「先輩も、暑さで倒れないでくれよ」
軽く拳と拳を合わせ、逆方向に歩き出す。
俺は、宿「白桔梗亭」へ。彼女は、敵対国方面へ。
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事態は約2ヶ月ほど前に遡る。
龍宮城の北北東に存在する「魔大陸」。その大陸に住む主な住人は「魔族」だ。
大陸はいくつかの王領に分けられ、ぞれぞれを「魔王」たちが治めている。その頂点に立つのが「魔皇帝」である。
その大陸南端の王領「カウラ」、その南方に位置するカウラ城。
そして城の脇に立つ、王立魔法研究施設。施設全体の離れにひっそりと佇む「召喚棟」。
そここそが、ベニッピーが召喚された場所だった。
今、棟の入り口の扉から3人の人影が出てくる。皆、旅装束だ。
一人目は、腰に長剣を佩いた銀髪の男。
二人目は、眼鏡を掛けた紺色の髪の女。
三人目は、際立って大荷物の茶髪の女。
ケヴィン、ウラリー、そしてリディである。
「それでは出発しましょう!リディ、まずは誰に聞きますか?」
ウラリーが、ワクワクとリディに問う。
「鳥に聞く。彼らが一番目ざとい」
「そうですか!鳥、鳥、鳥はどこに...」
ウラリーはさっそくキョロキョロと鳥を探し始める。
ケヴィンも木の上に目をやりながら、彼女が来てくれたことに感謝していた。
リディは猫科の「獣人族」である。
獣人族とは、人間に比べると魔力は少ないが、身体能力と感覚に優れた種族だ。
多くの者に獣の耳や尻尾、牙や爪などの動物的特徴が表れているが、彼女にはそれが無い。
かわりに、ある程度の知性ある生き物となら、大まかな意思の疎通がとれた。
「あ、ハヤブサがいましたよー」
「今行く」
「…どうでした?」
「...知らないって」
城の周囲の森や野原でそんなやり取りを何度か繰り返したが、未だ目撃情報は得られない。
「街の方に行ったのでしょうか」
「どうだろうな。人ならともかく、ジャスパーは街中では目立つだろう」
「一応、聞きこんでみますか?」
「...いや、俺たちがそんなことをしていたと、この場所で知られるのはよくない。
するならもっと遠くに離れてからだ」
「そうですね。鳥以外の生き物にも聞いてみましょう、リディ」
「ああ」
そうして、さらに1時間ほど生き物に聞き込みを続ける。
すると、ついに目撃証言が得られた。
「ウラリー、ケヴィン。この亀が、ベージュの魚を見たって言ってる」
「なんと!詳しく」
「大きな鳥に捕まえられて、南の方に飛んでったと」
「~~~~っっ!!」
リディが亀の甲羅を撫でている横で、二人は愕然とする。
あのジャスパーが?鳥に捕まったまま飛んでった...?
しかし、すぐにハッと気づく。
「やられたな。もう近くにはいないだろう」
「旅装束で正解でしたね。さて、どこに行きますか」
その問いに、ケヴィンは考える。
南方に向かったというが、それが正しかったとして、途中で方向転換した可能性もある。
しかし、鳥が何かを銜えたまま目的地以外の方面へ寄り道するだろうか。
南を見る。
ここから少し川沿いに行くと巨大な崖になっていて、川は大滝へと変貌する。
その眼下には王都「シーカウラ」が広がり、その向こうは海だ。
さらに大海原を真南に進むと、人間の国「パレンシア」に到達する。
大きな鳥といった。ならば、ここから見える王都内に巣を作っている可能性は低い。かなりの人口集中都市だからだ。
それよりも、海の向こうの国か、その中間にある島々を目指して飛んでいったと考えるべきだろう。
「決めた。南方の島々から始め、素早くしらみつぶしに当たる」
「それはまた、大きな賭けに出ましたねぇ。でも、私も最善だと思いますよ。
リディはどうですか?」
「亀が、あまりこの近くでは見ない鳥だと言っている。正解だと思う」
「やはりそうか。では、さっさと大陸を出てしまおう。
最初は、一番近いサラサの島に行く」
「了解でーす」
こうして、3人は人に聞いたり生き物に聞いたりとひたすら聞き込みを続けながら、島や国を渡っていった。
先々で、
「空飛ぶ魚を見なかったか?俺たちはジャスパーと呼称している。
その名の通り、本体は綺麗な赤色をしている」
とか、小さな碧玉玉を見せながら
「こんな感じの見た目の魚、知りませんか?
カチコチで、知性があって、魔法も使えます」
とか、襲い掛かってきた肉食獣や魔物に
「碧玉色の、小さな魚だ。色も変化するし、お前たちよりも確実に強い存在感と魔力を持つらしい。
バラされたくなかったら、下っ端どもから直ちに目撃証言を集めな」
といったコトをしていたので、ベニッピーは本人の知らぬ場所、知らぬ世界で有名になっていった。
まったく与り知らぬ名前で。
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以下、補助説明と3人の人物設定。本文ではありませんが、ここに書いておきます。
・3人は、魔大陸にある魔法系大学の魔生物科の同窓生。
・ウラリーとリディは他大陸からの留学です。
・リディが到着するまでの間に、ケヴィンとウラリーは上に報告を済ませて旅の許可を取っている。
・ベニッピーが能力を手に入れた際にケヴィンも逃げたのは、周囲の者の避難優先もありましだが、召喚者を警戒させないように剣を置いてきていたからです。文字通り「太刀打ちできない」と。
(無駄に)詳細な設定いきます。
主人公視点の話ではない為です。お許しを。
ケヴィン・エルランジェ(魔族)
カウラ王城勤務の、次期魔王候補の一人。本人は、別にならなくてもいいと思っている。
(魔大陸も、龍宮城と同じく世襲制ではない王制で統治されている)
魔法がそこまで得意ではない代わりに、剣術や身体能力に非常に優れている。
白魔法も少し使える。
穏やかな性格だが、顔は自然に怖い。考えてから喋る。判断力がある。
異世界人召喚プロジェクトのお目付け役を任されていた。
長髪、長身、細身、仏頂面
ウラリー・ブラン(人間)
人間の国で、魔法研究機関に勤めていた。
召喚魔法の第一人者。魔力はケヴィンよりも多い。結界魔法に優れている。魔法陣大好き。力は弱い。
マッドサイエンティストっぽい。元気。よく喋る。議論好き。
異変に際し、魔大陸にある研究所で魔族と協力して召喚プロジェクトを行えとの国からの命令を受け、1年以上前から研究施設の召喚棟で召喚師長をやっていた。一応責任者。
おかっぱ、小柄、眼鏡
リディ・シュミット(獣人)
猫科の獣人。見た目は人間だが、身体能力が高く夜目も利く。身軽で、暗殺者タイプ。魔法は苦手。重い武器も苦手。
生物の身体構造に詳しく、隙あらば解体しようとする。動物自体は大好き。
必要な事以外あまり喋らない。口調も男っぽい。大きな音、眩しい光が苦手。空腹に弱い。
大きな荷物袋には、色々な物が詰まっている。普段は冒険者。
長髪、細身、眠そう




